弁護士相談実施中!
当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には弁護士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にベリーベスト法律事務所までお問い合わせください。
お電話でのお問い合わせ
0120-489-082
メールでのご相談

レシートに氏名表示は義務?従業員はレシートの氏名表示を拒めるのか

レシート 氏名

2017年、朝日新聞に「担当者名のレシート印字は危険」という投書が掲載されました。投稿したのは23歳の東京都の女性です。 

女性がアルバイトをしていた店ではレシートにレジ担当者の氏名が印字されるようになっており、それを見た客がメッセージを送ったようです。

果たして、従業員の意思で氏名表示を拒むことはできるのでしょうか。弁護士が詳しく解説します。

弁護士相談実施中!
当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には弁護士にご相談頂いた方がよい可能性があります。
お気軽にベリーベスト法律事務所までお問い合わせください。
お電話でのご相談
0120-489-082
メールでのご相談

 1、レシートに氏名表示の必要性はある?小売店レジ担当者の疑問

従業員の氏名表示は小売店側で当然のようにおこなわれており、普段それほど意識することはなかったでしょう。

しかし過去に氏名表示の是非について裁判で争われたことがあります。以下2つの裁判例は、郵便局職員に対してネームプレートの着用を義務付けたことの是非が問題となっています。

「氏名表示の目的、必要性、氏名表示の態様、氏名を表示することによる不利益の程度を総合して判断して、氏名表示を強制することに正当な理由があれば義務づけも許される」(仙台地方裁判所判決平成7127日)

「会社が従業員に対してするネームプレートの着用命令が必要かつ合理的なものであるかぎり違法性はなく、ネームプレート着用によって原告らの氏名の表示にかかわる法的な利益を侵害されたものということができないことは明らか」(東京地方裁判所判決平成11128日)

いずれも結論としてネームプレートの着用について義務づけが認められた事例です。

諸要素を総合考慮して当否を決定するという立場をとっており、義務づけが許される条件として「氏名表示の目的、必要性」「氏名表示の態様」「氏名表示による不利益の程度」の点を考慮し、正当な理由があることを求めています。

雇用者側が意図する氏名表示の“目的”として、対外的には「問合せへの対応」や「信頼の獲得」対内的には「責任感や連帯感の醸成」という点が挙げられます。では問題となった投書にある、小売店の従業員の場合でも同様に判断されてしまうのでしょうか。 

利用者からの「問合せへの対応」は、氏名表示をせずとも、雇用者が各従業員に固有の識別番号を割り当てて、識別番号を印字することで目的を果たすことができ、代替できる手段はあります。

また小売店の場合、問合せは従業員単位でよりも、店単位で行われることが多いでしょうから従業員個人を特定しなければならない必要性は低いでしょう。

「信頼の獲得」が氏名表示の目的となる場合、商品が高額かつ接客の内容が利用者のニーズを汲み取り商品を勧めるようなもの、あるいは客の個人情報を取り扱うようなサービスであれば、氏名の開示は妥当と言えます。

投書にあったような小売店のレジ担当者にそのような職務が課されていることは想像しにくいため、氏名を開示する必要性は低いでしょう。 

従業員間の「責任感や連帯感の醸成」についても、必要性という観点では根拠にはなりません。責任意識によるミスの削減は研修や指導によって達成することが可能ですし、連帯感を醸成するといっても、小売店の従業員にそこまで強い一体性は求められていないはずです。

そして、裁判例の当時は郵政民営化の前であり郵便局職員は公務員です。利用者に対する信頼の獲得や問い合わせ対応の便宜を図ることが強く求められる立場にあったといえます。アルバイトと公務員という立場の違いも考慮すると、氏名表示の必要性の低さがおわかりいただけると思います 

2、若い女性にとってフルネームでの氏名印字は危険 

氏名表示により生じる従業員への不利益も考慮しなければなりません。雇用者が氏名表示を義務付けるために確認すべき条件のひとつ「態様」──すなわち氏名表示の体裁は、フルネームか名字のみか、漢字か平仮名または片仮名かによって、個人特定のリスクが変わってきます

投書の事例はフルネームでの印字でした。態様としてもっとも詳細で、被雇用者にとって非常に重いものとなります。

さらに裁判例の郵便局員のネームプレートの場合は短時間目に入るだけであるのに対し、レシートは店外に持ち出されるうえ長期間保管しておけるものですから、余計に従業員の不利益は大きくなってしまいます

実際に、本件の投書者は見知らぬ人物からメッセージを送られ、居住地域について尋ねられ恐怖を感じる「不利益」を被っています。若い女性はストーカーや性犯罪の対象となるリスクが高いため、不利益の程度はより大きいといえます

また、少人数の会員制の店よりも不特定多数の人が訪れる店のケースのほうがリスクが高く、不利益の程度が大きくなります。

また、氏名表示の義務付けが認められた裁判例の判決時点では、日本でFacebookのような実名SNSがあまり普及していなかったりと、社会的な背景も異なります。

現在では、わずかな情報を手掛かりにSNSを通して本人のプライバシーに関わる情報まで辿り着くことができますし、いったん情報が拡散してしまうと、全て回収・消去することも困難であるため、個人が被る危険性は計り知れないのです。

以上のような点から判断すると、少なくとも小売店アルバイトのレジ業務において、従業員のフルネームをレシートに印字する必要性があるとは断言できません

しかし、店舗側が固く「規則」として氏名表示を義務付けている場合、雇用時に同意してしまったのならば規則違反となってしまいます。こちらは事前に確認をおこなうべき点ですのでご注意ください。 

今回の投書をおこなった女性の店では、以降、レシートへの印字は名字のみになったそうです。

この出来事をきっかけに、従業員のプライバシー権についての議論が建設的に発展すること期待します。SNS隆盛の現代、これまで以上に個人情報保護の必要性について再検証すべきときがきています。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

弁護士相談実施中!


当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には弁護士にご相談頂いた方がよい可能性があります。

お気軽にベリーベスト法律事務所までお問い合わせください。

弁護士費用保険のススメ

今すぐには弁護士に依頼しないけれど、その時が来たら依頼を考えているという方には、 ベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。

ベンナビ弁護士保険への加入
ベンナビ弁護士保険への加入

何か法律トラブルに巻き込まれた際、弁護士に相談するのが一番良いと知りながらも、どうしても費用がネックになり相談が出来ず泣き寝入りしてしまう方が多くいらっしゃいます。そんな方々をいざという時に守るための保険が弁護士費用保険です。

ベンナビ弁護士保険に加入すると月額2,950円の保険料で、ご自身やご家族に万が一があった際の弁護士費用補償(着手金)が受けられます。離婚、労働トラブル、ネット誹謗中傷、自転車事故、相続、子供のいじめ問題などの場合でも利用可能です。(補償対象トラブルの範囲はこちらからご確認下さい。)

ご自身、そして大切な家族をトラブルから守るため、まずは資料請求からご検討されてはいかがでしょうか。

ベンナビ弁護士保険の資料を無料でダウンロードする

提供:株式会社アシロ少額短期保険 KL2022・OD・211

閉じる

相談受付中
  • 電話で相談予約
平日9:30〜21:00、土日祝9:30〜18:00
  • お電話でのお問い合わせ
  • 0120-489-082
  • 平日 9:30~21:00 / 土日祝:9:30~18:00
  • 弁護士相談受付中!
  • 労働問題に関するご相談はベリーベスト法律事務所まで!
    あなたの味方となる弁護士と一緒に解決策を考えましょう
  • ※ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます