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【借りパクされたら】貸したものを法的に回収する方法

借りパクを放置すると相手のものになる?

「借りパク」とは、他人から借りたものを返さず、無断で自分のものにしてしまう行為です。

借りパクを放置すると、法的に相手の所有物になることがあることをご存知でしょうか。

今回は、

  • なぜ借りパクを放置すると相手のものになるのか
  • 借りパクされたものを取り戻す方法
  • 借りパクの加害者を罰する手段

について説明します。 

弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。

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1、そもそも借りパクとは?

まずは、そもそも借りパクとはどういう行為なのか、法律上どのような罪に当たるのかなどを確認しておきましょう。

(1)借りたものを返さないこと

借りパクとは、冒頭でもご紹介したように、他人のものを借りたまま返さずに、結果的に自分のものにしてしまうことをいいます。

物を無償で貸すことを、法的には使用貸借契約といいますが、この使用貸借の状態を不当に維持し続けることが、いわゆる借りパクです。

ボールペンなどの文具類や本、CD、DVD、ゲームといった比較的安価なものを「ちょっと貸して」と言って借り、そのまま返さないというケースが多いようです。

(2)加害者には悪意がないことも多い

借りパクの加害者も、ほとんどの場合は最初から「自分のものにしてやろう」と思っているわけではありません。

本当に「ちょっと借りる」だけのつもりで使わせてもらったところ、つい返し忘れてしまうというケースがほとんどです。

高額なものであれば、貸した側はしっかりと返還を求めますし、借りた側も通常は返し忘れることもないはずです。

それに対して、安価なものを気軽に借りた場合、借りた側は返そうと思っていてもつい忘れてしまうこともあるでしょう。

貸した側も、安価なものであれば執拗に返還を求めることは少ないものです。しかし、決して「安価なものだから返してもらえなくてもいい」と思っているわけではありません。

むしろ、常に返してほしいと思いつつ、「安価なものについて何度も返還を求めるのは恥ずかしい」「人間関係上、返してほしいと言いづらい」と思い悩んでいることが多いものです。

このように、貸した側と借りた側に大きな感覚のズレがあることによって、借りパクが深刻な問題に発展してしまうことも少なくありません。

(3)借りパクは横領罪に当たる可能性がある

借りた側の問題意識が乏しいことが多い借りパクですが、横領罪にあたる可能性があります。

(横領)

第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。

たとえボールペン1本でも、自分の手元にある他人の所有物をそのまま自分のものにしてしまうと、横領罪の構成要件に該当します。刑罰は、最大で5年の懲役を科されることがあります。

極めて安価なものであれば、処罰するほどの違法性はないと判断されることもありますが、借りパクは法的にみて横領行為に当たる場合があるということは覚えておきましょう。

2、借りパクを放置すると取り返せなくなることも?!

借りパクが発生しても、借りた側は「いつか返そう」、貸した側は「いつか返してもらえるだろう」と思っている場合がほとんどでしょう。

しかし、借りパクを放置していると、法律上も借りた人のものになってしまう場合があります。そうなると、貸した側はもはや取り返すことはできなくなります。

取り返すことができなくなるケースとして、「即時取得」と「時効取得」の2つに注意が必要です。

(1)第三者による即時取得

即時取得とは、売買などの取引によって平穏かつ公然に物の占有を始めた人は、たとえ売主にその物を売却する正当な権限がなかったとしても、その物の完全な所有権を取得するという民法上の制度のことです。

売主に正当な権限がないことを買受人が知らず、かつ、知らないことについて過失もないことが条件となります。

(即時取得)

第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

したがって、あなたのゲームをAさんに貸し、AさんがBさんにそのゲームを売ってしまったとき、Aさんにゲームの所有権がないことをBさんが知らず、過失もなかったときは、そのゲームの所有権は完全にBさんのものになります。

その後は、あなたはBさんに対してゲームの返還を求めることはできなくなります(この場合、Aさんに対し、失ったゲームの価値に相当する金額の損害賠償を請求することはできます)。

(2)時効取得

即時取得が成立しない場合でも、他人の物を自分のものとして一定期間占有し続けたときは時効によって所有権を取得することがあります。

占有者が自分のものと信じていた場合は10年自分のものではないことを知っていた場合でも20年が経過すれば、時効が完成します。

厳密な理屈は省略しますが、時効取得は、対象物を自分のものとして占有しなければ成立しないので、他人の物を借りているという立場の借主自身が時効取得することは、原則としてありません。

しかし、対象物が第三者の下に行ってしまった場合には、上記の年数の経過により時効取得をされてしまう可能性があるため、注意が必要です。

3、借りパクされたものを取り返す方法

借りパクされたものを取り返すためには、面倒でも、他人が所有権を取得してしまう前に返還を求めなければなりません。

しかしながら、いくら返還を求めても、毎回のように返すことを忘れてしまう借主も多いと思います。待っているだけ、相手のルーズさを責めるだけでは、何も始まりません。取り戻すという結果が欲しいなら、しかるべき対応をとるべきです。

例えば、約束をして相手の家に直接取りに行くことは有効であると思われますし、のらりくらりと言い逃れをするようであれば、返還請求の通知を内容証明郵便の形式で送付することも有効でしょう。

ただし、それでもきちんと返還をしてくれない場合には、より強硬な手段を考える必要もあります。

4、悪質な借りパクには法的に対応!

借りパクされた場合は、できる限り穏便に返還を求めた方がよいですが、なかには、借りパクしたものを自分のものにしようとして返還に応じない借り手もいます。

そのような悪質なケースでは、法的に対応するしかありません。

(1)民事裁判を起こす

借りパクされたものの返還を求める民事的な手段として一般的なのは、使用貸借契約を終わらせると通知したうえで、目的物の返還請求訴訟を提起することです。

目的物の返還請求には、いくつかの理屈がありますが、訴訟では、目的物の所有権がご自身にあることやその物を相手が不当に返還しないことなどを主張・立証していくことになります。

相手方から有効な反論がなければ勝訴し、借りパクされたものの返還を強制することが可能になります。

ただし、目的物の所有権が自分にあることや、相手が不当に返還しないことなどの立証に苦労することも少なくありません。

この点の証拠がない場合は、提訴前に相手方との話し合いにおいて、相手方が目的物を借りたことを認める念書などを取得しておくと有効であることも多いです。

(2)刑事告訴をする

また、借りパクは横領罪に該当することもあるので、警察に被害を届けることも考えられます。警察は民事上の問題には関与しませんが、刑事事件として警察が介入すると、相手方が処罰を免れるために示談を持ちかけてくることがあります。

その場合、示談する条件として、相手方に対して、目的物の返還や、返還できない場合は被害弁償として金銭を支払うことを求めれば良いでしょう。

ただし、単に被害を届け出た場合は、ある程度高額なものを横領された場合でなければ、警察が動いてくれない可能性も十分にあります。

その場合は、刑事告訴という手続きをとることが必要です。刑事告訴が受理されると警察は捜査を開始しなければならないため、捜査対象となった相手方が示談を持ちかけてくることが期待できます。

なお、刑事告訴をするためには、告訴状という書類を作成し、証拠と一緒に警察に提出する必要があります。

一般の方がこの手続きを正確に行うことは難しいため、刑事事件に詳しい弁護士に相談することをおすすめします

なお、そもそも警察に被害を申告するのは、加害者に対して適切な処分を求めたいからであって、最初から示談を狙うためだけに警察に対応を求めることは適切ではないともいえます。警察への申告をする際には、やはり弁護士に相談をしたうえで行動を起こすのが望ましいでしょう。

5、借りパクされたものを取り返す際にやってはいけないこと

借りパクされたものを相手方が返還しようとしない場合、貸した側としては腹立たしいものですが、実力行使によって取り返そうとはしないでください。

他人が占有している自分の所有物について、実力を行使して取り戻すことを「自力救済」といいますが、日本の法律では自力救済は禁止されています。

たとえ自分の所有物であっても、他人が占有している以上は、取り返すためには前項でご紹介した法的手段を用いなければなりません。

相手に無断で目的物を持ち去った場合には、対象物が自分のものであっても窃盗罪が成立しますし、暴行または脅迫を用いて取り戻した場合は、強盗罪が成立する可能性すらあります。

その他にも、取り戻しを求める際の言動によっては、脅迫罪や暴行罪、傷害罪などに問われるおそれがあります。

相手方が任意に返還しない場合は、決して実力行使によらず、法的手段によって返還を求めるようにしてください

6、悪質な借りパクは弁護士へ相談を

悪質な借りパクの被害に遭ったときは、弁護士へ相談するのが得策です。経験豊富な弁護士に相談すれば、状況に応じて最適な解決方法についてアドバイスを受けることができます。

問題解決を依頼すれば、弁護士が相手方に対する目的物返還請求や話し合いを代行してくれます。弁護士は交渉術にも長けているので、穏便に目的物を取り戻すことも期待できます。

民事訴訟や刑事告訴などの法的手段が必要となった場合も、複雑な手続きはすべて弁護士が代行してくれます。

一人で悩んで実力行使に出てしまう前に、弁護士に相談するようにしましょう。

まとめ

借りパクは明らかに相手に非がある行為です。しかし、実力行使をして取り返そうとすると、こちらが罪に問われることになりかねません。

貸した側にとっては理不尽に感じることと思いますが、法律は守らなければなりません。実際には、この記事の「3」でご紹介した方法を活用して上手に取り戻すことがポイントとなるでしょう。

それでも取り戻せない場合は、無理をせず、弁護士に相談されることをおすすめします。

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