LINEやTwitter、YouTubeなどのSNSのアイコンを、芸能人の写真や、アニメのキャラクターにしている人は多く見かけます。でも、ちょっと待ってください。それ、著作権侵害かもしれませんよ?「今まで何も言われていないから大丈夫」と思っていませんか?
そこで今回は、
- そもそも著作権とは何か
- SNSのアイコンで著作権を侵害するとどうなるのか
- 著作権侵害にならないアイコンの選び方
などを中心として、アイコンの著作権についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。
著作権の基本は以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、著作権とは
著作権とは、著作物を作った人がもつ権利のことです。著作物を創作した人を著作者といい、法律によって著作者に与えられる権利のことを著作権といいます。
この著作権制度は、著作者の権利を保護することによって、日本の文化全体が発展できるよう、著作物の適切な利用を促すための制度です。
(1)著作権の適用範囲
私たちは、日々ドラマやアニメ、音楽、小説、イラストなど、さまざまな創作物に触れ、それらを楽しんでいます。これらの作品を著作物といい、著作権法では「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されています。著作権は、これらの著作物すべてに適用されます。
著作物には、具体的には以下のものがあります。
- 小説・脚本・論文・講演などの言葉によって表現されるもの
- 音楽
- 舞踊・無言劇などの身振りや動作によって表現されるもの
- 絵画・版画・彫刻その他の美術
- 建築
- 地図・学術的な図面・図表・模型その他の図形
- 写真
- 映画
- コンピュータプログラム
これらの他にも、上記1~9をもとにして創作された二次的著作物も、もとになった著作物とは別に著作権があります。小説を映画化したものや、楽曲を編曲したものなどが二次著作物にあたります。
(2)どんなものが著作権に抵触するの?
上記の著作物を私的使用の範囲を超えて著作権者に無断で使用すると、著作権を侵害していることになります。ここでいう「私的使用」とは、あくまでも個人的に、または家庭内などのごく狭い限られた範囲で使用することを指します。TwitterやLINE、YouTubeなどのSNSのアイコンとして個人が使うことは、この「私的使用」には該当しないということに注意が必要です。
2、アイコンで著作権法違反となるものの具体例
TwitterやLINE、YouTubeなどのSNSのアイコンに、自分の好きな芸能人やキャラクターなどの画像を使っている人を多く見かけます。アイコンとしてSNSで表示することは、著作権法で定める「私的利用」の範囲を超えているため、他人の著作物をアイコンとして無断で使うことはできません。以下に具体例をあげて解説します。
(1)芸能人アイコン
芸能人や著名人の写真を無断でアイコンに使用すると、著作権侵害になります。人物の写真の場合は、著作権侵害だけではなく、肖像権の侵害になる可能性もあるということに注意が必要です。
肖像権とは、自分の肖像(顔や姿)を写真や絵画に使われたり、公表されたりしない権利のことです。芸能人や著名人ではない一般人でも肖像権があるので、他人の写真や画像を無断でアイコンにするのはやめましょう。
(2)アニメ・ゲームのキャラクターアイコン
アニメやゲームのキャラクターをアイコンにすることも著作権の侵害になります。キャラクターカードを撮影・スキャンした画像を使うのも同様に著作権の侵害になります。
また、元の画像を加工してアイコンにする場合であっても著作権の侵害にあたる可能性があります。元の著作物の本質的特徴を保ったまま使用した場合では、元の著作物との類似性や依拠性が認められて、やはり著作権侵害となります。加工すれば使えるようになるわけではないことにも注意しましょう。
(3)他人が撮影した動植物や風景の写真
TwitterやLINE、YouTubeなどのSNSのアイコンとして、動植物の写真や風景写真などが使われている場合があります。自分で撮影した写真をアイコンに使うのであれば問題ありませんが、他人が撮影した写真にも著作権があり、無断で使用すると著作権侵害になります。
3、SNSアイコンで著作権を侵害するとどんなペナルティが待っているの?
SNSでは、著作権を侵害しているのでは?と思われるアイコンを使っているケースが散見されます。誰からも何も言われていないから大丈夫と思っているのかもしれませんが、ある日突然、著作権侵害を理由に責任を追及されてしまう可能性もあります。
著作権法を侵害すると、具体的にはどのようなペナルティを科せられることになるのでしょうか。
(1)民事責任の例
SNSのアイコンで著作権侵害した場合に考えられる民事上のペナルティには次のものがあります。
①損害賠償請求
著作権を侵害されると、著作者は損害を被ることになります。例えば、損害回復のための弁護士費用や、侵害行為により著作物の売上が減った場合などがこの損害にあたります。著作権法では、著作者が被った損害額についても定められています。
SNSのアイコンで著作権侵害をした場合に考えられるのは、そのアイコンで使用した著作物のライセンス料に相当する額を請求される可能性があります。
また、SNSのアイコンを無断で使用したことで著作者人格権が侵害されたような場合には、精神的な苦痛を受けたとして慰謝料を請求される可能性もあります。例えば、アイコンに芸能人の顔写真を使ったアカウントで公序良俗に反するような投稿をするなどの悪質な行為があった場合などには、著作者人格権の侵害があったと認められる可能性があるかもしれません。
SNSの事例ではありませんが、過去の著作権侵害の裁判例としては、猫の写真集の写真を切り取り、目をくりぬいてコラージュ看板を作成した婦人服ブランドに対して、写真家が著作権おより著作者人格権を侵害されたとして損害賠償請求をした事例があります。この事例では、写真家の請求が一部認められ、使用された写真66枚に対して66万円の損害額と200万円の慰謝料、弁護士費用26万円、合計292万円の支払いが被告に命じられました。
②侵害行為の差止請求
著作権侵害をしてしまうと、その著作権侵害行為の差止請求をされることがあります。これは、内容証明郵便や裁判により請求されることになります。SNSのアイコンが著作権侵害をしている場合には、差止の内容としては、その画像の使用の停止や画像の破棄が請求されることになるでしょう。
③名誉回復措置請求
著作者人格権侵害があった場合には、名誉回復措置請求がされる可能性があります。一般的には、事実関係の公表や謝罪広告の掲載などが請求されます。SNSのように多くの人が目にする場で著作者人格権を侵害するような悪質な行為があった場合には、名誉回復措置を請求される可能性もあります。
(2)刑事責任の例
著作権侵害には刑事罰が科されることがあります。SNSのアイコンとして他人の著作物を無断で使用する場合は「親告罪」に該当するので、著作者自身が告訴しない限りは刑事責任を追及されることはありません。著作権法違反の内容によっては、非親告罪のものもあり、著作者の告訴なしでも刑事責任が追及される場合がありますので、注意が必要です。
著作権侵害に対する刑事上のペナルティには次のものがあります。
①著作権侵害の場合
著作権を侵害した時は、懲役10年以下、1000万円以下の罰金、または両方を科される可能性があります。また、その侵害行為が法人の業務に関して行われた場合、実際に侵害行為をした人と法人の両方に対してペナルティが科される可能性があります。この場合、法人に対しては、3億円以下の罰金が科される可能性があります。
②著作者人格権侵害の場合
著作者人格権を侵害した時は、懲役5年以下、500万円以下の罰金、またはその両方を科される可能性があります。
(3)【注意】違法アップロードと知ってダウンロードした場合
SNSアイコンの事例からは離れますが、近年、著作権法違反の刑事罰については厳罰化の傾向にあることには留意しておく必要があるでしょう。
2010年には、違法にアップロードされている音楽や動画を違法と知りながらダウンロードする行為が違法になりました。さらに、2012年には、この場合に2年以下の懲役または200万円以下の罰金の対象となりました。
この記事では、主にSNSアイコンについて取り上げましたが、その他にもSNSの投稿などで他人の著作物を無断で使ったり、無断で改変したりする行為も著作権侵害となる可能性があることに注意しましょう。
4、SNSアイコンを著作権法違反にならないで作成する3つの方法
それでは、SNSのアイコンを著作権法に違反しないものにするにはどうしたらいいのでしょう。
(1)著作権フリー素材をアイコンにする
いわゆる「著作権フリー」とは、「著作権がない(または放棄された)」という意味だと思われがちですが、実際には、加工の禁止や商用利用の禁止などの利用規約で定められた範囲内であれば許諾を得ずに使用できる、という意味で使われています。著作権フリーの写真やイラストなどの画像がダウンロードできるサイトが数多くありますが、それぞれのサイトの利用規約をよく確認してから利用するようにしましょう。また、素材の提供だけではなく、サイト上で好みのパーツを組み合わせてアイコン用の画像を作成できるアイコンメーカーを利用するという方法もあります。
著作権フリー素材で画像や動画を提供しているサイトを以下で紹介します。
(2)自分で著作物を作りアイコンにする
アイコンを自分で作ってしまえば、著作権は自分にあるので自由に利用できます。自分でイラストを描いたり写真を撮ったりした画像をアイコンにすれば、著作権のことを気にせずにすみます。
ただし、アニメのキャラクターなどを元にイラストを作ると、類似性があるとして著作権を侵害しているとされる場合があります。元のキャラクターの創造的な部分が共通していると認められると、類似性があるとされるので、注意が必要です。
(3)アイコン用にイラストを作成してもらう
イラストを自分で描けないような場合などには、人に依頼してアイコン用のイラストを作成してもらうという方法もあります。SNSで情報発信しているイラストレーターの中には、アイコン作成依頼を引き受けますとプロフィールに明記しているイラストレーターもいるので、SNS上でイラストレーターを探すという方法もあります。
他人に依頼して作成してもらった著作物も、その著作権は原則として作成した人にあります。トラブルを避けるためにも、依頼時に報酬や著作権についてきちんと取り決めをしておきましょう。
まとめ
TwitterやLINE、YouTubeなどのSNSで、芸能人の写真や、アニメ・ゲームのキャラクターをアイコンにすることは、著作権の侵害にあたります。SNSのアイコンは、自分で作ったものや、著作権フリーの素材などを使い、他人の著作物を使って著作権を侵害してしまわないように気をつけましょう。
著作権侵害をしていると、民事・刑事上の責任を追及される可能性があります。「知らなかった」ですまされることではありませんので、わからないことやお困りのことがあれば、弁護士に相談するなどして適切なアドバイスをもらいましょう。