B型肝炎給付訴訟がテレビやインターネットなどでたびたび取り上げられていますが、B型肝炎という言葉を聞いたことはあっても、B型肝炎ウイルスにどのように経路感染するのか、B型肝炎とはどのような症状を引き起こす感染症なのかをご存知でない方は多いのではないでしょうか。
B型肝炎ウイルスを他人に感染させることを予防したい、今後感染することを予防したいとお考えの方もいらっしゃると思います。
今回は、B型肝炎ウイルスの感染経路について焦点を絞って書いていきたいと思います。
- B型肝炎ウイルスとはどのようなウイルスなのか
- B型肝炎とはどのような症状なのか
- B型肝炎ウイルスにはどのような感染経路が考えられるのか
など、予防にも役立つ4つの知識を徹底解説していきますので、お役にたてれば光栄です。
1、B型肝炎とは?~感染経路を知る前に知っておこう~
B型肝炎ウイルスとそれによって引き起こされる症状は以下の通りです。
(1)B型肝炎ウイルスとは?
B型肝炎ウイルスとは、血液や体液を介して人に感染し、肝細胞に侵入して増殖するウイルスのことをいいます。
B型肝炎ウイルスが肝細胞に侵入すると、体内では免疫がB型肝炎ウイルスを排除しようとするのですが、その際に正常な肝細胞をも攻撃してしまうため、B型肝炎を発症させるのです。
(2)B型肝炎とは?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって引き起こされる肝臓の病気のことをいいます。
B型肝炎ウイルスに感染した場合に引き起こされる具体的な症状としては、倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐等があります。
引き続いて、皮膚や眼球の白い部分が黄色くなる黄疸が見られることもあります。
しかし、肝臓は日常生活ではその一部しか使われないため、弱体化していても自覚症状がでないことが非常に多くあり「沈黙の臓器」と呼ばれています。
ですから、以下に掲載するような感染経路に思い当たるところがあれば、症状がでていなくとも、一度血液検査をすることをお勧めします。
2、B型肝炎の主要な2つの感染経路とは?
B型肝炎の感染経路は、大きく分けて垂直感染と水平感染の2つに分けることができます。
(1)垂直感染
現在、日本のB型肝炎ウイルス感染者は110万から140万人いるとされていますが、その多くは母子感染防止策がとられる以前の母子感染によるものだとされています。
母親がB型肝炎ウイルスに感染している場合、乳幼児のほぼ100%に感染し、そのうち90%近くがB型肝炎ウイルスの無症候性キャリア(症状はないものの、B型肝炎ウイルスが体内に住みついている状態。)になるとされています。
(2)水平感染
水平感染の原因としては、まず、予防接種による注射器の使いまわし、医療従事者による事故、輸血に伴う感染が考えられます。
現在では、医療環境の整備などによって、これらを原因とした感染が起きることはほぼ考えられません。
その他には、違法薬物の使用に伴う注射器の使いまわし、性交渉、ピアスの穴あけや入れ墨などで器具を適切に使用しなかった場合などにB型肝炎ウイルスに感染することが考えられます。
なお、B型肝炎給付訴訟では、予防接種の際の注射器の使いまわしにより水平感染した方、その方から垂直感染した方に国から給付金が支給されます。
3、B型肝炎の感染経路「垂直感染」の具体的内容
B型肝炎ウイルスに感染している母親が出産をする際、産道において血液を介して乳幼児にB型肝炎ウイルスが感染します。
乳幼児は免疫が未熟であり、ウイルスを体内から排除することができないため、無症候性キャリアとなります。
その後、免疫が発達すると、ウイルスを体内から排除しようとして肝細胞を攻撃し、肝炎を発症するのです。
昭和60年からは、厚生労働省によりB型肝炎母子感染防止事業が行われ、これにより、昭和60年以降に出生する乳幼児について母子感染することは基本的に考えられません。
母子感染対策を適切に行っている場合には、母親が授乳をしても問題はありません。
4、B型肝炎の感染経路「水平感染」の具体的内容
以前は、水平感染として予防接種による注射器の使いまわし、医療従事者による事故、輸血に伴う感染が考えられました。
しかし、集団予防接種については昭和63年、輸血は昭和47年以降に感染予防対策が取られており、その他医療技術の進歩などにより、現在ではこれらによって感染することはほぼ考えられません。
家庭など集団生活による感染も一般的には考えられないとされています。
したがって、通常のスキンシップや、入浴や食事を共にすることによって感染することは考えられません。
ただし、カミソリや歯ブラシなど血液の付着する可能性のあるものを共用することは避けるべきでしょう。
現在、水平感染の主要な経路は、性行為のみといえます。
そこで、あまりよく知らない人と性行為に及ぶ際には避妊器具を着用することが非常に重要です。
ただし、抱擁したり、軽くキスをすることによって感染することはありません。
夫婦間においても、B型肝炎ウイルス感染者の方の配偶者に免疫力がない場合、感染する可能性があります。
したがって、配偶者の方についても血液検査をし、場合によってはワクチンの接種をすることが必要でしょう。
その他には、違法薬物を使用する際に注射器を使いまわした場合や、ピアスの穴あけや入れ墨などの際に器具を適切に消毒して使用しなかった場合などにも感染する可能性があります。
なお、思春期以降の免疫力が確立した状態で人がB型肝炎ウイルスに感染した場合には、20%程度の人が急性肝炎という症状を発症します。そのうち90%の人は6か月ほどで治癒し、ウイルスが体内より排除され免疫力を獲得するため、その後B型肝炎ウイルスに感染することはありません。(このような感染のことを、ウイルスが体内に住みついてしまうキャリアと対比して一過性感染といいます。)。
近年では、成人が感染した場合でも、ウイルスが体内に住みついてしまう可能性の高い欧米型のB型肝炎ウイルス(ジェノタイプAe)が性行為による感染によって増加しており、注意が必要です。
まとめ
今回は、B型肝炎ウイルスの感染経路を中心として書いていきましたが、参考になりましたでしょうか?
自分自身のB型肝炎と向き合うために、他人への感染を予防するため、自分自身への今後の感染を予防するためにもB型肝炎ウイルスの感染経路に対する正確な知識を身につけることが重要です。