養子縁組の利用を考えてるすべての人が知っておくべき全14項目

養子縁組

養子縁組とは、実の親子関係のない人との間で、親子関係、またそれを通じた親族関係を結ぶことを可能にする制度です。昔から、家業、財産、家の苗字、お墓等を維持するため、どうしても後継ぎが欲しいという方の間で利用されてきました。

最近では、子どもを授かることができない若い夫婦が、子育ての喜びのために養子をもらうケース、虐待のせいで実の親のところに戻れない幼い子を、実の親と切り離して養子にするケース等も増えてきています。

養子縁組の制度は法律でこと細かに決まっており複雑です。今後、養子縁組を考えている方、特別養子縁組に興味のある方等に参考となる情報をまとめていきます。

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1、養子縁組とは

養子縁組とは

(1)普通養子縁組とは

普通養子縁組とは、特別養子縁組という制度ができたために、それと区別するために設けられた呼び名です。いわゆる、昔からの、普通の養子縁組のことを言います。養子縁組を結ぶことによって、新しく親子関係が発生します。

特別養子縁組との一番の違いは、血縁上の親と法的な親子関係がなくならないという点です。つまり、養子となった方から見れば、養親と実親という2つの親がいることになります。当然、扶養や相続関係も二重になります。

(2)特別養子縁組とは

特別養子縁組とは、昭和62年に導入された比較的新しい養子の制度です。この制度を利用すると、普通養子縁組と異なり、血縁上の親との法的な親子関係が切れてしまいます。つまり、相続や扶養の関係が二重に発生することがありません。

この制度は、養子としてではなく、子を自分の実の子供と変わらない状態で育てたいという要請と、子供の福祉という2つの観点から作られました。ですから、成立させるための条件が相当厳しくなっています。条件は以下のとおりです。

  • 養親は夫婦共同でならなければならない
  • 養親は少なくとも一方が25歳以上、他方が20歳以上でなければならない
  • 養子は6歳未満でなければならない
  • 実の両親の同意がなければならない
  • 父母による育児が不適切等の場合において、子の利益のために特別の必要があると認められるとき

かなり厳しい条件ですね。この条件の判断は、家庭裁判所が審判により行います。ですから、特別養子縁組を成立させるには、家庭裁判所に審判を請求する必要があります。

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2、養子縁組と里親制度との違い

養子縁組と里親制度との違い

養子縁組と里親制度には大きな違いがあります。養子縁組は、法律上の親子関係を成立させるという大きな効果があります。つまり、養親が亡くなったときは相続権が得られますし、養親に対して扶養を請求することができます。この逆も可能です。

これに対して、里親制度は、児童福祉法上の制度で、法律上の親子関係を発生させるものではありません。ですから、相続関係や扶養義務が生じることもありません。こちらの制度は、家庭での養育が困難又は受けられなくなった子供等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境下での養育を提供する制度であり、あくまで委託関係です。親子関係ではありません。また、生涯続くことを予定しているものでもありません。

養子縁組では、生涯続く、相続・扶養を含む親子関係が成立するのに対し、里親制度は、一時的な委託に基づくもので、親子関係が成立しないというのが違いです。

3、養子縁組のメリットとデメリット・問題

養子縁組のメリットとデメリット・問題

養子縁組のメリットは、なんといっても親子関係が実子と同じように成立するという点です。そして、その関係は原則として生涯続くことを予定しています。ですから、家業の後継ぎやお墓の管理、苗字の維持等、様々な目的を達することができます。

一方、養子縁組にはデメリットもあります。まず、実の親子関係ではないので、一定の条件を満たせば離縁することができます。つまり、何十年にわたって形成されてきた関係が、トラブルを原因として突然なくなってしまうというリスクがあります。また、養子に対する偏見は未だ残っており、養子となった方がコンプレックスを抱いたり、実子や親族から財産目当てなどと思われて、煙たがられたりしてしまう等のリスクがあります。

4、養子縁組後の相続

養子縁組後の相続

養子縁組後の相続は、二重に発生します。つまり、実の親が亡くなった時にも、養親が亡くなったときにも、相続権があります。ですから、2回相続を受けることができるのです。ちなみに、養子になった子がさらに養子縁組することも可能です。これを転縁組といいますが、そうすると、相続は実の親と前の養親と新しい養親との間で行われるので、3重になります。

養子になると、実の親の相続が受けられないと誤解している方が多いので注意してください。なお、特別養子縁組はこれとは異なり、実の親との関係が切れるので、相続権は養親の分しかありません。

5、養子縁組と戸籍と氏(苗字)

養子縁組と戸籍と氏(苗字)

養子縁組を行う場合、養子は養親の戸籍に入ります。その際、戸籍には養子縁組の事実が記載されるので、戸籍を見れば養子であることが直ぐに分かります。

苗字は、一つの戸籍の中では全員が同じなので、養親と同じ苗字になります。

ちなみに、特別養子縁組の場合は、これと異なる部分があります。つまり、戸籍だけを見ても、養子であることが分からないようになっています。実子として育てたいという親の感情や、養子であることを知られたくないという点への配慮等によるものです。

6、養子縁組の条件

養子縁組の条件

養子縁組を行うためには、次の条件を満たしていることが必要となります。

  1. 養親の年齢が成人を超えていること
  2. 養子が養親者より年長ではなく、又、尊属(父や母、祖父母など、いわゆる直系の先祖のこと)でないこと
  3. 後見人が被後見人を養子にする場合、未成年者を養子にする場合、夫婦が養子縁組の当事者となる場合には、さらに制限あり
  4. 養子縁組をした旨の縁組届けを提出すること
  5. 普通養子縁組の場合には、養親となるのは単独・独身でも可能

これらの条件を満たしていれば、養子縁組は成立します。未成年者や夫婦が養子縁組の当事者となる場合の詳しい制限については、以下で触れていきます。

7、再婚時におこなう養子縁組

再婚時におこなう養子縁組

再婚時に行う養子縁組は、自分又は相手の連れ子を、養子にする場合です。連れ子が未成年であるときは、相手方の同意が必要です。つまり、相手の連れ子を自分の養子にしようとするとき、自分と相手の連れ子だけで決めることはできません。必ず、相手の同意が必要となります。また、未成年の子を養子にする際には、家庭裁判所の許可も必要となります。

8、結婚時におこなう養子縁組

結婚時におこなう養子縁組

結婚をする際に、相手の両親と養子縁組をするということはあります。この場合、「7、」と同じく、相手の両親のどちらか一方の意思だけで養子縁組をすることはできません。相手の両親の双方が同意している必要があります。ややこしいので、注意が必要です。

9、孫とおこなう養子縁組

孫とおこなう養子縁組

孫と養子縁組をする場合、孫が未成年であれば、祖父母揃って養子縁組をする必要があります。孫が成年であれば、祖父母の一方と養子縁組することが可能です。ただし、その場合でも、他方配偶者の同意を得なければなりません。この点も複雑なので、注意が必要です。

10、養子縁組の手続き

養子縁組の手続き

養子縁組をする際に必要なのは、「養子縁組届」の届出です。養親と養子がそろって市町村役場に行き、必要書類を提出し、印鑑を押さなければなりません。必要書類としては、届け出先に本籍のない方の戸籍謄本が必要になります。また、未成年の子を養子縁組する際には、家庭裁判所の許可審判書が必要となります。

なお、未成年の養子にとっての養父および養母の双方が死亡した場合、親権がは自動的に実親に戻ることはありません。

11、養子縁組の費用

養子縁組の費用

普通養子縁組には費用がかかりません。書類を提出して受理してもらうだけで完了です。ちなみに、特別養子縁組には、裁判所への申し立て費用として、800円の収入印紙代と切手代がかかります。

12、養子縁組の解消・離縁

養子縁組の解消・離縁

養子縁組の解消には、協議離縁、調停離縁、裁判離縁という3種類があります。この点は、離婚と同じです。

(1)協議離縁

話し合いによって成立する離縁です。養親と養子との間で話し合いが成立すれば、離縁の届け出をすれば手続きは完了します。この点は、離婚と同じです。

(2)調停離縁

当事者の話し合いのみでは解決しないので、裁判所の調停委員に間に入ってもらい、話し合いをして成立する離縁になります。調停委員は、一方の言い分の正当な点や独りよがりな点を指摘しながら、双方の言い分を整理し、合意に向けて話し合いを進めていきます。当事者同士では、なかなか成立しない離縁についても、調停委員が間に入って話し合うことで、上手く進むということは良くあります。

だだし、最終的には双方の合意が得られなければ調停は成立しません。その場合は、裁判手続きに進むしかなくなります。この点も離婚と同じです。

(3)裁判離縁

裁判離縁は、調停でもまとまらなかった場合に、離縁を求める側が離縁を拒絶する側に対して訴訟を起こすことによって始まる手続きです。当事者の合意は必要ではなく、一定の法律上の条件が満たされれば、裁判所は離縁を認める判決を出します。その際に問題となるのが、法定離縁事由です。

  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • その他縁組を継続しがたい重大な事由があることが法定離縁事由です。これらが認められれば、相手がどれだけ拒んでいても離縁が成立しますし、逆にこれが認められなければ、相手がどれだけ離縁を望んでいても離縁は成立しません。

離婚と似ていますが、不貞行為、強度の精神病が離縁事由となって点が違います。裁判は短くても数か月、長いと数年間を要することがあるので、事前にそういった負担があることを理解しておかなければなりません。

(4)離縁の効果

離縁した場合、親子関係は消滅します。離婚の場合は、財産分与、養育費、慰謝料の問題が出てきますが、離縁の場合には、そのような法律上の規定がありません。

ですから、対応もケースバイケースになります。こういった点は、離婚とは異なり、当事者だけで折り合いをつけるのは困難ですから、少しでも困った場合は個別に弁護士や司法書士に相談して確認する必要があります。

13、国際養子縁組

国際養子縁組

日本国籍を持つ方同士の縁組の他に、国際養子縁組があります。国籍の異なる養親と養子との間で行われる養子縁組のことを言います。この場合、一つの決まった法律はありません。

縁組を結ぶ際に基準となる法律は、養親の本国法とされています。ですから、従うべき法律も、国籍によってケースバイケースとなります。また、養子の保護への配慮から、養子の本国法が第三者の同意もしくは公的機関の許可等を養子縁組の成立に必要な要件としている場合には、その条件も満たさなければならないことになっています。

なお、イスラム法国はそもそも養子縁組を認めていませんが、その場合は、養親の本国法の条件だけ満たせば足りるということになります。この点は、誤解が多いので注意が必要です。

さらにややこしいのですが、夫婦で養親になる場合で、夫婦の国籍が異なる場合は、それぞれの本国法の要件を満たしていなければなりません。この辺りは、相当専門的な話になってくるので、国際私法という分野に詳しい弁護士に相談することが是非とも必要です。

ちなみに、国際養子縁組は、人身売買や不法入国等の犯罪の隠れ蓑として利用されることがあるので、絶対にそのような目的で利用してはいけません。入国管理法等で処罰されることになってしまいます。

14、特別養子縁組のあっせん

特別養子縁組のあっせん

特別養子縁組のあっせんというのは、特別養子になろうとする子を、養親になろうとする親に紹介することを言います。公の機関としては児童相談所があります。民間の機関としては、一般社団法人や、斡旋センター等の組織がいくつか存在しています。

ちなみに、民間の団体が行うあっせん行為は違法ではありません。但し、営利目的で斡旋を行うことは、児童福祉法により禁止されています。実際に、逮捕者も出ています。

適法なあっせん団体は、直接仲介料等という形で費用を取ることはありません。公的な機関である児童相談所等であればなおさらです。しかし、寄付等の名目で、数百万円の費用を取る団体もあるので注意が必要です。

まとめ

  • 養子には、普通と特別がある
  • 養子縁組では、実際に親子関係が発生し、戸籍も変わり、相続権も発生する
  • 養子は、実の親子と同じ関係を作れるメリットがある一方、離縁等により解消されてしまう危険性がある
  • 未成年、夫婦の養子縁組には複雑な条件があるので要注意
  • 離縁の条件や手続きは離婚とほぼ同じ
  • 国籍の異なる人との間で行う養子縁組は、条件が複雑なので要注意
  • 特別養子縁組のあっせん団体は適法だが、営利は違法
※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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