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示談金詐欺の手口と回避法|誤って支払ってしまった示談金の取り戻し方

もしもあなたが刑事事件に巻き込まれ、相手の損害を賠償し免訴を望む場合、示談金の支払いは避けて通れません。

しかし、そのプロセスで示談金詐欺に遭遇する可能性もあるため、注意が必要です。

この記事では、

  • 示談金詐欺の本質
  • 詐欺の手法とその種類
  • 詐欺から身を守る方法
  • 支払い過ぎた示談金を取り戻す方法

に焦点を当てて解説いたします。既に支払った方や現在交渉中の方も、怪しいと感じたらぜひこの記事を参考にしてください。

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1、そもそも示談金詐欺とは

そもそも示談金詐欺とは

示談金詐欺とは、刑事事件などで被害を受けたように装い、または実際よりも過大に被害を申告することによって、示談金の名目で金銭を騙し取る犯罪行為のことです。

「示談金詐欺」という言葉から分かるように、このような行為は詐欺罪に該当します。

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

引用元:刑法

このように、示談金詐欺の犯人には10年以下の懲役という刑罰が定められています。

では、示談金詐欺の2つのタイプを少し詳しくみてみましょう。

(1)事件を創り出すタイプ

ひとつ目のタイプは、犯人が自ら事件を創り出すタイプの示談金詐欺です。

実際にはなんの被害も受けていないのに、被害を受けたように装う場合もあれば、実際に被害は発生しているものの、その原因となる事件を犯人がわざと引き起こす場合もあります。

いわゆる交通事故の当たり屋をイメージしていただけると分かりやすいと思います。

実際には車に当たっていないのに、当たったように見せかけたり、わざと車に接触して治療費や慰謝料などの示談金を要求するのが、このタイプの示談金詐欺です。

(2)示談金の額をつり上げるタイプ

もう一つのタイプは、実際に犯罪などの被害に遭ったところ、被害者という立場を利用して、相場よりも高額の示談金を要求してくる示談金詐欺です。

わざと交通事故を引き起こしたのではないものの、実際には必要のないような高額の治療費を要求するのが、このタイプの示談金詐欺です。

2、示談金詐欺の種類と手口

示談金詐欺の種類と手口

示談金詐欺にはいくつかの種類と手口があります。

これらの種類や手口を知っておくことで、示談金を要求されたときに相手の意図を見抜くことに役立つことでしょう。

(1)交通事故を装う

上でも例にあげましたが、交通事故の当たり屋も示談金詐欺の一種です。

当たり屋の中にも、相手が歩行者であるケース、自転車や自動車を運転しているケースなどさまざまな手口があります。

最近では、自転車や歩きスマホをしている人にわざと接触して転倒するような手口もあります。

(2)性的関係を利用する

出会い系サイトなどで知り合った女性と性的関係に至ると、相手の夫や彼氏と名乗る男性が現れて慰謝料を請求するという手口も示談金詐欺の一種です。

不貞行為としての慰謝料を要求してくる手口の他にも、性的関係を強要された、妊娠させられたなど、さまざまな口実で示談金を要求してくる手口があります。

(3)痴漢被害を訴える

電車内などで、実際には痴漢に遭っていないのに突然「痴漢された。」と声を上げ、痴漢の犯人を仕立て上げる示談金詐欺もあります。

「お金を払ってくれれば警察沙汰にはしません。」と言って、示談金を要求してくるというのが手口です。

(4)喧嘩を誘発する

相手を挑発して喧嘩を誘発し、殴られると怪我をしたように装って、治療費や慰謝料を要求してくる示談金詐欺です。

喧嘩を誘発したわけではなくても、殴られて被害者の立場になったことを利用して、実際には必要のない高額の治療費を要求する手口もあります。

(5)振り込め詐欺

高齢者に息子や孫を装って電話をかけ、「交通事故を起こしてしまった。すぐに示談金が必要だ。」と言って、お金を振り込ませる手口も示談金詐欺と言えなくはありません。

ただ、この記事で取り上げている示談金詐欺には含めないこととします。

(6)その他の手口

変わったケースでは、万引きや盗撮の現場を目撃した第三者が、示談金を要求する手口もあります。

万引きや盗撮の被害者の知り合いを装って、「示談金を預けてくれれば自分が示談してやる。」と持ちかけ示談金を要求する手口などがあります。

このように、犯罪の当事者ではなくても、他人の弱みにつけ込んで金銭の支払いを要求してくる手口の示談金詐欺もあるのです。

3、示談金詐欺被害を防ぐ方法

示談金詐欺被害を防ぐ方法

示談金詐欺の常套句は、「今すぐ示談金を支払わなければ警察に通報する。」というものです。

警察に突き出されては困るという心理を利用してくるため、支払いを断りにくい状況で行われるのが示談金詐欺の特徴です。

そんな示談金詐欺の被害を防ぐためには、以下のことに注意することが必要です。

(1)その場で示談をしない

正しい示談というのは、通常その場でまとめるものではありません。

そもそも交通事故を起こした場合は、どんな軽微な事故でも警察に通報する法律上の義務があります。

その他の場合でも、基本的に、示談内容は持ち帰ってじっくり検討した上で合意すべきです。

最低限、示談金はその場で支払わず、後日支払うことにすることが重要です。

本当に警察に通報されると困る場合は、支払える範囲内の金額なら支払って、あとで正当な手続によって返金を求めるという対処法もないわけではありません。

ただし、その場合は相手の氏名や連絡先を確認しておかなければ、後日返金を求めることは非常に困難になります。

(2)相手とのやりとりを録音する

示談内容をじっくり検討するためには、相手とのやりとりを正確に記録しなければなりません。

そのためには、会話内容を録音しておくことが有効です。

示談金詐欺の被害に遭ってしまい、後日返金を求めるときや警察に被害届を出すときには、証拠が必要となります。

会話内容の録音は、示談金詐欺の証拠としても重要です。

示談金を要求されているその場で録音するのは難しいかもしれませんが、相手の隙を見てスマホや携帯電話の録音機能を使うなどして、可能な限り録音しましょう。

示談交渉に呼び出された場合は、相手と会う前にボイスレコーダーをポケットやカバンなどに入れておくと良いです。

(3)弁護士に相談する

示談内容を持ち帰っても、自分では、提示された示談金額が正当なものであるかどうか分からないことが多いでしょう。

そんなときは、弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談すれば、そもそも示談する必要があるのか、示談の必要があるとしても、正当な示談金はいくらくらいなのかを教えてもらえます。

相手に対するその後の対処法についても、アドバイスを受けることができます。

一人で悩んでいると、相手から示談金の支払いを迫られ、不本意ながら示談金を支払ってしまうおそれがあるので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

4、支払ってしまった示談金を取り戻す方法

支払ってしまった示談金を取り戻す方法

示談金詐欺は犯罪ですが、支払ってしまった示談金は、相手の不当利得として返還を請求することができます。

実際に示談金を取り戻すためには、以下のような手順を踏むこととなります。

(1)加害者に連絡をとる

まずは、加害者に連絡をとらなければなりません。

加害者の連絡先が分かっている場合は直接連絡し、示談金の返還を請求します。

この場合、相手は「合意の上で受け取ったお金だから返す必要はない。」と反論するでしょう。

したがって、示談に納得がいかないという理由ではなく、示談金詐欺だから返還を求めるという理由を明確に伝える必要があります。

(2)警察に被害届を出す

相手の連絡先が分からない場合は、警察に被害届を出しましょう。

捜査の結果、加害者が判明すれば連絡先を教えてもらえます。

ただし、警察は加害者を逮捕したとしても、示談金を取り返してくれるわけではありません。

あくまでも示談金の返還は、自分で加害者に請求する必要があります。

なお、被害届を出しても、警察が本格的に動いてくれるとは限りません。

警察に動いてもらうためにも、加害者とのやりとりの録音などの証拠を確保しておくことが重要です。

(3)交渉する

加害者と連絡が取れたら、示談金の返還について交渉することになります。

警察が捜査を開始した後なら、通常は相手に返還する意思や能力があるか、いつまでに返還するのかという交渉になります。

警察に被害届を出す前なら、示談金を返してもらえれば被害届は出さない方向で、交渉を切りだすとよいでしょう。

騙し取られたお金を返してもらうため、しっかりと相手方と交渉していく必要があります。

詐欺という犯罪によって迷惑を受けた以上、慰謝料を加算することもできますが、弁護士に相談した上で相当な範囲内にしておきましょう。

(4)合意できたら示談書を作成する

示談金返還の合意ができたら、口約束だけではなく、証拠化するために示談書を作成して取り交わしておきましょう。

特に、お金の受け渡しを後日にする場合は、いつまでにいくらを返してもらうのかということと、支払い方法を示談書に明確に記載しておくことが大切です。

(5)加害者が逮捕されたときは早期の示談が大切

加害者が逮捕されると、刑事裁判を受けて有罪判決が下される可能性が高くなります。

有罪判決が下った後では、加害者としては騙し取った示談金を返したところで刑罰が軽くなることはないため、真剣に返そうとは考えなくなりがちです。

起訴される前であれば、示談金を返すことによって刑事裁判を受けず、有罪判決そのものを回避できる可能性があるため、加害者もなんとか示談金を返そうと考える場合が多いです。

逮捕されてから起訴されるまでは、原則として最長で23日間です。

加害者が逮捕されたら、なるべく早めに示談金の返還を請求することが重要です。

ただ、身柄を拘束されている加害者に自分から連絡を取るのは手間がかかりますし、時間も要します。

弁護士に依頼すれば、身柄を拘束されている加害者とも迅速に交渉することができます。

5、示談金詐欺被害への対処を弁護士に依頼するメリット

示談金詐欺被害への対処を弁護士に依頼するメリット

支払ってしまった示談金を取り戻す方法をご説明しましたが、自分で実行するのはなかなか大変です。

加害者と連絡をとること自体、気が進まない方も多いでしょう。

そんなときは、弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあります。

(1)加害者との交渉を代行してもらえる

弁護士は、代理人としてご本人に代わって加害者に対応してくれます。

加害者に連絡することも、示談金返還の交渉も、全て代わりにやってくれるのです。

費用はかかりますが、手間がかからなくなりますし、何よりも加害者とやりとりする精神的負担から解放されます。

(2)慰謝料も獲得できる可能性が高い

先ほどもご説明しましたが、示談金詐欺被害に遭った場合は支払った示談金の返還だけでなく、迷惑を受けたことに対する慰謝料を請求することもできます。

しかし、自分で慰謝料を請求しようと思ってもどのように交渉すればいいのか分からず、金額の相場も分からないのではないでしょうか。

弁護士に依頼すれば、裁判例などに照らして、適切な金額の慰謝料を支払ってもらえるよう加害者と交渉してもらえます。

(3)捜査への対応もサポートしてもらえる

加害者が逮捕されると、被害者も警察や検察で事情を聴かれるなどして捜査に関与します。

被害者の加害者に対する処罰感情は、加害者を起訴するかどうかを判断する際や、刑事裁判で刑罰を決める際に重要な要素として考慮されます。

そのため、被害者として捜査機関に何を話すかによって、加害者の処分が左右されることもあります。

弁護士がついていれば、事情聴取などの捜査にどのように対応すればいいのかについても、アドバイスを受けることができます。

まとめ

示談金詐欺による被害は、後になって気づくこともあれば、要求された時点で気づいても警察への通報を避けるために、やむを得ず示談金を支払ってしまうこともあるでしょう。

いずれの場合でも、弁護士の力を借りることで、支払ってしまった示談金を取り戻せる可能性が高まります。

被害に遭ったことに気づいたら、まずは気軽に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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