警察から電話がかかってきた瞬間、緊張と不安が押し寄せます。自分には何も問題がないと分かっていても、警察から電話がかかってきた人は非常に不安になっていることでしょう。
そこでこの記事では、
- 警察からの電話がかかってくる状況とは?
- 適切な対処法
- 無視した場合のリスク
について詳しく説明します。この記事がお役に立てば幸いです。
刑事事件と民事事件の違いについては以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、警察から電話がかかってくるのはなぜ?考えられる6つのパターン
まずここでは警察から電話がかかってきたときに考えられる6つのパターンを解説します。
(1)落し物が見つかったとき
警察から電話がかかってくるケースとして万人に起こりうるのが、落し物が見つかったときです。
- 落し物をして警察に届けている場合
- 落したことに気づいておらず、落し物の中に入っている連絡先を頼りに警察から電話がかかってくる場合
などのケースがあります。
(2)身内が事故に遭った・亡くなったとき
これはあまり考えたくないことではありますが、身内が事故に遭ったり亡くなったりしたときも警察から電話がかかってきます。
(3)身内が被疑者として身柄を拘束されたとき
身内が被疑者として身柄拘束されたときも警察から電話がかかってくる可能性があります。
身内が身柄拘束されたら着替えをはじめとした必要なものを身柄拘束されている身内に届ける等、警察からの電話の後は何らかの対応が必要になってくる場合が多いでしょう。
場合によってはすぐに弁護士を探し被疑者の元に弁護士を派遣する必要があります。
(4)被害者・参考人としての呼び出し
あなた自身が被害者・参考人としての呼び出しを受け、警察から電話がかかってくる場合もあります。
被害者となっている自覚がある場合もあれば、気づかないうちに盗撮されていた等知らないうちに犯罪に巻き込まれていたケースも考えられます。
(5)被疑者としての取り調べを目的とした呼び出し
警察から電話がかかってくる理由が、被疑者としての取り調べを目的とした呼び出しであるケースもあります。
なお、取り調べと似たものとして「事情聴取」という言葉がありますが、事情聴取は
- 被害者
- 目撃者
などから事情を聞く場合に使われます。
(6)警察を名乗った詐欺の電話
警察から電話がかかってきたと思ったときに注意しなければならないのが、警察ではなく警察を名乗った詐欺の電話であるケースです。
詐欺事件は毎年発生しており、詐欺事件に巻き込まれる可能性はゼロとは言えません。少しでも怪しいと思ったら、電話の内容を鵜呑みにしないよう注意が必要です。
2、警察から電話がかかってきたときにやるべきこと
ここからは、警察から電話がかかってきたときにやるべきことについて解説します。
(1)本当に警察からの電話なのかを確認する
警察から電話がかかってきたとしても、それが警察を名乗った詐欺の可能性もあります。
まずは以下の項目を参考に、本当に警察からの電話なのかどうか確認しましょう。
また電話の内容はきちんとメモしておきましょう。場合によっては電話を録音しておくことも効果的です。
①名前
まずは警察だと名乗っている電話の相手の名前を確認しておきましょう。
本当にその人物が警察に所属しているのかを確認するために、フルネームではっきりと聞き取ってください。
②警察署名と部署名
名前の他に、
- 警察署名
- 部署名
なども確認しましょう。
詐欺の電話であれば、部署名など細かい部分を聞いたときに口ごもる可能性があります。
③相手の電話番号
あとで折り返したり身元を確認したりするためにも、相手の電話番号を控えておくようにしましょう。
④用件
最後に用件を確認してください。
詐欺が疑われる場合は、後でメモを確認し信憑性があるのかを検討してください。場合によっては第三者に相談しましょう。
(2)本当に警察からの電話だった場合は原則折り返すべき
詐欺の可能性がなく本当に警察からの電話だった場合は、原則折り返すようにしましょう。
万が一被疑者としての取り調べのために警察から電話がかかってきている場合、警察からの電話を無視すると逃亡のおそれがあると判断される可能性があります。
逃亡のおそれがあると判断されると逮捕されるリスクが高まります。
(3)メモや録音は問題なし
警察から電話がかかってきたときにメモや録音をして良いのか不安に感じている人がいますが、メモや録音をしても問題ありません。
後から電話の内容が問題となるケースもゼロとは言えませんので、「言った・言わない」の争いを生じさせないためにも、メモや録音の形で残しておくと安心です。
また、万が一警察からの電話が詐欺だった場合、電話の録音は大切な証拠になります。
(4)呼び出しがある場合は呼び出しに応じる
警察から電話がかかってきて、その内容が呼び出しだった場合、呼び出しには応じるようにしましょう。
呼び出された日にちに
- どうしてもはずせない予定が入っている
- 夜中の呼び出し
などの場合には日時の変更を依頼してみましょう。その際は、なぜ日時の変更が必要なのかという理由も合わせて警察に伝えるようにしましょう。
3、警察から電話がかかってきたのに無視するとどうなる?
さて、ここからは警察から電話がかかってきたのにそれを無視するとどうなるのかについて解説します。
(1)落し物に関する着信の場合
落し物に関する着信の場合、電話を無視せずに折り返して落し物を早めに取りに行くようにしましょう。
時間が経つと落し物を取りに行くのが大変になる可能性があるので注意が必要です。
(2)身元引受人としての呼び出しの場合
身元引受人として呼び出しの場合も早めに対応するようにしましょう。
身元引受人となるかどうかは任意ではありますが、他に適切な身元引受人がいないと家族が身柄拘束を受ける期間が長引くおそれがあります。
(3)被害者・参考人としての呼び出しの場合
被害者・参考人としての呼び出しの場合、警察から電話がかかってくるということは捜査にあたり被害者・参考人の話が必要である可能性が高いです。そのため、着信を無視し続けると警察の捜査が進まないケースもあるでしょう。
被害者・参考人としての呼び出しの場合は、円滑な捜査に協力するためにも警察から電話があったら折り返すようにしましょう。
(4)被疑者としての取り調べを目的とした呼び出しの場合
被疑者としての取り調べを目的とした呼び出しの場合は慎重に対応しましょう。
被疑者となっている心当たりがある場合は、何らかの犯罪行為に関与している自覚がある人がほとんどです。被疑者となっているにもかかわらず警察からの電話を無視し続けると、
- 逃亡のおそれ
- 証拠隠滅のおそれ
があると判断される可能性があります。
被疑者としての取り調べを目的とした呼び出しの場合は、早急に弁護士に相談しましょう。
4、警察からの電話により取り調べを受ける前に知っておくべきこと
警察からの電話がかかってきて取り調べを受けることになった場合、取り調べ前に以下の内容を確認しておきましょう。
(1)どんなことを聞かれるのか
被疑者として取り調べを受ける際、
- 警察から特定の日に何をしていたか
- どこにいたか
等の話を聞かれる場合もあれば、事件についてダイレクトに聞かれる場合もあります。
(2)被疑者の権利
被疑者としての取り調べを受ける際、以下の権利があることを覚えておいてください。
①黙秘権
一つ目の権利は黙秘権です。黙秘権とは、言いたくないことは話さなくてもいい権利のことです。取り調べの中で様々な質問をされても、その質問に答えず終始黙っていることもできます。
黙秘権は被疑者の権利ではありますが、黙秘権を行使することで警察の捜査は長引くことになります。
黙秘権を行使し続けると、かえって被疑者にとって不利な展開を招く可能性もゼロとは言えません。
被疑者としての取調べで黙秘権を行使すべきかどうかは弁護士と相談して慎重に検討することをおすすめします。
②弁護人選任権
被疑者となる人は法律の知識がないのが通常であり、一人ではとても不安になりますよね。
被疑者には弁護士に依頼をして弁護人による弁護活動を受ける権利である弁護人選任権が認められています。
弁護人は
- 国選弁護人
- 私選弁護人
に分かれます。
国選弁護人は弁護士費用の心配をほとんどすることなく弁護人を選任することができますが、一定の要件を満たす場合にしか認められず、また誰を国選弁護人にするかを自分で決めることはできません。
これに対し私選弁護人は弁護士に費用を支払い、自分で選んだ弁護士と委任契約を締結して弁護人に弁護活動を依頼します。
③接見交通権
被疑者には接見交通権が認められているので、警察官の立会いなく弁護人と面会することができます。
警察官から監視されている状況では、今後の方針を弁護士と細かく打ち合わせすることが難しいです。警察官の立会いなく弁護人と個別で面会できる接見交通権は、被疑者にとって非常に重要な権利です。
(3)供述調書への署名は拒否・修正を求めることができる
被疑者として取調べを受ける際、取調べの内容をもとに供述調書という書類が作成されます。
供述調書が作成されたら内容の読み聞かせが行われますので、自分の主張と供述調書の内容に相違がないか必ず確認してください。
供述調書の内容に署名押印をすると、供述調書の内容は検察官が起訴・不起訴を決定する際や後の裁判で証拠として使われます。
大枠は間違っていなくても細かいニュアンスの違いにより自分の主張とずれてしまうこともあるでしょう。
細かいニュアンスの違いを含め、供述調書の内容に相違がある場合は供述調書の文面の修正を求めるようにしてください。
万が一、自分の主張と違う供述調書が出来上がり修正にも対応してもらえない場合は、署名押印を拒否するようにしましょう。
供述調書への署名押印は義務ではありませんので、署名押印を拒否することもできます。
(4)取り調べを録音してもよいのか
警察での取調べに不安を感じている人の中には、取調べの録音を考える人もいるでしょう。
取調べの録音は違法ではありませんが、録音していたことが後から発覚すると警察ともめることになります。
取調べの録音を考えている場合は弁護士に相談し慎重に検討してください。
(5)警察に暴力を振るわれたら訴えることが可能
取調べの最中、警察官から暴力を振るわれる可能性はゼロとは言い切れません。
取調べは密室で行われますから、何をされたのかがうやむやになってしまうケースもあります。
警察官による暴力は「特別公務員暴行陵虐罪」(刑法第195条1項)に該当しますので、警察官から暴力を振るわれたら訴えることが可能です。
もっとも、同罪で訴えるには証拠が必要となり、取調べの最中の暴力を証拠により証明することは容易ではないのが通常です。
万が一警察官から暴力をふるわれるなどが取調べ中に行われている場合は、弁護士にすぐに報告し弁護士から警察に抗議をしてもらうのが現実的な対応策です。
5、被疑者としての捜査に関して警察から電話があった場合は弁護士に相談を
(1)早い段階での弁護士への相談が大切
被疑者としての捜査に関して警察から電話があった場合は早い段階で弁護士に相談するようにしましょう。
捜査が進むほど弁護士が弁護できる範囲が狭まる可能性があります。捜査が進むと弁護しようにも弁護できない事態もあり得ますので、早めの弁護士への相談が大切です。
(2)警察からの着信に折り返す前に弁護士に相談を
警察からの着信があった場合、すぐに折り返してしまうと
- 不必要な発言をしてしまう
- 弁護士の予定を未確認のまま取り調べ日程が確定してしまう
などのリスクがあります。
警察からの着信に折り返すことは大切ですが、警察から電話があったら早急に弁護士に相談しましょう。弁護士に相談をしておけば、万が一逮捕されても速やかな釈放に向けた弁護を依頼することができます。
(3)取り調べに同行してもらえる可能性
必ずとは言えませんが、弁護士の同意が得られれば弁護士に取調べに同行してもらえる可能性があります。
不当な取調べが行われそうな場合でも、弁護士の力を借りることで不当な取調べに抵抗することができます。
(4)不起訴や減刑に向けた弁護活動を依頼できる
犯罪行為をした場合は、
- 不起訴
- 減刑
に向けた活動を弁護士に依頼することが大切です。
法律知識のない被疑者の立場では、警察や検察の言いなりになってしまう可能性もあるでしょう。弁護士に早めに相談し弁護活動を依頼しておくと安心です。
まとめ
警察から電話があった際は動揺してしまう人が少なくありませんが、どのような電話であったとしても、警察からの電話を無視し続けることにメリットはない場合がほとんどです。特に被疑者の取調べを目的とした電話だった場合は早急に弁護士への相談が必要でしょう。
警察から電話があった際には落ち着いて弁護士からのアドバイスをもらうようにしてください。