訴訟告知とは?裁判所から告知書が届いたときに知るべき6つのこと

訴訟告知とは?裁判所から告知書が届いたときに知るべき6つのこと

訴訟告知が届いたが、これはどのようなものなのだろう……?

今回は、

  • 訴訟告知とは
  • 訴訟告知書を無視するとどうなるのか
  • 訴訟告知を受けたときはどうすればよいのか

などについて、詳しく解説していきます。

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1、訴訟告知とは

訴訟告知とは、訴訟当事者が、訴訟の対象となる紛争に関係する第三者(民事裁判の当事者でない第三者)に対して、訴訟が係属している事実(民事トラブルが裁判にかかっていること)を、裁判所を通じて告知することです(民事訴訟法第53条1項)。

単に「裁判になっています」と知らせるだけではなく、

  • 「このような裁判をしていて、現在ここまで進んでいます」ということ
  • なぜその人に告知するのかという理由

についても、知らせることとされています(同条3項)。

ここでは、なぜ訴訟告知という制度が設けられているのか、訴訟告知が行われるとどうなるのかについて解説します。

(1)第三者が訴訟に参加する機会を与えるもの

民事裁判(民事訴訟)は、特定の民事トラブルについて、当事者(原告と被告)のみで主張・立証を行い、どちらの言い分が正しいかを裁判所の「判決」で判断する手続きです。

判決の効力は基本的には当事者にしか及びませんが、状況によっては、第三者にも事実上の利害関係が及ぶことがあります。

冒頭で紹介した事例でいえば、配偶者Bが「不倫されたので慰謝料を支払ってください」と主張しても、実際には不倫の事実がなく、慰謝料は発生しないかもしれません。

不倫の事実があったとしても、慰謝料の額は様々な事情によって異なってきます。

しかし、Bと不倫相手Cのみの訴訟によって不倫の事実と慰謝料の額が決められてしまうことについて考えてみましょう。

上記の場合、不倫した配偶者Aの知らないところで、事実上、慰謝料の支払い義務を決められてしまうことになりかねません。

そこで、不倫した配偶者Aのように、第三者間の訴訟の結果に利害関係を有する人は、当事者のどちらか一方を補助するため、訴訟に参加できます(同法第42条)。

このことを「補助参加」といい、参加する人のことを「補助参加人」といいます。

Aが補助参加をする場合、B・Cのどちら側についても構いません。

不倫の事実や慰謝料の額を争う場合は、C側につくことになります。

訴訟告知は、Aに対して「BとCが不倫慰謝料に関する裁判をしています。

Cが敗訴した場合は、Aの負担分についてCからAに対して請求する可能性があります」と伝えることで、Aが訴訟に参加する機会を与えるための制度です。

(2)告知を受けた人は訴訟に参加したものとみなされる

訴訟告知を受けたAは、その訴訟に参加しなかったとしても、参加することができたときに参加したものとみなされます(同法第53条4項)。

このことを、「参加的効力」といいます。

参加的効力が発生するとされている理由は、次に解説するように、CにとってはAに対する参加的効力が認められなければ、訴訟告知をする実益がないからです。

(3)訴訟の結果は告知を受けた人も拘束する

Cとしては、Bとの訴訟に敗訴して慰謝料全額を支払った場合、Aの責任割合(2分の1が多いかもしれませんが、個別具体的な事情を総合考慮して判断されます。)分の支払いをAに対して求めることができます。

この権利のことを、「求償権」といいます。

しかし、訴訟告知をしていなければ、B・C間の訴訟の結果はAにとって法律的には無関係です。

CがAに対して求償権を行使しても、「不倫に該当する事実はない」「慰謝料額はもっと低いはずだ」などと主張され、支払いを拒否される可能性も考えられます。

支払い拒否されたら、Cは改めてAを相手取って訴訟を起こさなければなりません。

この場合、Cは、

  • Bとの訴訟では「不倫をした」ものとして慰謝料の支払いを命じられた
  • Aとの訴訟では「不倫はしていない」ものとして求償権の発生を否定される

というような矛盾が生じる可能性があります。

CがBとの裁判時にAに対して訴訟告知をしておけば、その時点でAについて参加的効力が生じます。

AがB・C間の訴訟に参加したとみなされる以上、その判決の効力はAにも及ぶのです。

B・C間の訴訟の判決で、A・Bの慰謝料支払い義務とその金額が確定すれば、Aはその判決が不当であると主張することはできなくなります。

結果として、CからAに対する求償権の行使が認められるようになるのです。

2、訴訟告知のメリット・デメリット

訴訟告知の法的効果をひとことで言えば、自分(告知者)が行っている訴訟の結果と同じ効力を、相手(被告知者)にも及ぼすことができるということになります。

ここでは、訴訟告知は誰にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかを解説します。

この解説をお読みいただくことで、訴訟告知についてさらに具体的に理解できるようになるでしょう。

(1)メリット

訴訟告知には、告知者・被告知者の双方にとって、以下のメリットがあります。

①告知者は求償権を確保できる

告知者が第三者に対する求償権を有する場合には、債権者との訴訟中に訴訟告知をすることによって、求償権を確保することが可能となります。

前記「1」(3)で解説したように、不倫相手Cは、配偶者Bとの訴訟と、不倫した配偶者Aとの訴訟の両方で敗訴すると、2人分の慰謝料支払いを命じられます。

加えて、Aに対する求償権を行使できません。

しかし、Bとの訴訟中にAに対して訴訟告知をすれば求償権が確保されるので、Aとの訴訟は不要になります。

②被告知者は敗訴を回避するために争える

被告知者は、第三者の訴訟の結果について利害関係がありますので、補助参加をして一方の当事者のために主張・立証を尽くすことができるのです。

そうすることで、自己に不利となる敗訴判決を回避できる可能性があります。

仮に、CがBとの訴訟中に訴訟告知をせずに敗訴し、慰謝料500万円の支払いを命じられ、Aに対して半分の250万円を自分に支払うようにと求償を求めてきたとしましょう。

不倫慰謝料の相場は、離婚が成立する場合でも、「200万円~300万円程度」と言われているので、Aとしては「500万円は高すぎる」と思うことでしょう。

「Bとの訴訟に参加させてもらえれば、自分も主張・立証をして減額することができたのに」と考えることもあるはずです。

このケースのAのように、第三者の訴訟の結果に利害関係を有する人が参加し、主張・立証する機会が与えられるというメリットが訴訟告知にはあります。

(2)デメリット

一方で、訴訟告知には以下のデメリットもあります。状況によっては、訴訟告知をするかどうかを慎重に判断する必要があります。

①感情的な争いがエスカレートするおそれがある

訴訟告知には、特定の当事者間のトラブルに第三者を巻き込むという側面もあります。

相手方当事者の感情を害し、トラブルが激化するおそれがあるでしょう。

Bのように不倫された配偶者という立場の人は、「離婚しない」という理由で不倫相手にのみ慰謝料請求をするという場合があります。

Bとしては、Aとの問題については自分なりに内心で解決したにもかかわらず、CからAに対して訴訟告知をされると良い気はしないでしょう。

ましてや、Aが訴訟でB側に参加して主張・立証を行うと、Bの感情を害するのも無理はありません。

②訴訟が長期化する可能性がある

原告・被告の2当事者間の訴訟に補助参加人が加わると、主張・立証の手数が増えます。

争点が増える可能性もありますし、調べるべき証拠の数も増えるでしょう。

その分だけ、訴訟が長期化する可能性があります。

また、裁判上の和解によって早期解決の可能性があるケースでも、訴訟告知によって相手方当事者の感情を害すると和解が難しくなります。

結果として、各当事者が徹底的に争って、判決を求めることになりがちです。

もっとも、告知者(本記事の例ではC)にとっては、1つの訴訟で求償権を確保できるので、全体的に見れば早期解決につながるともいえます。

それでも、相手方当事者(本記事の例ではB)の感情を害することで訴訟がもつれがちになることには注意した方がよいでしょう。

3、訴訟告知を受けたらどうすればいい?

それでは、裁判所から「訴訟告知書」が届いたときには、どのように対応すればよいのでしょうか。

先ほどから例に挙げている「Aの立場」で考えてみましょう。

(1)訴訟に参加するかどうかは自由

訴訟告知を受けると、「参加的効力」が生じますが、実際に参加するかどうかは被告知者の自由です。

参加して自分で主張・立証を行うこともできれば、参加せず原告・被告に訴訟の行方を委ねることもできます。

本記事の例のように不倫のケースでは、一般的にAの立場の人は訴訟告知を受けても参加せず様子を見守ることが多いです。

Aが男性である場合や、AとBが離婚しない場合には、その傾向が特に強くなります。

(2)参加しない場合の注意点

参加しないことに決める場合でも、参加的効力に拘束されることに注意する必要があります。

前述したように、B・C間の訴訟で相場を大幅に超える慰謝料額が確定した場合は、その金額を前提としてAのCに対する求償義務も確定してしまいます。

この結果を回避するために考えられるのは、AがCのために弁護士に依頼し、弁護士との打ち合わせなどに同席するという方法です。

この場合も、Bと離婚しない場合はBの感情を害しないように注意深く行動する必要があるでしょう。

(3)参加する場合の注意点

参加する場合は、当事者のどちら側に付いて参加するのかを判断する必要があります。

不倫のケースでは、Aの立場の人はC側に付くべきケースが多いですが、必ずしもそうであるとは限りません。

例えば、CがA・Bの夫婦関係を破綻させる目的でAを誘いかけたような場合で、AもCを訴えたいというケースです。このような場合、AはB側に付くべきことになります。

一般的なケースでC側に付く場合、Aとしては離婚したくないのであればBの感情を過度に刺激しないように配慮する必要があります。

Aの立場で必要な主張・立証を行いつつ、Bの感情を刺激しすぎないためには、弁護士に依頼して訴訟に参加する方がよいでしょう。

4、訴訟告知の流れ

本章では、訴訟告知をする方法と、その後の流れを解説します。

(1)被告知者はさらに訴訟告知ができる

訴訟告知を受けた人は、さらに別の第三者に対して訴訟告知をすることができます(民事訴訟法第53条2項)。

不倫のケースでは考えにくいですが、別の事案で考えてみましょう。

例えば、W・X・Yの3人でZに暴行をして危害を加えたとします。

この場合、仮にWがZに対して損害賠償金を全額支払うと、WはXとYに対する求償権を取得します。

ZがWに対してのみ損害賠償請求訴訟を起こした場合、WはXとYに対して訴訟告知が可能ですが、何らかの理由でXに対してのみ訴訟告知をしたとしましょう。

この場合のXは、さらにYに対しても訴訟告知ができます。

(2)必要書類

訴訟告知は、書面(訴訟告知書)を裁判所に提出して行わなければなりません。

訴訟告知書には、「告知をする理由」と「訴訟の程度」を記載する必要があります(同条3項)。

「告知する理由」については、被告知者がその訴訟にどのような利害関係を有しているのかを具体的に記載します。

上記の例であれば、WとXが敗訴して損害賠償金の支払いを命じられた場合には、Yに対する求償権が発生し、Yの負担部分について支払いを請求することになる旨を記載します。

「訴訟の程度」については、その訴訟が現在どこまで進行しているのかを記載します。

具体的な記載事項は、以下のとおりです。

  • 訴訟が係属している裁判所名
  • 事件番号
  • 事件名
  • 何月何日の第何回口頭弁論期日でどのような書面を提出したのか
  • 次回期日が何月何日何時に指定されているのか

必要書類は、訴訟告知書のみです。

ですが、裁判所用の正本1通、被告知者用の副本1通、相手方当事者用の副本1通の合計3通を作成して、裁判所に提出する必要があります(民事訴訟規則第22条)。

(3)費用

訴訟告知に手数料はかかりませんが、裁判所からの送達費用として郵便切手を予納する必要があります。

金額は1,000円程度ですが、裁判所によって具体的な金額や切手の組み合わせが異なりますので、訴訟が係属している裁判所で事前に必ずご確認ください。

(4)被告知者が訴訟告知をすべきタイミング

訴訟告知は、訴訟が係属している間はいつでも行うことができます。

ただし、自分の側に補助参加してもらう場合なら、早い段階で訴訟告知をする方が得策です。

一般的には、答弁書の提出と同時か、その後くらいのタイミングで行われることが多いです。

訴状と答弁書が提出されると、原告の訴えの内容とそれに対する被告の認否が明らかとなり、争点をおおよそ把握できるようになるからです。

上記の例におけるXの立場でも、答弁書の作成と併せて訴訟告知の準備もするとよいでしょう。

5、「訴訟告知」をかたる架空請求ハガキには要注意

悪質業者から「訴訟告知」をかたる架空請求のハガキを受け取った人もいると思いますが、これは裁判所から送られてくる「訴訟告知」とはまったく別物ですので、注意が必要です。

架空請求のハガキの多くは、「訴訟最終告知のお知らせ」といった表題を付けて、送られてくることが一般的です。

内容は「○日以内に○万円を支払わなければ財産を差し押さえる」などと記載されていますが、決して支払ってはいけません。連絡もせず、無視してください。

どうすればよいのか分からないときや、不安なときは弁護士に相談しましょう。

弁護士が見れば裁判所からの訴訟告知書であるのか、架空請求のハガキであるのかは一目瞭然に判明しますので、アドバイスを受けて安心することができます。

6、裁判所から訴訟告知書が届いたら弁護士に相談を

裁判所から訴訟告知書が届いたということは、ご自身に利害関係のある何らかのトラブルが訴訟にかかっていることを意味します。

放置していると、「参加的効力」によって知らないうちに高額の支払い義務が発生してしまうおそれがあります。

訴訟に参加するとしても、どのような手続きをすればいいのか、参加後にどのような主張・立証を行えばよいのかが分からないこともあるでしょう。

そんなときは、弁護士にご相談ください。訴訟に参加すべきか否か、参加するとして当事者のどちら側に付くべきか、などについてアドバイスが受けられます。

弁護士に依頼すれば、訴訟への参加手続きも、参加後の主張・立証活動もすべて代行してもらえます。

「不意に高額の支払いを請求される」という結果を、回避することにつながるでしょう。

訴訟告知に関するQ&A

Q1.訴訟告知とは

訴訟告知とは、訴訟当事者が、訴訟の対象となる紛争に関係する第三者(民事裁判の当事者でない第三者)に対して、訴訟が係属している事実(民事トラブルが裁判にかかっていること)を、裁判所を通じて告知することです(民事訴訟法第53条1項)。

Q2.訴訟告知のメリットとは

  • 告知者は求償権を確保できる
  • 被告知者は敗訴を回避するために争える

Q3.訴訟告知のデメリットとは

  • 感情的な争いがエスカレートするおそれがある
  • 訴訟が長期化する可能性がある

まとめ

訴訟告知書を受け取ったら、まずは落ち着いて訴訟の内容や進行状況を把握し、それから参加するか否かを慎重に判断する必要があります。

1人で判断しづらいときや、そもそもどうすればよいのか分からないときは、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士はあなただけの味方として活動してくれます。専門的なサポートを受けて、納得のいく解決を図りましょう。

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