出会い系やサクラサイト等と呼ばれるサービスによる詐欺被害が近年拡大しているようです。
なぜだまされるのでしょうか。だまされないためにはどんな注意が必要でしょうか。実際に被害に遭ったと思ったらどうすればよいのでしょうか。
今回は、
- 出会い系サクラサイトの実態
- だましの手口(コイバナから儲け話
- 消費者契約法などの対応
- だまされたと思った時の対応
- だまされないための注意点
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
自分だけは大丈夫、などといった過信は禁物です。
ぜひこの記事をご一読いただき、気がかりなことなどがあれば遠慮なく弁護士にご相談ください。
目次
1、出会い系サクラサイト詐欺の実態
出会い系とかサクラサイト等と呼ばれるサービスによる消費者詐欺被害が拡大しており、消費者庁や国民生活センターからしばしば注意喚起が行われています。
若年層で被害拡大していると言われますが、中高年の方で被害に遭う方も少なくありません。
(1)国民生活センターや消費者庁からの注意喚起
国民生活センターのPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム:消費生活センターに寄せられる苦情相談情報の収集システム)によると、出会い系サイトによる相談件数は毎年増加しています。
年度 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
相談件数 | 8,718 | 8,911 | 8,927 | 9,604 (前年同期8,080) |
相談件数は2021年3月31日現在(消費生活センター等からの経由相談は含まれていません)
出典:国民生活センター「出会い系サイト」
消費者庁の取り纏めによると、29歳までの若者の消費者相談のうち出会い系サイトは男女とも上位を占めています。
出典:消費者白書令和2年版「若者の出会い系」26~27頁
(2)出会い系サクラサイトとはどのようなものか
出会い系とかサクラサイトというのはどのようなものでしょうか。以下で確認していきましょう。
①出会い系サイト
「男女の出会いの場を提供するサイト」という触れ込みですが、情報交換に一定のポイント(有料である場合が多い)が必要で、話が引き伸ばされるうちに相当額のポイントを使ってしまい、結局会えないままに相手が姿を消してしまう、といった手口です。
ポイントが累積すると相当額の被害になることが見受けられます。
②サクラサイト・サクラサイト商法
出会い系で登場する男性や女性は、サイト業者に雇われた“サクラ”の場合も多いのです。
異性、芸能人、アイドルの卵、社長、弁護士、占い師などのキャラクターになりすまして、興味をもった消費者をサイトに誘導し、メール交換等の有料サービスを利用させて支払いを続けさせます。
若い人だけでなく、年代の高い人でも、若い異性(と称するサクラ)などに言葉巧みに話を持ちかけられて、有料サービスの被害が累積していくことも見受けられます。
③さらには投資詐欺に誘導
例えば、男性が、マッチングアプリで知り合った女性(と称する人)から、有利な投資話がある、等ともちかけられ、詐欺的な投資に誘導されて多額の損失を被るといったことです。
外国人(と称する人)からの誘いかけもあるようです。
④こんな詐欺も(支援金詐欺)
「支援金詐欺」というのは「〇○に当選しました。受け取るための手数料〇〇円必要です。」「遺産を譲りたいが、入手するために費用がかかる」といった類の架空の話をもちかけて、お金をだまし取る手口です。
出会い系やサクラサイトなどでやりとりして親しくなっていくうちに、このような荒唐無稽な話でも本気にしてしまうケースがありうるのです。
⑤必ずしも特別のサイトからの誘いかけとは限らない
ここまで出会い系サイトやサクラサイトなどの被害を中心に記載しましたが、これ以外にも、不特定多数の人にメールを送りつけたり、Facebook などSNS でそれらしい話を持ちかけるケースもあります。
殆んどの人は無視してしまうでしょう。
しかし、大量にばらまけば、何となく興味を持って話を聞いてみようかと、思う人も出てくるのです。
(参考)国民生活センターの注意喚起
- 出会い系サイト
- 詐欺的“サクラサイト商法”とは?
- 出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資詐欺にご注意を-恋話(コイバナ)がいつの間にかもうけ話に-
- 朝日新聞2021年5月19日記事
(フカボリ)まだ見ぬ彼、投資の誘い 国際ロマンス詐欺、コロナ禍で被害急増
2、出会い系サクラサイトの具体的なだましのテクニック
具体的なだましのテクニックは様々です。ここでは、いくつか共通の特徴をまとめました。
あくまで、注意すべき相手の一般的な特徴ということです。これに当てはまれば必ず詐欺、というわけではありませんし、当てはまらなくても詐欺ということは十分あります。
(1)プロフィールや相手に求める内容が不自然
①顔写真などが美男美女
他人の顔写真などを使っていることがしばしば見受けられます。
それこそ男性が若い女性を騙って詐欺を働く、といったことさえ見受けられます(もちろん、美男美女だから詐欺師だ、というわけではありません)。
②話の内容が通常はありえないようなストーリーになっている
以下のような都合の良い言葉で人を騙そうというケースです。
「アイドルの卵です。寂しくてお話し相手が欲しかったのです。」
「芸能プロダクションのマネージャーです。有名な〇〇さんにあってみませんか。」
「家族や友人知人にこんな有名人がいます。」
「昨日まで海外でこんなことをしてきました(リゾート地、高級な住宅、高級車などのキラキラした写真)」
(2)個人情報を開示しない
相手との出会いのために連絡先などを尋ねても、チャットで質問をはぐらかしてなかなか開示しない、こちらが個人情報を開示しても、相手方は全く違う情報を返信してきて「ごめんね、間違えた。」等とやりとりを繰り返す、などの手法もあるようです。
(3)話を長引かせてサイトのポイントを消費させる
サイトのポイントは例えば、1回の話で何ポイントであるとか、細かな情報を開示するなら何ポイント、といった設定になっています。
意味のない受け答えで無用なポイント消費を図ってくるならば、詐欺を疑うべきです。
また、例えば、居住地や出身地などの話をして、本当の居住者・出身者ならば知っているような内容を聞いてみて、ちゃんとした答えが返ってこないなら疑問を持つべきでしょう。
(4)いきなりきわどい話を持ち込んでくる
今晩すぐホテルに行こう、といった類です。
サイト上のやりとりだけで、すぐに意気投合して一線を越える、などというのは、常識のある大人の振る舞いではありません。
そんな相手を求めておられるならば別ですが、まともな出会いを求めておられるなら、きわどい話を持ち込む相手とは、すぐにお別れしたほうが無難です。
(5)別のサイトなどに誘導する
「このサイトで連絡がうまくつかないので、こちらのサイトに連絡してもらえませんか。」
「LINE が壊れちゃった。しばらくこちらの連絡先にお願い。直ったらまた連絡します。」
後述の通り出会い系サイトは都道府県公安委員会への届出が義務付けられ、様々な規制があります。
そのため、規制逃れを目的として届け出のない闇サイトに誘導しているのです。
また、LINE などの通常の通信以外の手段に誘導していくのです。
(6)無関係な儲け話などに誘導していく
国民生活センターが注意喚起している通りです。
恋愛の話だったはずなのに、「こんな投資話があるよ。僕も随分儲けた。君もどうだい。」といって、儲かった証拠として豪華な旅行や高級車の写真を見せる、といったたぐいです。
ポイントの浪費とは比べ物にならない巨額の詐欺被害に結びついていきます。
それも最近の流行は、仮想通貨を利用するなど、あまり一般に知られていない投資話です。
仮想通貨のことを十分に知っているならともかく、ネットで知り合っただけの相手の投資話を安直にうのみにしてはなりません。
(国民生活センターの注意喚起)
出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資詐欺にご注意を-恋話(コイバナ)がいつの間にかもうけ話に-
3、出会い系詐欺は違法
ここでは、出会い系詐欺が法律上ではどのような問題になるのかを簡単に確認しておきましょう。
ただし実際には、上記のとおり詐欺の行為者は自分の個人情報を巧みに隠します。
相手を特定して被害回復を図るのは容易な事ではありません。
(1)「出会い系サイト規制法(※)」(事業者は公安委員会に届出義務がある)
※正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」
①法律の趣旨・罰則
出会い系サイトで児童(18歳未満の少年少女)の買春被害などが多発したことから、このようなサイト運営者を規制するために設けられた法律です。
直接的には児童買春などから児童を守るための法律です。
しかし注意すべきは、出会い系サイト業者については、都道府県公安委員会に届出が義務づけられていることです。無届けで出会い系サイトを運営すること自体が違法行為です。
6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(同法第7条1項、第32条1号)。
なお事業者には、利用者が児童でないことを確認したり、児童買春目的の書き込みを削除するなどの義務があります。また、利用者にも厳しい規制があります。
出会い系サイトの掲示板に児童を相手方とする異性交際を求める書き込みは禁止です。
②出会い系サイト利用の最低限の注意
出会いを求めるなら運営サイトのホームページで、以下の表示は最低限確認しましょう。
逆に、詐欺を働く者は、例えば届出事業者サイトに掲示をしていても、違法なサイトでのチャット等に誘導して、規制をまぬがれようとすることが見受けられます。
「インターネット異性紹介事業届出・〇〇公安委員会認定番号 ×××××」
(参考)警察庁ポータルサイト「なくそう子供の性被害」より
(2)消費者契約法
消費者契約法でも、恋愛感情を悪用して商品サービスの購入を持ちかける行為類型について取消対象とされています。
例えば、女性勧誘員が男性に接近して好意を持たせたうえで、「この宝石を買って頂戴。勝ってくれなかったらお付き合いはおしまい。」等と持ちかける手口です。
男性勧誘員が女性に持ちかける場合も同様です。
恋愛感情の誤認を利用して契約を締結させるもので、だまされた消費者は、契約を取り消すことができる場合があります(消費者契約法第4条3項4号)。
(参考)
政府インターネットテレビ動画で、女性勧誘員、男性勧誘員両方の例が紹介されています。
~恋人の“ふり”に要注意!~デート商法から若者を守る 法改正で契約取消し可能に!
(3)特定商取引法
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的としています。
訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。
一例として訪問販売という類型があります。業者が自宅など営業所以外の場所で契約する場合が典型例です。
しかし、キャッチセールス(例えば路上で消費者を呼び止めて、営業所に連れて行く)、アポイントメントセールス(電話、郵便、SNSなどであなたが特別に選ばれました、と称して営業所に来店させてセールスする)、といった類型も該当します。
路上で、女性勧誘員が男性を誘って宝石店に案内する場合なども該当します。
8日以内なら無条件に解約可能、というクーリング・オフの規定があります。
この期間を過ぎていても、嘘を告げていたり、脅したり、といった類型に該当すれば取消ができることもあります。
(参考)国民生活センター記事
マッチングアプリで知り合った女性にダイヤモンドを購入させられた。もしかして、デート商法!?
4、出会い系サクラサイトでの被害回復が困難な理由
出会い系やサクラサイトで現実に被害回復が困難な場合は少なくありません。
その理由は次のとおりです。
(1)相手が行方をくらます
相手が自分を特定できる個人情報を告げないまま行方をくらましてしまうと、追跡が困難になります。
そもそも恋愛などのお付き合いを求めているはずなのに、自分の個人情報をなかなか開示しないというのは、それだけでもあやしいと見るべきです。
ラインのID、メールアドレス、電話番号など手がかりになる個人情報は把握しておくべきです。
少なくとも、やりとりの画面キャプチャ程度のものは必ず残しておきましょう。
専門の弁護士ならばこのような情報からでも相手方を捜索できることがあります。
(2)投資については自己責任であることを記載するなどで、法律に引っ掛からないような工夫がされている
恋愛話から投資詐欺に誘導するような場合、投資は自己責任といった類の規定や約款が用意されており、自分の判断で投資してしくじっただけだろうと思わせるものです。
(3)被害者情報が転売されて他の業者から被害に遭う場合も見受けられる。
出会い系に限ったことではありませんが、被害者の個人情報は他の業者に転売されることがしばしばあります。
他の業者から別の怪しげなお誘いがやってきて、被害が拡大していくことがあります。
5、出会い系サクラサイトで被害に遭ったときの対応方法
被害に遭ったとき、被害に遭ったのではないかと思ったときには、次のような窓口に相談しましょう。
(1)公的な窓口
①全国の消費生活センター等
商品やサービスなど消費生活全般の苦情や問合せなど、消費者からの相談を専門の相談員が受け付け、公正な立場で処理にあたっています。
消費者ホットライン(全国統一番号)188(いやや)で近くの消費者センター窓口を紹介してもらえます。
消費者センターの電話がつながらない場合には、国民生活センターのバックアップ相談の電話番号がアナウンスされますので、こちらに相談する事もできます。
②警察の生活安全課など
地元の警察署の生活安全課等でも詐欺事件などの相談にのってくれます。
③法テラス(0570-078374)
収入・資産等が一定以下の方を対象に、無料の法律相談を実施している機関です。
(2)弁護士との相談がやはりお薦め
以上の公的な窓口は第一次的な相談としては役に立つことも多いのですが、出会い系やサクラサイト等については、相手方を見つけて被害回復の交渉する必要があります。
消費者問題に慣れている弁護士なら、相手方を特定して接触できれば、被害回復ができる場合があります。
相手方も自分がグレーな取引をしていることは百も承知ですから、弁護士が乗り出してくればある程度妥協して早めに解決したくなることもあるでしょう。
6、出会い系サクラサイトで被害にあわないための注意点
既に述べていたことも含めて被害にあわないための注意点をまとめておきます。
- 個人情報をあかさない相手とは突き合わないこと。
- 付き合い始めたならば、ともかく相手を特定できる情報を押さえておくこと。
- 儲け話や多額のお金の出入りの問題になればあやしいと思うこと。
- 自分でよく理解できない投資話には乗らないこと。
- 疑問に思えばご家族や知り合いの方など他人に相談すること。頭を冷やして冷静な判断をすることです。
- もっとも、大事なことは、怪しげなサイト、怪しげな誘いに乗らないこと。
まとめ
出会い系やサクラサイトに限った問題ではありませんが、一般の消費者は、自分がだまされるはずがない、と思い込んでいることがよく見受けられます。
しかし、詐欺の手口はどんどん巧妙になっています。だまされたのではないか、等と思ったときには、「だまされて恥ずかしい」などと思わず、すぐに弁護士等に相談してください。
相手方も、被害者が恥ずかしがって専門家に相談してこないとタカをくくって、次のカモをねらっているのです。
あなたが勇気をもってご自分を救うための行動に乗り出すことが、被害拡大を防ぐことにつながっていくのです。