「違法アップロード」知らずに違法行為に陥らないための5つの注意点

「違法アップロード」知らずに違法行為に陥らないための5つの注意点

著作権に関する違法行為は、このような大規模な違法アップロードだけではありません。私たちも知らず知らずのうちに、違法行為をしてしまう可能性もあります。

今回は、

  • 違法アップロードとは何か、私たちも陥りやすい落とし穴とは
  • 違法アップロードからのダウンロードも違法
  • 違法となる場合、ならない場合の見分け方
  • 疑問のときの相談窓口

などについて弁護士がわかりやすく解説します。

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1、違法アップロードとはそもそも何か

(1)違法アップロードは、著作権法侵害(公衆送信権・送信可能化権)

著作者が持つ「著作権」の範囲は大変広いものです。その中でアップロードに関するものは「公衆送信権」「送信可能化権」等と呼ばれます。

これを著作者等の権利者の許諾なく行うことが違法アップロードです。

アップロードは「実際に送信する」場合に限りません。「公衆が見ようと思えば見ることができる状態にすること」と広くとらえておく必要があります。要するに、違法アップロードとは「著作物を権利者に断りなく勝手に送信したり、誰でも見られる状態にすること」と考えておけば良いでしょう。

公衆に送信したり、いつでも見られるようにするのは、著作権の内容の一つです。著作者固有の権利であり、他の人が勝手に行使することはできません。

「漫画村」は漫画家に断りなく、誰でも好き勝手に漫画を読めるような状態を作っていたのです。著作権法違反として厳しい実刑判決が科されたのも当然といえましょう。

(参考)違法アップロードに関する著作権法の内容の概要

①公衆送信権等(著作権法第23条)

インターネット等を用いて著作物を公衆向けに送信する権利です。有線無線を問いません。

「自動公衆送信」(同法第2条9の4)と呼ばれるものも含まれます。利用者などがパソコンなどを用いてブラウザ上で著作物を自由に閲覧できるようにすることです。

②送信可能化権(同法第2条9の5)

要するにインターネット等のサーバに著作物を置いて、公衆がダウンロードしたり、閲覧したりできるようにする事です。

③違反の場合の民事上の措置(同法第112条以下)

権利を侵害された著作者等は、権利侵害をした者に対して、

  • 損害賠償請求
  • 差止請求
  • 不当利得返還請求
  • 名誉回復

などの請求ができます。

④違反の場合の罰則(同法第119条第1項)

権利侵害した者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又は併科されます。

(2)違法アップロードの問題はいわゆる「海賊版」に限らない。

違法アップロードというのは「海賊版」といった大規模なものに限りません。個人がホームページやSNSに他人の著作物を無断投稿する場合も該当します。
有償無償を問いません。知らず知らずのうちに犯罪に手を染めていることになりかねないのです。それこそ、自分のホームページに他人の著作物を掲載して、誰でも見られるようにすれば、それだけで違法行為です。
自分の YouTubeで他人の動画や写真を勝手に掲載する、といったことでも問題になります。次項で具体例を解説します。

2、こんな場合も違法アップロードになる

文化庁の著作権 Q&Aで「アップロード」として紹介されている事例から概要を解説します。これらは、ごく一部の代表的な事例です。
要するに、どのようなかたちであれ、他人の著作物を自分のホームページなり
SNS なりにアップロードすること自体が違法になりうる、と理解しておくべきでしょう。

現実にあまり問題にならないのは、このようなアップロードが世の中に蔓延しており、権利者がチェックして削除を求めることが困難だからです。

(1)ファイル交換ソフトによるアップロードは私的利用ではなく、違法アップロードに該当する

Q1.ファイル交換ソフトを使って私個人のサイトから私の好きな曲を無料で発信したいと思っています。商売で音楽を使うわけではないので、著作権の問題はないと考えますがどうですか。

引用:著作権Q&A

以下の権利侵害に該当します。

  • 音楽の著作権(複製権、公衆送信権)
  • 演奏者・歌手等の実演家の権利(録音権、送信可能化権)
  • レコード原盤を作成したレコード製作者の権利(複製権、送信可能化権)

上記の質問のような利用の仕方は、いわゆる「私的利用」として許されるものではありません。私的使用のための複製は、基本的には、個人的に又は家庭内等限られた範囲で使う場合に限定されます。アップロードされてしまえば誰でも利用できてしまいます。

(2)音楽 CD をホームページにアップする行為も違法アップロードである

Q2.音楽CDの音楽を自分のホームページに掲載し、インターネットで送信する行為はどうでしょうか。

実演家及びレコード製作者は、著作者のように公衆送信権を有してはいませんが、送信可能化権を有しています。権利者の了解なしに送信可能化の常態に置くことは許されません。

ホームページへの掲載については、サーバにアップロードした段階で権利が働きます。従って、事実上は公衆送信権がある場合と変わりない事になります。

参考:著作権Q&A

(3)アクセスが全くなくても違法アップロードである。

Q3. 他の人が撮影した写真をホームページに掲載していますが、今のところまだ1件もアクセスがありません。この場合においても、著作物の公衆送信に該当するのですか。

公衆送信に該当します。公衆送信というのは、

  • 放送や有線放送のように同時に多数の人に発信する形態か
  • インターネットのホームページのようにリクエストをした人にだけ送信する形態か

を問いません。

公衆送信の一歩手前の行為、すなわち公衆からの求めに応じ、いつでも送信ができる状態にすること(いわゆるアップロード)は「送信可能化」と定義されますが、これも公衆送信の概念に含めて規制されています。

参考:著作権Q&A

3、違法アップロードからのダウンロードも違法になりうる

以上は違法アップロードについての解説でしたが、ダウンロードする行為も厳しい規制があります。

(1)なぜダウンロードが違法になるのか。

令和3年(2021年)1月から改正著作権法が施行され、ダウンロードへの規制も厳格化されました。この理由は、アップロード側だけを規制しても海賊版対策にならないからです。
海賊版をダウンロードする人が沢山いると、違法にネットに掲載する人も後を絶たなくなるでしょう。いたちごっこになってしまうのです。

(2)こんなダウンロードが違法になる。

①著作物の種類を問いません。

従来、違法ダウンロードについては、音楽、映像の著作物だけが規制対象でしたが、改正後は、すべての著作物が対象にされています。

例えば、

  • 漫画
  • 小説
  • 論文
  • 写真
  • 新聞
  • イラスト
  • コンピューターソフト

などです。

②規制されるのは、違法アップロードだと知りながらダウンロードする場合に限られます。

海賊版だと確実に知りながらダウンロードする場合が違法となります。民事上の損害賠償請求などを受ける可能性があります。

③悪質な場合は刑事罰が科される。

有償の著作物について、その海賊版を反復・継続してダウンロードした場合、権利者が告訴すれば、刑事罰に問われる可能性があります(著作権法第119条第3項:2年以下の懲役・200万円以下の罰金)。

参考:文化庁リーフレットちょっと待ってそのダウンロード違法かも

4、違法アップロード、ダウンロードのよくある誤解

上記の違法アップロード、ダウンロードについて、よくある誤解を取り上げて解説します。上記と重複するところもありますが、大事な問題ですので、もう一度確認しておいてください。

(1)自分のサイトに載せただけだ。私的利用だから問題ないだろう

自分のホームページなりSNS にアップロードすれば、誰でも自由に閲覧したり、ダウンロードできます。もはや私的利用ではなくなるのです。

(2)誰もダウンロードしていないから実害はないだろう

「自分がアップロードしても1件もダウンロードがないのなら実害はないだろう」といった類の誤解です。
問題なのは、広範な人が、やろうと思えばいつでもダウンロードできたり、閲覧できたりする、そんな状態を著作者の許諾なく勝手に作ってはいけないのです。ダウンロードや閲覧を許すのは著作者の固有の権利なのです。

(3)違法なものは削除されているはずだ。今残っているものならダウンロードしても問題ないだろう

これもよくある誤解です。実態は膨大な違法アップロードが世の中に溢れており、権利者としていちいちチェックして削除を要求できていないのです。すなわち違法アップロードが削除しきれていない、ということに過ぎません。

もちろん、中には著作権者が許諾している場合もあるかもしれません。
しかしそんな例外的なことを当てにするわけにはいきません。

民事上の損害賠償や場合によっては刑事罰が科される違法行為になりかねないのです。安直に考えてはなりません。

(4)みんながやっているから、目くじら立てなくてもいいだろう

違法アップロード等の海賊版が横行し、そこからのダウンロードがあまりにも頻繁に行われています。見るに見かねて、国家が厳しい規制をするに至っているのです。みんながやっているからこそ、大きな問題になっているのです。

(5)原著作物を少し手直ししたら、大丈夫じゃないか

もとの著作物をそのままアップロードしては問題かもしれない、というのでちょっと手を加えてアップロードすれば良い、と勘違いしている人がいます。

それこそ左右反転させれば良いとか、改変すればよい、一部分だけ使うのだから問題ないだろう、といった類です。
このような対応は違法アップロードの問題のみならず、著作者人格権の侵害(同一性保持権の侵害)、二次的著作物としての無断利用など、他の様々な問題を生じかねません。

以上のような誤解に共通するのは、著作物が著作者の貴重な権利であり、財産である、さらには著作者の人格の表れだという、著作物についての基本的な認識を欠いていることです。

自分が作ったものを勝手にアップロードされては、著作者は自分の著作物を販売して利益を得る、という財産権が侵害されてしまいます。売れなくなってしまうのです。

さらに、自分が作ったものを他人が勝手に作り直すなどしてアップロードするに至っては、著作者が心血を注いで作った作品を毀損するものです。著作者の人格権を侵害するものなのです。

5、疑問のときの照会窓口

著作権のアップロードやダウンロードについては、著作権者各団体が照会窓口を設けたり、わかりやすい解説をしています。

また前述の通り、文化庁などでわかりやすい解説が設けられています。これらをぜひ参考にしてください。

参考:文化庁著作物の正しい利用方法

まとめ

違法アップロードや違法ダウンロードのことをお考えの方は、ぜひ、クリエイターなど著作者の気持ちを理解いただきたいと思います。

著作者が心血を注いで作った作品が、自分の知らない間に誰でも勝手に使えるようになってしまったらどんな気持ちになるでしょう。
そんなことが横行すれば、一生懸命に創作しようという意欲がそがれてしまいます。

大切な文化の育成発展をそこなってしまうのです。

よくお考えいただき、違法なアップロードや違法なダウンロードに手を染めないように心がけてください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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