「セックスレスだけど離婚したくない!」
このようなお悩みをお持ちの方も多いことでしょう。
日本ではセックスレスの夫婦が多く、セックスを拒まれた側の配偶者は深刻な悩みを抱えています。セックスレスは不倫や浮気などの要因となることもあり、離婚の危機も孕んでいる場合があります。
一方で、セックスを拒む側には自身の理由が存在することも考えられます。セックスレスであっても、離婚を選択せずに円満な結婚生活を築く方法があるのでしょうか。
この記事では、
セックスを拒まれた側が離婚を回避するためにできること
離婚を選択しない場合、慰謝料などの取り決めはどうなるか
セックスレスでも幸福な夫婦関係を保つためのヒント
などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。多くの夫婦の問題を解決に導いてきた専門家のアドバイスを通じて、セックスレスでも離婚を回避し、幸せな結婚生活を実現する方法について考えてみましょう。
離婚したくない方は以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、「セックスレスだけど離婚したくない」はわがまま?
セックスレスが原因で離婚してしまった夫婦は、数多くいます。
セックスを拒否した側の「離婚したくない」という主張は、法律上、認められないのでしょうか。
(1)離婚が避けられないケース
そもそもセックスレスとは、日本性科学会が提唱した定義によると、「病気など特別な事情がないのに1ヶ月以上性交渉がない状態」と定義されています。
裁判例では、以下の3つの条件を満たす場合には、セックスレスが法定離婚事由に該当するとされています。
- 誘いかけても拒否された
- セックスレスの状態が長期間(概ね1年以上)続いていること
- 性交渉が困難な事情がないこと
法定離婚事由とは、離婚問題の原因を作った側の配偶者が離婚を拒否しても、裁判で強制的に離婚が認められる事情のことです。
つまり、病気などで性交渉が困難でないにもかかわらず、相手からの誘いかけを拒否したことによってセックスレスとなり、その状態が概ね1年以上続いている場合には、相手が離婚を望めば離婚が避けられないということになります。
(2)離婚を拒否できるケース
上記の3つの条件の裏返しとして、
- 相手の誘いを拒否したことはない
- セックスレスの状態が概ね1年以内にとどまっている
- 病気などで性交渉に応じることが困難
といった事情がある場合は、離婚を拒否することが可能です。
離婚が認められる3つの条件を満たしている場合でも、相手が不倫している場合や、特殊な行為を求められるためにやむを得ず拒否した場合など、特別な事情がある場合には離婚を拒否できる可能性があります。
2、本当は相手も離婚したくない?拒否された側の本音とは
セックスレスを理由に離婚を求める相手も、本心では離婚したくないと考えている可能性が高いです。
離婚したくないなら、相手の本音を理解しておきましょう。
(1)子供と離れたくない
誰しも、離婚して子供と離ればなれになるのはつらいものです。
セックスできない夫婦生活が不満で、パートナーにはもう興味がないけれど、子供とは離れたくないと考えている人は多いかもしれません。
(2)離婚後の生活が不安
男性も女性も、離婚後の生活には大きな不安を抱えているものです。
女性であれば離婚後に経済的に苦しくなる可能性が高いですし、収入が高い男性の場合でも、離婚後に自分で家事をこなせるかどうか不安に思っているというケースもあるでしょう。
(3)離婚手続きが面倒
実際に離婚するためには、面倒で骨の折れる手続きが必要となります。
離婚経験者のほとんどが、離婚するときには結婚するときの何倍ものエネルギーを要し、精神的な消耗も激しかったと語っています。
セックスレスで大きな不満を抱えていても、離婚手続きが面倒なために葛藤している人も多いはずです。
(4)セックスレス以外に夫婦間の問題がない
セックスレスの問題はあっても、その他には特段の問題がないという夫婦も数多くいます。
実際にも、当事務所にセックスレスで離婚の相談に見える方の中にも、「適度に性交渉に応じてくれさえすれば、理想的なパートナーだと思うんですが…」と仰る方は少なくありません。
セックスを拒否したがために離婚に至ってしまうのは、もったいないことではないでしょうか。
(5)夫婦生活の復活が理想
セックスレスで離婚を考える人の多くは、本当は離婚したいわけではなく、夫婦生活の復活を望んでいます。
そんな人でも、我慢に我慢を重ねて限界に達したときに「もう離婚だ!」と考えるようになるのでしょう。
離婚を切り出した時点で別離の決意を固めている人もいますが、まだ修復が間に合う可能性も十分にあります。
3、セックスレスでも夫婦関係を円満にする方法
では、セックスレスでも夫婦関係を円満にする方法はあるのでしょうか。
最初にお断りしておきたいのですが、相手が切実にセックスを求めている以上、一切応じないのでは円満な夫婦関係は難しいと考えるべきです。
性欲は人間の本能的な欲求であり、完全に消すことはできません。
夫婦はお互いに相手の貞操を独占しあうものですので、適度に性交渉を営みたいと考えるのも自然なことです。
それを前提として、セックスレスによってこじれた夫婦関係を円満にする方法をご紹介します。
(1)なぜしたくないのかを伝える
夫婦間のセックスを拒否するからには、したくない理由が何かあるのでしょう。
まずは、それを相手に伝えて理解を求めることが大切です。
ただ、「その気になれない」「疲れている」というだけでは相手が納得できるはずもありません。
- 痛いから嫌
- 独りよがりの行為だけではこちらに不満がたまる
- 〇〇の行為が嫌
- ムードもなく行為だけするのは嫌
- 睡眠不足となり、翌日の仕事に差し支える
というように、できる限り具体的な理由を挙げることです。
セックスに関する不満は相手も気付いていないことが多いですが、指摘して話し合えば解決できることも少なくありません。
本音を具体的に伝えて、話し合いましょう。
(2)どれくらいのペースなら応じられるのかを考える
セックスを拒否する人の中には、「一度でも応じると、連日のように求められて体がついていかないから応じられない」という人もいることでしょう。
人それぞれ、「適度なペース」は異なりますので、夫婦間でズレがあってもおかしいことではありません。
たしかに、週に1回が適度と考えている人が毎日求められると苦痛でしょう。
あまりにも頻繁にセックスを強要されることは「性的不調和」となり、それが離婚原因ともなり得ます。
自分なりに、どれくらいのペースならさほどの苦痛なく応じられるのかを考えて話し合い、
- 「2週間に1度」
- 「月に1度」
というようにルール化することをおすすめします。
月に1度でも性交渉があれば、多くの人は、仮に満足しなかったとしても離婚は思いとどまる可能性が高いといえます。
(3)スキンシップなどの軽い行為から始める
とはいえ、性交渉に応じること自体が苦痛だという人も少なくないことでしょう。
そういった人は、いきなり本格的なセックスに応じなければならないとお考えなのではないでしょうか。
セックスレスが長期間続いていたのであれば、修復する際にはスキンシップなどの軽い行為から始めていくのが良いようです。
最初は抱き合って眠るだけ、性交渉に至るとしても時短を心がけるなど、無理のない範囲で始めていきましょう。
夫婦で触れ合うだけでも癒やされますので、相手の不満は大幅に軽減されるはずです。
どこまでの行為をするのかについても、夫婦で話し合ってルール化しておいた方がよいでしょう。
4、浮気の公認はおすすめできない!その理由とは
「相手が外で浮気や不倫をしてもいいから、夫婦間の性交渉には応じたくない」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、浮気・不倫の公認は以下の理由でおすすめできません。「風俗に行ってもいいから外で済ませてきてほしい」というのも同じです。外での性行為を認めると、浮気・不倫につながる可能性が高まるからです。
あくまでも、夫婦間で性的な問題を解消することを心がけるべきです。
(1)浮気相手に迷惑をかける
浮気・不倫には、当然ながら「相手」がいます。
相手が既婚者なら、そちらの夫婦が離婚してしまう可能性があります。
相手が独身の場合でも、あなたの配偶者と浮気・不倫をしたために婚期を逃したり、発覚した場合に社会的な制裁を受けるなどの迷惑をかけるおそれがあります。
このような場合でもあなたに法的な責任はありませんが、セックスレスさえ解消しておけば第三者に迷惑をかけずに済むということは、知っておくべきでしょう。
(2)浮気相手の配偶者から慰謝料を請求されるおそれがある
浮気・不倫が相手の配偶者にばれた場合は、慰謝料を請求される可能性があります。
慰謝料を支払わなければならないのは、あなたではなくあなたの配偶者ですが、あなたが離婚しないのであれば、通常は家計から支出することになるでしょう。
したがって、あなたも実質的に経済的な負担を負うことになります。
配偶者の浮気・不倫という違法行為を公認する以上、このようなリスクも覚悟しなければなりません。
(3)離婚につながる可能性がある
また、浮気や不倫を認めると、配偶者が浮気相手の方に惹かれてしまい、結局は離婚につながる可能性があります。
あなたとしては、配偶者が外で性欲を発散してくれればそれで満足かもしれませんが、性交渉には相手がいるということを忘れてはいけません。
5、セックスレスが原因で離婚が避けられないときに知っておくべきお金のこと
配偶者がセックスレスで離婚の意思を固めていて、法律上も離婚が避けられないケースもあります。
やむを得ず離婚する場合には、以下のようにお金のことをきちんと清算することも大切です。
(1)慰謝料は払わなければならない
たとえあなたが女性であっても、夫から慰謝料を請求されたら支払う必要があります。
離婚の慰謝料は妻がもらうものというイメージがあるかもしれませんが、法律上は男女を問わず、離婚原因を作った側が支払うべきものとされています。
セックスレスで離婚する場合には、性交渉を拒否した側が慰謝料を支払わなければならないのです。
慰謝料の相場は数十万円~300万円程度と言われていますが、その中でも数十万円~100万円程度とされるケースが比較的多くなっています。
(2)財産分与はもらえる
財産分与は離婚原因とは無関係に請求できますので、必ず請求するようにしましょう。
基本的に、婚姻中に夫婦が共同して築いた財産の2分の1を取得することができます。
ただ、相手はセックスレスで大きな不満を持っていますので、話し合いがこじれる可能性はあります。
その場合は、状況によっては弁護士に依頼するか、調停で話し合った方がよいかもしれません。
(3)養育費は請求できる(親権を獲得した場合)
あなたが未成年の子供の親権を獲得した場合は、離婚した元配偶者に対して養育費を請求できます。
金額は、裁判所の「養育費算定表」の基準を目安として決められるのが一般的です。
参考:裁判所
親権と養育費も、基本的には離婚原因とは無関係に決められます。
ただし、あなたがセックスレスで離婚原因を作った以上、話し合いでもめる可能性があるので、その場合には弁護士に依頼するか、調停で話し合った方がよいでしょう。
(4)年金分割は請求できる
年金分割も、離婚原因とは無関係に請求できます。
ただし、相手が厚生年金(あるいは旧共済年金)に加入していることが条件です。
年金分割を請求すれば、相手の厚生年金(および旧共済年金)の納付記録が分割されますので、あなたの年金受給額が増えることになります。
2008年4月1日以後の婚姻期間中の納付記録は「3号分割」という制度によって、相手との合意がなくても0.5の割合で分割を請求できます。
それより前の婚姻期間中の納付記録については、相手と合意するか、裁判所の手続きを経た上で「合意分割」の請求をすることが必要です。
分割割合は最大で0.5ですが、離婚調停や離婚裁判ではほとんどのケースで分割割合を0.5とする合意分割が認められています。
6、セックスレスで離婚問題に発展したら弁護士に相談を
セックスレスで離婚を切り出された場合、相手は相当に思い詰めている可能性が高いです。
話し合おうとしても、それすら受け付けられないこともあるでしょう。
そんなときは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、法律の専門家としての立場で相手との話し合いを代行しますので、冷静な交渉が可能となります。
夫婦関係を修復できるチャンスも生まれる可能性があります。
離婚調停や離婚裁判に発展した場合も、弁護士があなたの味方として全面的にサポートしますので、離婚を阻止することが期待できます。
一人で抱え込まずに、弁護士の力を借りて事態の改善を図りましょう。
まとめ
「セックスレスだけど離婚したくない」という主張が認められる可能性はありますが、状況によりますし、あなた自身も夫婦関係の改善に向けて努力する必要があります。
相手がセックスレスを理由として離婚を切り出してきた場合は、離婚の決意を相当程度に固めてはいるものの、まだ夫婦関係を修復するチャンスは残っていることが多いです。
早めに適切な対処を取ることで、離婚を回避できる可能性が高まります。
どのように対処すればよいのかが分からないときは、お気軽に弁護士へご相談ください。
夫婦問題の解決実績が豊富な弁護士に相談すれば、最善の解決策を一緒に考えてくれるはずです。