内容証明郵便は法的な場面でよく名前を耳にすることから「トラブルのときに相手方に送付する特別な郵便」という印象があるかもしれません。実際のところ内容証明を送付する意味や法的な効果はどうなっているのでしょうか。
そこで今回は
- 内容証明郵便の意味や効果
- 出し方
- 料金
など、基本的なポイントを弁護士が徹底解説します。
目次
1、内容証明(内容証明郵便)とは
まずは内容証明郵便のおさえておくべき基本的なポイントから説明します。
(1)内容証明は送付日や書面の内容などを証明してもらえる郵便
内容証明とは「いつ」「誰に」「どのような内容」で郵便を送ったのか郵便局が証明してくれるサービスです。
普通郵便はいつ投函したのか、郵便局に記録が残るわけではありません。内容についても郵便局側に記録は残りませんから、内容を保存したいなら自分でコピーを取るなどの対処が必要です。そのため、手紙を送ったかどうかや内容などについてトラブルになる可能性があります。
内容証明は仮にトラブルになっても普通郵便と異なり郵便局という信頼度の高い組織が「いつ誰にこの内容で手紙を送っています」ということを証明してくれます。つまり、郵便局側に証拠が残るわけです。
郵便局に証拠を残せる手紙と説明すれば分かりやすいかもしれません。
(2)内容証明はどのようなときに使われるのか
内容証明は証拠を残したいときなどに使います。具体例については後の見出しを参考にしてください。
2、内容証明の効果とは
内容証明を使うときに気になるのは「郵便自体に法的な効果があるのか」です。法的な効果や付随的効果などは内容証明を使ううえで理解しておきたいポイントになります。
(1)内容証明それ自体には法的効果はない
内容証明それ自体には法的な効果はありません。内容証明はあくまで「いつ誰にどのような内容で手紙を送ったか」を郵便局が証明してくれるサービスです。内容証明の方法で送ったからといって、普通郵便で送った場合と比較して、何か特別な法的効果が生じるわけではありません。
(2)内容証明の方法で送ることの事実上の効果
もっとも、内容証明郵便とは、その証明力の高さから、法的に重要な事柄について証拠を残したいという場合に、よく用いられます。また、証拠を残すのは、当該証拠を用いて、何かを立証し、法的効果を求めていくためです。そのため、普通郵便で送付する場合と比較して、受け取った相手に対して、普通郵便にはない特別感を覚えさせ、また、請求などに対する本気度を示すことができます。
たとえば債権者が債務者に内容証明で返済を求めたとします。普通郵便などの場合は軽く見られてしまう可能性がありますが、内容証明は普通郵便と異なる記録が残る郵便ですから、受け取る側も普通郵便にはない特別感を覚えるはずです。
また、内容証明が送られてきたことで「訴えられるのではないか」と債務者が危機感を覚えることも少なくありません。普通郵便と比較して格段に本気度を示すことができるのが内容証明です。
内容証明は普通郵便などと比較して無視されにくいという効果も期待できます。内容証明を送っても無視されるときは無視されてしまいますが、普通郵便の場合は軽く見てそのまま捨ててしまうような人でも内容証明の場合はプレッシャーや特別感から内容を確認してくれるケースも少なくありません。
(3)内容証明は時効中断(更新)にも使われる
内容証明は、特に時効に関する場面で使用されることが多いです。
通常の請求権には時効があり、一定の期間を経過すると請求をすることができなくなります。他方で、例えば催告をしたりすれば、時効の完成を防ぐことができる場合があります。
そして、その催告を、内容証明の方法で行えば、いつ相手方に催告をしたのかについての証拠を残すことができるため、催告をした日時等で争いが生じることを可能な限り防止することができるのです。
そのため、内容証明は、時効完成までの猶予がないときなどに時効完成を阻む手段としてよく使われています。
3、内容証明は弁護士ではなく個人が送っても効果はあるのか
内容証明は個人でも送付可能です。ただ、法的トラブルの際は個人で内容証明を送付するより弁護士に送ってもらった方が、上記の事実上の効果の程度は強まると思われます。
事実上の効果などの面で弁護士による内容証明の送付と個人の送付を比較して説明します。
(1)弁護士が送ることでより請求などに対する本気度を示すことができる
弁護士が内容証明を送る場合は弁護士名や事務所名などを記載します。そのため、相手に与えるプレッシャーは個人よりも格段にアップするはずです。
想像してみてください。届いた郵便物に記されている名前が個人と弁護士(弁護士事務所)である場合の、どちらの方がより受け取った側が危機感を抱くでしょうか。
また、弁護士が間に入っているわけですから、送付者は基本的には既に弁護士費用を支払っていることになります。費用を払ってまで内容証明を送付しているわけですから、請求などに対する本気度を示すという点で効果が期待できます。
(2)弁護士が内容証明を送ることで相手は無視しにくい
内容証明は普通郵便と比較して特別感があるため無視されにくい傾向があります。そして、弁護士が内容証明を送ることで内容証明はさらに無視されにくい郵便になります。
弁護士が特別な郵便を送ってくるわけですから、受け取る側も「無視したら訴えられるのではないか」と危機感を抱き無視することが困難になるはずです。個人が送った内容証明は甘く見て無視するような人でも弁護士が送ることで無視できない可能性があります。
(3)内容証明を弁護士が送ることは依頼者にもメリットがある
弁護士に内容証明を依頼することはプレッシャーなどの他にもメリットがあります。内容証明を弁護士に依頼すると文面の作成や送付は一貫して弁護士が行います。依頼者は事情を話せばいいだけで弁護士にほぼ一任できるため手間がありません。
4、内容証明を弁護士ではなく自分で送る方法
内容証明の基本的な事項として自分で送付する場合の書き方や送り方、料金などについても説明します。
なお、弁護士に内容証明の送付を依頼する場合は、適切な文面の作成から発送まですべて弁護士の方で行うため、自分で細かなポイントまで理解する必要はありません。
(1)内容証明を使う具体例
内容証明は具体的に以下のようなケースで使われています。
- 慰謝料や損害賠償を請求するとき
- 商品の引き渡し請求をしたいとき
- 契約解除(クーリングオフなど)のとき
- 未払い賃料の督促をするとき
- 債権を譲渡するとき
- 債権を放棄するとき
- 債権を回収したいとき
- 相手への伺い(トラブル時に出方を伺いたいとき)
- 相手に約束を守るよう伝えたいとき
- 証拠を残したいとき
- 時効の完成を阻止したいとき
(2)内容証明郵便の書き方
内容証明には記載上のルールがあります。内容証明は以下の形式に則って作成しなければいけません。
■縦書きの場合 / 1行20字以内、1枚26行以内
■横書きの場合 / 1行20字以内、1枚26行以内、1行13字以内、1枚40行以内、1行26字以内、1枚20行以内
内容証明は仮名や漢字、英数などを用いた謄本1枚の内容でなければいけません。図面や返信用封筒、写真などは同封できませんので注意してください。
その他、文字数の計算などについて細かなルールが定められています。作成の際は日本郵政のホームページに記載されている利用条件を確認しておきましょう。
(3)内容証明郵便の文面
内容証明の文面には一般的に以下のことを記載します。
- タイトル(契約解除通知など)
- 相手に伝えたい内容
- 日付
- 受け取る人の住所氏名
- 差出人である自分の住所氏名
文面の訂正や挿入、削除をするときは字数や訂正の内容を余白や末尾に記載し、その内容が分かるようにしておくことが必要です。また、訂正や加除をしたら押印します。
内容証明が2枚以上になるときはつづり目に差出人の契印(差出人が1人の場合はつづり目を明確にする印章でも可)を要します。
(4)内容証明の便せんと封筒
内容証明の便せんにルールはありません。販売されている専用のものを使わなければならないというルールもありません。市販のコピー用紙や便せんなど使いやすいものを使うことが可能です。
内容証明は差出人用と受取人用、郵便局の保存用で同じものが3通必要です。パソコンで作成し印刷すれば準備が楽になります。
封筒についても特に決まりはありません。
内容証明の場合は封筒に便せんを入れ、すぐに封をするのではなく、郵便局で内容証明の手続きをしていざ送るというときに封をします。郵便局での手続き前に封をしないよう注意してください。
(5)内容証明郵便の送り方
内容証明はすべての郵便局で扱っているわけではありません。内容証明を送付するときは取り扱い郵便局を利用する必要があります。取り扱い郵便局は日本郵政の公式ホームページで検索可能です。
内容証明を送るときは郵便局の窓口へ内容証明を送付したい旨を伝えて準備した内容証明を渡します。料金を支払えば内容証明というかたちで相手方に届く仕組みです。郵便物を窓口で出すときと大差ありません。
なお、内容証明はインターネット上からも送付手続きが可能です。ワードで作成した内容証明をアップロードすることによって24時間いつでも内容証明を送付できます。
(6)内容証明郵便の料金
内容証明の料金は「基本料金+書留料金+内容証明の加算料金」で算出されます。配達証明をつけるとその分の料金も加算されるため注意してください。
内容証明の加算料金は1枚440円です。2枚で700円、3枚で960円と枚数によって金額が増えていきます。
配達記録をつけず1枚のシンプルな内容証明を1人に送付する場合で1,000円ほどの料金が目安です。配達記録をつけた場合は1,300円ほどが相場になります。インターネットで送付する場合も配達記録の有無で変わりますが、1,200~1,500円ほどが目安です。ただし枚数や送付する先が増えるとそれだけ料金が増えるため、費用の目安も変わってきます。
5、内容証明を弁護士ではなく自分で送るときの注意点
内容証明を自分で送るときは3つほど注意点があります。内容証明によりトラブルを深刻化させないためにもおさえておきたい重要ポイントです。
(1)内容証明郵便だけでは到達の記録は残らない
基本的な内容証明郵便の場合、相手方に「いつ出したか」は記録として残りますが、「いつ到着したか」は記録に残らないことになっています。相手に到着したことを記録として残すためには、内容証明郵便に配達記録を付けておかなければいけません。
(2)内容証明の受取拒否などのリスクがある
内容証明には受取拒否などのリスクがあります。
内容証明も住所を記載して送付する郵便物の一種です。そのため住所を正しく記載していないと相手方に届きません。また、内容証明を送付しても相手方が受け取らないというリスクもあります。郵便局員が配達しても頑なに受け取らない場合、郵便局員はそれ以上相手に押し付けることができません。
(3)内容証明の文言選びにも注意が必要
内容証明を個人で送るときは文言選びに気をつけてください。強い言葉や物騒な言葉を使ってしまうと脅迫と受け取られる可能性があります。不適切な文言を使うと脅迫罪などに該当する場合もあるので注意してください。
6、弁護士に依頼するメリット
弁護士から内容証明を送付することは内容証明を効果的に活用するという点でメリットがあります。
他にも弁護士から内容証明を送付することには以下のようなメリットがあります。
- 弁護士から内容証明を送付することでより請求に対する本気度を示すことができる
- 弁護士から内容証明を送付することで時効の完成阻止など適切な場面で使える
- 弁護士に内容証明を依頼することで作成時の細かなルールを確認せずに済む
- 弁護士に内容証明の送付を依頼することで手間がなくなるというメリットもある(弁護士にほぼ一任できる)
- 弁護士に内容証明を依頼すればそのままの流れで訴訟などに移れる
- 弁護士に内容証明を依頼することでトラブル内容に合わせたアドバイスも受けられる
まとめ
内容証明とは郵便局が内容や送付について証明してくれる郵便のことです。郵便局に証拠が残るため法的なトラブルの際によく使われています。
内容証明は個人でも送付できますが、弁護士に送付を依頼することで得られるメリットもあります。債権回収や慰謝料請求など目的達成のためにも弁護士への依頼を検討してはいかがでしょう。