初心者マーク運転者は、運転に慣れていないということから、交通事故を起こすことに不安があることでしょう。
この記事では、まず、
- 初心者運転期間中の交通事故数
をご紹介した上で、
- 初心者マーク運転者が交通事故を回避するための運転上の注意すべきポイント
などについてご紹介していきます。
この記事が皆さまのお役に立つことができれば幸いです。
交通事故の加害者について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
目次
1、初心者運転期間に交通事故多発!
普通免許、準中型免許、大型二輪免許、普通二輪免許または原付免許について、免許の種類ごとの取得後1年間を「初心者運転期間」といいます。
この期間内の交通事故が多発しているようです。
(1)特に若者による交通事故が多い
特に、16歳から19歳までの間に何らかの免許を取ることが多い若者の交通事故が多発しています。
警察庁の統計によると、「平成30年度中、原付以上運転者(第1事故当事者)の年齢別免許保有者10万人当たりの交通事故件数」は「16歳から19歳」までが「1489.2件」と30歳から79歳までの年齢層が軒並み400~500件代を推移しているのに比べ、その約3倍程度と圧倒的に多いことがお分かりいただけると思います。
(2)初心者運転期間中に起こしやすい事故は?
また、交通事故の類型を「車両対人」、「車両対車両」、「車両単独」の3パターンに分けて見ると、これも警察庁の統計である「平成30年度中、原付以上運転者(第1事故当事者)の事故類型別・年齢別免許保有者10万人当たりの交通事故件数」によれば、「車両対人」の事故件数は、「16歳から19歳」までと他の年齢層との間でそれほど差はありませんが、「車両対車両」、「車両単独」は圧倒的に差がある(16歳から19歳の年齢層の事故件数が多い)ことが分かります。
「車両対車両」の中では特に「追突事故」が多く(これはどの年齢層にも当てはまりますが)、「車両単独」の中では「防護柵等衝突」「転倒」が多くなっています。
2、初心者マークの表示は法令上の義務
初心者運転期間中は「初心者マーク」を付けなければなりません。
それは初心者の保護と初心者にかかる事故の防止を図ることにあります。
初心者マークについては法令で細かく規定されています。
(1)初心者マークの表示義務期間
初心者マークはその色や形状から若葉マークとも呼ばれますが、道路交通法上は「初心運転者標識」と呼ばれています。
普通自動車については、道路交通法71条の5で規定されています。
(初心運転者標識等の表示義務)
第71条の52 第84条第3項の普通自動車免許を受けた者で、当該普通自動車免許を受けていた期間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)が通算して1年に達しないもの(略)は、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない。
この規定からすると、免許を受けた日から1年間(免停中の期間を除く)は初心者マークを自動車に付けなければなりません。
(2)初心者マークの表示位置
次に、初心者マークを付けて表示する位置ですが、法律上、車の「前面」及び「後面」とされていますから、「前面」か「後面」のどちらか一方に表示しただけでは不十分で、「両面」に表示しなければなりません。
また、車の「側面」に表示してもいけません。「前面」及び「後面」に表示する必要があります。
そして、「前面」と「後面」のそれぞれにおける詳しい位置ですが、これについては道路交通法施行規則9条の6で「地上0.4メートル以上1.2メートル以下の見やすい位置」とされています。
なお、時々、フロントガラスに表示している方もおられますが、フロントガラスに表示できるものは道路運送車両法で規定されており、その中には初心者マークは含まれておらず、フロントガラスに初心者マークを付けることは認められていませんから注意が必要です。
(3)表示義務と罰則、反則金、違反点数
初心者マークを表示しないで(初心者マークを片方のみ表示した場合を含む)準中型自動車、普通自動車を運転した場合は初心運転者標識表示義務違反とされ、「2万円以下の罰金又は科料」に処するとされています(道路交通法121条1項9号の3)。
反則金は準中型自動車が6000円、普通自動車が4000円(道路交通法施行令別表第6第19項)、違反点数もともに1点(道路交通法施行令別表第2第1項)です。
なお、初心運転者標識表示義務違反は「過失犯」も規定されていることが特徴です。
つまり、わざと表示しなかった場合だけでなく「うっかり表示し忘れた」などという場合も処分を受けるおそれがありますから注意が必要です。
過失犯の場合の罰則、反則金、違反点数も上記同様です。
もっとも、検挙されると直ちに罰金または科料が課せられることはなく、交通反則通告制度により青切符の交付を受け反則金の納付を促され、違反点数が付加されて終了する(罰則は受けない)のが通常です。
(4)初心者マークを表示している車は保護される
この項の冒頭で述べましたように、初心者マークの表示を義務付ける意義は、初心運転者の保護及び事故の防止にあります。
初心運転者に義務を課すにとどまらず、初心運転者であることを周囲に知らせることによってこれを保護することも求められています。
道路交通法71条第5号の4では、初心者マーク等を付けた車を認めた運転者は、その車への幅寄せ、強引な割込みをしてはならない旨規定されています。
違反した場合は「初心運転者等保護義務違反」として、罰則、反則金、違反点数が科されることがあります。
3、初心者マークを表示して運転していた場合と過失割合
交通事故の被害者が加害者に対して損害賠償請求をするとき、加害者及び被害者の側の過失の割合が考慮されます。
加害者の過失の割合が大きければ大きいほど、被害者へ支払う損害賠償額は大きくなります。
そして、初心者マークを表示して車を運転していた場合に、相手方の「初心運転者等保護義務違反(幅寄せ、割込み)」が原因で交通事故が起きた場合は、過失割合が初心運転者に有利に働くことがあります。
4、初心者マークを表示しないで交通違反、交通事故を起こすと・・・
(1)民事関係
まず、民事関係では、前記3でご紹介した過失割合の認定において有利に判断してもらえません。
初心運転者以外の方と同様の過失割合において責任を負います。
(2)刑事関係
刑事関係では、前記2(4)でご紹介した罰則が科される可能性はありますが、基本的には「交通反則通告制度」によって処理されることが多いでしょう。
(3)行政手続、行政処分関係
反則金や違反点数についても前記2(4)でご紹介したとおりです。
その他、初心運転者は、初心者運転期間中(1年)に交通違反や交通事故を起こし、違反点数の合計が3点以上(1回で3点の場合は4点以上)となれば初心運転者講習を受けなければならないことに注意する必要があります。
公安委員会から「初心運転者講習通知書」が配達証明郵便で郵送されますから必ず受け取りましょう。
講習を受講できる期間は、通知書を受け取った翌日から1ヶ月以内です。
講習を受けるには手数料を納付する必要があり、講習も簡単に終わらせてくれるものではありません。
ところが、講習を受けないでいる(あるいは講習受講後、違反点数の合計が3点以上となった場合(1回の違反で3点の場合は4点以上))は再試験を受ける必要があり、再試験を受けなかったり、不合格だった場合は免許取消しの行政処分を受けることがあります(もっとも、酒気帯び運転などの重大違反の場合は、このような手続を踏まなくとも一発で免許取消しの行政処分を受けます)。
なお、前歴がなくとも違反点数が6点以上となれば運転免許停止の行政処分を受け、運転免許停止処分者講習を受けなければなりません。
この講習は初心運転者講習とは別の講習です。
免許停止中は、初心運転者講習を受けることはできず、停止期間が明けてから受けなければなりません。
5、初心者運転期間中に特に気を付けるべきポイント
前記1(2)で、初心者運転期間中は「車両対車両」の中でも「追突事故」が多いということをご紹介しました。
「追突事故」の原因の中で一番多いのは「前方不注視」でしょう。
スマートフォン、携帯電話を使用しながらの運転、脇見運転は厳禁です。
また、指定速度、法低速度を守り、前の車との車間距離をきちんと保つことも大切です。
また、警察庁の交通事故統計によると、安全運転義務違反とされる「運転操作不適確運転」「漫然運転」「脇見運転」「動静不注視運転」「安全不確認運転」「安全速度違反運転」の中でも、「安全速度違反運転」が「16歳から19歳」の年齢層で多い違反態様となっています。
免許をとったばかりの頃はスピードを出しがちですから注意しましょう。
運転免許を取得してから一定期間がたつと「慣れ」も生じてきます。そうした時期は特に要注意です。
「誰しもが事故を起こすのだ」という意識で、念には念を入れて運転することを心がけてください。
まとめ
あなたに科せられている交通ルールは、交通秩序や他人の生命、身体を守ることのみならず、あなた自身を守ることに繋がることもどうか忘れないでください。
無謀な運転、危険な運転によってあなた自身が命を落としてしまう危険もあります。
どうかそのことを肝に銘じて、ベテランドライバーへと階段を上がられますように。