家賃滞納された場合の内容証明郵便の書き方と対処法3つ

家賃滞納された場合の 内容証明郵便の書き方と対処法3つ

家賃滞納者に電話をしてみてもつながらない、賃貸物件を訪ねてみても滞納者が部屋におらず話すら出来ないなどといった場合には、内容証明郵便を送って家賃の請求をするという方法が考えられます。

今回は、家賃を滞納をされお困りの大家さんのために内容証明郵便の送り方や確実に家賃を回収する方法をお伝えしたいと思います。

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1、内容証明郵便を送付したら家賃を支払ってもらえるのか

(1)内容証明郵便の効果は?

内容証明郵便とは、「誰」が「どんな内容」の文書を「誰に」「いつ」差し出したかを郵便局(日本郵便株式会社)が証明してくれる郵便物のことをいいます。

内容証明郵便は、それらの事項を公的に証明する効果があるので、「どんな内容の」手紙を「誰に」対して「いつ」送付したのかを証明したい場合には非常に有効な手段といえます。

また通常は、配達証明を付して内容証明郵便を送ることになります。配達証明を付けることによって、差し出した郵便物に番号が付されます。郵便局のホームページ上でその番号を入力すると配達の状況を簡単に確認することができて便利です。上記の文書が何月何日何時に相手方に配達されたかについても細かく証明することができるのです。以下における内容証明郵便は、配達証明を付したものを想定してご説明いたします。

(2)内容証明郵便を送ったら入居者は家賃を支払ってもらえる?

内容証明郵便には上記のような効果があり、裁判などの法的措置の前段階として用いられることが多いため、内容証明郵便を送ると、滞納者が家賃を支払ってくるケースが多いといえます。

しかし、中には内容証明郵便を受け取ったとしても、家賃を支払わずに住み続けている滞納者も実際にいます。例えば、家賃の不払いには正当な理由があると主張する滞納者、内容証明郵便なんて無視してしまう滞納者、滞納したこと自体は素直に認めるけれども支払いや引っ越しが困難な滞納者など、様々な事態が考えられます。

2、それでも家賃滞納時に内容証明郵便を送るメリットは?

(1)文書の送付を公的に証明できる効果

郵便法と約款に定められている内容証明制度と言われる制度があり、内容証明郵便はその制度を利用して発送をされることになります。それが「内容証明」といわれる所以です。内容証明を郵便局に提出する際、相手方への送付用とは別途大家さん保管用と郵便局の保管用の謄本2通が作成されることになります。

もし滞納者が送ったはずの内容証明郵便について「こんな文書を見た覚えがない」などと言ってきた場合でも、郵便局に確認することができるので、内容証明郵便には文書の送付を公的に証明できる効果があるのです。

(2)相手方に心理的圧迫を与える効果

内容証明郵便は、裁判などの法的措置の前段階として用いられることが多いため「場合によっては裁判をも辞さない」という大家さんの強い意志を伝えることができ、滞納者に対して相当な心理的圧力を加えることができます。また、内容証明郵便は一般書留郵便であることが条件とされていますので、滞納者が受領する際には受領印又は署名が要求されることになります。なかなか滞納者との話し合いが進展しない場合は、電話や普通郵便よりも内容証明郵便が効果的でしょう。

(3)訴訟の証拠作出の効果

内容証明郵便を滞納者に送付することによって、訴訟における効果的な証拠を残すことができます。大家さんが、滞納者に対して、家賃滞納を理由に貸している部屋を出て行ってもらいたい場合や滞納している家賃の支払いを求める場合に裁判を起こそうと考えたときに、基本的には家賃の支払いを催促したことや賃貸借契約解除の意思表示をしたことを証拠によって証明しなければなりません。

そして、口頭や普通郵便で催促・解除しただけでは明確な証拠が残らないため、裁判になっても「やった」「やってない」の水掛け論になってしまう可能性があります。

もし事前に内容証明郵便を利用すれば、このような事態を回避するために有効な証拠を残すことができることでしょう。

3、家賃滞納時の内容証明郵便の書き方

(1)内容証明郵便の雛型ダウンロード

内容証明郵便の雛型を添付しますので、ご活用いただけると幸いです。

内容証明郵便の雛形のダウンロードはこちら

(2)具体的な書き方

①文書の形式

使用できる文字は、通常、ひらがな、カタカナ、漢字、算用数字、漢数字、英字(固有名詞に限る。)、一般的な記号(句読点、カッコ、単位記号など)になります。

そして、文書1ページに記載可能な文字数は、520文字以内と決められています。

縦書きならば、「1行20字以内、1ページ26行以内」となり、横書きならば、「1行20字以内、1ページ26行以内」、「1行13字以内、1ページ40行以内」、「1行26字以内、1ページ20行以内」を選択できます。

なお、内容証明郵便においては、送付する文書のほかに同封物を入れることはできないことになっています。文書以外のものを同封される場合には別便で発送する必要があります。

②文書の中身

文書の冒頭には、文書の内容を短く表すタイトル(表題)を記載しましょう。例えば、「請求書」「通知書」といった表題です。

また、差出人及び受取人をしっかり特定するために、差出人・受取人の住所、氏名を記載しましょう。差出人の氏名の下には捺印をするのが通常です。法人や団体が主体の場合、住所を書くべきところには本店・本部の所在地を、氏名を書くべきところには法人名・団体名とその代表者名を記載した方がよいでしょう。

それから、文書の作成年月日も一般的に重要な記載になりますので、記載した方がよいでしょう。

文書の本文は一度内容証明郵便を送ってしまうと撤回できませんので、事実関係などに間違いがないか入念に確認してから郵送するようにしましょう。

(3)内容証明郵便の書き方の注意点

①賃貸借契約の特定

大家さんが滞納者に内容証明郵便を発送する際、誰と誰とのどの物件の契約であるのか明示すべきです。どの賃貸借契約かが特定されなければ、のちに紛争の種となってしまう恐れがあります。また、契約日や家賃金額についても記載しておくとよいでしょう。

②支払催告

滞納された家賃の支払いをするよう催告(催促)する旨も記載しましょう。いつからいつまでの家賃が滞納されているのか、滞納の総額はいくらかをも明示しましょう。

また、催告をする際には支払期限を定めるべきです。支払期限は滞納者が支払いの準備をするのに「相当な期間」として1週間以内とするのが一般的です。

③解除の意思表示

大家さんが滞納者との賃貸借契約を解除したい場合、解除する旨の意思表示も記載すべきでしょう。

解除の手順としては、上記でご紹介した雛型のように、滞納家賃の支払いの催告とあわせて、契約解除の通知をするという方法があります(「なお、万一、前記期間内にお支払のない場合は、本件契約を解除することを念のため申し添えます。」などと記載します。)。

また、支払いの催告をしても支払いがない場合には、改めて解除の通知をするという方法もあります。

それから、賃貸借契約を解除するには「当事者間の信頼関係が破壊された」といえることが必要になります。家賃の滞納を理由に賃貸借契約を解除したい場合には、少なくとも2~3か月程度は家賃を滞納している事実が必要でしょう。

4、家賃滞納時の内容証明郵便の送り方

(1)郵便局へ行く

内容証明郵便は特定の郵便局でのみ出せることになっています。内容証明郵便を出すことが可能な郵便局は、集配業務を取り扱っている郵便局と日本郵便株式会社が別途定める一部の郵便局だけです。最寄りの郵便局の業務内容の欄をあらかじめ確認しておきましょう。

郵便局の窓口では、送付する内容を証明したい文書、その謄本2通、差出人・受取人の住所氏名を記載した封筒などを提出して、郵便料金を支払えば完了します。なお、文書の訂正が必要な場合に備えて、印鑑を持参するとよいでしょう。

(2)パソコンから送る

これまで、基本的な方法である(1)を想定してご説明してきましたが、「電子内容証明サービス」によって、インターネットを利用して24時間いつでも内容証明郵便を差し出すこともできます。このサービスでは、インターネットを通じて送付したい文書を郵便局に差出し、郵便局において印刷して配達するとともに、文書内容の保存なども電子的に行うものとなっています。上記(1)に比べれば緩和されているものの、字数などの書式について一定の制限がございますので、ホームページなどで確認されるとよいでしょう。

(3)内容証明郵便を送る際には配達証明も利用する

「どんな内容の」手紙を「誰に」対して「いつ」送ったのか証明をしてくれるとても便利な内容証明郵便ですが、それ単体では、相手受け取ったかどうかについては確認することは不可能です。したがって、内容証明郵便を送ったとしても、破棄するなどして受け取っていないと主張する滞納者もいます。

そこで、「配達証明」を付けることで内容証明が送付された事実も証明することができますので、一般的にはセットで用いられています。配達証明を利用すれば、配達した年月日などが記載されたはがきを通じて、郵便局が受取人に確実に郵便物を配達したことを知らせてくれます。

5、内容証明郵便を送っても家賃を支払ってくれない場合の対処法!

(1)連帯保証人宛に内容証明郵便を送る

家賃を滞納された場合、大家さんは、連帯保証人に対しても家賃の支払ってもらうよう請求をすることができます。連帯保証人に伝えることで、連帯保証人に滞納された家賃を支払ってもらう、連帯保証人から滞納者に対し家賃を支払うように促してもらうなどといった効果が期待できます。

例えば「前略 当方は、●殿に対し、下記のとおり賃貸借契約を締結し、下記建物を引き渡しました。ところが、●殿は、平成●年●月分から同●月分まで、上記契約に基づく賃料の支払いを怠っております。貴殿は、●殿の連帯保証人でありますので、当方は、貴殿に対し、未払賃料合計金●万円を本書面到達後5日以内にお支払いくださいますよう催告いたします。当該期間内に上記未払賃料全額の支払がない場合は、速やかに訴訟提起の措置をとりますので、その旨ご承知置きください。なお、当方は、●殿に対し、平成●年●月●日、上記未払賃料全額を支払うよう催告をいたしました。念のため申し添えます。」などと記載されることがあります。

(2)少額訴訟    

①少額訴訟

内容証明郵便を送っても家賃を支払ってもらえない場合、最終手段として裁判で回収していくことが考えられます。裁判手続となると、後述のとおり、「通常訴訟」を提起することが考えられますが、「少額訴訟」という裁判手続を選択することも可能です。

少額訴訟は、訴訟物の価額が60万円以下の場合にのみ提起できる特別な手続きであって、原則として1日で手続きが終了します。通常の裁判に比べて早く手続きが進むという点に大きなメリットがあります。

なお、少額訴訟について詳しくは以下の記事をご参照下さい。

少額訴訟とは?お金を払わない相手から債権を回収する方法

②強制執行

裁判で勝っただけでは、滞納者が任意で払ってくれない限り、滞納された家賃を回収することはできません。

その場合には、判決に基づく「強制執行」手続きという文字通り強制的な手続きで回収を図らないと、裁判で勝ったとしても滞納された家賃を回収することはできません。そして、強制執行手続は裁判手続とは別個独立の手続になりますので、新たに進めていく必要があります。

強制執行手続において注意すべき点は、滞納者に強制的に回収できる財産が残っているか否かになります。強制的に回収することのできる財産が残っていなければ裁判・強制執行手続を試みても空振りになってしまう恐れがあるので、事前に滞納者の財産をチェックする必要があるでしょう。

6、それでも支払いがなければ建物明渡訴訟!

滞納者が任意で滞納家賃を支払わずに建物からも出ていかない場合、裁判で建物の明渡し及び滞納賃料の支払いを求めていくことになります。訴訟物の価額が140万円以下のケースあれば簡易裁判所に訴訟を起こすことになり、140万円を超えるケースには地方裁判所に起こすことになります。

そして、裁判を提起した後でも、話し合いによって和解をして手続きが終わることも考えられます。和解の内容が和解調書に記載されますが、和解調書は判決と同様の強制力があるため、和解調書をもとに強制執行手続を進めることが可能になります。

裁判で勝った場合には、前述のとおり、強制執行手続を踏まなければ、強制的に建物明渡し及び滞納賃料回収の目的を達成できません。裁判を提起してから強制執行手続に至るまで、およそ半年程度時間がかかる場合もあります。

これらの法的手続きは、やはり弁護士に依頼した方が迅速かつ適切に進めることができるものといえますが、弁護士費用との関係で経済的メリットなどがあるかどうかは重要なことですので、弁護士に相談して依頼のメリットがあるかどうか事前に確認しましょう。

家賃滞納された場合の内容証明郵便の書き方まとめ

今回は、大家さん初心者の方のために内容証明郵便の送り方や確実に家賃を回収する方法をお伝えしました。ただ、事案によって様々な法的問題が生じえますので、一度事前に弁護士に相談して、ご自分で着手できるか検討してみるとよいでしょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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