PTAへの強制加入って問題じゃない?!PTA制度の6つの法的問題点とは

PTA

PTAの体制を批判するある匿名の人物の「PTA早くなくなれ、なくしてしまえ」という題名のブログが先日投稿されました。

すると、そのブログが、SNS等で人々の共感を呼び、インターネット上でも大きな話題となりました。「生徒の親である以上参加して当然」という空気のもと、保護者の方々が、事実上参加を強いられているPTA制度については、以前から議論が生じています。

果たして、保護者の方々に対し、PTAを強制加入とすることに法的な問題はないのでしょうか。そこで、今回は、PTA制度の法的問題点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が説明します。

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1、PTAへの加入はそもそも強制できない

PTAへの加入はそもそも強制できない

一部のPTAでは、保護者に対して任意加入であることを十分に説明せずに、入会を強制するような運用がなされることもあるようです。しかし、PTAは一般的な他の団体と同じく任意加入団体であり、保護者には「入会の自由」があります

この点については、保護者がPTA会費の返還を求めた裁判例でも、PTAが“任意加入団体であること”自体は争われていないことからもわかります(熊本地方裁判所判決平成28年2月25日)。したがって、PTAへの加入を強制するような運用は法的に問題があります。

2、強制加入だと思っていた場合の加入は無効

強制加入だと思っていた場合の加入は無効

保護者が十分な説明を受けずにPTAに入会してしまったとしても、「加入義務がないのにもかかわらず、加入義務があると錯誤(勘違い)していた場合」には、どうなるのでしょうか。 

この場合、加入者の錯誤(勘違い)において重大な過失がないかぎり加入は無効となり、元からPTAに加入していなかったことになります。仮に、PTAが加入していない人から会費を受け取った場合には、それは法律上の原因なく不当に利益を得たことになり、PTAは会費を返還する義務があります。

不当利得の返還を請求する権利の消滅時効は10年です。お子さんがすでに小学校を卒業されていても、支払った後の10年のあいだは、PTAに対し会費の返還を求められる可能性があります。 

3、加入しないことはできないと騙した場合はPTAへの刑罰も

加入しないことはできないと騙した場合はPTAへの刑罰も

「加入義務がないにもかかわらず義務があるかのように騙しPTA会費を交付させた場合」は、詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性があります。相手が騙したことを証明できる証拠(録音テープや書類等)を持って警察に告訴をおこなうと、警察が事件の捜査をすることになります。

このとき、弁護士に告訴状の提出を依頼することで、弁護士が事前に必要な証拠の収集をおこなったり、意見書を付したりすることができるため、一般の方が告訴するよりも警察に受理される可能性は高くなると考えられます。

4、安易に会費を払うべからず

安易に会費を払うべからず

PTA活動はしたくないが会費を支払うのはかまわないと考えて会費を支払った場合」は、入会の意思があったと裁判所に認定されてしまうおそれがあります。実際に前述の裁判例では、保護者が「会費」と記載された封筒にお金を入れて納付した事実や、退会届を提出した事実(入会がなければ退会もしないという理屈で)が重視され、加入の意思があったと判断されました。

そのため、PTAに加入したくない場合は、会費も支払わないほうがよいでしょう。どうしてもお金だけは支払いたいという場合には、加入の意思はなく寄付であることを明示し、加入の意思がないことが客観的にわかる形で支払うのもひとつの方法かと思います。

5、退会を阻止することも、名簿を学校と共有することも違法

退会を阻止することも、名簿を学校と共有することも違法

入会の自由と同様に退会の自由もありますから、「退会の自由がないかのように騙して退会を阻止した場合」も、同様に違法性があります。また、PTAには入退会の自由に関する問題点のほかに、個人情報の取り扱いに関する問題点もあります。

 公立学校は生徒の教育等の観点から、通常、生徒や保護者の個人情報を持っていますが、別団体であるPTAはそもそも生徒や保護者の個人情報を持っていないはずです。それにも関わらず、公立学校が生徒や保護者の同意を得ず、かつ正当な理由もなく、生徒や保護者の個人情報をPTAに共有することは個人情報保護「条例」違反や個人情報保護「法」違反になりえます。

もっとも、これまでは個人情報の提供を受けたPTAを罰することはできませんでした。PTAは前述の個人情報保護「条例」も、個人情報保護「法」についても、適用対象とならなかったためです。これまでの個人情報保護法は、保有する名簿の件数が5000件以上の団体を対象としていました。

しかし、国内の小学校、中学校および高校で5000人以上の生徒をもつ学校はないと思われることから、個人情報保護法の適用を受けるPTAは存在しませんでした(ただし、卒業した生徒の個人情報を保有し続けた場合は5000件以上になり適用を受ける可能性がありました)。

 しかし、2017年5月30日からは改正個人情報保護法が施行され、5000件の制限が撤廃されました。その結果、すべてのPTAが個人情報保護法の適用を受けることになります。そのため、PTAが学校から生徒や保護者の同意を得ず、かつ正当な理由もなく名簿の提供を受ける行為は、違法な行為になります。

 したがって、今後はPTAが会員名簿を作る際には個人情報の取り扱いについて、基本的に本人の同意を得る必要があります。これまでのように、PTAが正当な理由なく、生徒や保護者に無断で学校から提供された名簿の情報を用いてPTAの名簿を作成した場合には、違法な行為となる可能性があります。

6、役員強制も違法性あり

役員強制も違法性あり

では「PTAに入るのは構わないが役員はやりたくない」という場合はどうでしょうか。PTAに入会している保護者に対し、活動への参加や役員になることを強制することに違法性はないのでしょうか。この点については、保護者の意思に反して強制をした場合には違法となる可能性が高いと言わざるを得ませんPTAに加入することと、PTA活動への参加義務や役員への着任義務を受忍しなければならないこととは、基本的には別だと考えられるからです。

ただし、活動参加義務や役員着任義務が規約等で定められていて、その規約に同意していれば、後から拒むことは難しいと考えられます。もっとも、ほとんどのPTAではそのような規約を定めて加入時に同意を取り付けるようなことはおこなっていないと思われます。また、仮に活動参加義務や役員着任義務に同意していたとしても、退会の自由があるためPTA会員をやめることで活動への参加や役員への着任を拒めると思われます。 

法的な論理を主張するのは、大げさだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、PTA活動が原因で仕事や家事等の日常生活に支障をきたしているという方も少なくないと思います。

そういった方々が、冒頭にお話したように、ブログに思いをつづり、なんとか鬱憤を晴らしているのかもしれません。しかし、PTAで生じている問題はどうにもならない問題ではありません。おかしなことはおかしいと判断できる材料として、今回お話した内容を参考にしていただければと思います。

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