不倫という行為は、その背後にさまざまな複雑な要因が絡み合っています。なぜ人々は魅力を感じるのでしょうか?実は、パートナーシップに満たされない感情や新たな刺激を求める欲求が不倫を引き起こす要因とされています。不倫が始まるきっかけや、社会的圧力、そして不倫がもたらすリスクについても考える必要があります。
一方で、「不倫により家庭が壊れた話や夫婦関係に亀裂が生じた話は珍しくありません。不倫(不貞行為)は民法770条に定められた法定離婚事由のひとつです(同条1項1号)。
ここでは、弁護士が実際に担当したエピソードや不倫する夫の心理から『なぜ不倫するのか』を分析します。また、夫が不倫していた場合の対応も合わせて解説します。
目次
1、なぜ不倫するの?弁護士が実際に担当した4つの事例
家庭や夫婦関係を壊すと分かっていて夫はなぜ不倫するのか考える場合、実際のエピソードを参考にすると夫の不倫理由や心情を読み解く手がかりになるはずです。
まずは弁護士が実際に担当した夫の不倫エピソードについて見てみましょう。
(1)家庭円満なのに「なぜ不倫するの?」①
Aさんは自分の家庭が円満だと思っていました。夫は仕事と家庭を両立させる人で、職場では有望な社員だと期待されているようです。会社では良き社員であり、後輩たちにとっては良き先輩だという話でした。
家庭では妻に気をつかってくれる良き夫で、小学校に入学したばかりの息子の良き父親でした。休みの日は家族サービスとして子供の行きたいレジャー施設や、Aさんの買い物などに付き合ってくれます。親子3人でよくおしゃべりもするため、Aさんは家庭円満で良い夫婦関係を築けていると思っていたのです。
しかし、そんなAさんの夫の不倫が発覚しました。相手は同窓会で再会したという女性です。
Aさんは「今後どうすればいいだろう」、「相手の女性に慰謝料を請求したい」と弁護士に相談しました。Aさんは家庭が上手くいっていると信じ切っていたため、夫の不倫は精神的にかなり大きな衝撃です。家庭円満なのに夫が不倫したエピソードになります。
(2)家庭円満なのに「なぜ不倫したの?」②
Bさんの夫はいわゆる家庭の不満がなさそうなタイプです。夫婦関係がマンネリすると不倫のもとという話を耳にしたことのあるBさんでしたが、夫はむしろ変化を嫌うような印象を持っていました。
Bさん夫婦に子供はいませんので、家庭はふたりのゆったりと時間を過ごせる場所です。BさんにはBさんの趣味があり、夫には夫の趣味があったため、余暇などは個人で過ごすことも少なくありません。
ある日、Bさんの夫の不倫が発覚しました。不倫相手はBさんとはタイプの違う女性です。趣味もBさんとは違っていました。不倫相手は夫と趣味が共通しているのです。
Bさんは自分が夫の趣味への理解が乏しいからかと反省して夫の趣味のことも積極的に話題にするよう夫婦関係を維持する努力をしました。
しかしBさんの努力も空しく、夫が別の相手とも不倫していることが発覚します。今度の不倫相手はBさんとも夫とも、そして前回の不倫相手とも違った趣味を持っているようです。Bさんは夫との離婚を考え、弁護士に「夫が毎回違った趣味の女性と不倫を繰り返して疲れた」と相談しました。
家庭に不満のない夫が不倫を重ねたエピソードです。
(3)妻との関係が良好なのに「なぜ不倫したの?」
妻であるCさんと夫の仲は良好です。家庭内にも特に不和はありませんでしたが、Cさんは夫の女癖の悪さに悩んでいました。
Cさんの夫は「結婚後に異性と付き合うことがなぜ悪いのか」というタイプです。女癖が悪く不倫を重ねているように見えるのですが、夫は「友達」と言います。夫婦関係は良好なのに、夫は気軽にCさん以外の女性とも交友関係を持ってしまうのです。
考え方の違いや夫の女性関係に疲れてしまい、Cさんは弁護士へと離婚について相談しました。妻との関係が良好なのになぜか次から次へと女性と親しくなる夫のエピソードです。
(4)夫が妻に隠れて「なぜ不倫を楽しんでいたの?」
Dさんが「夫がどうやら不倫をしているようだ」と気づいたのは1年ほど前のことです。スマートフォンをしきりに操作し、Dさんが話しかけても上の空というときがあります。
怪しいクレジットカードの請求や、仕事の残業が異様に増え、休みの日も出張だと留守にするなど、不倫を疑うような日常の出来事が多数あります。
家庭や夫婦仲が悪かったわけではないのに「なぜ不倫?」とDさんは首を傾げてしまいました。夫が自分に隠れて不倫していることも、当然ですが面白くありません。Dさんは夫との離婚や不倫相手への慰謝料請求について弁護士に相談しました。
2、なぜ不倫したのか?エピソードの夫たちの浮気心理を分析
弁護士が実際に担当した不倫エピソードの夫たちを分析すると4つの心理があると考えられます。
夫がなぜ不倫するのか理解する手引きとして、エピソードの登場する夫たちの心理を分析します。
(1)不倫により夫・父親・社員ではない自分を再発見した
エピソード1の夫の場合「不倫したことで夫や父親、社員ではない自分を再発見した」という心理が考えられます。
Aさんの夫は家庭で良き夫であり、良き父親でした。話を聞くと会社でも期待できる社員とのことです。家庭や会社、家族や同僚たちに気をつかい、夫自身も気づかないうちに「良い夫・父親・勤め人でなければいけない」と気を張っていたのではないでしょうか。
同窓生と再会したときにより、良き夫や父親、社員ではない自分を再発見し、つい不倫にのめり込んでしまったのかもしれません。
(2)自分の奥そこにある好奇心や願望に気づいてしまった
エピソード2の夫はもともと趣味を楽しんでいたという話でした。
趣味の延長線上で出会った女性と交友関係が続いている間に「趣味が共通していると楽しい」と気づいてしまったのかもしれません。エピソード2の夫はさらに不倫を重ねているので、1度目の不倫で自分の中にある「新しい自分を発見」「願望や好奇心の再確認」した結果、不倫が楽しくなってしまった可能性もあります。
夫は異性との交遊というより、自分自身の再発見や再確認が楽しくて不倫に走っているのではないかと考えられます。
(3)不倫は交友関係の延長上という価値観がある
不倫をする夫の中には不倫に該当するような行為についても「交友関係の延長上」と考えている人がいます。エピソード3の夫がこのタイプだと考えられます。
不倫はあくまで交友関係の延長上ですから、友人や知人、知り合った異性はすべて不倫の対象になる可能性があるわけです。不倫自体を悪いことだと思っていないため、罪悪感も乏しいと考えられます。
(4)不倫によりリスクを楽しんでいる
不倫をしていると妻に隠し事をしている状態になります。妻にいつバレるか分からない状態です。夫の中には妻に隠し事をしていることや、いつバレるか分からない危うい関係にあることを楽しんでしまうタイプがいます。不倫というリスクと秘密のある関係だからこそ燃え上ってしまうわけです。
エピソード4の夫は関係のリスクや秘密の関係を楽しんでいると考えられます。
3、不倫への対応は「不倫理由」と「不倫レベル」で決める
夫の不倫が発覚したら、家庭や夫婦関係が円満なほど「なぜ不倫したのか」と悩むことでしょう。
不倫の目的は妻以外の女性との恋愛などが目的とは限りません。新しい自分の発見に喜びを覚えてしまったケースや、リスクや秘密を楽しみたいケースなども考えられます。たとえどのような目的や心理があったとしても、妻にとって夫の不倫は辛いものではないでしょうか。不倫した夫への対応にも悩むことでしょう。
不倫した夫の対応に悩む場合は、夫の不倫レベルや不倫の理由・心情によって決める方法があります。
(1)夫がなぜ不倫したのか心理を探る
まずは夫がなぜ不倫に走ったのか心情を探ってみてください。
夫Aが不倫をしました。妻との会話は乏しく、子供もAとはほとんど口を聞きません。仕事で帰宅すると家族はすでに寝ており、冷めた夕食だけがテーブルに残っています。休みの日は妻と子供が買い物などに出てしまうため、夫はひとりで過ごすことが常でした。家庭内での夫の立ち位置は「給与だけ入れてくれればいい」という感じです。夫は家庭内で居場所がなく、孤独や悲しみを埋めるために不倫に走ってしまいました。
対して別の家庭の夫Bは不倫のバレたら終わってしまう儚い関係性やリスク、妻への背徳的な秘密を抱えていることが楽しくて不倫していました。
同じ不倫でもAとBでは不倫にいたった心理が違います。妻にとっても「不倫された」という結論は同じでも、AとBの不倫では受ける印象が違ってくるのではないでしょうか。印象が変わると、夫への対応をどうするかも変わってくるはずです。
(2)夫の不倫レベルに注目
夫がなぜ不倫したのかという心情に注目したら、次は不倫のレベルを考えてみてください。
不倫する夫の気持ちにも段階があります。
不倫しつつも家庭や妻を大事にしているケースもあれば、不倫相手を家庭や妻より完全に優先しているケースもあります。夫の不倫レベルはどの段階にあるのか考え、対応を決めるときに参考にしてはいかがでしょう。
(3)不倫した夫への対応は3つ
夫がなぜ不倫したのか、不倫のレベルなどをふまえた夫への対応は3つ考えられます。
- 気持ちを切り替える
- 慰謝料を請求する
- 夫と離婚する
不倫に対してどうしても許せない、辛いという気持ちがあるなら、慰謝料請求や離婚を考えてもいいかもしれません。
4、不倫の精神的苦痛はお金で和らぐこともある
不倫は法律上の不法行為にあたります。不法行為により損害を与えた場合は、損害を与えられた側(不倫された側)は民法により損害賠償請求が可能です。
第七百九条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第七百十条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
引用:民法
夫婦間には貞操義務があるため、夫は妻、妻は夫以外と性的関係を持つことは許されません。不倫は夫婦間の貞操義務に反している不法行為ですから、夫が不倫をすれば妻は賠償を請求できるという理屈です。
5、夫がなぜ不倫したかを問わず法定離婚事由にもなる
不倫は民法770条に定められる法定離婚事由のひとつです。
第七百七十条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用:民法
民法770条1項1号に「不貞な行為」と記載されています。この不貞な行為が不倫にあたります。
夫婦の話し合いにより離婚することが可能です。ただ、話し合いがこじれてしまうと調停や裁判といった裁判所の手続きを利用することになります。離婚訴訟に発展すると、当事者である夫婦ではなく裁判官という第三者が離婚の可否を判断することになります。判断の際は民法770条1項各号に該当するかどうかが重要になるのです。
夫が不倫したときは損害賠償請求だけでなく、離婚することも対応のひとつになります。どうしても「夫と夫婦として生きていくのは無理だ」という気持ちがある場合には自分の幸せのためにも離婚という選択肢を考えてみるのもいいでしょう。
まとめ
弁護士が実際に担当したエピソードから「なぜ夫は不倫するのか」を分析しました。不倫の中には家庭に居場所がなかったため居場所を求めるなど、夫の気持ちが追い詰められているケースもあります。夫が隠れてリスクを楽しみたいなど、家庭円満でも不倫に走るケースも考えられます。
妻にとってはどちらも等しく夫の不倫です。夫の心情や不倫のレベルを考えて対応に迷ったら、様々な不倫ケースに対応している弁護士に相談してはいかがでしょう。気持ちの点での解決や今後を見据えたアドバイスを受けられるはずです。