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強姦冤罪事件はなぜ起こる?無実の罪で疑われたときに知るべき5つのこと

強姦 冤罪

強姦冤罪事件とは、実際には強姦罪(現在の刑法における罪名は「強制性交等罪」)の犯人ではないのに、犯人として疑われたり、罰せられたりする事件のことをいいます。

「なぜ、そんなことが起こるの?」と疑問に思う方も多いことでしょう。しかし、日本の刑事事件の手続きの中では、犯人とされた男性が「やっていない」と主張しても、被害者と名乗る女性や少女の証言の方が信用されやすいのが現実です。他に決定的な証拠がないまま、有罪判決が下されるケースが多くなっています。

冤罪事件は、あらゆる犯罪について起こり得ますが、強姦罪は、犯罪の中でも五年以上の有期懲役と刑罰が重い重罪です(刑法第177条)。強姦冤罪事件で犯人とされる人が受ける苦痛の大きさには、計り知れないものがあります。

今回は、

  • 強姦冤罪事件はなぜ起こる?
  • 実際に起きた強姦冤罪事件の事例
  • 強姦冤罪事件を回避するためにやるべきこと

などについて、刑事事件の弁護経験が豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説していきます。

ご自身やご家族などの身近な方が強姦罪で疑われ、お困りの方の手助けとなれば幸いです。

※「強姦罪」は刑法改正によって2017年7月から「強制性交等罪」という名称に変更されています。しかし、この記事では、従来の「強姦罪」という名称を用いることとします。

性犯罪については以下の関連記事をご覧ください。

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1、強姦冤罪事件とは

強姦冤罪事件とは

強姦冤罪事件とは、実際には強姦罪の犯人ではないのに、犯人として疑われたり、罰せられたりする事件のことです。

無実であるのに、被害者と名乗る女性の「この人に無理矢理に関係を持たされた」という証言を捜査機関や裁判所が信用し、有罪判決が下されるケースが多いです。

犯人とされた人と被害者と名乗る女性がそもそも性交等をしていなかったり、合意上の行為だったにも関わらず被害女性が「無理矢理だった」と訴えたりするケースがあります。

犯人とされた人が、取り調べや刑事裁判で真実を訴えたのに信用されなかったケースや、無実の証明を諦めて「私がやりました」と虚偽の自白をしたケースもあります。

いずれにしても、無実の人が長期間、犯罪者として刑務所に服役させられるという事態は、重大な人権侵害に当たります。

強姦冤罪事件は、決して見逃してはならない重大問題です。

2、実際に発生した強姦冤罪事件

実際に発生した強姦冤罪事件

強姦冤罪事件は実際に時々発生しており、テレビや新聞などで報道されることがあります。

本章では、有名な3つの実例をご紹介します。

(1)御殿場事件

2001年9月、静岡県御殿場市の御殿場駅近くで当時15歳の少女が集団強姦未遂に遭うという事件が発生し、10人の少年らが逮捕されました。

年長の少年ら4人が起訴されて刑事裁判を受け、あとの少年らは少年審判の手続きに付されました。

刑事裁判では少年らが無罪を主張し、最高裁まで争われましたが、最終的に4人全員に対して有罪判決が言い渡されています。

4人の少年らは刑務所に服役し、2010年8月までに、全員出所しています。

元少年らは出所後も無実を訴え、被害者とされる元少女に対して2,000万円の損害賠償を求める民事裁判を起こしましたが、敗訴しました。

本事件では、被害者とされる少女の主張内容に矛盾が多い上、少年らに極めて有力なアリバイがありました。

以上のことから、再審請求はされていないものの、冤罪の可能性があるのではないかと考えられ、世間の注目が集まった事件です。

(2)氷見事件

富山県氷見市で、2002年1月~3月に相次いで発生した強姦事件です。

本事件では、無実の男性が誤認逮捕され有罪判決を受けて服役した後、真犯人が見つかったために冤罪が発覚しました。

逮捕された男性は、取調官に対する恐怖心のため、言われるがまま罪を認め、刑事裁判でも一貫して自白しています。

刑事裁判では国選弁護人が就き、有罪を前提として執行猶予を狙った弁護活動を行ったものの、実刑判決が下りました。

真犯人が見つかった後に再審の裁判が開かれ、弁護人だけでなく検察官も無罪を主張するという異例の展開で、2007年10月に無罪判決が言い渡され、確定しました。

(3)大阪市強姦虚偽証言事件

大阪府大阪市で2008年9月、再婚相手の連れ子の娘である少女を強姦したとして男性が逮捕されました。

男性は刑事裁判で無罪を主張し最高裁まで争いましたが、2011年4月、懲役12年の実刑判決が確定し、服役しました。

しかし、男性が服役中の2014年9月、元少女が男性の弁護人に対して、「被害を受けたという証言は嘘だった」と告白します。

事件の背景は非常に複雑ですが、簡単に言うと、少女の母親が男性の犯行を疑い、少女は母親には逆らえないため告訴せざるを得なかったとのことでした。

もっとも、その後に就職して母親と距離を置くことになったので、真実を打ち明けたという顛末です。

その後、男性は釈放され、再審の裁判では検察官も無罪判決を求めて2015年10月、無罪判決が言い渡されて確定しました。

3、強姦冤罪事件はなぜ起こる?

強姦冤罪事件はなぜ起こる?

世間の注目を集めた強姦冤罪事件を3つ紹介しましたが、未だ明るみになっていない冤罪事件もあることが考えられます。

強姦冤罪事件は、なぜ起こるのでしょうか?主な理由として、以下の3点が挙げられます。

(1)取り調べで自白を強要されることがある

日本の刑事事件の手続きでは、以前から取調官が脅しや暴行・偽計・誘導・泣き落としなどのさまざまな手段を使って、被疑者に対して自白を迫ることがあると言われてきました。

実際に、前記の氷見事件では誤認逮捕された男性が、取調官に対する恐怖心から、虚偽の自白をしています。

御殿場事件でも、少年らの主張によると取調官から自白を強要されたとのことです。

近年では、いくつもの冤罪事件が明るみに出てきたこともあり、捜査機関は無理な取り調べを行わないように注意しています。ですが、現在でも何らかの手段で自白の強要が行われている可能性は大いにあります。

(2)被害者の供述が信用されやすい傾向にある

前項でご紹介した3つの強姦冤罪事件では、いずれも被告人が「被害者の供述は信用できない」と主張して無罪を争っています。

ですが、結果としてはことごとく、被告人の供述よりも被害者の供述の方が信用され、有罪判決が言い渡されました。

刑事裁判では一般的に、「被告人は刑罰を免れるために嘘をつく可能性がある」と考えられます。

一方で、「被害を受けた人がわざわざ嘘をつく可能性は低い」と考えられる傾向にあります。

強姦事件の場合、「恥を忍んで被害の事実を述べる女性が嘘をつくとは考えがたい」とされる傾向が強いように思われます。

大阪市強姦虚偽証言事件の第1審となった大阪地裁の判決では、

「弱冠14歳の少女がありもしない強姦被害等をでっち上げるまでして養父を告訴すること自体非常に考えにくい」

とされ、被告人の主張は一蹴されているのです。

(3)日本の刑事裁判の有罪率が極めて高い

日本の刑事裁判の有罪率は、毎年99%を超えています。

被疑者が捜査段階で虚偽の自白をして供述調書をとられてしまうと、刑事裁判で無罪を主張しても、自白調書が証拠として採用されてしまうケースがほとんどです。自白が虚偽であることを法廷で立証することは、非常に難しいことになります。

法律上は、「疑わしきは罰せず」というのが刑事裁判の原則ですが、実際上は被告人・弁護人の主張を裁判所に認めてもらうことは容易ではありません。

4、こんな場合は冤罪になる?強姦冤罪事件のパターン

こんな場合は冤罪になる?強姦冤罪事件のパターン

人違いで誤認逮捕され、有罪判決を受けたようなケースは明らかに冤罪です。

一方で、実際に性交等が行われたケースでは、冤罪かどうかの判断が難しいこともあります。

刑事裁判で争われることが多いケースとして、以下の3つのパターンがあります。

(1)相手が合意していた

強姦罪は、暴行または脅迫によって相手の意思を制圧し、強制的に性交等を行う犯罪なので、相手が合意していた場合には成立しません。

ただ、相手が行為当時には合意していたにもかかわらず、後になって「無理矢理だった」と訴えるケースがあります。

行為後に2人の関係がこじれて女性が腹いせのために強姦罪で訴えることや、周囲から問い詰められ、「無理矢理された」と答えることがあるようです。

性交等は密室内など人目に付かないところで行われることが通常であるため、「合意があったこと」を立証するのは難しいことが多いものです。

その場合、被害者とされる女性の供述が信用されたり、被告人の虚偽の自白調書が証拠として採用されたりすると冤罪が発生することになります。

(2)合意があると誤信して行為に及んだ

相手の合意がないのに、合意があると誤信して行為に及んだ場合は、強姦罪の故意がないため無罪となります。

ただ、このような言い訳を安易に認めると、あらゆる強姦事件が無罪となりかねません。

刑事裁判では行為当時の状況を一般人が見たときに、「合意があると行為者が信じることが通常かどうか」が判断されます。

被害者とされる女性の供述が信用されやすいことと、被告人の虚偽の自白調書が証拠として採用されやすいことから、冤罪が発生する可能性が十分にあるといえます。

(3)酒に酔っていて行為を覚えていない

酒に酔って前後不覚の状態に陥った人が、合意のない相手と強制的に性交等に及ぶことがあります。

刑法では心神喪失者の行為は罰しないと定めらており(同法第39条1項)、理論上はこの場合も無罪となります。

意識のない状態での行為について、責任を問うことはできないからです。

しかし、この条文を安易に適用すると、酒に酔った人の行為がすべて許されることにもなりかねません。

刑事裁判では、「前後不覚の状態に陥るほど酒を飲んだ行為」を問題視します。

責任を問うことができない状態にいたる原因を自ら作り出し、犯行に及んだ場合は完全な責任を問うべきであると考えられ、有罪とされます。

以上のような考え方のことを「原因において自由な行為の理論」といいます。

行為者が「酒に酔って覚えていない」と主張しても、自らが酒を飲んで前後不覚の状態となり、強姦罪に該当する行為をした以上、冤罪とはなりません。

ただし、例えば相手や第三者から無理矢理に酒を飲まされた場合のように、「原因」を自ら作ったわけではないケースでは、冤罪となる可能性もあります。

5、合意の上の行為だったのに訴えられた!強姦冤罪を回避する方法

合意の上の行為だったのに訴えられた!強姦冤罪を回避する方法

合意の上での行為だったにもかかわらず、相手から強姦を主張されたときはどうすればいいのでしょうか。

強姦冤罪事件を回避するためには、以下の対処法が重要となります。

(1)相手と示談する

可能であれば、相手と話し合って解決することが理想的です。

事情を説明し、自分に何らかの非があれば謝罪するなどして、相手の理解を得ることです。

相手が警察に告訴や被害届を提出する前に和解できれば、それで解決となります。

告訴や被害届を提出した後でも、相手に取り下げてもらえれば、刑事事件の手続きはそこで終了する可能性があります。ただし、親告罪ではありませんので、犯罪自体は成立します。

通常は、示談金または解決金を提供して示談します。

ただし、見ず知らずの相手の場合は、最初から解決金を獲得することを目的とした美人局である可能性もありますので、その点には注意が必要です。

(2)虚偽の自白をしない

警察や検察は、基本的に被疑者を疑っていますので、自白を求めてくるものです。

近年では、取調官によるあからさまな暴行や脅迫は少なくなっています。

しかし、「認めれば早く出られる」「認めなければ長年、刑務所で暮らすことになる」などといった甘い言葉で自白に誘導することは、今でもあるようです。

逮捕・勾留により身柄を拘束され、同じことを何度も問い詰められると精神的に疲弊してしまい、自白してしまう人も少なくありません。

しかし、虚偽の自白は絶対にしてはいけません。

先ほどからご説明しているように、自白調書をとられてしまうと、刑事裁判でそれが証拠となって有罪となる可能性が非常に高いからです。

「取調官には言っても分かってくれないから、裁判で本当のことを話そう」という考えは、通用しないと考えるべきです。

取調官が言い分を聞いてくれない場合は、弁護士に相談したり、黙秘権を使いましょう。

(3)取り調べ状況を記録しておく

刑事裁判で虚偽の自白調書が証拠として採用されやすいのは、それが虚偽であることを立証するのが難しいからです。

取り調べは密室で行われますので、どのような取り調べが行われたのかを立証するのは困難です。

そこで役に立つのが、取り調べ状況を記録しておくことになります。

毎日、何時から何時まで取り調べを受け、取調官からどのようなことを言われ、自分がどのようなことを話したのかなどを、日記のように自分のノートに記録していくのです。

このノートも、刑事裁判で証拠として提出できます。

継続的に記録されたノートの記載内容は、法廷での供述よりも信用されやすくなります。

取調官の不当な言動が記載されていれば、調書に記載された自白が、「任意に述べたものではない」「信用できないものだ」ということを立証できる可能性があります。

(4)すぐに弁護士を呼ぶ

強姦罪に限りませんが、容疑をかけられて逮捕・勾留されたときは、すぐに弁護士を呼びましょう。
被疑者は取り調べに応じる義務はありません。
むしろ弁護士を呼び、面会する権利があります。

接見に来た弁護士に事情を話せば、取り調べの対応についてアドバイスが受けられます。
不当な取り調べが行われている場合には、弁護士から警察署や検察庁へ抗議してもらうことも可能です。

弁護士に相手方と交渉してもらうことによって、告訴や被害届を取り下げてもらうことが可能な場合もあります。

また、弁護士が「被疑者ノート」という冊子を差し入れてくれることもあります。

被疑者ノートは、取り調べ状況を記録しやすい体裁で作成されていますので、そこに日々の取り調べ状況を記録していきましょう。

6、無実の罪で疑われたときは弁護士に頼りましょう

無実の罪で疑われたときは弁護士に頼りましょう

無実の罪で疑われたとき、最も恐ろしいことは、刑事事件の手続きについて無知であることです。

取調官は、いっけん和やかな取り調べをしているようであっても、被疑者の無知をいいことに言葉巧みに自白を引き出してくる可能性があります。

いつの間にか自白調書を取られてしまい、そのまま有罪判決を受けてしまうケースも少なくないと考えられます。氷見事件でも、被疑者段階では弁護人がついておらず、その間に自白調書をとられてしまっています。

現在、勾留段階から国選弁護人を選任できるようになっていますが、冤罪を回避するためには逮捕されたらすぐに弁護士を呼んでサポートを受けることが大切です。1人で戦おうとせず、刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士を頼り、適切に対応していきましょう。

まとめ

冤罪事件は、無実の人が疑いをかけられたり、有罪となり刑罰を受けることですので、誰もが巻き込まれる可能性があるといえます。

刑事事件の手続きでは、「本当のことを話せば分かってもらえるはず」という考えは通用しにくいのが実情です。

無知のまま1人で対応していると、強姦冤罪事件の被害者となってしまいかねません。無実なのに疑いをかけられたときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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