「母親のことが嫌いで、どうしても母親との関係がうまくいかない……」
今回は、
- 母親を嫌いになってしまうきっかけ
- 母親嫌いで悩まないためのポイント
- 母親との関係を見直す方法
などについて、弁護士が解説していきます。
目次
1、母親を嫌いと感じるきっかけ
いま母親を嫌いと感じている人でも、幼少期は母親のことが大好きだったという人が多いはずです。
なぜ、好きだったはずの母親が嫌いになってしまうのでしょうか。
ここでは、一般的に母親を嫌いと感じるきっかけとしてよくあるものについて解説していきます。
以下のポイントを参考にして、あなたなりの理由を分析してみましょう。
(1)十分な愛情を注いでもらえなかったこと
共働きやシングルマザーなどで母親が忙しくて、母親と接するどころか話す機会があまりなかったため、愛情を感じられなかったケースでは、思春期を迎える頃には母親嫌いになってしまうことが多い傾向にあります。
大人になると母親の苦労も理解できるのですが、思春期前の子どもにとっては、母親に話したいことがたくさんあるのに相手にしてもらえないと、やはり寂しくて傷ついてしまうでしょう。
「お母さんは僕(私)のことを愛してくれていない」という気持ちが募っていき、それが母親嫌いのきっかけとなってしまいます。
母親が子どものために真面目に働いていてもこうなのですから、家のことを放って浮気やギャンブルに溺れている母親の場合はなおさら、子どもは愛情を感じられないでしょう。
(2)過干渉で束縛が強い
幼少期の頃は箸の上げ下ろしから食事の好き嫌い、勉強時間や友達との遊びについても口うるさく干渉し、成人しても門限を設ける、交友関係を事細かく把握したがる、進学や就職へ逐一口出しするといった、過干渉で束縛が強い母親も多いものです。
恋愛や結婚に関しては、子どもの意思に関係なく母親の思い通りにならなければ、延々と文句を言ってきたり不機嫌になったりします。
母親が自分のことを適度に心配してくれるのは嬉しいものですが、過度に干渉され、束縛されていると、自由を求めたくなるのも自然なことです。
子どもが一定の年齢になると、「お母さんがいると自由な人生を歩めない」と考えるようになり、母親嫌いにつながってしまいます。
(3)完璧主義で褒めてくれない
子どもは母親に褒めてもらうことで心が満たされ、ますます頑張ろうという気持ちになって成長していくものです。
しかし、子どもに完璧を求めるあまりに、ほとんど褒めることをしない母親も少なくありません。
「常に成績トップじゃなきゃいけない」「良い大学に行かなきゃいけない」「良い会社に就職しなきゃいけない」という完璧主義の価値観の押し付けが酷く、果たせなければ褒めてくれない、むしろ不機嫌になる、というような母親です。
このような母親は、子どもにとっては愛情を感じるどころか恐怖の対象となってしまう可能性があります。
また、母親が褒めてくれるのは「結果」であって子どもが努力する姿勢ではないのですから、愛情を感じないということにもなってしまいます。
さらに、母親自身が高学歴で高収入であればともかく、そうでない場合は「自分のことを棚に上げて厳しいことばかり言う」と思われ、子どもの反発を買うことになるでしょう。
(4)自分が果たせなかった夢を押しつける
親であれば、誰しも子どもが立派に育ってほしいと願うものですが、子どもの意思を無視して自分が果たせなかった夢を子どもに押しつける母親もいます。
「良い大学に行け」「スポーツ選手になれ」「医者になれ」「弁護士になれ」など、知らないうちに親が子どもの夢を決めつけているようなケースです。
子ども自身も気付かないうちに夢を押し付けられているため、あたかも自分の意思で目指していたかのように錯覚してしまうこともあります。
このような場合、いったん挫折してしまうと、自分で夢を見つけるという経験をしていないため、どのようにすれば立ち直れるのかが分からなくなってしまいます。
場合によっては、「母親に夢を押しつけられたために、自分の人生が間違った方向にいってしまった」と考え、母親嫌いになることもあります。
(5)他人と比較される
兄弟がいる場合、他の兄弟と比較されることで母親が嫌になるケースも多いです。
「○○ちゃんはできるのに」「○○ちゃんはかわいいのに」などと平気で口にする母親も少なくありません。
人にはそれぞれ長所と短所があるのですから、本来なら母親は兄弟の一人一人と向き合い、長所を褒めて短所を改善するように導くべきものです。
しかし、他の兄弟を比較して叱られてばかりいると、「そんなに〇〇ちゃんがいいのなら、僕(私)なんて生まなければよかったのに」と思ってしまい、母親嫌いになることがあります。
(6)子どもの気持ちを尊重しない
子どもの気持ちを尊重せず、母親自身の価値観を押し付け、その価値観があたかも世の正解とでも思いこませようとする母親も、子どもから嫌われがちです。
子どもというのは、幼少期の頃はもちろんのこと、大きくなってからも自分の気持ちを親に汲み取ってほしいと思うものです。
特に、父親よりも母親に対してその役割を求める傾向が強いといえます。
子どもの気持ちを汲み取ろうともせず、一方的に価値観を押しつけてくるような母親に対しては、「お母さんには何を言っても分かってくれない」ということになり、母親嫌いにつながってしまいます。
(7)他人の悪口やグチばかり聞かされる
口を開けば他人の悪口やグチばかり言うような人は女性に多い傾向にありますが、母親がこのタイプであれば子どもは辛くなってしまいます。
他人の悪口やグチというのは、例え内容が真実であったとしても聞いていて気分の良いものではありませんし、聞いたからといって何かの役に立つわけでもありません。
また、この手の母親は、他人を褒めたり他人のいい話をしたりすることはめったにないのも特徴的です。さらに、家の中のみならず公共の場でも平気で大声で他人の悪口を言うこともあるでしょう。
母親がこのような人なら、子どもが嫌ってしまうのも無理はありません。
2、母親嫌いで悩まないために心がけるポイント
「母親が嫌いで仕方ない!」と自覚している人でも、幼少期から苦労して自分を育ててくれて、大きくなってからも食事を作ってくれたり、身の回りの世話をしてくれる母親を嫌いな自分に罪悪感を感じている人は多いと思います。
しかし、「母親が嫌い」ということ自体は、別に悪いことではありません。
ここでは、母親嫌いで自分が悩まないために心がけたいポイントをご紹介します。
(1)母親嫌いな自分を責めない
まず、たとえ母親嫌いであっても、そんな自分を責めるのはやめましょう。
大切なはずの母親を嫌いになったことには、必ず何らかの理由があるはずです。
自分の意思で母親嫌いになったわけではないのですから、自分を責める必要はありません。
母親嫌いな自分を否定することが自分の精神衛生上一番よくないことですし、自分を責めても何も解決しないということを知っておきましょう。
(2)母親を許さなくてもいい
たとえ昔から母親にひどいこと言われたりひどいことされたりしてきたとしても、母親が自分を生んでくれた以上、憎んではいけないのでは…と悩む人も多いでしょう。
しかし、母親は望んで自分を生んだとしても、自分は望んで生まれたわけではありません。
母親のことを考えるときに、自分を生んでくれたから、育ててくれたから……と情を盛り込む必要はありません。
許したくない理由があるのなら許さなくて構いません。自分の人生なのですから、そんなスタンスで問題ありません。
(3)母親は所詮「他人」
親子とはいえ、母親も所詮は自分とは異なる人間です。母親の人生は自分の人生ではありませんし、自分の人生は母親の人生ではありません。
自分の人生は自分で見つけて自分らしく生きていき、母親には母親の人生をまっとうしてもらうことが、お互いにとって最善の生き方となるはずです。
母親は「家族」だから、と自分の人生の中で特別扱いをする必要はありません。
3、母親嫌いの人の母親との関係を見直すための方法
「自分は自分、母親は母親」したがって母親嫌いで悩む必要はないとはいっても、嫌いな母親と毎日接していると、ストレスがたまり続けてしまいます。
そのため、母親との今後の関係性をどうするかについては、冷静に考える必要があります。
ここでは、母親との関係を見直すための方法をひと通り解説します。
ご自身の状況に応じて、適切な方法を考えていきましょう。
(1)母親と話し合って親子関係を改善する
母親と子どもの双方が話し合って和解できれば、それが一番理想的です。
母親嫌いな人の多くは、母親と言い争いなどの親子喧嘩はしょっちゅうしていても、面と向き合って「ああしてほしい」「こうしてほしい」という話し合いをしたことはないのではないでしょうか。
一度、母親が落ち着いているときを見計らって膝を突き合わせて、今までの母親に対する想いを伝えた上で、今後の希望を要望してみましょう。
きちんと話し合ってみれば、母親の意外な気持ちを知ることができて、お互いに相手の立場に対する理解を深め合った上で、親子関係を改善できることもよくあります。
今までは単に分かり合っていなかったために、関係がうまくいかなかったというケースは数多くあります。
ぜひ一度、母親とじっくり話し合ってみてください。
(2)割り切って表面上の関係を円満に保つ
話し合っても分かり合えない場合や、そもそも話し合いが成立しない親子関係というのもあるでしょう。
その場合は無理に話し合わず、割り切って表面上の親子関係を円満に保つことも考えられます。
母親を変えることは難しいので、波風を立てないまま「自分は自分の人生を生きる」ことに専念することです。そのためには、家族ではあっても母親とは必要最小限の関わりで済ませられるような工夫をしてみましょう。
今まで実家で暮らしていた方であれば別居する、他人の悪口やグチを聞かないために電話には出ず、メールの返信もしない、緊急時にのみ連絡を取るなど、さまざまな方法が考えられるでしょう。
(3)カウンセリングを受ける
母親との関係について悩むなら、専門のカウンセリングを受けるのもひとつの手段です。
心理学を活用したカウンセリングで、親子関係に関する専門的なアドバイスをしてくれるカウンセリング機関が数多くありますので、ネットで探して利用してみるとよいでしょう。
自分で解決策が見つからないときでも、第三者からの専門的なアドバイスを受けることで、解決の糸口が見つかる可能性もあります。
役所など行政の相談窓口でも、親子関係に関する無料相談を受け付けているところが多いので、まずはそういったところに相談してみるのもよいでしょう。
悩みを聞いてもらうだけでも、精神的にはぐっと楽になるはずです。
母親に対するストレスで心身の調子が思わしくないときは、医師のいる心療内科やクリニックを受診することをおすすめします。
(4)母親と事実上の縁を切る
母親のことが嫌いで仕方なく、顔を合わせるのも嫌という場合や、母親から暴力や暴言を受けていたり、お金の無心が続くような場合は、縁を切ることも考えてよいでしょう。
ただ、母親との法律上の縁は切れませんので、事実上の縁を切るということになります。
そのためには、以下のような手段を取ることができます。
①母親と物理的に距離を取る
まずは、母親と物理的に距離を取って、別々に生活することをおすすめします。
先ほどもご紹介したように、母親と別居して、連絡は緊急時のみに限ることとし、必要最小限の関わりにとどめることです。
本格的に縁を切るなら、「絶縁宣言書」(絶縁状)を作成して送りつけるとともに、役所に「住民票閲覧制限」を申請するなどして、母親に自分の居場所を知られないようにすることも検討していいでしょう。
法律上の縁を切る方法はありませんが、役所で「分籍」の手続きをとれば、母親とは戸籍を別にすることができます。
さまざまな手段を活用して、母親との距離を取りましょう。
②法的手段をとる
法的に母親と縁を切る手段はありませんが、母親を遠ざけたり、母親との親子関係を改善するために使える法的手段はいくつかあります。
例えば、裁判所に保護命令を申し立てるとともに「接近禁止仮処分命令」を申し立てると、母親によるつきまといをブロックでき得ます。
母親との関係の改善を図りたいなら、「親族関係調整調停」を申し立てるのが有効です。
裁判所の調停委員を介して母親と話し合い、合意した内容が調停調書に記載されると、法的効力をもつようになります。
したがって、口約束を守らない母親にも約束を守らせる効果が期待できます。
その他にも、母親に対して刑事責任や民事責任を追及する方法もあります。
例えば、母親から暴力や暴言、お金の無心などを受けている場合は、母親に暴行罪や傷害罪、恐喝罪、脅迫罪などの犯罪が成立する可能性があります。
このような場合には、警察に相談したり告訴を行って刑事責任を追及し、それによって母親に自分の行為の悪質さを自覚してもらえる可能性があります。
また、母親からの暴力や暴言に対する慰謝料や、勝手に使い込まれたお金の返還などを民事裁判で請求することもできます。
これらの法的手段を状況に応じて駆使することで、母親との間にできた溝を明確化し、母親との縁を遠ざけることに役立つことでしょう。
4、母親嫌いでも母親との関係を改善しやすいタイミングもある
中には、母親との縁を切りたいわけではないけれど、一度抱いた母親に対する嫌悪感を拭うことができず、いつまで経っても仲直りできずに困っているという人もいることでしょう。
世の中には、一時は母親と絶縁状態になっても、その後に親子関係を修復し、その後は良好な関係を築いているという人も数多くいます。
そのような人たちは、あるきっかけやタイミングを活かして母親に対して心を開いたり、母親に歩み寄ったりしたケースが多いものです。
ここでは、母親嫌いでも母親との関係を改善しやすいタイミングとして、代表的なものを3つ、ご紹介します。
もし、あなたが以下のようなタイミングに巡り合ったとしたら、母親との仲を修復できるチャンスかもしれません。
(1)自分が親になったとき
母親嫌いのあなたは今まで、母親が食事を作ってくれるのは当たり前、掃除や洗濯など身の回りの世話をしてくれるのも当たり前だと思ってこなかったでしょうか。
しかし、母親といえども一人の人間です。
ときには疲れていたり、気が向かなかったりして育児や家族の世話をしたくないと思うこともあったはずです。
長年にわたって毎日、家事・育児を休みなく行うことは並大抵の努力ではできません。
共働きやシングルマザーなどで家事・育児が十分にできなかった母親もいると思いますが、親には親の事情があるということが子どもには理解できないものです。
あなた自身に子どもが生まれて、自分が親になってみると、それまでの親の苦労が身に沁みて分かるはずです。
子どもの頃は「なんでもっと愛してくれないの」と不満に感じていたとしても、母親としては精いっぱい愛してくれていたんだということが分かることでしょう。
そして、「お母さん、今までごめんなさい。そしてありがとう」と思うはずです。
そのときは、素直にその気持ちを母親に伝えてみましょう。
長年のわだかまりがあったとしても、きっとお互いに心が通い合い、和解できる可能性が高いといえます。
(2)母親が大病にかかったとき
母親が大病にかかったときも、和解できるチャンスです。
母親の病状や年齢にもよりますが、命に関わるような病気であれば、「もうお母さんに会えなくなるかもしれない……」と思うことでしょう。
そう思うと、母親が生きている間に気持ちを伝えて、母親の気持ちも聞いて、今までの感謝や謝罪を伝えたいという気持ちになるのではないでしょうか。
母親としても、大病になると弱気になり、あなたに対して今までのことを詫びたいと思っている可能性があります。
いずれにせよ、心を開いて話し合えるチャンスといえるでしょう。
(3)母親が老いて介護が必要になったとき
誰しも、年齢を重ねると老いていき、身体だけではなく精神的にも弱々しくなってくるものです。
若いときには気が強く、自分勝手で頑固な母親だったとしても、介護が必要なほどに老いてしまった母親を目の前にすると、愛おしい、かけがえのない存在に思えるのではないでしょうか。
このとき、「自業自得だ」「誰が介護などするものか」などと思ってしまったとしても、それは悪いことではありません。
きっと、それだけの理由があるのでしょう。
しかし、身も心も弱り切った母親本人は、子どもの助けを切望していることでしょう。
子どもの方から少しでも介護に手を貸そうとすれば、母親の方も心を開いて素直に話を聞いてくれる可能性は高いでしょう。
介護が必要になっても、ほとんどの場合は数年以上の時間が残されています。
悔いのないように、母親と向き合ってみることをおすすめします。
5、母親嫌いで困ったら弁護士に相談を
母親嫌いで困ったら、弁護士に相談してみるのもおすすめです。
「親子問題で弁護士に相談?」と意外に思う方も多いかもしれませんが、単なる親子問題に過ぎないと思えるケースでも、法律問題が絡んでいることは少なくありません。
前記「3」(4)②でご紹介した法的措置が必要なケースの他にも、母親が浮気をしているケースなら離婚や慰謝料の問題が絡みます。
母親が浪費をして借金を抱えているなら、債務整理を検討した方がよいでしょう。
これらの根本原因を法的に解決することで、平和な親子関係の修復に役立つこともあります。
法的問題が一切絡まないケースであれば、弁護士からカウンセリング機関を紹介してもらえることもあります。
まずは思考を整理するためにも、弁護士への相談は有効です。
弁護士は相談者の味方として話を聞いてくれますので、気軽に相談してみましょう。
まとめ
母親嫌いには、必ず何らかの理由があります。
母親の方に問題があり、縁を切った方がよいケースもあれば、冷静になって関係を修復した方がよいケースもあります。
前者の場合は、感情を挟まずに母親と物理的な距離を取ったり、法的手段を使って母親との関わりをなくした方がよいでしょう。
後者の場合は、今すぐに決着をつけるよりも、ある程度の時間を置くことで自然に和解できるようになることも多いものです。
親子問題は、ひとりで悩んでいると余計に悩みが深刻化する傾向にありますので、一度、専門家のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。