ストーカーまがいの行動に悩んでいる場合は、迅速な対応が重要です。複雑な恋愛感情や人間関係の問題からくるトラブルは、解決を先延ばしにしてしまうと、ストーカーまがいの行動が深刻化するリスクがあるため、早めに対処することが重要です。
この記事では、ストーカーまがいの行動と本格的なストーカー行為の違いや、自衛策、避けるべき行動、そして警察への相談が効果的でない場合の対処法などについて、わかりやすく弁護士が解説します。
この記事がストーカーまがいの行動でお困りの方の助けになれば幸いです
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目次
1、ストーカーまがいの行動でお困りの方へ~そもそもストーカー行為とは?
「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下、「ストーカー規制法」と言います)では、ストーカー行為に該当するものとして以下2つの行為類型を挙げています(ストーカー規制法第2条4項)。
- 同一の者に対するつきまとい等を反復してすること
- 同一の者に対する位置情報無承諾取得等を反復してすること
ストーカー規制法上の「ストーカー行為」に該当すれば加害者に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されますが(ストーカー規制法第18条)、同法上のストーカー行為への該当性が否定される「ストーカーまがいの行動」でしかなく、警察が刑事訴追に向けて取り合ってくれない場合には被害者側の対応方法が変わってきます。
そこで、まずはストーカー規制法で定められる「ストーカー行為」とはどのようなものなのかについて確認していきましょう。
(1)つきまとい等
ストーカー規制法上の「ストーカー行為」のひとつとして、同一の者に対するつきまとい等を反復してすることが挙げられます。
「つきまとい等」とは、恋愛感情などの好意やそれが満たされなかったことに対する怨恨目的で、特定の相手やその配偶者などに対して、以下のいずれかに該当する行為をすることを指します(ストーカー規制法第2条1項)。
- つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがる、自宅・職場・学校などの付近で見張りをする、これらの場所に押し掛ける、これらの付近をうろつく
- 行動を監視していると思わせる事項を本人に告げる、伝わるようにする
- 面会や交際などを要求する
- 著しく粗野または乱暴な言動をとる
- 無言電話をかける、拒否されているのに電話・メール・ファックス・手紙などを送る
- 汚物や動物の死体など、不快感や嫌悪感を抱く物を送りつける
- 名誉を害する事項を告げる、本人に伝わるようにする
- 性的羞恥心を害する事項を告げる、文書・画像・動画などを送りつける
これらに該当する行為を同一の者に対して反復して行った場合に、ストーカー規制法上の「ストーカー行為」に該当します。
一般的には、つきまとい行為を理由に接近禁止命令が出てなお、つきまといがあった時に、「ストーカー行為」があったと評価します。
これに加えて、1~5については、身体の安全や住居等の平穏・名誉が害されたり、行動の自由が著しく害されたりする不安を覚えさせるような方法によって行われることが必要です。
なお、同法上のストーカー行為の要件である「つきまとい等」については、「ストーカー規制法とは?もしもに備えて知りたい4つの事」で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。
(2)位置情報無承諾取得等
ストーカー規制法上の「ストーカー行為」としてもうひとつ、同一の者に対する位置情報無承諾取得等を反復してすることが挙げられます。
「位置情報無承諾取得等」とは、特定の者に対する恋愛感情などの好意やそれが満たされなかったことに対する怨恨目的で、特定の相手やその配偶者などに対して、以下のいずれかに該当する行為をすることを指します(ストーカー規制法第2条3項)。
- 承諾を得ずに、GPS機器やスマホアプリケーション等を利用して位置情報を取得する
- 承諾を得ずに、GPS機器を取り付ける、位置情報を取得できる物を手渡す
これらに該当する行為を同一の者に対して反復して行った場合に、ストーカー規制法上の「ストーカー行為」に該当します。
2、どこからがストーカー行為?ストーカーまがいの行動との境界線
ストーカー規制法が定めるつきまとい等を反復していると評価できれば、「ストーカー行為」として刑事処分の対象になります。
ただし、恋愛関係や職場の人間関係などが複雑に絡み合っていることが多く、「ストーカーまがいの行動かもしれないけれど少し我慢すれば大丈夫」「相手の性格や関係性を考えると、ストーカーまがいの行動だと捉えるのは自意識過剰だ」というように、被害者自身が現在受けている行為の深刻さを理解できていないケースも少なくありません。
しかし、ストーカー行為はいつエスカレートして甚大な被害をもたらすか分からない危険な犯罪行為です。
懸案の人物の行動に以下3点のうちいずれかの兆候が見られるならつきまとい行為に該当する可能性があるので、すみやかに警察や弁護士に相談することをおすすめします。
(1)常識の範疇を超えている
常識の範疇を超えるアプローチはつきまとい行為の可能性が高いです。
たとえば、職場での友人との会話を盗み聞きされて休日のスケジュールを把握されていたり、特別な関係性でもないのにプレゼントを贈られたりすると、常識的な人間関係を超えた行為を受けていると考えられます。
過度なつきまとい行為や過剰な要求に発展しかねないので、ストーカー行為が今以上にエスカレートする前に対策に踏み出しましょう。
(2)嫌悪を感じる
問題行為の頻度や程度とは関係なく、被害者自身が嫌悪感を抱いているならつきまとい行為として規制対象になる可能性があります。
たとえば、退勤時間を合わせられて最寄り駅までの電車がいつも同じだったり、職場でなんとなく視線を感じる機会が多かったりすると、つきまとい行為に発展する危険性はゼロではないでしょう。
また、休日の電話連絡を止めて欲しいと伝えたのに、一方的に同じ行為が繰り返されて恐怖心を感じるような状況だと、すみやかな対処が必要です。
すでに嫌悪感・恐怖心を抱いている状況なのに、被害者側が一方的に我慢をし続ける必要はありません。
弁護士・警察に相談して、適切な対策に踏み出してもらいましょう。
(3)執拗に繰り返される
アプローチの頻度が常軌を逸していたり、同種行為が執拗に繰り返されていたりするときには、つきまとい行為への該当性が認められる可能性が高いです。
たとえば、返事もしていないのに毎日何十通もラインが送られてくる、わいせつな発言の投げかけが日常的に行われているなどの状況なら、問題行為の反復性は容易に認められるでしょう。
特に、該当行為に対して明白に拒絶の態度を示したのに執拗に繰り返される場合には、つきまとい行為がエスカレートしている危険な状態です。
高頻度で繰り返される迷惑行為を受け流すだけでは、被害者自身の心身が疲弊するだけです。行為内容が深刻化する前に、弁護士・警察までご相談ください。
3、ストーカーまがいの行動をやめさせたい…ストーカーが嫌がることは?
ストーカー被害の対処法として弁護士・警察への相談は有効な対処法のひとつですが、被害者自身による自衛だけでストーカーまがいの行動に対応できることもあります。
「まずは自分自身で対策をしてみたい」とお考えであるのなら、以下4つの自衛策をご検討ください。
- 行動パターンに変化を加える
- 在宅・不在がわからないように工夫する
- 番号非通知の電話を着信拒否設定する
- SNSを非公開設定する、SNSのアカウントを削除する
ただし、素人判断で闇雲に対策に踏み出すと、状況次第ではこれらの自衛策が逆効果に働いて、ストーカー行為を助長させる危険性もあります。
したがって、ストーカーまがいの行動への自衛策をとる場合でも、可能であればストーカー案件の実績豊富な弁護士に相談をして、状況を踏まえた適切な自衛策などを提案してもらった方がよいでしょう。
(1)行動ルートを一定にしない
行動ルートや通勤・通学の時間帯にバリエーションを加えるとストーカーまがいの行動への対策になります。
なぜなら、ストーカー側が被害者の行動パターンを把握できなくなるからです。
たとえば、通勤途中で待ち伏せをされたり、通学途中の同じ電車に乗り合わせられたりする場合、被害者側の行動パターンを変更するだけで待ち伏せ行為等を回避・軽減できるでしょう。
(2)在宅状況がわからないようにする
在宅状況がわからないように工夫するのも有効な手段です。
なぜなら、ターゲットが所在不明になればストーカーの追尾行動の効力を削ぐことができるからです。
たとえば、外に部屋の光が漏れにくいカーテンを設置する、洗濯物は室内に干すなどの対処法が考えられます。
(3)携帯・スマホの非通知での着信を拒否する
非通知からの電話は着信拒否するのがおすすめです。
これによって、無言電話や深夜・早朝の執拗な電話は意味をもたなくなるでしょう。
(4)SNSを非公開にする
SNSの取扱い方法を見直すのも効果的な対策です。
インターネットが普及した現在において、ストーカーの情報源はSNSであることが多いです。
無自覚に投稿した画像やコメントの内容から、ターゲットの外出先や行動パターンが分析されます。
たとえば、SNSを非公開に設定する、SNS上の交友関係をリセットする、SNSのアカウント自体を削除するなどの自衛策が考えられるでしょう。
4、ストーカーまがいの行動を受けてもやってはいけないこと
ストーカーまがいの行動に対する自衛策が功を奏することもありますが、対応を見誤ると逆効果になり得る点に注意が必要です。
相手を中途半端に刺激すると、ストーカーまがいの行動がエスカレートしたり、場合によっては殺傷沙汰に発展したりしかねません。
状況次第ですが、一般的に、以下のような反応はストーカーまがいの行動を助長させる危険性があります。
恐怖心や苛立ちなどを抱いている状況だからこそ、冷静な反応・対処法を選択しましょう。
- 過剰に怯えた様子を見せてストーカーの感情を昂らせる
- 冷たくあしらってストーカーの怒りを助長する
- 友人・家族を巻き込んでストーカーを追いつめる
(1)過剰に怯える
ストーカーまがいの行動に過剰に怯える様子を見せると、加害者が調子に乗って行動がエスカレートするリスクがあります。
恐怖心を抱いたとしても決して表には出さず、粛々と証拠集めなどの対策に踏み出しましょう。
(2)ストーカーを冷たくあしらう
ストーカーを冷たくあしらったり、「気持ち悪い」と侮辱したりするのは危険です。
なぜなら、ターゲットに対する怨恨の情が強まってストーカーまがいの行動がエスカレートする可能性が高いからです。
たとえば、ストーカーによる迷惑行為に対して拒絶の意思を示すとしても、「気持ち悪い」「鬱陶しい」などと相手を過度に傷つけるのではなく、「やめてください」とだけ冷静に伝える方が効果的でしょう。
(3)友人や家族を巻き込んで対抗する
ストーカーまがいの行動に対して友人・家族を巻き込んで大掛かりに対抗するのもおすすめできません。
なぜなら、厳しい抵抗に対してストーカーが逆上して行動がエスカレートする危険性があるからです。
もちろん、執拗なつきまとい行為などを不安に感じて家族や知人に相談すること自体は大切なことですが、私人間だけで解決を急ぐと深刻なトラブルに発展しかねないので、直接的な助けを借りるなら弁護士・警察への相談が最優先です。
5、ストーカーまがいの行動をする相手が諦めるときとは?
ストーカーまがいの行動に対して自衛策が有効に働けば幸いですが、場合によってはストーカーの逆上を招いて被害が深刻化する危険性があります。
そこで、ストーカーまがいの行動への対策の有効性を高めたいなら、以下2つの方法が効果的です。
- 警察に相談して公権力による解決を目指す
- 弁護士に相談して柔軟な解決法を提案してもらう
(1)警察に相談する
警察に相談すれば、加害者に対する行政処分・刑事処分が期待できるので、ストーカーまがいの行為が停止する可能性が高まります。
まず、「ストーカー行為」までは認定できなくても、つきまとい行為などのストーカーまがいの行動が認められるときには、警告(ストーカー規制法第4条)・禁止命令(ストーカー規制法第5条)が下されます。
禁止命令に違反した場合や、禁止命令に違反してストーカー行為を行った場合には懲役刑や罰金刑が下される可能性が高いので、警告・禁止命令だけでもストーカーまがいの行動に対する抑止力になるでしょう。
次に、つきまといが反復していて、「ストーカー行為」があると認められる場合には、犯人に1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が下されることになります。
ただし、警察にストーカー被害を申し出たところで、数々の違法行為を証明できる明確な証拠や身に迫った危険性が現認できるような状況でなければ迅速な捜査活動を期待できないのが実情です。
被害者の状況次第では、警察に相談しても相手にしてもらえないということも少なくはありません。
したがって、ストーカーまがいの行動で被害を受けていて、確実に何かしらの対策を期待したいのなら、次項で紹介する弁護士への相談が不可欠だと考えられます。
(2)弁護士に相談する
警察とは違って、弁護士は依頼者の利益を最大化する役割を担う専門家です。
したがって、状況次第ではストーカー案件を受け付けてくれない警察とは異なり、弁護士に依頼をすれば、ストーカーまがいの行動がどのような実態であれ、かならず何かしらの方策を提案してくれます。
たとえば、ストーカー規制法上の「ストーカー行為」とは言えない状況でも、加害者に対して弁護士の名前で内容証明郵便を送付して、当該行為の差し止め要求をするなどの方法が考えられます。
6、ストーカーまがいの行動で困ったら弁護士への依頼がベストな理由
ストーカーまがいの行動による被害を受けているときには弁護士への依頼がベストです。
なぜなら、ストーカー案件の実績豊富な弁護士に相談すれば、以下のようなメリットを得られるからです。
- 警察を動かすために必要な証拠・証言の収集方法のアドバイスを期待できる
- ストーカー行為を働く者に対して内容証明郵便を送付して問題行為の停止を要求してくれる
- 代理人として加害者との間で直接交渉してくれる
- 警察に相談せずに穏便な解決を目指せる
- 防犯ブザーの貸し出しや提携している民間団体と繋げてくれる
- その他、ストーカー被害の予防・改善に役立つ日常生活でのコツを教えてくれる
ストーカーまがいの行為を受けているときには、問題行為がエスカレートする前の早期解決が最優先課題です。
ストーカー案件のノウハウを有する弁護士に相談して、状況に応じて適切な対策をアドバイスしてもらいましょう。
まとめ
執拗な連絡やつきまといなどの被害で困っているのなら、すみやかに弁護士や警察に相談してください。
なぜなら、被害者自身が気付いていないだけで、すでにストーカー規制法上の「ストーカー行為」に該当するような状況に追い込まれている可能性があるからです。
もちろん、警察に相談しても相手にしてもらえなかったからといって、被害者側が常に忍耐を強いられるわけではありません。
警察が対応してくれなくても、弁護士ならかならず何かしらの具体的なアドバイスを提案してくれるので、あなた自身の助けになってくれるはずです。
現段階で目に見えた形でストーカー被害が発生していなくても、いつつきまとい行為等がエスカレートするか分かりません。
少しでも身に危険が及ぶ雰囲気を察知しているのなら、まずは弁護士に相談のうえ、適切な対処法を教えてもらいましょう。