クーリングオフの期間は、一般的に「8日間」です。
ただ、契約の種類によっては20日間のものもあるなど、クーリングオフの「期間」について何かと疑問が多いものです。
今回は、
- クーリングオフ期間
- クーリングオフ期間を過ぎてしまった場合の対処方法
などについてまとめてみました。
目次
1、クーリングオフの期間を見る前に〜クーリングオフとは?
クーリングオフとは、個人と事業者との間の一定の契約について、契約の申込み・締結(商品の受け取り)後であっても、一定の期間内であれば、個人の一方的な意思表示によって契約を解除することのできる制度です。
クーリングオフは、訪問販売などの買い手である個人(消費者)を保護するために設けられた制度といえます。
【参考】クーリング・オフ(国民生活センターウェブサイト)
2、クーリングオフ期間〜その他基本を確認
クーリングオフは、対象となる契約・要件などに少し複雑なところがあるので、わかりにくいところがあります。
以下では、クーリングオフ制度について特に正しく知っておくべき重要なポイントについて解説していきます。
(1)クーリングオフ期間
クーリングオフは、あらゆる契約について行えるというわけではありません。
クーリングオフは特定商取引法という法律に基づく制度であるため、特定商品取引法の適用対象となる契約類型に限定されて認められるものだからです。
クーリングオフの対象となる契約およびそれぞれの契約におけるクーリングオフ期間については下記の表のとおりです。
契約の種類 | クーリングオフの期間 |
訪問販売 | 8日間 |
電話勧誘販売 | 8日間 |
連鎖販売取引(いわゆる紹介ビジネスなど) | 20日間 |
特定継続的役務提供(エステ・学習塾・結婚相談所など) | 8日間 |
業務提供誘引販売取引(負担付きのモニター契約など) | 20日間 |
訪問購入 | 8日間 |
また、上記の契約以外にも、ゴルフ会員権契約、宅地建物取引、預託取引契約、投資顧問契約などにはクーリングオフを適用できる場合があります(特定商品法とは別の仕組みです)。
(2)クーリングオフの対象とならないケースに注意
上でも触れたように、クーリングオフはすべての契約に適用されるわけではありません。
クーリングオフの適用とならないケースについては、特に2つの場合に注意する必要があります。
①通信販売のケース
通信販売は、電話勧誘販売などと手法が似ていますが、クーリングオフの対象となりません。
訪問販売などと違って、消費者の購入の自主性が尊重されているためです。
もっとも、通信販売の場合には、クーリングオフとは別の手続で、申込みの撤回・契約の解除が可能です。
インターネット・テレビなどの通信販売で購入した商品は、商品が届いた日を含めて8日間が経過するまでは、その商品を返品することで、契約を解除することが可能になります。
ただし、通信販売業者が、あらかじめ「返品不可の商品」であることを明確に表示していた場合には、この対応はできなくなります。実際の通信販売では「返品不可」という警告表示がされているものも少なくありませんから、しっかりと確認した上で購入するようにしましょう。
②クーリングオフが適用除外となるケースに注意
クーリングオフの対象となる契約(上記表で挙げた電話勧誘販売など)の場合であっても、次のようなケースでは、クーリングオフは適用対象外となります。
- 個人による取引ではなく、卸業者と店舗など事業者同士の取引
- 海外に居住する消費者が商品を購入した場合
- 自社商品の購入
- 特定継続的役務提供の契約のうち短期間のもの、5万円以下の支払いのうちキャッチセールスやアポイントセールではないもの。
- 乗用車やバイクを購入した場合や葬儀の契約
- 食品などの消耗品を購入し、購入後に一部を使用してしまった場合
特に、顧客が個人事業主である場合には、事業目的でなされた訪問販売・電話勧誘販売による契約については、クーリングオフの適用除外となるので注意しましょう。
(3)クーリングオフは「起算日」に注意~クーリングオフ期間の数え方
消費者がクーリングオフを行うときには、期間の数え方にミスがあったことが原因で、トラブルになってしまうことがあります。
クーリングオフの期間は、「契約書面の交付を受けたとき(申し込み日、サービスの提供を受けた日)」を含めた8日以内です。通常のケースにおける期間の計算は初日を算入しないのですが、クーリングオフでは初日算入となる点に注意しておく必要があります。
たとえば、4月1日に契約書面の交付を受けたときであれば、クーリングオフができるのは、4月8日までとなります。1+8日で4月9日というのは、間違えた計算の仕方となります。
なお、クーリングオフ期間は法律が定めているものですから、業者との契約(特約)によって顧客に不利になるように変更することはできません。
したがって、「契約書などにクーリングオフの期間は5日間」と書かれていても、その条項は無効です。
また、業者の中には、契約書の交付から商品引き渡し(サービスの提供)までの期間をわざと空けるということがあります。
たとえば、4月1日に契約書面を交付(契約締結)し、実際に商品を引きわたすのが4月8日というようなことがあるということです。
この場合、クーリングオフの期間は、書面交付の日となるので注意する必要があります。
3、クーリングオフ期間内なら契約解除ができる
クーリングオフの期間内なら、契約を解除することが可能です。
本項では、クーリングオフによって契約を解除する場合の方法についても確認しておきましょう。クーリングオフそれ自体は、消費者を保護するための仕組みですから、その手続も実は簡単です。
(1)クーリングオフの期間内に解除通知を送付する
クーリングオフの最大の特徴は、顧客である消費者からの一方的な意思表示(通知)だけで、契約を解除することができる点にあります。
クーリングオフの意思表示は、「書面」で行う必要がありますが、ハガキを送付する方法で行うことも書面での通知なので可能です。
ハガキによってクーリングオフの通知を送付する場合の記載例は下記のとおりです。
※あなたの契約、 あなたの契約、 大丈夫?(消費者庁作成リーフレット)より転載
(2)クーリングオフの通知を送付する際の注意点
クーリングオフの通知を送付するときには、次の点に注意する必要があります。
- クーリングオフの期間内に通知を発送すること
- 通知書面は発信日を証明できる方法(簡易書留・特定記録郵便)で送付すること
- 商品返品の宅配便に通知書を同封せずに別に送付する(配達記録を確実に残すため)
- 万が一に備えて送付した通知書の写しを保管しておく
- クレジットカードで商品を購入した場合には、クレジットカード会社にも通知を送付する
4、クーリングオフ期間を過ぎてしまったら諦めるしかないのか?
ある商品を購入してしまったことを後悔しても、実はすでにクーリングオフの期間を過ぎているというケースは珍しいことではありません。
訪問販売や電話加入業者の中には、上でも解説した「クーリングオフ潰し」の手法を用いる業者も少なくありませんから、実際に商品が届いたときには、クーリングオフをする時間的な余裕がないということもあるでしょう。
そのような場合でも、決してあきらめる必要はありません。
契約の内容などによっては、クーリングオフ期間を過ぎた場合であっても、契約の一部解除、取消し、中途解約が可能となる場合もあるからです。
以下では、クーリングオフ期間を過ぎてしまっていても、契約の解除などが可能な3つのケースについて紹介します。
(1)大量の商品を購入した場合
訪問販売や電話勧誘販売によって、一度に常識的とはいえない大量の商品を購入させられてしまった場合には、契約解除が可能な期間は、「契約締結時から1年」となります。
たとえば、一人暮らしの老人が訪問販売で羽毛布団を20セット買わされてしまったというようなケースを典型例としてあげることができます。
(2)勧誘の際に事実とは異なる説明をされた
たとえば、本当は修繕する必要がないにもかかわらず、シロアリ工事や屋根の雨漏り工事が必要と告げられて工事の契約をしてしまった場合のように、事業者が勧誘の際に、契約をするかどうかを決める重要な要素について嘘の説明をした場合には、契約を取り消すことができます。
この場合に、契約を取り消せる期間は、下記の期間のうちに早く到達した日までです。
- 業者の説明が事実と異なることに気がついてから1年間
- 契約締結から5年間
なお、事実とは異なる説明が行われるのは、訪問担当者の説明の技量不足が原因という場合だけでなく、悪意を持って虚偽の説明がなされることも考えられます。
後者のケースでは、悪質業者と対応をしなければならないことがほとんどといえますので、契約解除を申し出る際には、国民生活センター、消費生活センターなどの公的機関や弁護士などの専門家のアドバイスをうけてから対応した方がよいといえるでしょう。
(3)長期間にわたる契約をしているとき
たとえば、エステ契約のように長期間の契約となっている場合には、クーリングオフの期間がすぎてしまっても、役務提供を受けていない契約部分については中途解約することが可能です。
ただし、このケースでは、あらかじめ定められた契約(特約)に基づいて違約金の負担が生じる場合もあります。
まとめ
クーリングオフは万が一の場合に非常に便利な制度ではありますが、正しい知識をもっていなければ、いざというときに使えない可能性があります。
たとえば、初日が算入されること、起算日が契約書面の交付日であることを知らないために、クーリングオフ期間過ぎてしまったことに気づかないということが起きるかもしれません。
万が一、本当は望んでいない契約をしてしまった、期待していたものとは違う商品・サービスではないかと疑問を感じたというときには、できるだけ早く専門家のアドバイスを受けて正しく対応することが大切です。
クーリングオフについての相談などは、消費者庁の専門相談ダイヤル「188(局番なし)」へしてみてもいいかもしれません。
また、悪質な業者にかかわってしまった場合には、クーリングオフの手続それ自体がスムーズに進まないことも多いといえます。
このような場合には、消費者問題に詳しい弁護士などの支援を受けることをオススメします。