裁判費用は誰が払う?裁判費用を相手方に請求したいときに知りたい5つのこと

損害賠償請求や残業代請求、借金の返済請求など、さまざまなトラブルを法的に解決できる方法が裁判です。 

当事者同士で交渉による解決が難しい場合には、裁判で争うことを検討することになります。もっとも、裁判を行うとなると費用面で心配になるという方も多いでしょう。

裁判をする場合、裁判費用を相手に請求することはできるのでしょうか?

そこで今回は、裁判費用の請求や裁判でかかる費用についてご紹介します。

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1、裁判費用はどれくらいかかるのか?

裁判を行う場合には、どれくらいの費用がかかるのか、気になるという方も多いでしょう。

裁判費用を大きく分けると、「訴訟費用」と「弁護士費用」に分けられます。それぞれの費用の詳細と相場についてみていきましょう。

(1)訴訟費用

訴訟費用とは、裁判を起こす場合に発生する切手代や印紙代などを指します。

裁判の内容や相手への請求金額によって、費用は異なります。

①印紙代

裁判に訴状を提出する際には、手数料の代わりに収入印紙を訴状に貼って、提出します。

印紙代は、相手への請求金額によって異なります。

訴えを提起する場合は、50万円以上で5千円、100万円以上で1万円、300万円以上で2万円、500万円以上で3万円と決まっています。

②予納郵券代

裁判を行うことになれば、裁判所を介して被告に対して訴状などが送達されます。

郵送に使われる切手代のことを、予納郵券代と呼びます。
裁判所によって、必要な予納郵券の金額は異なりますが、数千円程度が相場です。提訴予定の裁判所へ、事前に確認するとよいでしょう。

なお、裁判終了後に、使用しなかった予納郵券は返してもらえます。

③その他

専門家を呼んで鑑定をする必要あるケースでは、鑑定人に対する費用が発生します。

証人を呼んで尋問を行う際には、証人に対して日当や旅費が支払われるケースもあります。また、調書などを謄写する場合には、謄写費用も必要です。

(2)弁護士費用

弁護士に裁判や示談交渉などトラブルの解決を依頼すれば、弁護士費用が発生します。

裁判は法的な知識が特に必要になるため、弁護士に依頼する方が多いでしょう。

弁護士費用は一律ではなく、法律事務所によって料金設定が異なりますが、主に次のような費用が発生します。

  • 着手金
  • 報酬金
  • その他

①着手金

弁護士に依頼すると、基本的には最初に着手金が発生します。

着手金とは、事件に着手する際に発生する費用で、依頼料のようなものです。示談交渉や裁判などの結果とは無関係に発生するものになります。

着手金の金額設定は、法律事務所ごとに異なるだけではなく、依頼する事件内容によっても異なります。

交渉事件を依頼する場合よりも、訴訟の依頼をする場合の方が、一般的に、着手金の金額は高額になります。

着手金の相場額は、10万円~40万円程度です。

②報酬金

報酬金は、事件の解決後に解決内容に応じて発生する弁護士費用です。

請求側と請求された側によって、下記のように決められることが一般的です。

  • 請求側:回収できた金額の〇%
  • 請求された側:請求された金額と実際に支払った金額の差額(減額できた額)の〇%

報酬金の割合設定なども法律事務所ごとに異なりますが、相場は10~30%です。

③その他

書面作成や事件の調査などを行えば実費が発生し、弁護士が移動した場合の交通費なども発生する場合があります。

弁護士が事件に関係することで遠方に出向くような場合には、移動時間によって他の業務ができなくなるため、日当が発生することもあります。

2、訴訟費用は誰が払うの?負担割合は?

裁判を行う際には、訴訟費用が発生します。

訴訟費用だけでみれば、高額になることは少ないものの、支払いによる負担は減らしたいと考えるものです。

訴訟費用の支払いは、誰が行うことになるのでしょうか?

(1)原告側が最初は支払う

訴訟費用は、最初に原告側(訴えを提起する側)が支払います。

裁判を行うには、裁判所に訴状を提出する必要があるため、印紙代や予納郵券代など裁判を行うための費用の支払いが必要です。

(2)判決で費用の負担割合が決まる

訴訟費用は、最初に原告側が支払うことになりますが、判決後に原告と被告の裁判費用の負担割合が決められます。

一般的には、訴訟における請求額と、実際に判決で認定された賠償額とを比較して、負担割合を決定する傾向にあります。

原告側が勝訴すれば、訴訟費用を全額請求できる場合もありますが、裁判所より原告と被告の訴訟費用負担が1:2や3:7など割合が具体的に決められることもあります。

ただし、和解によって解決をした場合には、「訴訟費用は各自の負担とする」という条項を入れるのが一般的です。当該条項を入れて和解をした場合、仮に原告の請求額を全額認定する和解内容であったとしても、原告が負担した訴訟費用の被告への請求は認められなくなります。

3、弁護士費用の支払いについて

弁護士に裁判手続きの依頼した場合、弁護士費用が発生します。

弁護士費用は、着手金や報酬金などを合わせれば大きな金額が発生することが予想されるため、相手に支払いを請求したいと考える方も多いでしょう。

しかし、弁護士費用の支払いに関しては次のとおりになります。

(1)基本的に弁護士費用は請求できない

訴訟費用については、負担割合が裁判の判決後に決められますが、弁護士費用に関しては、基本的には、相手方に請求できません

(2)相手に請求できる弁護士費用は一部のみ

他方で、不法行為に基づく損害賠償請求などの一部の訴訟類型の場合には、弁護士費用の請求が認められる場合があります。

もっとも、実際に生じる弁護士費用の全額を相手に支払わせることができるというものではありません。

請求できる弁護士費用は、せいぜい賠償金額の10%程度に留まります。

判決による賠償金額が少なければ、相手に請求できる弁護士費用の金額もその分少なくなってしまいます。

、弁護士費用を請求できるケースとは

前述したように、不法行為に基づく損害賠償請求などの一部の訴訟類型においては、弁護士費用の請求が認められるケースがあります。

(1)不法行為に基づく損害賠償請求

不法行為とは、違法に他人の利益や権利を損害する行為のことです。

民法709条において、不法行為で損害を生じさせた加害者には、不法行為と相当因果関係がある範囲の損害を賠償する責任があると定められています。

具体的に、次のような行為が不法行為に該当します。

  • 不倫
  • 交通事故
  • 名誉棄損
  • いじめ・セクハラ・パワハラ
  • 痴漢・盗撮
  • 医療事故

①不倫

不倫は、配偶者への不法行為になります。

夫婦には貞操義務がありますが、配偶者以外の人と肉体関係を持つことは貞操義務違反に該当し、夫婦の権利を侵害する行為です。

不倫をすることで、婚姻関係の平和を維持する権利や利益を侵害し、相手の配偶者は精神的な苦痛を受けることになります。

そのため、不倫をされたのであれば、不法行為が成立し、慰謝料請求することができるのです。

不倫は共同不法行為になるため、不倫をした配偶者だけではなく不倫相手に対しても慰謝料を請求できます。

②交通事故

交通事故の被害に遭った場合、身体への損傷や、車などに対する物的損害を受けることになります。そのため、交通事故によって不法行為が成立し、被害者は加害者に対して賠償請求を行うことができます。

慰謝料だけではなく、休業損害なども請求できる場合があります。

③名誉棄損

SNSやブログなどネット上で誹謗中傷することや、公衆の面前で不名誉な発言をされて社会的評価を低下させるような行為に対しても、不法行為が成立する場合があります。

誹謗中傷を受けたことで精神的苦痛を受けるため、慰謝料請求を行うことが可能です。

④いじめ・セクハラ・パワハラ

いじめやセクハラ、パワハラなども不法行為の一類型です。

被害者は精神的に大きな苦痛を受けるため、慰謝料を損害として請求することができる場合があります。

⑤痴漢・盗撮

痴漢や盗撮の被害に遭った場合、被害者は精神的苦痛を受けるため慰謝料請求を行うことができます。

他人の身体を触ることや、許可なく撮影を行うことは違法行為です。刑罰が科されることもあります。

⑥医療事故

病院での治療や手術、美容整形、エステなどにおいて医療事故が起こった場合も、損害賠償請求ができる場合があります。

身体に損傷が生じることや、生命に関わるようなことがあった場合に、患者には大きな損害が発生します。かかる損害が、医療機関側の過失で生じたのであれば、損害の賠償を求めることができる場合があるのです。

、裁判費用を抑えるためにできること

裁判をして問題を解決したいと考えても、訴訟費用や弁護士費用の出費について、頭を悩ませているという方も多いでしょう。

裁判費用を少しでも抑えるためにできることとして、次の3つが挙げられます。

  • 本人訴訟を行う
  • 弁護士費用特約を利用する

(1)本人訴訟を行う

弁護士費用が高額になってしまうことが不安だという場合には、弁護士に依頼せずにご自身で訴訟を行うことも可能です。

本人訴訟では弁護士費用は一切発生しないので、訴訟費用だけの負担で費用を抑えることができます

ただし、裁判では専門的な手続きが必要になるので、対応に時間がかかってしまうことや、適切な主張ができず訴訟が不利になってしまう可能性も高いため注意が必要です。

(2)弁護士費用特約を利用する

弁護士特約とは、自動車保険や火災保険、医療保険などの任意保険に付加されている特約です。

保険会社が弁護士費用を負担してくれるため、弁護士特約を利用すれば弁護士費用を抑えることができます

一般的に、弁護士特約では300万円までの費用を負担してもらえることが多く、また、弁護士費用の他に訴訟費用なども補償してもらえる場合が多いです。

まとめ

裁判をするとなると、訴訟費用や弁護士費用が発生します。

他方で、費用を抑えるためにご自身で手続きや裁判を行えば、不利になってしまったり、手続きに時間がかかってしまったりすることが予想されます。また、最終的に、弁護士に依頼することになるというケースも少なくないでしょう。

少しでも有利な条件で訴訟を行い、高額な損害賠償を請求するためにも、弁護士に早い段階で依頼することをおすすめします。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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