マンションやアパートの入居者間で最も起こりやすいトラブルは、「騒音問題」です。
しかし、管理会社が騒音トラブルに対応してくれない場合もあります。
そこで今回は、
- 管理会社が騒音対応してくれない理由
- 管理会社が対応してくれない場合にすべきこと
についてご紹介します。
目次
1、どこまでが騒音なのか?
戸建てに比べると共同生活を行うマンションやアパートでは、騒音トラブルが起こりやすくなっています。しかし、「騒音」とはどこからが騒音と呼んでいいのか判断基準が曖昧だと考える方も少なくないでしょう。
そこでまずは騒音の基準を知り、近隣住民の生活音が騒音に該当するのか検討してみましょう。
(1)どこからが騒音と呼べるのか?
人間が生活する上で、音を出さずに生活することは出来ません。多少なりとも生活音が出てしまいますし、こうした生活音が全て騒音として違法になってしまえば日常生活に支障をきたすようになるでしょう。そのため、近隣住民はお互いの生活音をある程度は許容しながら暮らしていく必要があります。
この社会生活上受忍すべき限度の程度を、「受忍限度」と呼びます。しかし、受忍限度を超えるような場合には騒音が違法な程度に達していると判断され、相手に騒音を出さないように求める権利が発生します。
(2)受忍限度の判断基準とは
騒音における受忍限度の判断基準は、容易なものではありません。
各市区町村で騒音についての規制は設けられているものの、測定して「○○デシベル以上が騒音」と決めることができないため、複数の要件を満たす必要があります。
具体的には以下の通りです。
- 騒音の大きさ
- 騒音の時間帯(深夜、明け方、日中など)
- 騒音の種類や内容
- 騒音の頻度
- 居住環境
- 近隣住民による交渉の有無
上記の判断基準から総合的に見て、受忍限度を超えているかどうか判断されます。
2、管理会社が騒音対応をしてくれないのはなぜ?
管理会社へ騒音の苦情を申し立てるということは、騒音が一度や二度ではなく継続されているというケースが多いでしょう。
しかし、管理会社が騒音対応してくれない場合があります。管理会社が騒音対応しないことは違法にならないのでしょうか?
(1)騒音に対する管理会社の法的義務について
管理会社には、入居者が平穏かつ安心して日常生活を過ごすことができるように賃貸管理をすべき責任があります。
これは、アパートやマンションに関わる賃貸借契約において、物件の所有者である賃貸人(大家)は収益を得る代わりに一定の良好な環境を提供しなければならないことが法律で定められているところ(民法第601条)、大家から物件の管理を任されているわけですから上記の責任があるといえます。そのため、賃借人が我慢できないほどの騒音に悩んでいるのであれば、本来であれば管理会社は責任を持って対応する必要があります。
(2)騒音対応は管理会社や担当者ごとに対応が変わる
騒音のレベルにもよりますが、住民から騒音のクレームがあれば原則的には管理会社は対応する必要があります。
しかし、その対応の善し悪しは
- 管理会社
- 担当者
ごとに変わると言えるでしょう。
基本的には管理会社で決められたマニュアルに沿って対応されますが、騒音と一言でいっても苦情内容はケースバイケースです。そのため、臨機応変に対応することができる管理会社や担当者であれば、苦情内容に応じた対応をしてもらえる可能性もあります。
しかし、マニュアル通りに対処され、トラブルが解決されないままになってしまうといったことも少なくないでしょう。
(3)近隣世帯からのクレームによっては動かざるを得ないことも
管理会社は中立の立場になるため、クレームした側だけではなく騒音主側の話も聞きながら判断することになります。そのため、管理会社に十分対応してもらえないと感じる人も多いかもしれません。
しかし、一世帯からのクレームだけではなく、近隣世帯からもクレームが寄せられるようになれば管理会社も何らかの対応をせざるを得ないでしょう。もしここで対応しなければ、管理に問題があると判断され、悪い噂がネット上などで広まり、入居率が下がってしまう恐れがあるからです。
そのため、近隣住民とコミュニケーションを取り、騒音について相談してみることも一つの手段であると言えます。
3、管理会社が騒音対応として実際にできること
管理会社は住民から騒音の苦情を受けた場合、どのような対応をすることができるのでしょうか?実際に管理会社ができる騒音対応には次のことが挙げられます。
(1)住民のヒアリングや騒音計測
騒音の苦情を受けた場合、まずは住民のヒアリングが行われます。どのような騒音がいつ発生しているのかなど騒音内容について聞き取りが行われることが一般的です。
また、騒音主にもヒアリングを行い、騒音の状況把握が行われます。管理会社によっては
- 専用機器
- アプリ
などを使用して、騒音の計測を行うこともあるでしょう。騒音の計測を行えば、客観的な証拠として騒音を記録することができます。
管理会社が計測を行わない可能性もあるので、ご自身で記録しておくこともおすすめです。
(2)注意勧告
住民のヒアリングが行われた後には、
- 玄関エントランス
- エレベーター内
などの共用部分に注意勧告が掲示されます。
もしくは、注意が書かれた印刷物が全戸にポスト投函されるようなケースもあります。
この時点で騒音を出している本人が自身のことだと気付いた場合や、自身のこととは気付かなくても騒音を注意するようになった場合には、騒音が改善されるでしょう。
しかし、本人が気付かない場合や改善されない場合には、個別連絡が必要になります。個別連絡では騒音主に状況を説明しますが、住民同士がトラブルになってしまわないようにするために、誰が苦情を申し出たのかは伝えられることはありません。
個別連絡を受ければ騒音主が気を付けるようになることで、騒音の改善が期待できます。しかし、住民全体に対する注意勧告は行ったとしても、一度の苦情では個別連絡まではしない管理会社も多いです。
個別連絡が行われるようなケースは、
- 何度も苦情が繰り返し行われるような場合
- 近隣世帯からも同様の苦情を受けているような場合
だと言えます。
(3)騒音元の住民の賃貸契約解除について
騒音があまりにひどいと自宅にいることが苦痛になってしまいます。しかし、管理会社がいくら注意しても騒音が改善されないようなケースもあります。
このような場合、管理会社は騒音元の住民の賃貸契約の解除をすることはできないのでしょうか?
①賃貸借契約違反で追い出すことは可能か?
アパートやマンションを借りる際には、賃借人と賃貸人の間で賃貸借契約を結びます。その賃貸借契約書には、複数の禁止事項が記載されていることが大半です。
例えば
- 「大音量の音楽やテレビなどの操作は禁止する」
- 「深夜の楽器の演奏は近隣住民の迷惑になるため禁止する」
- 「騒音で近隣へ迷惑をかけないように使用する」
などの禁止事項の項目が記されています。
こうした項目があるにも関わらず騒音を出している場合には、賃貸契約違反に該当するため、契約解除を求めることができます。
また、契約書に騒音に関する禁止事項が記されていない場合でも、近隣への迷惑行為をしないようにする義務である「用法遵守義務」に違反しているため、契約解除は可能だと言えます。
②必ずしも賃貸契約を解除できるわけではない
理論的には騒音は賃貸契約の違反行為になるため、契約の解除を行うことができます。しかし、実際に賃貸契約は簡単に解除できるものではありません。騒音問題があったとしても、そこへさらに「賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事由」があれば賃貸契約を解除することは難しいのです。
信頼関係が破壊されたと認められるようなことは、警察から何度も迷惑行為で注意を受けるなどということが挙げられます。
(4)調停や訴訟に発展することもある
どれだけ注意を受けたり警察が来るような事態へ発展したりしても、騒音が改善されないようなケースもあるでしょう。
こうした場合には、裁判所へ申立てて
- 調停
- 訴訟
を行うことになります。
調停の場合は話し合いで解決を図りますが、裁判になれば
- 損害賠償請求
- 騒音差止請求
を行うことになります。
4、騒音トラブルで管理会社が対応してくれない場合にできること
騒音トラブルに管理会社が対応してくれない場合には、相談場所を変えるなどして対処する必要があります。管理会社が対応してくれない場合や、対応が不当だと感じる場合には、次の方法で相談先を変えましょう。
(1)行政への相談
各市区町村には苦情相談窓口が設置されており、そこに騒音トラブルに関する相談を行うことができます。
都道府県の
- 公害審査会
- 公害等調整委員会
などもあるので、一度行政などに相談してみるという手段もあります。
また、警察へ連絡して相談してみるという方法もあります。警察には「警察相談専用電話」というものがあり、近隣トラブルを含めた生活に関する相談をすることが可能です。こうした行政の相談窓口では、取るべき手段のアドバイスなどが得られます。
(2)担当者を変更してもらう
騒音トラブルで管理会社へ苦情を申し立てても対応してもらえないという場合には、担当者を変更してもらいましょう。
例えば、管理会社であれば同じ担当者ではなく他の担当者や、その上司に対応してもらうように話してみてください。相手も人間なので、担当者が変われば対応が違ってくることもあるかもしれません。
また、上司など担当者からさらに役職が上の人に話を聞いてもらえるようにお願いすれば、真摯に対処してもらえるケースもあります。
(3)建物のオーナーへ連絡をする
アパートやマンションにはオーナーが存在し、管理会社は建物のオーナーから依頼を受けて住居や住民の管理を行っています。管理会社へ連絡をしても対応してもらえない場合には、建物のオーナーへ直接連絡してみるという手段もあります。
オーナーからすればお金を支払って管理会社へ任せているため、苦情があったことを管理会社に伝えると考えられます。
管理会社側からすれば、オーナーから直接連絡がくれば住民からの連絡よりも対応しなければいけないという意識が高まる可能性があります。そのため、オーナーの要望に応えるべく騒音に対処する可能性があるでしょう。
5、入居前から騒音が問題になっていた場合に告知義務はあるのか?
入居前から騒音が問題になっていたことを入居後に知ったというようなケースもあるでしょう。
これは、賃貸物件において瑕疵(何らかの欠点や欠如)がある場合、その瑕疵を知りながら売買や賃貸を行い、その後に事実が発覚すればオーナーや管理会社には瑕疵による損害を補う責任が発生するからです。(民法第562条「契約不適合責任」)。
賃貸物件の瑕疵の中でも騒音問題は、場合によっては告知義務の対象となることもあります。
例えば、
- 警察に通報されるほどの騒音トラブルだった場合
- マンションやアパートの外の近隣住民まで把握していたような程度の大きい騒音だった場合
などでは、告知義務があると言えます。
6、騒音が原因で心身へ被害が出た場合には慰謝料を請求できます
騒音が原因でストレスを抱えて生活し、心身へ被害が出てしまうようなケースもあります。こうした場合には、騒音元の住民へ慰謝料の請求が認められる可能性があります。
平穏に生活をする権利が違法な騒音によって侵害されたのであれば、不法行為が成立します。
慰謝料請求では、「騒音のレベル」と「心身への被害」が争点になってくるでしょう。
騒音による慰謝料請求は判断が難しいため、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、慰謝料の請求に必要な手続きだけではなく交渉など全てを任せることができ、精神的なサポートも得られます。
まとめ
アパートやマンションに住んでいると騒音問題は経験する可能性があるものです。生活音として受容できないような騒音の場合、管理会社に対応してもらうように促す必要があります。
しかし、管理会社がなかなか対応してくれない場合や、心身への被害がある場合には、弁護士に相談してみましょう。管理会社に対する交渉や、騒音元の住民に対する慰謝料請求まで弁護士に対処してもらうことができます。まずは無料相談を利用して、騒音問題に関するアドバイスを受けてみてください。