妻だけEDで、不満抱えた妻から離婚を迫られてお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
妻だけEDとは、風俗や自慰行為などでは勃起するものの、妻に対してだけは勃起が不十分で性交渉ができない状態のことです。
セックスレスが続けば離婚もやむを得ないと思われるかもしれませんが、実は、妻だけEDのみを理由として一方的に離婚される可能性は低いです。とはいえ、離婚したいと思うほど苦しんでいる妻の気持ちにも配慮して、最善の対策をとる必要があるでしょう。
そこで今回は、
- 妻だけEDが起こる理由
- 妻だけEDは離婚原因になるのか
- 妻だけEDを理由に離婚を迫られたときの対処法
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
この記事が、妻だけEDで悩み、さらに妻から離婚を迫られた方の手助けとなれば幸いです。
目次
1、妻だけEDが原因で離婚する前に!妻だけEDはなぜ起こる?
EDは病気ですから、あなたが悪いわけではありません。なので、妻だけEDを理由に離婚を迫られたとしても、早急に離婚に応じるのは考えものです。最善の対策を考える前提として、まずは妻だけEDが起こる理由を把握しておきましょう。
(1)妻だけEDは心因性EDに分類される
妻だけEDは、身体的な機能には問題がなく、心理的な要因によって起こる「心因性ED」に分類されます。
そもそもEDとは勃起不全や勃起障害という傷病名の略称であり、性行為を行うのに十分な勃起ができないか、勃起できても持続できない状態のことです。
ひと言でEDといっても、血流や神経の障害など身体的な要因が原因で起こる器質的EDと、ストレスや精神疾患など心理的な要因が原因で起こる心因性EDの2種類があります。
妻だけEDの場合、本人は風俗や自慰行為、あるいは不倫相手など、妻以外の女性に対しては正常に勃起するのに対して、妻に対してだけ十分に勃起しないという点が特徴的です。
一般的なEDとは異なり正常に勃起する場面がある以上、身体的な機能には問題がないと考えられます。そのため、妻だけEDは心理的な要因によって生じると考えられているのです。
(2)妻だけEDが起こる3つの理由
妻だけEDが起こる心理的な要因としては様々なことが考えられますが、代表的な要因として次の3つが挙げられます。
①妻との性行為がマンネリ化している
妻との性行為がマンネリ化すると性的にあまり興奮しなくなり、妻だけEDに至ることがあります。
誰しも、同じ相手との性行為を何年にもわたって重ねると新鮮味が薄れていくものです。その上に、性行為をする場所やシチュエーション、行為の内容などにも変化がなくなるとマンネリ化しやすくなります。
物足りないと感じながらも性行為ができているうちはよいですが、新鮮味を保ったり刺激をもたらしたりするような工夫を何もしなければ、やがて妻との性行為に嫌気が差してくることもあるでしょう。
そして、妻との性行為が気持ちのよいことだと脳が認識しなくなると、勃起不全が起こると考えられます。
②妻に性的興奮を感じなくなっている
そもそも妻に性的興奮を感じなくなり、妻が相手では勃起しなくなっていることもあります。
男性は基本的に視覚によって性欲を刺激される傾向にありますが、長年連れ添った妻の裸は見慣れたものとなりがちです。さらに、出産や加齢によって身体的な若々しさが減退すると、妻に対して性的魅力を感じなくなることもあるでしょう。
また、結婚生活を長く続けていると、妻との関係性が異性ではなく家族としての色合いが強くなるものです。そうなると、妻は性的な対象ではなくなり、性行為を求められても勃起しないということになりがちです。
③妻にプレッシャーを感じている
妻に対して性的魅力を感じてはいても、精神的なプレッシャーが原因となって妻だけEDが起こることもあります。
例えば、過去に妻との性行為に失敗し、そのことを責められたり、自分で気に病んでいたりするような場合です。「上手くしなければならない」「妻を喜ばせなければならない」といったプレッシャーを強く感じてしまうと性的な喜びに関心が向かなくなり、勃起しなくなるのです。
また、男性なら妻から日頃、「稼ぎが少ない」、「家事をロクに手伝ってくれない」などと責められていると、自分は受け入れられていない、愛されていないと感じてしまうでしょう。そうなると妻に対して気後れしてしまい、性行為に没頭できず勃起不全が生じることもあります。
さらに、子作り中の夫婦で妻の方が妊活に躍起になっているようなケースでも、妻だけEDが起こりがちです。妻から性行為を求められても子作りだけを目的としたものであれば、夫にとっては義務的な作業に感じてしまうでしょう。義務感で性行為に及んでも性的に興奮せず、勃起しないということになるのです。
2、ED夫と離婚したいと思う妻の気持ちとは?
次に、ED夫と離婚したいと思う妻がどんな気持ちを抱いているのかをご紹介します。
EDはある意味で仕方のないことだともいえますが、夫婦生活に応じてもらえない妻は苦しんでいることが多いものです。特に、離婚を回避して夫婦関係を改善したいのなら、妻の気持ちを理解しておくことは非常に重要です。
(1)性的不満足
妻も夫婦生活を望んでいないのなら問題はありませんが、EDを理由に離婚を考える妻のほとんどは大きな性的不満足を感じています。
一般的に性欲は男性の方が女性より強いと考えられていますが、当然ながら女性にも性欲はあります。そもそも性欲の程度は男女問わず個人差が大きく、夫よりも妻の方が強い性欲を持っている夫婦も少なくありません。
人並みの性欲がある妻にとって、性行為に一切応じてもらえない生活は非常に辛いものでしょう。かといって、日本の法律では配偶者以外の人と性的関係を結ぶことは違法とされています。男性なら風俗などで性的不満足を解消することもできるでしょうが、女性向けの風俗は一般には普及していません。
かくして、ED夫の妻は他に性的対象となる男性を見つけたいという欲求が高まり、やむを得ず離婚を考えるようになるのです。
(2)子どもが欲しいのに作れない
近年では子どもをもうけずに夫婦二人の生活を楽しむケースも増えてはいますが、やはり結婚した女性の多くは子どもを産み、育てたいと望んでいるものです。
しかし、夫がEDで性交渉がなければ子どもを作ることはできません。単なるセックスレスなら話し合いで解決できる可能性もあるかもしれませんが、もしEDが治らないのであれば、子どもが欲しい女性としては離婚して新たなパートナーを求めるしかないでしょう。
また、女性の体には妊娠適齢期というものがあり、35歳を過ぎると妊娠率が下がり、妊娠できたとしても流産や妊娠合併症のリスクが高まると言われています。そのため、女性は結婚した以上はできるだけ早く子どもを作りたいと考える傾向にあります。
それにもかかわらず、夫が妻だけEDを改善する対策を考えもしないようでは、離婚を迫られるのも無理はないでしょう。
(3)夫婦間のコミュニケーションに支障が出る
夫婦間の性交渉は、性欲を解消したり子どもを作ったりするためだけではなく、お互いに愛情を確認するための大切なコミュニケーションでもあります。
身体的な不能であればともかく、妻だけEDで性行為を拒否された妻は、「自分は愛されていない」と寂しさを感じたり、「自分には女性としての魅力がない」と自分を責めてしまったりするでしょう。
どちらにしても夫婦間に溝が生じ、愛情も冷めやすくなります。やがて日常生活での挨拶や会話などのコミュニケーションもよそよそしいものになっていくでしょう。
女性は男性よりもコミュニケーションを重要視する傾向にあります。そのため、夫婦間のコミュニケーションに支障をきたすと、妻は夫との冷め切った関係を解消するために離婚したいと考えるようになるのです。
3、EDのみを理由に離婚をするのは難しい
妻だけEDを抱えている方の中には、妻から離婚を迫られたら応じるしかないのではないかと考えている方も多いことでしょう。
しかし、結論を言うと、EDのみを理由として一方的に離婚するのは難しいです。とはいえ、妻も苦しんでいるはずですので、離婚に応じないのなら夫婦関係の改善に努めた方がよいでしょう。
ここでは、EDが離婚原因になりにくい理由と、夫婦関係を改善する方法をみていきましょう。
(1)EDが離婚原因になりにくい理由
夫婦がお互いに合意すれば、どのような理由でも協議離婚ができます。しかし、一方が応じない場合に裁判で強制的な離婚が認められるためには、法定離婚事由が必要です。
民法770条1項で定められている法定離婚事由は、以下の5つです。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
EDは法定離婚事由として掲げられていませんが、EDが原因でセックスレスとなっている場合には「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります。
ただし、法定離婚事由に該当するセックスレスとは、「病気など特別な事情がないのに、夫婦間の性交渉が1ヶ月以上ないこと」を指します。夫がEDの場合は「特別な事情」と認められるため、ここでいう「セックスレス」には当たりません。
したがって、EDのみが理由では法定離婚事由に該当せず、一方的な離婚は認められないのです。
ただし、身体的なEDとは異なり妻だけEDのケースでは、妻に対してだけ不能であることを証明できなければ、夫が不当に性交渉を拒否していると判断されるおそれがあります。その場合は「セックスレス」として法定離婚事由に該当し、一方的な離婚が認められてしまうでしょう。
そうでなくても、夫婦の不仲が長期間続き、夫婦関係が破綻したと判断される場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるものとして離婚が認められることもあります。
(2)夫婦関係を改善する方法
妻だけEDが原因で冷え切った夫婦関係を改善するためには、まず妻と話し合うことが重要です。夫自身の意思で性交渉を拒否しているわけではなく不能であることを妻に理解してもらえれば、2人で解決策を考えることもできるようになるでしょう。
そして、夫婦間の性行為で刺激や新鮮味が感じられるように、2人で工夫してみるのがおすすめです。2人でデートをしてみたり、ラブホテルを利用してみたり、相手が嫌がらない範囲で性癖を満たすような行為を提案してみるのもよいでしょう。性交渉が無理でも、スキンシップを増やせば妻の不満が軽減されると考えられます。
その一方で、EDそのものの改善を図ることも大切です。EDの治療は基本的に泌尿器科で行われていますが、妻だけEDは心理的な要因が強く影響しているので、心療内科や心理カウンセラーなどのカウンセリングを利用してみるとよいでしょう。夫婦カウンセラーから夫婦生活についてのアドバイスを受けるのもよいことです。
妻の理解が得られない場合には、家庭裁判所の円満調停を利用して話し合いによる改善を図ることもできます。ただし、法的手段に持ち込むと離婚調停や離婚裁判に進んでいく可能性も高まりますので、調停を利用する場合は弁護士に依頼して慎重に進めた方がよいでしょう。
4、EDが理由で離婚を迫られたら弁護士に相談を
EDが理由で妻から離婚を迫られたら、慌てず弁護士に相談することをおすすめします。
相談するだけでも、法定離婚事由があるかどうかや、妻と話し合う際に注意すべきポイントなどについて具体的なアドバイスが得られます。
妻との話し合いが進まない場合には、弁護士に依頼して間に入ってもらうことが可能です。弁護士は専門性の高い法的な観点から冷静に妻と話し合ってくれるので、離婚を回避して夫婦関係改善の方向に向かうことが期待できます。
もし、妻の方から離婚調停などの法的手段をとられたとしても、弁護士が全面的に対応してくれます。離婚裁判に進んだ場合も法的に的確な反論をしてくれますし、離婚を回避できる可能性が高まります。仮に離婚がやむを得ないケースでも、弁護士のサポートによって有利な離婚条件を獲得しやすくなるでしょう。
EDが理由の離婚問題で弁護士のサポートを受けるメリットは、大きいといえます。
まとめ
妻だけEDのみを理由として一方的に離婚される可能性は低いですが、妻が苦しんでいるのも事実です。放置すると別居に至り、やがて離婚が認められる可能性は大いにあります。
離婚問題や夫婦問題の解決に注力している弁護士に相談すれば、信頼できる夫婦カウンセラーなどを紹介してもらえることもあります。その場合は、法律問題だけでなく、幅広い観点から夫婦関係を改善するための対策を検討しやすくなるでしょう。
妻だけEDによる離婚問題でお困りの方は、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。