大家都合で退去するなら立ち退き料はいくらもらえる?金額の考え方&交渉のポイント

大家都合で退去するなら立ち退き料はいくらもらえる?金額の考え方&交渉のポイント

大家都合で賃貸物件を退去してほしいと求められた場合、引越しに必要な額を「立ち退き料」としてもらえるのが基本です。請求額は「家賃6か月分」がよくいわれるところもありますが、一般的には以下の費目の合算だと考えることができます。

  • 転居費用(引越し業者等に払う料金)
  • 新居契約にかかる費用(仲介手数料・礼金)
  • 新居の賃料との差額分(居住用物件なら6か月分~1年分が目安)
  • 移転費用(店舗や事務所を移転する場合)
  • 営業利益(同上)
  • 協力費・迷惑料

注意したいのは、最終的にもらえる金額は状況しだいになるため、減額される可能性は十分にある点です。大家に支払いの意志がなかったり、手持ちの資金がないことを理由に減額を図られたりする場合もあります。

請求額の考え方だけでなく、立ち退き交渉の心得も押さえておくと安心です。

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目次

1、大家都合の退去は立ち退き料をもらえる〜内訳&金額算出の方法

大家都合で賃貸物件を退去するよう求められても、引越し代を含む諸々の損失は「立ち退き料」として請求できます。

前提として、賃貸借契約を一方的に終わらせるには、借地借家法第28条に基づき「正当な事由」が必要です。大家側の正当性は下記要素①~⑤等から総合的に判断されるところ、このうち⑤財産上の給付、つまり立ち退き料の支払いは非常に重要と考えられています。

退去を求める「正当事由」の判断要素は以下の通りです。

  • 居住の必要性
  • 賃貸借に関する従前の経緯
  • 建物の利用状況
  • 建物の現況
  • 財産上の給付の有無(=立ち退き料)

肝心の金額の計算方法ですが、法令やガイドラインといった統一された基準はありません。相場は一般に「家賃6か月分」と言われていますが、それは退去の通知期限が原則6か月前とされている(同26条)ためでしょう。

実際の立ち退き料の計算では、以降解説の6つの費目の合計を出しつつ、正当事由の具体的な内容が加味されています。

(1)転居費用

立ち退き料に含まれる第1の費目は、引越し関連業者に支払う費用です。具体的には、家具等の搬出・搬入のための料金や、不用品回収業者等に残置物処理を依頼する時の費用が挙げられます。

請求額の計算では、部屋の広さと住人構成からざっくりとした金額を出し、賃借人の健康状態(=転居作業の負担)を考慮して増減させるのが一般的です。目安が分からない場合は、複数の業者から見積りを取り寄せて地域相場を検証します。

(2)仲介手数料・礼金

立ち退き料に含まれる第2の費目は、新居契約に必要な仲介手数料や礼金です。

請求できる金額の目安は、同地域内かつ同条件の部屋の相場です。家賃相場が分かるなら、その1か月から2か月分程度の給付とします。

(3)賃料差額【借家権価格の損失分】

立ち退き料に含まれる第3の費目は、家屋を借りることで得られる経済的利益、つまり「借家権の補償分」です。難しい表現ですが、転居前後の賃料差額を一定期間に渡って請求できると考えて差し支えありません。期間は物件の用途によって異なり、一般に以下のようになります。

  • 居住用物件:6か月分~1年分
  • 店舗用物件:5年分~10年分
  • オフィス用物件:2年分~4年分

【例】現状の家賃が月々8万円、ほぼ同条件の新居が9万円のケース

→月々生じる1万円の差額につき、計6万円~12万円の範囲で支払ってもらえる

賃借人としての地位に何らかの価値が認められる場合には、不動産鑑定評価基準に沿った別の方法で補償額を算出することもあります。一般的な賃貸マンションやアパートでは見られないものですが、いくつか例示しておきます。

▼割合法

(更地価格×借地権割合×借家権割合)+(建物価格×借家権割合)

※借地権割合とは、土地の権利全体に占める借地権の価値の割合を指しています。国税庁が指定しており、30%となるのが一般的です。

▼控除法

(自用の建物及びその敷地の価格−貸家及びその敷地の価格)×所要の調整

▼賃料差額法

(新規の実際支払賃料−現在の実際支払賃料)×一定期間+賃料の前払的性格を有する一時金の額等

(4)移転費用【店舗・オフィスの場合】

テナントの退去を求められた場合は、店舗あるいは事務所の移転にかかる費用・損失等を別途請求できます。例えば、次のようなものです。

  • 設備の取り付けおよび取り外しにかかる費用(造作費用)
  • 新店舗の内装を整えるための費用(内装費用)
  • 新拠点を契約するための印紙代や手数料等(移転雑費)

参考までに、内装工事の費用は1坪あたり50万円にもなることがあります。10坪程度の小さな飲食店でも500万円程度になるため、相当高額です。

(5)営業利益【店舗・オフィスの場合】

店舗や事務所として利用する物件の退去を求められた場合、移転期間中の売上の一部を請求可能です。請求額の計算では、直近の収支から金額を想定しつつ、設備の経年劣化の分等を補償対象外とします。

(6)協力費・迷惑料

立ち退き料の支払いでは、以上の実費の他に、他の法律トラブルで言うところの「慰謝料」的な面があることを加味して「協力費」や「迷惑料」等として立ち退き料の上乗せがされることがあり得ます。

なお、上記上乗せの高額化は期待できません。マンション・アパート等なら1室あたり1万円~2万円になることも珍しくないのが現状です。退去の損失を別に計上して埋め合わせる以上、不法行為に対する補償とはほとんど言えず、あくまでも退去協力のお礼の趣旨であることが理由です。

2、居住用物件を大家都合で立ち退く時の請求シミュレーション

立ち退き料に含まれる費目を押さえたところで、一度請求額をシミュレーションしてみましょう。

想定するのは、月額家賃8万円のアパート・マンションを退去する場合です。以降の3つのどのパターンでも、この後説明する減額事由は考慮しないとします。

(1)家賃差額1万円+引越し諸費用として計50万円かかる場合

新居の家賃が月額9万円、転居費用+仲介手数料+礼金で50万円かかるとすると、一般的な目安として以下の金額を請求できる可能性があります。

▼立ち退き料の内訳

賃料差額:6万円(1万円×6か月分)

引越し諸費用:50万円

その他の費目:敷金、協力費

→計56万円+入居時に払った敷金+協力費

(2)家賃差額2万円+引越し諸費用として計75万円かかる場合

次に、賃料相場の上昇等が原因で、月額家賃が10万円かつ引越し諸費用が75万円もかかる部屋に移らざるを得ないケースを考えてみます。一般的な目安にはなりますが、この場合は立ち退き料として下記金額を請求することが考えられます。

▼立ち退き料の内訳

賃料差額:12万円(2万円×6か月分)

引越し諸費用:75万円

その他の費目:敷金、協力費

→計87万円+入居時に払った敷金+協力費

(3)2のケースで更新月3か月前に退去請求通知を受け取った場合

上記(2)のケースで、法律上の通知期限に遅れて「急だが3か月後までに退去してほしい」と大家に言われた場合はどうなるのでしょうか。

結論として、何らかの事情がない限り、請求できる額(計87万円+入居時に払った敷金+協力費)は同じと考えられます。言うまでもなく、通知が遅くなるのもまた大家都合であるからです。

3、大家都合でも立ち退き料の減額はあり得る

立ち退き料を巡る裁判は過去にいくつもあり、請求額よりも低い金額となった例は少なくありません。そうは言っても、一方的な退去通知に無償で応じなければならないような不利な結果はほとんどないのが現状です。

(1)立ち退き料減額の仕組み

一方的な退去請求時の給付は、当事者双方の事情を比較衡量し、正当性について大家の不足分を補う意味合いを持ちます。

入居者側に今の居室でなくても構わないような事情が見られたり、大家もしくは建物自体に相当の事情があったりするような場合は、立ち退き料の額も多少減っても構わないと判断されるのです。

▼減額の理由になる事情(大家側)

  • 建物が老朽化している
  • 建築確認申請手続等の不備のせいで、安全性が確認できない
  • 大家自身が居住を望み、そうせざるを得ない理由も立証できる

▼減額の理由になる事情(入居者側)

  • その建物を居所として必要とする同居人(※近親者)がいない
  • 入居者の健康状態や通勤・通学の事情を考慮しなくていい(高齢者や学生がいない)
  • 現在進行形で契約違反等のトラブルを起こしている

(2)入居中のトラブルは減額or不払いの理由になる?

退去を求められた時に何らかのトラブルを起こしていると、立ち退き料の減額事由になり得ます。家賃を滞納していたり、賃貸借契約のルールに違反していたりする場合です。

ただし、多少勘案される程度に留まるのが実情で、引越し費用等を一切受け取らずに出て行かなくてはならない可能性は考えにくいと言えます。

(3)減額される可能性のある3つの費目

減額される可能性があるとすると、賃料差額・移転費用・営業利益の部分です。減らされると言っても、賃料差額として6か月分請求できるところを3か月にする……といった程度の調整で、まったくもらえないとは通常考えられません。

転居費用や新居契約時にかかる費用に関しては、地域事情等から合理的な値段を計算できるため、減額調整の可能性は低いと言えます。

4、大家都合の退去でも立ち退き料をもらえないケース

立ち退き料はもらえるのが基本と説明しましたが、1円も支払われないケースがゼロとまでは言い切れません。減額事由の程度、もしくは賃貸借契約の種類によっては、大家への請求は不可能です。

(1)大家の都合に十分な正当性が認められる

大家側が抱える減額事由だけで退去請求の正当性が認められれば、立ち退き料は支払わなくて良いと判断されます。

例として「建物の老朽化がかなり進行しており、一刻も早く退去してもらわなくては安全を保障できない」等といった状況が挙げられます。

(2)入居者側に居住の必要性が認められない

退去請求の正当事由のひとつである「居住の必要性」が全くないとなれば、立ち退き料の支払いもありません。典型的なのは、物件を別荘やセカンドハウス扱いとしていたケースです。

(3)入居者側に著しい落ち度がある

入居中のトラブルの程度が酷く、裁判で「信頼関係が破壊されている」とみなされる程に及べば、立ち退き料の給付がないまま賃貸借契約を解除されてしまいます。

例として、目安として3か月以上の家賃滞納、度を超えた騒音トラブル、ペットの多頭飼育による部屋の著しい汚損等が挙げられます。

(4)定期賃借契約に該当する

契約更新がありえず、期間満了と共に退去する契約を最初に結んでいたのなら、立ち退き料の支払いも当然ありません。借地借家法第38条に定める「定期建物賃貸借」(定期賃借契約)と呼ばれる種類の契約です。

ただし、満了6か月前までに退去通知する義務を大家が負う点は、他の種類の契約と同じです。急に退去しなければならないと知らされたケースでは、いくらか交渉する余地はあるでしょう。

5、大家から立ち退き料を迅速&スムーズにもらうために

結果として支払われる立ち退き料の額は、大家との交渉の顛末で決まります。法的には常に賃借人(=入居者)の方が有利ですが、減額や協議の長期化を避けるため、以下のポイントを押さえておきたいところです。

(1)転居までの家賃と相殺しても良い

立ち退き料の支払い方・もらい方は特に決められていません。金銭支払いではなく、賃料債権との相殺でも構わないのです。例えば「退去通知後から退去日までの家賃を無料にしてもらう」と言った方法なら、支払いと受領の各手続きの手間も省け、分かりやすくなるでしょう。

賃料債権との相殺で合意するメリットとして、傾向として退去の合意をいち早く取りまとめやすい点が挙げられます。建替え等のため多額の支出予定を抱えがちな大家にとって、その場で現金を渡すより、賃料をもらわないことで事実上の分割払いにする方が好都合だからです。

(2)大家との合意は書面で交わす

どんな契約にも言えることですが、退去と立ち退き料に関する合意は書面で交わしましょう。書面のタイトルは「賃貸借契約の終了等に関する合意書」等として、少なくとも下記の内容を条項に整理します。

記載事項

概要

賃貸借契約解除について

大家と入居者との間で退去の合意が成立した旨を記載

明渡しの猶予

退去の最終期限を記載

立ち退き料に関する合意

合意した金額+支払期限+支払方法を記載

遅延損害金

立ち退き料の支払いが遅れた時の利息を記載

清算条項

上記記載事項を除き、互いに一切の請求権がない旨を記載

(3)少しでも不安があれば各種窓口or専門家に相談する

万一にも大家側に立ち退き料の話を避けようとする態度が見られたり、提示額が少なすぎたりする場合は、迷わずすぐ専門窓口相談しましょう。

相談先として理想的なのは、弁護士、あるいは大家側が説明する事情(建物の老朽化等)を診断できる建築士等です。無料かつ気軽に相談できる窓口としては、以下の2つが挙げられます。

①消費者ホットライン(国民生活センター)

賃貸借契約を含め、商品やサービスの利用で生じたトラブルの相談に乗ってくれる窓口です。消費者契約法等に則った案内をしてくれますが、借地借家法その他の踏み込んだ内容については、法的支援を受けるべきか否か等の対応の大筋に関するアドバイスに留まります。

②公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター

国土交通大臣指定の相談窓口であり、どちらかと言えば持ち家のトラブルを専門とします。電話・対面のいずれでも対応でき、対面相談の場合は弁護士と建築士のペアで現状分析してもらえます。

6、大家都合で退去する時の立ち退き料に関する疑問

大家からお金をもらって引っ越すのはイレギュラーケースにあたり、税金や退去時の義務について気になるところです。よくある賃借人の疑問・不安を3つに絞ると、以下のようになります。

  • 立ち退き料の確定申告は必要?(課税対象になるのか)
  • 大家都合の退去でも、部屋の状態を元通りにする義務はある?
  • 自己都合で退去する場合と同じように、敷金は返してもらえる?

(1)立ち退き料は課税対象になるのか

立ち退き料は所得税の課税対象となり、もらった翌年には確定申告書を提出しなければなりません。申告手続きでは、受領額の内訳を3つに分類し、次のように扱います。

①資産の消滅の対価補償としての性格のもの

借家権価格の損失補てん(賃料差額)としてもらった分は、譲渡所得の収入金額となります。

②収入金額または必要経費の補てんとしての性格のもの

新居契約にかかる費用、造作費用、移転雑費等は、事業所得等の収入金額となります。

③その他の性格のもの

協力費等の①・②に該当しない費目は、一時所得の収入金額となります。

参考:タックスアンサー(国税庁)

(2)原状回復義務はあるのか

大家都合で立ち退く時も、基本的には原状回復義務を負います。ただし、解体・建替え・内装の一新を予定しているのなら、損耗をわざわざ入居者負担で直す必要はありません。

また、経年劣化や通常居住する中でどうしても生じる損耗は、原状回復の範囲に含まれません。仮に特約があったとしても、入居者が修繕しなければならないのは「故意・過失」や「管理状態の不備」による損耗部分だけです※。

参考:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省)

※2020年4月1日施行の改正民法で、原状回復義務の範囲が明文化されるようになりました(第621条)。

(3)敷金は返ってくるのか

大家都合で賃貸物件を退去する際は、立ち退き料とは別に敷金全額が返還されます。そもそも敷金とは賃料債権等の“担保金”であり、家賃を滞納している時を除き、大家は返還義務を負うとされているのです(改正民法622条の2)。

したがって、退去の合意がまとまった時に大家から支払われるのは、敷金返還分+立ち退き料となります。

まとめ

大家都合で退去する場合、賃貸借契約の解除に応じるのと引き換えに「立ち退き料」を請求できるのが普通です。その金額は転居にかかる総費用から見極めますが、退去請求の理由やその時の状況が反映される点に要注意です。最終的に立ち退き料としていくらもらえるのか、それも交渉しだいだと言わざるを得ません。

もし賃貸物件の退去を求められるようなことがあれば、弁護士等のアドバイスを事前に聞いておくのが無難です。 

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