教師間のいじめは実は珍しくはありません。
本記事では教師間のいじめに悩む教師に向けて、
- 教師間いじめが起こる理由
- 教師間いじめにあった場合の対処法
- 教師間いじめの相談先
- 教師間いじめで損害賠償の請求方法
についてご紹介します。
目次
1、教師間いじめ問題|2019年神戸市教師カレーいじめ事件
冒頭でも記載した2019年の神戸市での教師によるカレーいじめ事件は、教師間いじめとして世間を震撼させた、公立小学校教師のいじめ問題です。
そのいじめの内容は、一人の若い男性教師に対し、先輩教師4人で無理やり激辛カレーを口に運んだり、その他被害教師が新車を購入した際には土足で屋根の上に登り嫌がらせをしたり、車内を荒らしたりと、数年にわたっていじめをしていたというものでした。
この神戸市での教師カレーいじめ事件を受けて、文部科学省で前年度の教師間いじめの実態を調査したところ、他にも全国で教師間でのいじめは定常化していたことが判明しました。
着任したばかりの新任教師を大声で何度も叱責したり、物を隠したり、送別会でグラスを投げつけ怪我を負わせたりなど、教師間のパワハラやいじめが多数報告されたのです。
2、珍しくない教師間のいじめ
このように、教師間のいじめは珍しくなく、2018年の文部科学省の調査結果では、パワハラやいじめにより懲戒処分を受けた件数が32件にものぼることが判明しています。
発覚していないケースも多数あると想定されるでしょう。
また、教師が精神的な病を患って休職している数が、2007年以降継続して年間に5,000件前後で推移しています。
それら病の原因はいじめだけではありませんが、中にはいじめによるものもあった可能性も否定できません。
3、どうして「教師」なのにいじめるのか
教師がいじめる。
誰もがこのことに違和感を感じるのではないでしょうか。
その理由は、教師の職業柄、児童・生徒にいじめはいけないと教える立場であり、またいじめがあれば解決する立場であるからです。
そんな教師たちでありながら、なぜいじめをしてしまうのか。
以下で、その原因を考えていきます。
教師なのに、ではなく、教師だからこそ、がみえてくるかもしれません。
(1)ヒエラルキーの世界
教師の世界はヒエラルキー色が強い世界といえます。
役職における権限が明確であるため上下関係がつきやすく、そこから主従関係につながります。
他人間での形式的な主従関係は、ハラスメントの温床と言っても過言ではありません。
(2)「こうあるべき」が強い
教師とは、子どもたちに教えていく職業ですから、「こうあるべき」という思いの強い教師は多いもの。
後輩に対しても「こうでなければ教師ではない」「こうでなければ昇進は無理」というように、あるべき教師像を押し付けてしまうことも少なくないでしょう。
価値観が多様化する現代においてはこの発想を苦痛に感じる教師も多いでしょうが、年配教師の中には今もこのような考えを持つ人は多くいるものと思われます。
(3)必ずしも人格者ではない
実は、「教える」ことと「自分ができている」ことは、別の次元の話です。
そのため、素晴らしい人間像を道徳で教えることはできても、自分がそうかというとそうではない、というケースも往々にしてあります。
教員採用試験で人格者が採用されるわけでもありません。
教師だからといって人格者とは限らないのです。
4、教師間のいじめにあった場合の対応策
教師間のいじめにあった場合、どういった対応策があるのでしょうか。
(1)まずは理由を客観的に考えて
いじめられた原因を客観的に考えてみましょう。
どんな事情があろうともいじめは加害者が悪いことは明白です。
ですが、いじめを解決するには、何が原因であったのかを置き去りにすることはできません。
そうすることで、対策が出てきます。
大きくは、
- 何か相手の気に触ることをしてしまった → 謝罪
- 何も心当たりはなく、単なる相手の気まぐれ → 無視
というような具合です。
この原因の考察は、自分だけで正確に結論を出せるものではありません。
周囲への相談もし、できれば味方になってくれる人が1人でもいれば、心強くなることでしょう。
(2)ブレないこと
いじめ対策において大切なのは、ブレないことです。
とはいえ、もともとブレないオーラ全開の方は、いじめられることはないのかもしれません。
ブレてしまうからこそ、加害者はいじめの手応えを感じてしまうのです。
ブレないためには、自分を信じることが大切ですが、性格や育ってきた環境によりこれをにわかにできない大人は多いと思います。
そんな方は、やはり「味方」を見つけることです。
人生において味方を見つけることは、ロールプレイングゲームの中で味方を見つけるような単純で簡単なことではありませんが、人間関係というのは自分の心の鏡でもあります。
あなたが真摯に、謙虚に信頼し、思いやりをもって接していれば、きっと相手も同じように思ってくれているはずです。
理解者に支えられることで、いじめやパワハラに屈しない気持ちになることができるでしょう。
(3)いじめの証拠を残す
いじめはあってはならないことです。
とはいえ、いじめが発生している現場では、事なかれ主義もまだまだ横行しているかもしれません。
しかし適切な第三者に公表することにより、今の時代ならそのいじめは必ず叩かれることでしょう。
避けても避けても継続する、または関係上避けることができずどうしようもないときは、とにかく証拠を残しておくこと。
そうすることにより、その現場以外の人に訴えていくことができますから、必ず味方は現れます。
具体的には音声や画像などで残しておくこと。今後必ず役立つでしょう。
5、行き過ぎたハラスメントの相談先
教師間で行き過ぎたハラスメントを受けている場合は、証拠をもって教育委員会に相談しましょう。
公立の学校なら異動ができますし、私立の学校なら転職も視野に入れることが大切です。
いじめやパワハラを我慢してまで働き続ける必要はありません。
あなたの理想に叶う現場がどこかにあるはずです。
もしも教育委員会に相談しても解決できないなら、警察に訴えることも視野に入れるべきです。
厚生労働省が推奨しているこちらの相談先の利用もご紹介いたします。
6、いじめに対しては損害補償を考えよう
いじめにあうと、人は、相当な精神的苦痛を受けます。
人は、人との関係において生活しているからです。
大勢の人と関わって生きていても、たった1人からいじめを受けるだけで、人生が真っ黒に染まります。
人間とは、そんなものなのです。
この苦痛は、「人生の勉強になった」とプラスに取ることもできるかもしれませんが、できるならきちんと補償されるべきです。
「苦しみ」はお金に変えられるものではないかもしれませんが、あなたの苦痛が少しでも報われることを願います。
(1)公務災害として補償請求
教師間のいじめは職場である学校で行われているでしょうから、これにより精神的疾患などを負った場合は、公務災害として補償の請求ができる可能性があります。
なお、臨時職員や非常勤の場合は、公務災害ではなく労働災害として労災保険が適用されます。
いずれにせよ、なんらかの公的請求が可能ではありますが、精神的疾患の場合はいじめとの因果関係が問題となり得ますので認定されるかには注意が必要です。
(2)加害者や学校、市町村に対する損害賠償は弁護士へ相談を
もし公的補償の対象外とされた場合でも、加害者の加害行為によって損害を受けたひとは、加害者に対し、その損害の賠償を請求することができます(民法709条、710条)。
加害者や学校、市町村に対する損害賠償請求を検討するなら弁護士に相談してください。
今証拠がなくても、まずは相談してみましょう。
上手に証拠を見つける手段もアドバイスしてもらえる可能性があります。
そして何よりも、弁護士が味方になり、精神的な支えになってくれるでしょう。
まとめ
教師間いじめは実は全国でも珍しくありません。
教師という職業だからこそいじめが発生するとも言えるわけです。
教師は子どもを導くことには一生懸命であっても、同僚や後輩、部下に対しても人格者であるのかどうかはまた別の話。
やはり「人間」なのです。
もしも教師間いじめでお悩みの場合には、理解者を見つけて支えてもらいましょう。
その上で証拠を取得し法的措置を取るべきです。
教育委員会や校長に相談しても埒があかない場合には、勇気を出して警察や弁護士に相談しましょう。
教師だからと我慢する必要はありません。教師だからこそ、この異常事態を正していきましょう。
あなたがいじめのない環境で理想の教師として働けることを願います。