自動車保険の他車運転特約。どのような特約なのでしょう。
友人や知人の車を借りて事故を起こしてしまった場合、その事故の補償に役立つのが「他車運転特約」です。
今回は、他車運転特約について説明いたします。
目次
1、他車運転特約(他車運転危険補償特約)とは?
他車運転特約とは、自動車保険の被保険者(契約者)などが、友人や知人などの第三者の車を借りて運転した際に交通事故を起こしてしまって法律上の賠償責任を負った際、当該交通事故を自分が契約している車の事故とみなして、契約者の契約条件に応じて補償する保険(特約)です。
例えば、友人から車を少しの間拝借して運転し、交通事故を起こし相手にケガを負わせてしまった場合には、車を貸した友人にも損害賠償責任が生じ、友人の自動車保険は翌年以降等級がダウンして保険料が上がってしまうことになります。
これでは、車を貸し借りした当事者間の関係が気まずくなってしまいます。
しかし、そのような場合でも、この他車運転特約を利用すれば、運転者本人の保険を使うことになるため、保険の面では友人に迷惑を掛けずに済むのです。
他車運転特約は、基本的に通常自動車保険に付帯されているため、通常は改めて契約する必要はありません。
2、他車運転特約は誰が対象になる?
では、他車運転特約の対象になるのはどのような場合でしょうか。
簡単に言うと、当該交通事故が、
- 他人の車を
- 臨時に借りて運転
していて起こした事故の場合です。
(1)他人の車
ここでいう「他人」とは、以下の者以外をいいます。
- 記名被保険者
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者またはその配偶者の同居親族
- 記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子
(2)臨時に借りて運転
前述しましたが、他車運転特約は、要するに、他人の自動車を一時的に借りて運転するときの交通事故に備えるものです。そのため、他人の車を一時的に借りている際に発生した交通事故や、ご自身の自動車を修理に出している場合に、その修理期間に限って代車を借りているときに発生した交通事故などが一般的に補償されることになります。
ただし、例えば、他人から自動車を借りた場合でも、借用期間を特に定めなかった場合には、一時的に自動車を借りているとは言えなくなってしまいますので、このような場合には補償の対象になりません。
また、(1)で挙げた方が所有または、常に使用している自動車の場合も「臨時に借りた」とはいえず,補償されません。
その他にも、所有者等の許しを得ていない無断借用のケースや、会社や事業用の車を業務上の理由で運転していた場合等は、補償の対象になりませんので、これらの場合にはその車についている保険を使う必要があります。
3、他人の車だったらすべて補償されるわけではない?他車運転特約の対象になる車
他人の車を運転していて発生した交通事故のすべてが他車運転特約によって補償されるわけではありません。他人が所有する以下の自家用8車種の車を臨時で運転した場合のみが対象になります。
- 自家用普通乗用車
- 自家用小型乗用車
- 自家用軽四輪乗用車
- 自家用軽四輪貨物車
- 自家用小型貨物車
- 自家用普通貨物車(最大積載量5t超2t以下)
- 自家用普通貨物車(最大積載量5t以下)
- 特種用途自動車(キャンピング車)
4、他車運転特約の保険金の種類は?
ここでは、他車運転特約の補償内容について説明します。
(1)相手方への補償
①対人賠償保険
交通事故によって被害者がケガをしたり、お亡くなりになった場合には、相手方の慰謝料や治療費などがご自身の自動車保険の契約に従って補償されます。
②対物賠償保険
物損事故を起こして損害を賠償しなくてはならなくなった場合、ご自身の自動車保険契約に従って補償されます。
(2)自分や同乗者の補償(無保険車傷害危険補償特約)
借りた車に誰かを乗せていてその乗車中の方が死亡してしまったり、あるいは後遺障害を負ってしまった場合で、さらに事故の加害者が任意保険に未加入な場合には補償が十分に受けられなくなってしまいかねませんが、その場合でも保険金が支払われます。
少し細かいですが、人身傷害保険「車内+車外補償型」を付帯している場合には、人身傷害保険から保険金が支払われることになります。
(3)借りた車の補償
借りた車に損害が発生した際には、契約車両に車両保険が付帯されていて、かつ契約車両の契約条件等に従って車両保険金の支払いができる事故の場合に限って、借りた車の時価額または契約条件の上限金額が補償されます。
ただし、補償されるのは借りた車に直接生じた損害に限られますので、借りた車の修理期間中の代車費用等までは補償されません。
5、他車運転特約が使えない場合の具体例
「2、他車運転特約の対象者は?」や「3、他車運転特約の対象になる車は?」で記載した要件に当たらない場合には、基本的には他車運転特約が使えません。
しかし、特約が使える場合と使えない場合は、保険会社ごとに違うことがあります。
そのため、どのような場合に他車運転特約が使えて、どのような場合に使えないのを、一度ご自身の加入している保険契約を見てご確認ください。
ここでは、「おとなの自動車保険」に自動でセットされている他車運転特約が使えない場合について、具体的な例をご紹介します。
(1)他車運転特約が使えない場合
①他車運転特約の被保険者であっても、契約条件で補償対象外となっている場合
例えば、運転者限定特約(同居の子以外補償型)で自動車保険を契約している場合で、同居している子供が運転していた場合です。
②借りた車での事故のうち駐車・停車中の事故の場合
※ただし、「停車」には、信号待ちをしている場合や踏切での列車待ちの場合は含まれません。
③別居の未婚の子供が所有している車を、別居の未婚の子供自身が運転中に事故を起こした場合
④同居の子供が所有している車を借りて事故を起こした場合
(2)他車運転特約が使える場合
例えば、別居している未婚の子供が、友人や知人の車を借りて事故を起こしてしまった場合などには、特約が使えます。
この場合、確かに他人の車の事故なのですが、ご自身の保険を使う以上、本人の事故と考え方は同じとなります。
まとめ
今回は、他車運転特約について説明してきましたが、いかがでしょうか。
そもそも、事故を起こさないことが第一です。しかし、どうしても他人の車を借りなければならない状況で、事故を起こしてしまうこともあるかと思いますので、そのようなときのために、他車運転特約の存在は知っておいて頂ければ幸いです。