高齢者への虐待(いじめ)のニュースが増えてきた昨今。
家族による高齢者虐待(いじめ)や養介護施設等の職員による高齢者虐待(いじめ)も問題となっています。
今回は、
- そもそも高齢者虐待(いじめ)の定義とは?
- 高齢者虐待(いじめ)が起きてしまう原因
- 高齢者を虐待(いじめ)とした場合に問われる罪
- 高齢者の虐待(いじめ)を防ぐために家族やみんなができること
などについて解説します。
目次
1、高齢者虐待(いじめ)の法律から見る分類と定義
具体的に高齢者虐待(いじめ)とはどのようなものなのでしょうか?
ここでは法律の観点から見た高齢者虐待の定義を解説します。
なお、高齢者虐待の定義は「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律の第二条4項及び5項」にまとめられています。
(1)身体的虐待
身体的虐待とは、 以下のような身体への暴行を加えることを指します。
- たたく
- 蹴る
- つねる
高齢者の身体に外傷が生じる、または生じる恐れのある暴行を加えることは身体的虐待に分類されます。
また、次のような行為も身体的虐待に該当します。
- ベッドに縛るといった身体的拘束
- 食べ物
- 飲み物を無理やり口に押し込む
厚生労働省の調査によると平成26年の養護者による高齢者虐待で最も多いのはこの身体的虐待であり、その割合は約67%に上っているとのことです。
(2)性的虐待
本人との間で合意がなされていないにもかかわらず、あらゆる形の性的な行為を強要したりするのは性的虐待に該当します。
具体的には次のような行為です。
- キスや性器への接触
- 性行為の強要
また高齢者の中には身体的衰えにより、排泄が上手くできない方もいます。
この排泄失敗に対して懲罰的に下半身を裸にさせる行為も性的虐待とされます。
(3)心理的虐待
高齢者に対して過度な暴言を吐く、無視などの拒絶的な対応をするといった行為は心理的虐待に該当します。
上記の行為以外にも、高齢者に深い精神的ダメージを与える行為は心理的虐待とされます。
具体的には次のような行為です。
- 排泄の失敗を笑いものにする
- 排泄の失敗を他人のいる前で話して高齢者に恥をかかせる行為
ちなみに心理的虐待は身体的虐待の次に割合が多い虐待行為となっています。
(4)経済的虐待
経済的虐待とは養護者や親族が高齢者の財産を不当に処分することや高齢者から不当に財産上の利益を得ることです。
具体的には次のような行為です。
- 高齢者の自宅等を許可なく売りに出す
- 年金や貯金を本人の意思に反して使ってしまう
また高齢になると金銭の管理を自分の子どもにまかせる高齢者もいますが、このなかで日常生活に必要なお金すらもらえないといったケースも経済的虐待とみなされます。
(5)ネグレクト(介護や世話の放棄)
ネグレクトとは「無視すること」「怠ること」という意味があります。
養護者や養介護施設従事者等が介護の世話、生活の世話を放棄、放任し、高齢者の生活状態、身体状態、精神状態を悪化させることを指します。
具体的には次のような行為です。
- 自力で入浴できない高齢者に入浴をさせない
- 水分や食事などを十分に与えない
- 室内のゴミを放置し、劣悪な環境の中で生活させている
ちなみにネグレクトの場合は意図的であるか、結果的であるかは問われることはありません。
つまりわざと介護や世話を放棄したわけではなく、何かしらの事情があって介護ができなかった場合においても、高齢者が劣悪な状態に陥っているならネグレクトとされます。
2、高齢者の虐待(いじめ)をしてしまう人の心理・原因|養護者編
体力も気力も衰えている高齢者に対して虐待行為を働くのは決して好ましいことではありません。
しかし、高齢者の介護や世話というのは実際にやってみないとわからない苦労、苦痛があります。
ここでは養護者(在宅で高齢者を養護、介護する家族、親族、同居人など)が高齢者に虐待(いじめ)をしてしまう原因や心理を解説します。
(1)介護で自分の時間が持てない
養護者は、高齢者の介護が生活の中心となってしまい、自分の時間が確保できない状況です。
この状態の養護者は非常に大きなストレスが溜まりやすいです。同居している主な養護者が、1日のうちどれくらいを高齢者の介護に時間を充てているのかを示す調査データがあります。
引用 : 内閣府
ご覧のように、要介護度4、要介護度5と認定された高齢者を家族に持つ養護者の半数以上が1日を介護で終わらせています。
ちなみに要介護度4は排泄、入浴、衣類の着脱などの面で介助を必要とし、要介護度5はほぼ寝たきりの状態であることを指します。
要介護度が上がると介護の時間も必然的に延びるため、該当する高齢者をもつ養護者は自分の時間を犠牲にして介護に励んでいます。
しかし、毎日長時間の介護を行っていると肉体的にも精神的にも疲れてきます。
気持ちにも余裕がなくなるため、徐々に冷静な判断ができなくなり、最終的には高齢者虐待と呼べるような行動をとるのです。
(2)介護と両立できず仕事を辞めざるを得なかった
養護者の中には介護のために離職せざるを得なかったという方も少なくありません。
高齢者の介護や看護を理由に離職した人の数は以下のようになっています。
引用 : 内閣府
現在の日本は65歳以上の人口の割合が21%を超えている超高齢化社会です。
そのため、介護や看護を理由に離職する人も増加傾向にあります。
平成19年10月~平成20年9月までの離職人数が8万8500人、平成23年10月~平成24年9月の間に離職した人の数が10万1100人という調査データを見ても、その傾向は明らかです。
仕事を辞めるとどうしても「生活への不安」「将来の経済的不安」というものを意識するようになります。
高校、大学受験などお金がかかる時期の子どもを持つ家庭であれば、なおさらそう感じるはずです。
このような「働きたいのに働けない」というもどかしさがストレスとなり、最終的に虐待(いじめ)に及んでしまうというケースもあります。
(3)一人で介護をしている、手伝える人が少ない
介護は本来一人で行うものではありません。
夫婦や親族で協力して行うのが好ましいです。
協力できる人間が一人でも多くいることで、主な養護者の負担も軽減できます。
ところが、身内が遠隔地に住んでいる、頼れる親族がいないという理由で、介護を一人で行っている方もいます。
こうなると養護者の負担は大きくなり、肉体的にも精神的にも疲弊した状態になりやすいです。
また高齢者と二人暮らしという養護者の場合は、介護と仕事を両立させる必要があるため、非常にストレスが蓄積されやすいです。
この状態が長く続くことで、最終的に虐待(いじめ)に及んでしまうこともあります。
(4)言うことを聞いてくれない
虐待(いじめ)を受ける高齢者の約85%は認知症を患っています。
個人差はありますが、認知症を患うと意思の疎通がとりにくくなるため「勝手に出歩かないで(徘徊しないで)」「おもらしする前にトイレと教えて」などと伝えても、上手くいかないことが多々あります。
この状態が長期に渡って続くと「言うことをまったく聞いてくれない」という心理状態に陥り、虐待(いじめ)の度合いが重くなることもあります。
(5)介護うつが原因で虐待(いじめ)に走ってしまった
介護は、たとえ家族であっても肉体的にも精神的にも疲れるのです。
毎日、先の見えない介護を続けていると「介護うつ」に陥ることも少なくありません。
厚生労働省の「平成22年国民生活基礎調査」によると、同居している主な介護者の悩みやストレスの原因の割合は以下のようになっています。
引用 : 厚生労働省
ご覧のように家族の病気や介護に関する悩みが断トツで多いことがわかります。
悩みやストレスはうつ病を引き起こす原因のひとつとなります。
現代の日本は約10人に1人がうつ病を発症するともいわれており、専門家のケアを受けるなど適切な処置を施さないと、自ら命を絶ってしまうこともある危険な病気です。
うつの初期症状は「喜びや楽しみを感じられない」「楽しいことが起きても気分がスッキリしない」「何に対しても興味が湧かない」といったものがあります。
さらにこのような状態が長期的に続くと「集中力の低下が顕著になり凡ミスが増える」「些細なことでイライラしやすくなる」など、さまざまな症状が現れるようになります。
一般的にうつの初期症状が現れても本人は自覚していないことが多いため、介護において前述のような症状が見られたら、精神科や心療内科などの診察を受けることをおすすめします。
3、高齢者の虐待(いじめ)をしてしまう人の心理・原因|介護職員編
続いては一般の人よりも介護能力が身についていると思われる介護職員が高齢者を虐待してしまう原因を解説します。
(1)認知症ケアの難易度の高さ
介護を必要とする高齢者は認知症の症状が現れていることが多いですが、一口に認知症といっても、その症状は1人、1人異なります。
認知症の代表的な症状には「理解・判断速度の低下」「集中力の低下」「人付き合いを避けるようになる」などがあります。
これらは脳の認知機能が低下すると、誰にでも見られる「中核症状」と呼ばれるものです。
そして認知症には、中核症状の他にも「周辺症状」と呼ばれるものがあります。
周辺症状とは環境や性格、周囲の人々との関わりのなかで起きるものであり、主に「暴言」「暴力」「興奮」「抑うつ」「昼夜逆転」「徘徊」「妄想」「失禁」などの症状が見られるようになります。
周辺症状はその人の育った環境や身近な人々との関わりが深く関係しているため、同じ認知症でも現れる症状は大きく異なります。
「暴言を吐く高齢者」「職員に暴行をする高齢者」「介護拒否をする高齢者」など症状が異なるため、職員も1人、1人接し方を変えていくといった工夫をする必要があります。
このように認知症の高齢者を介護するというのは、非常に大変な作業となります。
介護する側の気持ちに余裕があるときなら、冷静に対処できるかもしれませんが、そうでない場合はついカッとなってしまうこともあるでしょう。
(2)職員の慢性的な人手不足
介護業界は低賃金や重労働が指摘されているため、常に人手不足の状態が続いています。
もちろん地域や施設によっては募集をかければすぐに人員が集まりますが、スタッフが確保できてもすぐに1人で介護できるわけではないため、既存職員の負担は変わらないというケースは多いのです。
また高齢者の排泄や入浴のお手伝いをしている際に、腰痛などを発生する職員も多いです。
その結果、欠員が頻繁に出てしまうこともあります。
欠員の穴を埋めるべく既存職員がムリをして業務を行いますが、無茶をしすぎた結果、その職員も体調を崩してしまうといった悪循環に陥りやすいのも介護業界の特徴です。
当然、このような環境では疲労やストレスが蓄積されやすいため、虐待(いじめ)が発生しやすくなります。
(3)介護や虐待(いじめ)に対する知識不足
実は高齢者虐待の大半は職員の介護や虐待(いじめ)に対する知識不足から起きています。
平成27年度の養介護施設従事者等による高齢者虐待の発生要因は以下のとおりです。
内容 | 件数 | 割合(%) |
教育・知識・介護技術等に関する問題 | 246 | 65.6 |
職員のストレスや感情コントロールの問題 | 101 | 26.9 |
虐待を行った職員の性格や資質の問題 | 38 | 10.1 |
論理観や理念の欠如 | 29 | 7.7 |
人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ | 29 | 7.7 |
虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ | 22 | 5.9 |
その他 | 8 | 2.1 |
引用 : 厚生労働省
前述のように介護業界は慢性的な人手不足のため、未経験で入職しても満足な教育や研修を受けられずに独り立ちさせられるケースも目立ちます。
このような職員の場合、高齢者への接し方や正しい介護方法がわからないことも多々あります。
これに認知症高齢者の理不尽な暴言や暴行が加わると、さらにストレスは蓄積されていくため、虐待(いじめ)が起きやすくなっています。
また技術力などは問題なくても、虐待(いじめ)に関する知識が不足している場合も注意が必要です。
これは虐待(いじめ)の知識が身についていない職員は「どのような行為が虐待(いじめ)に該当するのか?」という点を正確に把握していないからです。
(4)職場の人間関係の悪化
人手不足、重労働、低賃金、認知症高齢者の理不尽な要求など、さまざまな弊害が重なってくると職場内の雰囲気もギスギスしたり、険悪なものになっていきます。
ここに介護のストレスが重なると、高齢者への接し方なども雑になりやすいです。
人はストレスが蓄積されると、冷静な判断がつきにくくなるため、自分よりも力や立場が弱い人間に不満をぶつける傾向にあることも関係しているでしょう。
4、高齢者を虐待(いじめ)した場合、刑事罰に問われることも
高齢者を虐待(いじめ)するとどのような罰則を受けるのでしょうか?
以下の表をご覧ください。
守秘義務違反 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
正当な理由なく立ち入り調査を妨害したとき | 30万円以下の罰金 |
身体的虐待 | 暴行罪・傷害罪 |
性的虐待 | 強制わいせつ罪・強制性交等罪 |
心理的虐待 | 脅迫罪・侮辱罪 |
経済的虐待 | 横領罪・窃盗罪 |
ネグレクト(介護や世話の放棄) | 保護者遺棄責任者遺棄罪 |
ネグレクト等による高齢者死亡時 | 傷害致死罪・遺棄致死罪・殺人罪 |
高齢者虐待防止法では「高齢者虐待対応協力者・市町村関係職員が職務上知り得た秘密を漏らしたときには1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金に処する」「立ち入り調査を拒んだり、妨害したときには30万円の罰金に処する」といった旨が記載されています。
ただし、この法律には虐待行為を行った者への罰則はなく、あくまでも守秘義務を守らなかったり立ち入り調査を拒んだ行為に対しての罰則です。
では「虐待行為を働いた者への罰則はないのか?」という点ですが、養護者による高齢者虐待は
- 暴行罪
- 強制わいせつ罪
- 横領罪
など、一般の犯罪と同様、刑法で処罰される可能性があります。
虐待(いじめ)する気がなくてもさまざまな要因(ストレスなど)が重なることで、起きてしまうのが高齢者虐待です。
刑事罰に問われると長い懲役や大きな額の罰金が待っている可能性もありますので、そうなる前に高齢者虐待に関する知識をしっかりと身につけておきましょう。
5、専門家の介入が必要かどうかの判断基準
高齢者虐待はその状況の深刻さから大きく3つに分類することができます。
自身が高齢者虐待に走ってしまう前に、虐待(いじめ)の程度や状況を正確に把握しておきましょう。
(1)支援や見守りが必要
支援や見守りが必要なレベルとは、虐待行為に該当するか否かの判断が難しい状態のときを指します。
この段階では高齢者の心身への影響がそこまで深刻な状態に陥っていないことが多いです。
そのため、すぐに大きな問題に発展することは少ないですが、自身の介護知識不足や介護に占める負担割合が大きくなったことで適切なケアができていない、もしくはできなくなる可能性は十分にあります。
このようなときは本人はもちろんのこと、家族や身内、介護サービス等の見直しを図ってみるのがよいでしょう。
(2)専門家の介入が必要
外から見て明らかに虐待(いじめ)だと判断できる状態のときは、専門家の介入が必要なレベルに達しています。
今のままの状態を放置しておくと、高齢者の心身状況に深刻な影響を与える可能性も高いです。
また高齢者虐待の厄介な点は当事者が虐待(いじめ)をしているという自覚がない点にあります。
そのため、気付いたときにはさらに深刻な状況を招いているといったケースも少なくありません。
自身が行っている行為が虐待(いじめ)か否かの判断が難しいときは、先ほど解説した高齢者虐待の分類と定義をチェックしてみましょう。
(3)一秒でも早く専門家の介入が必要
この段階は一言で説明するなら「緊急事態レベル」です。
高齢者の心身はすでにボロボロの状態で、放置しておくと「生命の危機」に陥る可能性が非常に高いレベルです。
殴る、蹴るといった明らかに虐待(いじめ)だと判断できる行為をしている場合はもちろんのこと、高齢者の状態が「日々悪化している」「寝たきり状態になってしまった」などのときは、一刻も早く専門家に介入してもらいましょう。
6、高齢者への虐待(いじめ)に関する相談先
ちょっとでも「虐待(いじめ)?」と感じたときは、すぐに専門家などに相談する癖をつけておきましょう。
ここではケース別にみた高齢者虐待に関する相談先をまとめましたので、ご覧ください。
(1)地域を管轄する保険福祉課
各都道府県、市区町村の役所などでは高齢者への虐待相談窓口や通報窓口を設置しています。
地域によっては養護者(家族等)による高齢者虐待、養介護施設(養護施設・介護施設)従事者等による高齢者虐待の相談窓口を別々に設けている場合もあります。
高齢者虐待に関する相談先の詳細は各都道府県や市区町村の公式ホームページ等に記載されていますので、一度チェックしてみましょう。
(2)弁護士
前述のように、介護施設等の職員による高齢者虐待も見受けられます。
もし、家族(高齢者)が施設で虐待(いじめ)を受けていると思われる状態のときは、弁護士に相談する方法もあります。
介護の現場では、高齢者のケガ防止や徘徊防止のために、身体拘束をするケースがしばしば見受けられるようです。
具体的には「ベルトやひも、柵などを使って行動を制限する」「鍵付きの部屋に隔離する」などがあります。
介護施設等では、緊急時ややむを得ない場合を除いて、身体拘束と疑われるような行為は禁止されています。
このような身体拘束等によって高齢者が受けた被害は、不法行為にあたる可能性があるため、治療費や精神的苦痛を受けたことによる慰謝料請求も行うことが可能です。
高齢者自身から家族に虐待(いじめ)の相談があればよいのですが、中には介護職員等が怖くて自分から言い出せないケースもあります。
そのため、家族も施設等に足を運んだ際には、高齢者の心身状態をしっかり確認しておきましょう。
その上で少しでも「虐待(いじめ)?」と思われるようなことがあった際には、弁護士への相談も検討することが大切です。
7、高齢者の虐待(いじめ)を防ぐためにできること
ちょっとした工夫によって高齢者虐待の件数を減らすことは十分に可能です。
ここでは高齢者への虐待(いじめ)を防ぐためにできることをまとめました。
(1)養護者(家族・親族)ができること
①仕事はなるべく辞めない(介護生活に入る前の生活をなるべく維持する)
病院への付き添いで頻繁に休暇を取ることが続くなど、仕事との両立が難しくなり仕事を辞めてしまうケースがあります。
両立が苦しくなり辞めるわけですが、辞めて楽に感じるのは最初だけでしょう。
育児・介護休業法などにおいて、
- 介護休業 →対象家族1人につき、通算して93日に達するまで取得することができる制度です。 3回を上限として分割取得可能です。
- 介護休暇 →対象家族1人につき、年度において5日間取得することができる制度です。 要介護状態にある対象家族が2人以上の場合は一律10日が限度となります。
- 短時間勤務
- 法定時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 転勤の配慮
が定められています。
就業規則等の会社規則にも規定されているはずです。
もちろん、これらの制度を利用することで解雇や不利益的扱いを会社がすることは許されません。
勤務先の人間関係にも配慮しながらになるかもしれませんが、これらの制度をうまく利用して、頑張りすぎないことをお勧めいたします。
なお、介護休業は、比較的長期の休暇です。
しかし、この休暇は、自分で介護をするためではなく、誰かに介護してもらえる環境を整えるために使うべきであると言われています。
この長期休暇で、市町村のサービスの手続きをしたり、要介護家族の1週間のスケジュールを組むなど、これからの環境作りに充てるようにすると良いでしょう。
②誰かにすぐ相談できる環境を整える
施設等を利用せずに家族で高齢者の介護を行う場合は「誰かにすぐ相談できる環境」を整えておきましょう。
高齢者の介護は想像以上に大変です。
誰にも相談できずに介護の負担を抱え込むことでストレスも蓄積されていき、最終的に虐待(いじめ)に発展してしまうケースは少なくありません。
③疑問点は問い合わせる
また介護の知識不足等により、無意識のうちに虐待(いじめ)になっていることもあります。
このようなケースを放置しておくと、高齢者の健康状態も悪化する可能性があるため、少しでも疑問に思ったことは各都道府県や市区町村に設置されている保健福祉課や地域包括センター などへ問い合わせてみましょう。
④施設で健全に対応してくれているか注意する
そして家族や親族がもうひとつ注意しておきたい点は、高齢者を介護施設等に預けているときです。
残念ながら現在は介護施設等に預けているからといって100%虐待(いじめ)が起きないわけではありません。
そのため、高齢者に会ったときに少しでも気になる点があったり、不安に感じることがあったときには、職員に確認しておくようにしましょう。
それでも改善傾向が見受けられない場合は、室内にカメラやボイスレコーダー(ICレコーダー)などを設置して、普段の介護の様子をチェックするのもおすすめです。
ちなみに近年は家族のこのような工夫によって、虐待(いじめ)が表に出るケースも少なくありません。
(2)養介護施設等や職員ができること
養介護施設等が高齢者虐待を防ぐためにできることは、職員の育成や教育です。
施設の運営者が正しい知識や技術を持っていても、実際に高齢者の介護にあたるのは職員です。
そのため、職員に認知症を患っている高齢者への正しい接し方などを周知させるといった行動は非常に重要です。
また施設等で起きた虐待(いじめ)に関しては家族からの相談で発覚することもありますので、家族や親族等ともまめにコミュニケーションをとることをおすすめします。
(3)地域の人ができること
高齢者の虐待(いじめ)を早期発見するには、地域のみなさんの協力も必要不可欠です。
虐待(いじめ)は基本的に施設や自宅などの密閉された空間で行われます。
そのため、介護職員や家族等に話を聞いても本当のことを話してくれないかもしれません。
「お隣でいつも怒鳴り声が聞こえる」「近くに住む高齢者に久々に会ったらあざができていた」など、どんな些細なことでもかまいません。
疑問に感じた点があれば、各地域に設置されている高齢者虐待に関する相談窓口に連絡を入れるようにしましょう。
高齢者虐待防止法でも、虐待(いじめ)の疑いがある高齢者を発見した者は、高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合、速やかに市町村に通報しなければならないと定められています。
まとめ
内閣府の調査では、今のままの状態が続くと、2065年には2.6人に1人が65歳以上の高齢者になると予測しています。
現代の日本は高齢者虐待を含めて、高齢者問題が社会問題化して久しいです。
これは単純に、高齢者の人口割合の増加なども関係していますが、高齢者に接する人たちの知識不足や技術不足も要因のひとつです。
1人、1人が正しい知識やケア方法を学ぶことで高齢者の虐待(いじめ)を減らすことは十分に可能です。
それでも困ったときは、地域の保健福祉課や弁護士などに速やかに相談するようにしましょう。
現在、高齢の家族がいらっしゃる方はぜひ参考にしてください。