身近な方が逮捕された場合、その方に面会するためには、警察署の留置所を訪れる必要があります。ただし、留置所には厳格なルールが存在し、無制限に面会できるわけではありません。 留置所での面会は細かなルールに縛られており、これらを知らないと、何日も面会できないまま時間が過ぎてしまうことがあります。
この記事では、
- 留置所での面会に関する具体的なルール
- 適切な手続きを踏むことで留置所での面会を実現する方法
について、解説します。留置所での面会を検討している方は、ぜひこの記事をご覧いただき、基本的なルールを理解していただければと思います。
刑事事件と民事事件の違いについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
目次
1、留置所の面会ルールをみる前に〜留置所とは?
罪を犯したと疑われる人(被疑者)が逮捕・勾留されると、拘置所という法務省管轄の身柄拘束専用の施設に収容されるのが本来ではあります。
しかし、警察の捜査上の必要性や拘置所の収容人員の限界などの理由で、ほとんどの被疑者は留置所というところで身柄を拘束されます。
なお、留置所の正式名称は「留置場」といいますが、俗に「留置所」と呼ぶ方が多いので、この記事では「留置所」と呼ぶことにします。
(1)逮捕されると警察署内で身柄を拘束される
留置所は、警察署内に設置されています(全国約1300か所)。他方、拘置所は全国に8か所しかありません(ただし、拘置支所は、全国に100か所以上あります。)。
被疑者は逮捕された警察署内の留置所に収容され、その警察署で取調べなどの捜査を受けることになります。こうすることで、取調べの都度移動する手間等が省けるため、警察はスムーズに捜査を進めることができるのです。
この間、被疑者は事実上、警察に24時間監視されることになります。もっとも、警察内で捜査を担当する係と留置所を担当する係は明確に分けられています。そのため、取調べで警察官の意に沿わない態度をとった被疑者が、留置所で警察官から嫌がらせや虐待をされるようなことは、現在ではほぼありません。
(2)面会のルールは警察署ごとに細かく定められている
逮捕・勾留された被疑者は、まだ有罪判決を受けたわけではないので、本来なら自由に面会が認められてもよさそうなものです。
しかし、罪を犯した疑いがあって集中的に捜査を行う必要性があるからこそ逮捕・勾留されているため、面会には一定の制限があります。
面会に関する基本的なルールは、「被留置者の留置に関する規則」や「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」で定められています。
とはいえ、これらの法律では大枠しか定められていません。実際の留置所での面会ルールは、各警察署ごとに施設内の規律や秩序維持の観点から独自に細かく定められています。
これから留置所での面会ルールをご紹介していきますが、警察署によっては細かく異なってくる場合もあります。実際のルールは面会に行く警察署に問い合わせてご確認ください。
2、知っておくべき留置所での面会のルール
それでは、留置所で面会する際のルールをご紹介します。実際にはたくさんのルールがあるのですが、ここでは多くの方にとって気になる点を中心にご説明していきます。
(1)いつから面会できるようになるの?
留置所で面会できるのは、基本的に逮捕された日の3日後からとお考えください。
逮捕後の3日間は、特にタイトな時間の制約の中で捜査機関による捜査が行われます。警察は被疑者を逮捕してから48時間以内に事件を検察官に送致しなければならないうえ、送致を受けた検察官は、勾留が必要だと判断した事案について、送致を受けたときから24時間以内に裁判所へ勾留請求をしなければなりません。また、合計72時間以内に勾留請求をしない場合にも、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。
そのため、この72時間内はどうしても取り調べの方が優先されてしまいます。また、この段階では接見禁止を付ける必要があるか否かが不明なので、弁護士以外との面会は認められないのが一般的です。
勾留される場合は、逮捕されてから3日後(72時間以内)までには勾留請求されます。勾留後は留置所で面会できるようになります。
ただし、接見禁止決定がなされた場合には、引き続き面会は認められません。接見禁止決定についてはあとで詳しくご説明します。
(2)いつ面会できる?
ほとんどの留置所では、面会できる時間帯は、平日の午前8時30分~午後5時15分(受付終了時間は、午後4時の場合が多いです。)と決められています。ただし、12時~13時は昼休みとされているため、面会できません。
なお、多くの留置所では面会室が一室しかないため、面会の順番待ちの人数が多い場合には、面会の受け付けが早めに終了してしまうこともあります。
また、受付時間中でも被疑者が取調中など捜査の都合によって面会できない場合もありますし、他の人が接見していれば、その間は面会できないことになるため、なかなか自分の面会の順番が回ってこないということも多々あります。
面会を希望する場合は早めに留置所に連絡して確認しておくべきです。
(3)どのくらいの時間、面会できる?
面会時間は、多くの留置所で15分程度とされています。長いところでも20分までです。面会室が混み合っている場合は、次の人のために12~13分程度に制限される場合もあります。
15分程度の時間は、会話をしているとあっという間に過ぎてしまいます。被疑者に伝えたいことや聞きたいことが具体的にある場合は、メモにまとめておいて効率よく話を進める必要があります。
(4)何人まで面会できる?
一度の面会で会える人数は、ほとんどの留置所で3人までとされています。
お子さんや両親など3人を超える人数で面会を希望する場合でも、何度か(日を改めて)に分けて3人以内の人数で面会する必要があります。
(5)何回まで面会できる?
面会できる回数は、基本的に被疑者1人につき1日1回までとされています。
そのため、例えば被疑者の妻が先に面会すると、その日は両親やお子さんが面会したいと思ってもできません。
このような場合は日を改めて面会するほかありません。
上述のとおり、3人以内の人数でれば同時に面会できるので、家族で面会に行くのであれば、都合を合わせて1度に行くべきでしょう。
(6)誰でも面会できる?
留置所で面会できるのは家族や親戚に限られてはいません。友人や恋人、単なる知り合いでも面会できます。
年齢制限もないので、小さなお子さんも面会できます。赤ちゃんと一緒に面会することもできます。
ただし、上でご説明した人数制限と回数制限には注意が必要です。特に、赤ちゃんも一人としてカウントされるので、お子様と面会に行かれる場合にはその点も考慮していく必要があります。
(7)会話内容は警察に聞かれる?
留置所での一般面会には警察官が立ち会い、会話内容を聞かれます。必要に応じてメモに記録されることもあります。
これは証拠隠滅や新たな犯行の共謀を防止するための措置です。したがって、事件の内容について話をすると立ち会いの警察官に止められたり、場合によっては面会を中止されることもあります。
「反省している」「被害者に謝罪して示談したい」「弁護士に依頼したい」といった程度の話は構いませんが、基本的に事件に関する話はできません。
また、外国語での会話も許可されないことが多いです。
もっとも、弁護士との面会では、警察官の立ち会いはなく、時間制限もないため、自由に会話をすることが可能です。
3、留置所で面会する方法と流れ
次に、実際に留置所で面会するにはどうすればいいのか、面会の流れや注意点をご説明します。
(1)予約は必要?予約できる?
留置所で面会するために予約は必要ありません。直接留置所へ行って面会を申し込むのが原則です。
ただし、いきなり留置所へ行っても被疑者が取調中だったり、他の人が面会室を使っていたりして自分が面会できないことも多々あります。
そのため、面会を希望する日時が決まったら早めに留置所に連絡して捜査の日程や面会室の混雑状況を確認しておくことが大切です。その際、具体的な希望日時を伝えておけば、多くの留置所ではその日時には他の人の面会を入れないようには配慮してもらえます。
その意味では、面会を事実上予約することは可能です。しかし、この予約は確約ではありません。緊急的な捜査や弁護士の接見申し込みがあればそちらが優先され、面会の日時をずらすように求められる場合もあるので注意が必要です。
(2)面会の申し込み方法と持参物
面会を申し込むためには、まず警察署の「留置管理課」というところを訪ねます。各警察署には入り口付近に窓口があるので、そこで「面会に来ました」と申し出れば留置管理課に案内してもらえます。
留置管理課では、面会申込書(正式名称は「被留置者面会簿」)に住所・氏名など必要事項を記入し、押印します。印鑑は認印で構いませんし、忘れたら指印でも認められます。
なお、本人確認があるので、運転免許証やパスポート、健康保険証などの身分証明書を持参することが必要であるため注意が必要です。
以上の手続が終われば、面会室に通してもらえます。
(3)面会室で気をつけるべきこと
面会室に入ると、透明なアクリル板越しに被疑者と話をすることになります。面会室では、上でご説明したルールを必ず守りましょう。
なお、面会室にはスマホや携帯電話を持ち込むことはできません。面会室に入る前に提出を求められます。
もしスマホや携帯電話を隠して持ち込み、面会中に着信音が鳴ったりすると面会を打ち切られることがあるのでご注意ください。
メモ・筆記具や手紙は持ち込めますが、手紙を被疑者に見せることは多くの留置所で禁止されています。面会中に手紙を読み上げるのは構いませんが、時間がもったいないので差し入れするのがおすすめです。
4、留置所への差し入れの方法と注意点
留置所にいる被疑者へいろいろなものを差し入れることもできますが、一定のルールがあるのでご紹介します。
差し入れの一般的なルールをご説明していきますが、面会と同様、留置所によって取扱が異なることもあります。実際に差し入れる際には留置所に確認することをお勧めします。
(1)差し入れできるものとできないもの
一般的に差し入れできるものとできないものをまとめると次の表のようになります。
差し入れできるもの | 差し入れできないもの |
現金(3万円まで) 服 本・雑誌 手紙 写真 便せん | 飲食物 タバコ スマホ・携帯電話・パソコン 化粧品 タオル シャンプー |
服を差し入れるときは紐やベルト、ワイヤーなどを抜き取っておく必要があります。本人が自殺するのを防止するためです。同じ理由でタオルのように自殺に使用できる物の差し入れは認められません。
飲食物は衛生上の問題と、違法薬物が混入していないかどうかを確認できないため差し入れることができません。
留置所内ではお金があれば身の回り品を購入したり、出前をとって好きなものを食べることもできます。したがって、現金を差し入れるのが被疑者にとって非常に便利です。
手紙や写真、書籍は警察に内容をチェックされることにご注意ください。不適切な内容のものは受け付けられないこともあります。
手紙は本人からも発信できるので、便せんを差し入れるのもいいでしょう。
ただし、これらはあくまで目安であって、差し入れる物の大きさなどで細かい基準もあり、物によっては差し入れが認められない場合もあるので留置所に確認しておく方が賢明でしょう。
(2)差し入れする方法
差し入れの方法は、面会と同じように平日の午前8時30分~午後5時15分の間に警察署の留置管理課で手続をします。
「被留置者金品出納簿」という申込書に必要事項を記入・押印(認印・指印可)して、差し入れたい物と一緒に提出します。
差し入れは郵送ですることもできます。その際は宛名を「〇〇警察署留置場内 (差し入れたい相手の名前)」と書きましょう。
郵送で差し入れる場合は、本人確認のために警察から連絡が入ります。そのため、ご自分の電話番号を差出人の欄に書いておくか、添え書きを同封することが必要です。
(3)差し入れできない場合はどうすればいい?
差し入れ可能なものであっても、接見禁止が付いた場合には差し入れができません。
このような場合は、弁護士に依頼して代理で差し入れをしてもらうことになります。弁護士であれば、接見禁止が付いた場合でも差し入れすることができます。
5、接見禁止が付いた場合に留置所にいる本人と連絡をとる方法
接見禁止が付いていると、家族など一般の方は被疑者と面会することができません。そんなときに留置所にいる本人と連絡をとるためにはどうすればいいのでしょうか。
(1)接見禁止とは
接見禁止とは、身柄を拘束されている被疑者と外部の人との交流を禁止する裁判所の決定です。接見禁止決定が付く場合は、逮捕後の勾留決定の際に併せて接見禁止決定も付けられることが多いです。
接見禁止が付きやすいのは、以下のような場合です。
- 証拠隠滅のおそれがある
- 証人や参考人を威迫するおそれがある
- 共犯者がいて、口裏合わせをするおそれがある
- 本人が容疑を否認している
- 重大犯罪や暴力団などによる組織的な犯罪の場合
(2)接見禁止が付いても弁護士を通じて連絡が可能
接見禁止が付くと、家族など一般の方は面会も差し入れもできなくなります。
しかし、被疑者には接見交通権及び弁護人依頼権が保障されているため、弁護士との接見は禁止することができないとされています。そのため、接見禁止が付いても弁護士は留置所の被疑者と面会もできますし、差し入れもできます。
したがって、接見禁止が付いた場合は弁護士に依頼して本人へ伝言してもらったり、差し入れを代理で行ってもらったりすることになります。
(3)接見禁止を解除する方法
接見禁止を解除するためには、裁判所へ「接見禁止決定に対する準抗告」か「接見禁止処分解除の申立て」を行います。
これらの手続によって接見禁止が全面的に解除されることは多くありませんが、部分的に解除されることはよくあります(一部解除)。
面会する相手や時期、用件、差し入れする物品などを限定すれば、一部解除を獲得できる可能性は十分にあります。
ただ、準抗告や接見禁止処分解除の申立てには専門的な知識が必要なので、弁護士に依頼した方がいいでしょう。
6、弁護士に依頼することで得られる2つのメリット
家族や身近な方が逮捕・勾留されたら、早期に弁護士に依頼することによって大きなメリットが得られます。
(1)本人との連絡や差し入れがスムーズにできる
一般の方の面会や差し入れには、これまでご説明してきたとおり、さまざまな制限があります。しかし、弁護士の面会や差し入れに対しては、この制限が大幅に緩和されています。
弁護士なら逮捕中や接見禁止が付いた場合でも、面会や差し入れが可能です(土日や夜間であっても)。
しかも面会時間に制限はなく、警察官の立ち会いもありません。弁護士に依頼することで本人との連絡や差し入れを素早く、かつ十分に行うことができるのです。
とはいえ、弁護士が証拠隠滅行為に手を貸してくれるということはないので、そのような目的で弁護士に依頼することはできません。
(2)不起訴処分を獲得できる可能性が高くなる
大切な方が逮捕・勾留された場合、家族にとって面会さえできれば満足できるわけではないでしょう。できることなら不起訴処分を獲得して早期に帰ってきてほしいはずです。
被疑者が逮捕されると、特に逮捕から勾留までの3日間は集中的に取り調べを受けます。勾留決定後も接見禁止が付くと、孤独な状態でその後の取り調べに耐えなければなりません。
このような状況で不利な供述をしてしまい、不利な証拠として用いられるケースはよくあります。
早期に弁護士に依頼すれば、本人は取り調べの対応方法等についてアドバイスを受けることができます。必要に応じて被害者との示談などの弁護活動も進めてもらうことができます。
こうすることによって、本人が一人で戦うよりも不起訴処分を獲得できる可能性が大幅に高くなります。
まとめ
大切な方が逮捕・勾留されると家族の方も心配すると思いますが、本人も孤独と不安に耐えて取り調べを受けています。そんな本人を勇気づけるためにも、事実とは異なる内容の供述をしてしまわないようにするためにも、面会や差し入れを積極的に行うことは大切です。
その際は、刑事事件に詳しい弁護士に相談してサポートを受けることをおすすめします。