ストーカーが諦めるときとはどんなタイミングなのでしょうか。
この記事では、
- 暴力や性犯罪などの犯罪被害をストーカーから受けた、または受けそうな方
- しつこいストーカー行為(以下で解説する「つきまとい」など)に悩まされている、または悩まされそうな方
といった、緊急を要するストーカー対策が必要な方々に向けて、ストーカーが犯罪や嫌がらせを諦める方法をご紹介します。
この記事が、ストーカー被害でお悩みの方々のお役に立つことができれば幸いです。
ストーカー被害にあった際の対応策については、以下の関連記事をご覧ください
1、ストーカーが諦めるときはあるのか
ストーカーにストーカー行為を諦めさせることはできるのでしょうか?
(1)ストーカーがストーカー行為を諦めるときはない
ストーカーには「思いを伝えればわかってもらえるだろう」とか「話せばわかるだろう」という常識的な考えは通用しません。
また、常識が通用しませんから、こうしたストーカーはときに予想もしない行動に出ることがあります。
「まさかここまでしないだろう」という考えは今すぐ捨てましょう。
その「まさか」が今日か明日にでも起こり得ます。
(2)諦めるのを待つのではなく「諦めさせる」ことが必要
こうしたストーカーに対しては、「こうすれば諦めてくれるだろう」などとストーカー行為を諦めることを相手の自主性に任せていても無駄です。
むしろ,ストーカー行為を繰り返す人の中には、心の底ではやめようと思っていても、自分の意思ではやめられない人さえいるのです。
したがって、ストーカー行為については、「強制的に諦めさせる」ことが必要です。
2、ストーカーの心理
相手のストーカー行為を諦めさせるためには、相手の心理を知ることが重要です。
これについては、オーストラリアのストーカー研究の第一人者であるミューレン医師が発表している、以下の4つの型が分かりやすいためここで紹介します。
(1)親密追求型
この型の人は「あなたと親密になりたい」という気持ちを抱いています。
あなたの気持ちはともかく、あなたへ求める理想や要求が高くなり、「自分にはこの人しかいない」などという気持ちになります。
あなたがその気持ちに答えないと、「これだけ好きなのにどうして受け入れてくれないのか」などと被害妄想に陥り、それがやがて復讐心へと変わります。
(2)無資格型
この型の人は、あなたのことを「自分の要求をのむ当然の存在」ととらえています。
支配的、高圧的態度に出るタイプの人です。
つまり、この型の人は、あなたの立場になって物事を考えることができない人です。
そして、あなたが相手の要求をのまないと、どんな手段を使ってでも要求をのませようとしてきます。
(3)憎悪型
この型の人は、(1)の親密追求型とは真逆の人です。
つまり、あなたと親密になりたいからではなく、あなたが「憎い」からストーカー行為を行います。
また、あなたと顔見知りでなくてもこの型の人がいることに注意を要します。
つまり、仕事や人間関係など、日常生活でストレスを抱えている人が、ストレス発散のために自分より弱い存在だと考えているあなたに向かってストーカー行為を行うのです。
(4)拒絶型
この型の人は、あなたから交際や婚姻関係を拒絶された人で、あなたと顔見知りです。
別れ話などで「自分が拒絶されたことが信じられない」という気持ちになります。
「親密追求型」とあわされば「何としてでも寄りを戻したい」、「憎悪型」とあわされば「拒絶することが許せないから罰を与える」という気持ちに陥ります。
3、ストーカーにストーカー行為を強制的に諦めさせる方法
ストーカーにストーカー行為を強制的に諦めさせる方法は、あなた自身の発言を何か工夫するということではなく、公権力、つまりは警察が対応するしかありません。
それが一番、効果的です。
(1)証拠を残す、保管する
警察に頼る前に、まずはあなた自身にもしていただきたいことがあります。
それは証拠を残す、保管するということです。証拠がなければ警察も動きづらいためです。
警察のホームページでは、具体的には以下のことが紹介されています
(注)ただし、緊急度の度合いにより対応は異なります。ストーカーにより深刻な被害に遭われている場合は、直ちに警察に相談、通報してください。警察総合相談電話番号:#9110(携帯電話からも可)。
- つきまとい等(※)の被害があった場合、日時、場所、状況等をノート等に記録する
- ストーカーからの手紙その他の送付物、FAX等を残しておく
- ストーカーからの着信履歴やメール、留守番電話の録音内容等を残しておく
- ストーカーからの電話の内容を録音する
- ストーカーのつきまとい等の行為をカメラやビデオで撮影する
※つきまとい等とは
つきまとい等とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、ストーカー規制法2条1項1号から8号に掲げられた行為をすることをいいます。
〈ストーカー規制法2条1項1号から8号〉
1号:つきまとい、待ち伏せ、住居等の付近における見張り、住居等への押し掛け等
2号:行動を監視していると思わせるような事項を告げること
3号:面会等要求
4号:著しく粗野又は乱暴な言動
5号:無言電話、拒否されたにもかかわらず連続してする電話、メール送信等
6号:汚物等の送付等
7号:名誉を害する事項を告げる等
8号:性的羞恥心を害するような事項を告げる、そのような写真、記録媒体の送付等
(2)警察へ相談
①被害の届出(刑事手続)
暴行、脅迫、名誉棄損あるいはストーカー行為など、現にあなたが深刻な犯罪被害に遭われている場合は、ただちに警察に相談、通報しましょう。
「警察に相談しにくい」と思っている暇はありません。
ストーカーは今日、明日にでもあなたに甚大な危害を加えにくるかもしれません。
警察に相談、通報し、被害届を出せば、警察は捜査を開始してくれるはずです。
②警告(行政指導)の申し出
警告はストーカー規制法4条に基づく措置です。
ストーカーに対し、警告書という文書による交付かあるいはその暇がないときは口頭で、さらにつきまとい等をしてはならない旨を告げます。
警察に警告を発してもらうには、あなたからの申し出が必要です。
③禁止命令等(行政処分)の申し出
禁止命令等はストーカー規制法5条に基づく措置です。
ストーカーに伝える方法は警告と同様ですが、禁止命令等に違反した場合は罰則が設けられていますから、その意味で警告より強力です。
ただし、禁止命令等は警告より慎重に手続が進められますし、その効力は、禁止命令等をした日から起算して1年とされています(ただし、期限の延長を申し出ることもできます)。
禁止命令等は、あなたの申し出に基づいてなされるか、あるいは警察の職権で発せられることがあります。
④ 援助の申し出
援助はストーカー規制法7条に基づく措置です。
援助の内容は、「ストーカー規制法施行規則」13条に規定されています。
その代表的なものを挙げると、
4号 ストーカー被害防止のための活動を行っている民間団体の紹介
6号 防犯ブザーその他被害防止に資する物品の貸し出し等
8号 その他ストーカー被害を防止するための必要な援助(パトロール等)
などです。
なお、警察はこの援助の一環として、「110番緊急通報登録システム」を設けています。
これは、あらかじめ被害者の電話番号や住所、相談の内容を通信指令のコンピューターに登録しておくことにより、緊急時に110番通報すると、登録した内容が即時にコンピューター画面に表示され、警察が事件の内容をいち早く知ることができるとともに警察官の現場到着時間が短縮される、というシステムです。
なお、この援助を受けるためにはあなたからの申し出が必要です。
4、警察が動かない場合はどうすればいいのか
残念ながら、警察は、あなたが犯罪被害やストーカーの被害を申し出ても、その申し出を受けてくれないことがあります。
理由としては、
- 犯罪性が認められない
- 犯罪性は認められても証拠がない、あるいは少ない・弱い
ということが考えられます。
(1)NPO法人へ相談
ストーカー専門のNPO法人というのもあります。
NPO法人では、専門カウンセラーがあなたとあなたの悩みを共有し、警察、弁護士、その他関係機関との橋渡しを行っています。
相談は無料ですから、お気軽に相談してみてください。
- NPO法人(特定非営利法人「よつば」)
住所:東京都台東区上野3-9-5久里ビル
電話:050-5877-7924
URL:https://npoyotuba.com/
※電話、WEBからの相談も受け付けているようです。
(2)民間の警備会社へ依頼
民間の警備会社では、ストーカー対策を行なっているところが多いでしょう。
「ストーカー=警察」と思いがちですが、警察は「公の機関」、つまり国民の税金で動いている機関です。依頼者の希望を第一にきく、というよりも、公平に、正当に仕事を行うという機関なのです。
そのため犯罪性の判断や証拠の問題で、動いてくれないということが起こります。
その点、民間の警備会社は違います。民間の警備会社は、依頼者の希望を第一に動きます。
警察と違い有料ではありますが、命や身体を守るためです。
強い証拠がないけれども絶対に危ない、というような場合で、警察が思うように動いてくれないというときは、警備会社に依頼することは選択肢にもっておくべきでしょう。
(3)弁護士へ相談
警備会社にとりあえずの危険回避を依頼できたとしても、ストーカー対策は短期決戦できるものではありません。有料ということもあり、長期で利用できるとは限りません。
やはり最終的には警察を動かすべきでしょう。
ここでは迷わず弁護士へ相談してください。
弁護士は、あなたが犯罪被害に遭っている、あるいは遭いそうだということを法的な観点から検討して、効果的に警察に訴えることができます。
また、弁護士なら、警察に訴えかけるための効果的な証拠の収集方法、その他の取るべき対策についての助言をすることや、あなたとともに行動することも可能です。
(4)一時避難、または引越しを
自らできる対策としては、一時避難、または引っ越しが考えられます。
しかし、住居の移転には費用がかかるため、それを理由に住居の移転をためらう方も少なくないようです。
このような背景から、「ストーカー・配偶者からの暴力事案の被害者等の一時避難等に係る公費負担運用要領の制定について」という通達が平成28年4月1日から施行さています。
この通達の内容は、危険性・切迫性の高い被害者等が、公的施設、親類・知人宅等に避難することが困難又は危険であるとみとめられる場合に、被害者等をホテル等へ一時的に避難させ、その際にかかった宿泊費等を公費で負担するというものです。
ただし、あくまで一時避難に過ぎませんから、期間は、原則として2泊以内とされています(ただし、場合によっては延長可)。
また、引っ越しによって住所を移した場合は、ストーカーによる住民基本台帳の閲覧を制限することができます。
詳しくは引っ越し先の市役所か警察に相談されることをお勧めいたします。
5、その他検討すべき対策
最後に、日頃から取り得る対策を紹介します。
(1)一人での行動は控える
外出の際は、ご家族や知人に付き添ってもらいましょう。それが不可能な場合は、なるべくタクシーで移動しましょう。
外を出歩く際は、人通りの多い道を選んでください。
音楽を聴きながら、携帯電話でおしゃべりしながらの一人歩きは、周囲への注意が行き届かなくなるため、非常に危険です。絶対にやめてください。
(2)外出する際は防犯ブザー、携帯電話を常時携帯しておく
いつでも助けを求められる体制を整えておきます。防犯ブザーは100円ショップでも購入することができますし、申し出れば警察からも借りることができます。
また、先ほどご紹介した「110番緊急通報登録システム」も直ちに登録しましょう。
(3)個人情報は慎重に取り扱う
郵便物は家族等信用できる人へ転送し、自宅に届かないようにしておきます。
それが難しい場合は郵便ポストに必ず鍵を掛けておきましょう。
個人情報が載っている書類は、必ず裁断してから処分します。
SNSなどのネット上には、ご自身の名前や住所を出さないのはもちろんのこと、行動パターンなどがわかる書き込みや、個人情報が特定できる写真(家の中が分かる写真、自宅周辺がわかる写真など)のアップは絶対にやめましょう。
(4)必ず第三者に相談を
ストーカーにストーカー行為を諦めさせるにはあなた一人の力では到底できません。
一人で悩みを抱え込まず、まずは、ご家族等身近な方でも構いませんから、周囲に相談しましょう。
冒頭でも紹介しましたが、間違っても、「まだ大丈夫だろう」とか「危害は加えないだろう」などと勝手に自己判断でしないでください。
まとめ
以上、ストーカーにストーカー行為を諦めさせる方法について紹介してまいりました。
どの方法についても共通していえることは、まずはご自身でアクションを起こさなければ周囲は動いてくれないということです。
その意味では、あなた自身の覚悟と決意も必要となってきます。アクションを起こすべきかどうか判断が付かない場合も同様です。
まずは、周囲に相談することからはじめてみませんか?