元彼がお金を返してくれないときに考えるべき5つのこと

元彼と別れてだいぶ経つけれど、お金返してくれない…」

このようなご相談は多数寄せられています。

交際中の男女間でお金の貸し借りをしているケースも少なくありません。

付き合っている間は、貸した方も「そのうち返してくれればいい」と思っていることが多いものですが、別れても返してもらえないと「いつになったら返してもらえるのか」と気が気でならないことでしょう。

しかし、なかなか返そうとしない元彼には本気で返すつもりがないことも多く、そんな元彼からお金を返してもらうことは容易ではありません。

法的手段で強制的にお金を回収することが可能な場合もありますが、それは最終手段というべきです。
元彼に資力がなければ法的手段も空振りに終わることがありますので、可能な限り話し合いで解決したいところでしょう。

そこで今回は、

  • 元彼との話し合いでお金を返してもらう方法
  • 元彼から強制的にお金を回収する方法
  • 元彼がお金を返してくれなくてもやってはいけないこと

を中心に元彼がお金返してくれない問題について弁護士が解説していきます。

この記事が、元彼に貸したお金を返してもらえずにお悩みの方の手助けとなれば幸いです。

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1、元彼がお金を返してくれない!どうすればいいの?

元彼がお金を返してくれない!どうすればいいの?

お金は基本的に、何かと引き換えに渡すものです。
付き合っていた頃は「愛情」をもらう代わりとして貸していたのかと思います。
別れて愛情がなくなったのなら、そのもの(お金)を返してもらいたい気持ちになるでしょう。

お金そのものを返してもらう方法も直球勝負でいいですが、あなたにとって別ルートの「等価交換」ができれば、お金を返してもらうことだけに固執する必要はありません。

お金以外のもので返してもらう方法として、以下のようなことを考えてみるとよいでしょう。

(1)元彼の持ち物で代物弁済

時計やバッグ・指輪、車など、何か高価な所持品がある場合、お金の代わりにその物をもらうことで解決とするのはどうでしょうか。

このようにすることを「代物弁済」といい、法律的にも有効なお金の回収方法となります(民法第482条)。

ただし、きちんと元彼の同意を得た上で行うことが条件となります。
勝手に持ち去った場合は窃盗罪、強引に持ち去った場合は恐喝罪や強盗罪になる可能性があるとともに、返還を求められます。

(2)お金がある日(給料日など)を狙って物をねだる

普段はお金に困っていてもタイミングによってはお金がありそう、という元彼であれば、お金があるタイミングに連絡し、何かねだってみるものいいかもしれません。

露骨に「お金返して」と迫るよりは、男性側もすんなりと受け入れてくれる可能性があるでしょう。

2、お金の貸し借りについて元彼の認識を確認する

お金の貸し借りについて元彼の認識を確認する

直接お金で返済を求めるにしても、 「1」のようにその他のもので返還を求めるにしても、前提として重要なのは、あなたの「貸した」という認識と元彼の「借りた」という認識が一致していることです。

借用証書があれば問題はありませんが、ない場合が通常でしょう。
その場合は「あげた」のではなく「貸した」のだということについて元彼も同様の認識でなければ、どのような方法であっても先に進めることは難しくなります。

(1)借金か贈与か

万が一、元彼が「もらった」ものだと主張してくる場合は、過去に「返すよ」と言っていないか、LINEやメールをチェックしてください。

「返す」というのは「借りた」ということが前提となるのが通常ですので、贈与ではなく借金であることの証拠となります。

(2)貸した額と借りた額に違いはないか

お互いに「貸した」「借りた」という認識が一致している場合でも、金額についての認識が異なることがよくあります。

特に、少額ずつ何度も貸した場合には、借用証書などの証拠がない限り、トータルでいくら貸したのかでもめる可能性が高いといえます。

借用証書がない場合でも、以下のようなものも証拠となりますので探してみましょう。

  • あなたの通帳(元彼に貸すためにお金を下ろした記録)
  • 日記(「今日、彼に○万円貸した」などの記載)
  • LINEやメール(「○万円貸してほしい」などのメッセージ)

(3)確認時は記録や録音を

どうしても証拠がない場合は、お互いの記憶を辿りつつ、元彼に金額の確認を求めることになります。

確認する際には、LINEやメールのように記録が残る形でやりとりするか、電話や直接会って確認するなら録音するとよいでしょう。
これらのデータも証拠となります。

3、元彼から強制的にお金を回収する方法〜元彼に資力がある場合のみ有効

元彼から強制的にお金を回収する方法〜元彼に資力がある場合のみ有効

証拠があれば、法的手段を使って元彼から強制的にお金を回収できる可能性があります。

ただし、元彼に返済能力がない場合には、法的手段を使っても結果的に時間と労力が無駄に終わってしまう可能性もあります。
その場合には、「1」でご紹介したような方法で少しずつでも回収するのが得策といえます。

(1)貸金返還請求の内容証明郵便を送る

法的手段といえば裁判をイメージする方が多いと思いますが、その前にまず、元彼に内容証明郵便で請求書を送付するのが有効です。

内容証明郵便とは、誰が・いつ・誰に対して・どのような内容の文書を送付したのかを郵便局が証明してくれる郵便のことです。

格式張った形式になるので受け取った相手に心理的な圧力をかけることができ、こちらの本気度も伝えることができます。
それによって元彼が感じている「後回し」感を払拭され、真剣に返済を考えてもらえるようなるという効果が期待できます。

弁護士名で内容証明郵便を出せば、「返さないとすぐに裁判を起こされる」というプレッシャーを与えることができるので、さらに効果的です。

貸金返還請求書の文面については、雛形を掲げておきますので参考になさってください。

 

令和〇〇年〇〇月〇〇日

 

〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号

 

山田 太郎  殿

 

〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号   

 

佐藤 花子 ㊞   

 

貸金返還請求書

 

 

私は、貴殿に対して、令和〇〇年〇〇月〇〇日、金○○万円を貸しました。

 

しかしながら、現在に至るまで一切の返済を確認できておりませんので、本日、本書をもって上記金員のお支払いを請求いたします。

 

つきましては、金○○万円に本日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金を付加して、下記口座に振り込みお支払いください。

 

〇〇銀行〇〇支店 普通預金口座1234567 口座名義〇〇〇〇

 

尚、本書到達後〇〇日以内に全額お支払い頂けない場合、法的措置を取らざるを得ませんので予めご承知ください。

 

以上

 

なお、内容証明郵便のかたちにする際には、1ページごとの行数や1行ごとの文字数など、細かなルールがいろいろと定められていますので、詳細はこちらの記事でご確認ください。

(2)支払督促その他の裁判制度を利用する

内容証明郵便を送付しても元彼がお金返してくれない場合は、裁判手続きを使って請求していきます。

裁判手続きにもいくつかの種類がありますので、状況に応じて効果的な手段を選ぶことが大切です。

①支払督促

金銭の支払いを請求する場合には、債権者(あなた)の申立てのみで簡易裁判所が債務者(元彼)に支払いを命じてくれる「支払督促」という手続きを利用できます。

比較的簡単な手続きで、書類審査のみで迅速に支払命令を出してくれるので、非常に有効な裁判手続きです。

②民事調停

民事調停とは、簡易裁判所で調停委員という中立公平な立場の人を介して相手方と話し合う手続きです。

申立人の言い分に正当性があれば、調停委員が相手方を説得してくれることもあるので、当事者だけで話し合うよりも解決しやすいというメリットがあります。

話し合いの手続きですので強制力はありませんが、「有力な証拠はないけれどお金を返してほしい」という場合には有効な方法です。

また、元彼の支払い能力が乏しい場合にも調停委員のアドバイスを交えて話し合うことで、分割払いなどのかたちで合意できることもあります。

③少額訴訟

少額訴訟とは、民事裁判のうち、60万円以下の金銭の支払いを請求する場合に利用できる簡易的な訴訟手続きのことです。

原則としてたった1回の期日で終了しますので、迅速な解決が可能となります。

ただし、早期解決図る裁判手続きであるだけに、提訴する段階でしっかりとした証拠を提出することが求められます。

証拠は借用証でなくても、LINEやメール、会話の録音データなどでも構いません。

借用証以外の証拠で立証していく場合には、支払督促よりも訴訟が向いています。
元彼に貸したお金が60万円以下の場合は、少額訴訟を利用するとよいでしょう。

④通常訴訟

元彼に貸したお金が60万円を超える場合は、通常の民事裁判(訴訟)を提起することになります。

通常訴訟では、原告(あなた)と被告(元彼)の双方が主張と証拠を提出しあい、証人尋問や本人尋問などの証拠調べを行った上で判決が言い渡されます。

証拠の裏付けがない主張は認められませんので、やはり提訴前に有力な証拠を確保しておくことが重要です。

前記「2」の(2)や(3)の解説をご参考に、証拠を集めておきましょう。

(3)強制執行を申し立てる

以上の裁判手続きのいずれかによって元彼の返還義務が認められた場合、あなたには「債務名義」といって、元彼から強制的にお金を回収する権利が与えられます。

その権利に基づき次に行う手続きは、「強制執行」の申立てです。

強制執行とは、金銭の支払いを求める場合は相手の財産を裁判所の手続きによって差し押さえて、そこから優先的に債権を回収する手続きのことです。

元彼の何を差し押さえればよいのかというと、給料または預金口座の差押えが有効なことが多いです。両方を差し押さえても構いません。

元彼の所有財産が何もわからない場合は、裁判所における「第三者からの情報取得制度」や「財産開示手続」を申請することで調査できます。

4、元彼がお金を返してくれなくてもやってはいけないこと

元彼がお金を返してくれなくてもやってはいけないこと

元彼がお金を返してくれないと、どうしても感情的となってしまうかもしれません。
しかし、以下のような行為をするとあなたが不利になってしまいます。
行き過ぎた行為にはくれぐれも注意しましょう。

(1)自宅を訪問して「返してくれるまで帰らない」と言って居座る

元彼の自宅に行ってお金の返済を求めることには、特に問題はありません。

しかし、元彼が「返せない。今は帰ってくれ」と言っているのに「返してくれるまで帰らない」などと言って居座ると、不退去罪という罪になるおそれがあります。

(2)「返さないと殺す」などと脅迫する

借りたお金を返そうとしない元彼に腹を立て、「返さないと殺す」などと脅す発言をして金銭を取り返した場合は、恐喝罪・強盗罪などに該当する可能性があります。

これらの罪は重罪ですので、腹立ちまぎれにせよ危険な発言はしないようにしましょう。

(3)職場など第三者のいるところで取り立てる

元彼が引っ越した場合など居場所が分からなくなった場合に、職場に取り立てに行く人もいるでしょう。

その場合、元彼と2人だけになって返済を求めるのであれば問題ありませんが、第三者のいるところで取り立てる行為には問題があります。

まず、不特定多数の第三者に聞こえるような状況で借金の返済を求めると、名誉毀損罪になる可能性があります。

(4)過剰な利息を要求する

別れた後も長期間お金を返そうとしない元彼に対しては「利息を支払え」という気持ちになるかもしれませんが、過剰な利息を要求することには問題があります。

貸金業者でなくても、過剰な利息を要求すると出資法違反となるおそれがあります。

なお、元彼にお金を貸したときに返済期限も利息も決めていなかった場合は、実際に返済を求めたときが返済期日となります。

この場合、今まで返済を求めてこなかったのなら、そもそも利息の要求はできないことにも注意が必要です。

5、元彼がお金を返してくれないときは弁護士に相談を

元彼がお金を返してくれないときは弁護士に相談を

元彼がお金を返してくれない場合、実際には少額なら諦めるのが得策ともいえます。

そもそも、お金を借りるような人から回収するのは容易なことではありません。
そうであるからこそ、金融機関や貸金業者はきちんと借用証書を交わして、必要に応じて担保もとっているのです。

そうはいっても、大切なお金を返してもらえない以上、簡単に諦められないという人も多いことでしょう。

そんなときは、弁護士に相談することをおすすめします。状況に応じて、最善の解決方法を提案してもらえるはずです。

内容証明郵便のところでもお伝えしたように、弁護士名で返済を請求すると元彼が観念して、全額を返済してくることもあります。

そこまででなくても、弁護士に間に入ってもらえば、元彼と上手に交渉して柔軟な解決を図れることもあります。

例えば、全額は無理でも7割~8割の返済で和解する、分割払いで和解する、代物弁済で和解するなどです。

弁護士は元彼との交渉中にも証拠の収集を心がけていますので、そこで入手した証拠に基づいて裁判をすることも可能になります。

例えば、まったく証拠がないケースでも、話し合いの中で元彼に借金を承認する一筆を書いてもらうことができれば、それが動かぬ証拠となります。

そして、裁判や強制執行の手続きはすべて弁護士に任せられます。

このように、弁護士は元彼に貸したお金を取り戻すために、あなたの味方となってサポートしてくれるのです。

まとめ

お金を貸した側はそのことをいつまでも覚えているものですが、借りた側は案外気に留めておらず、忘れているようなケースも多くあります。

それだけに貸した側は「いつになったら返してもらえるのか」「払う気はあるのか」と感情も高ぶってきて、ストレスを溜めてしまいがちです。

しかし、元彼がお金を返してくれない場合には冷静に対処法を考えて、回収しやすい方法で回収することが大切になります。

そのためには、弁護士を活用するのがおすすめです。
ひとりで悩まずに相談を利用してみてはいかがでしょうか。 

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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