控訴(こうそ)とは、第一審の判決に納得がいかない場合に、その上の審級の裁判所に対して新たな判決を求める申立のことをいいます。
刑事事件の第一審は地方裁判所または簡易裁判所で行われますが、控訴をすると、高等裁判所で第二審の裁判が行われます。
今回は、
- 刑事事件で控訴をする際に知っておくべき知識
- 刑事事件で控訴が棄却された後にとるべき行動
について解説していきます。ご参考になれば幸いです。
刑事裁判について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1、控訴と上告の違い
(1)控訴とは
控訴とは、第一審の判決に納得がいかない場合に、その上級の裁判所に対して新たな判決を求める申立のことです。
控訴は被告人だけでなく、検察側が申し立てることもあります(刑事訴訟法351条)。その他にも、第一審の弁護人、被告人の法定代理人や保佐人などが行うことが可能です。
被告人の法定代理人又は保佐人は、被告人のため上訴をすることができる。
引用元:刑事訴訟法第353条
原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。
引用元:刑事訴訟法第355条
これらの条文にある「上訴」とは、裁判所の判決や命令に対して不服を申し立て、より上級の裁判所に新たな判断を仰ぐことです。控訴は、この「上訴」の一種です。
(2)上告とは
控訴と似たような意味をもつ言葉に、上告があります。
上告とは、控訴後に行われた第二審の判決に対し、さらに上級の裁判所へと不服を申し立てることをいいます。
控訴審判決に不服がある場合、さらに上告をして争っていくことができます。
2、控訴をするための条件と一連の流れ
控訴をするまでの流れを解説する前に、まずは控訴をするための条件を確認します。
(1)控訴をするための条件
絶対に控訴できる、というわけではなく、控訴をするためには法定の控訴事由が必要です。
たとえば、以下のような理由であれば、控訴が認められる可能性があります。
- 法律上関わってはいけない裁判官が、その裁判に関わっていた
- 担当すべきでない裁判所が扱う事件を扱っていた
- 検察官が裁判を求めている事件について裁判所が判断しなかった
- 検察官が裁判を求めていない事件について裁判所が判断した
- 裁判所の事実認定が誤っている
- 判決が重すぎる/軽すぎる
(2)控訴をするまでの一連の流れ
控訴をするまでの一連の流れは、以下のとおりです。
①第一審から14日以内に控訴申立書を提出する
判決が言い渡された日から14日以内(厳守!)に、第一審が行われた地方裁判所・簡易裁判所に「控訴申立書」を提出します(直接、高等裁判所に提出するのではありません)。
②控訴理由を書いた控訴趣意書を提出する
控訴申立書はあくまでも「控訴をします」と裁判所に申し立てるものです。
一方、「控訴趣意書」とは「どんな理由で控訴を行うのか」を伝えるための書面です。
控訴申立書を提出すると(2か月程度の期限を設けられて)この控訴趣意書の提出を求められますので、必ず指定された期日までに提出するようにしましょう。
③控訴を認めるかどうかの判断が下される
控訴申立書、さらには控訴趣意書を提出すると、控訴を認めるかどうかの判断が下されます。
3、控訴をする際に抑えておくべきポイントと申立書の書き方
控訴をするには上記のようなステップを踏む必要がありますが、その際のポイント、また、控訴申立書や控訴趣意書の書き方について、解説していきます。
(1)控訴申立書の提出は判決日から14日以内
繰り返しになりますが「控訴申立書」は判決が言い渡された日から14日以内に、第一審判決を行った地方裁判所・家庭裁判所に必ず提出してください。
控訴の提起期間は、十四日とする。
引用元:刑事訴訟法第373条
控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。
引用元:刑事訴訟法第374条
控訴申立書に書く項目としては、
- 被告人の名前
- どのような事件かを示す事件名
- 事件を担当した裁判所名と事件番号
- 判決が言い渡された日
- 被告人や弁護人の署名と捺印
などがあります。
これらの点を明示した上、判決に不服があるから控訴する、と結ぶといいでしょう。
(2)控訴趣意書の提出も期限を厳守
控訴申立書を提出すると、次に、控訴趣意書の提出を求められます。
ここで、既にご紹介したような法定の控訴事由が存在していることを具体的に示します。
この記載は重要なため、必ず弁護士に相談しながら作成を進めましょう。
控訴趣意書の提出期限は、控訴趣意書を提出するよう求める通知の送達があった日の翌日から21日目以後を指定しなければならない(通常は2か月程度)とされています(刑事訴訟規則236条)。
こちらの提出も、必ず指定された期限内に行ってください。
控訴趣意書は(控訴申立書と異なり)次に控訴審が行われることになる裁判所に提出します。
控訴申立人は、裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければならない。
引用元:刑事訴訟法第376条
4、控訴を棄却されたら
控訴を棄却されたままだと第一審の判決が確定しますが、控訴審の控訴棄却判決に不服があるとして上告することができます。
この際にも必ず弁護士と相談した上で、可能性があれば諦めずに上告を申し立てましょう。
まとめ
今回は、刑事事件で控訴をする際に知っておくべき知識についてご案内しました。
日本は三審性を採用しており、基本的には3回まで審理を行うことが可能です。
第一審に不服なら控訴を、第二審に不服なら上告をそれぞれ行うことで、さらに上級の裁判所へと審理を求めることができます。
もっとも、法的な手続きに則って期間内に迅速に動いていかなければならないため、早めに弁護士に相談し、弁護士に委任したり、弁護士の助言のもとに行動するようにしましょう。