B型慢性肝炎についてご存知ですか?
B型肝炎訴訟の影響もあり「B型肝炎」という言葉を聞いたことがある方でも、
- B型肝炎に感染して発症するとどのような症状が現れるのか
- 「B型慢性肝炎」とはどのような症状・疾患なのか、その治療法
など、ご存知でない方も多いのではないでしょうか。
今回は、
- B型慢性肝炎とはどのような症状であり、どのように対処するべきなのか
を中心に書いていきたいと思います。
B型慢性肝炎なのかどうかを気にされている方、既にB型慢性肝炎であると診断されている方におかれましては、今後の対応の参考にしていただければ幸いです。
目次
1、B型慢性肝炎とは?B型肝炎には2種類ある?
B型肝炎には急性肝炎、慢性肝炎という2種類があります。
まず、成人になってからB型肝炎ウイルスに一過性感染した場合には、多くの方は自覚症状もないまま治癒(不顕性感染)することになりますが、約20~30%の方は急性肝炎(顕性感染)を発症することになります。
このように、一過性感染の場合において症状が現れるものの数か月以内に治癒するような状態のことを急性肝炎といいます。
一方、免疫力が未熟な状態でB型肝炎ウイルスに感染した場合には持続感染となりますが、その場合には約10~15%の人が慢性肝炎を発症し、治療が必要になるものとされています。
ただし、慢性肝炎を発症した場合には、急性肝炎のように自覚症状がはっきりと出ることは少ないとされています。
2、B型肝炎ウイルスの感染経路とは?
B型肝炎の感染経路は、大きく分けて垂直感染と水平感染の2つに分けることができます。
(1)垂直感染とは?
現在、日本のB型肝炎ウイルス感染者は110万から140万人いるとされていますが、その多くは母子感染防止策がとられる以前の母子感染によるものだとされています。
母親がB型肝炎ウイルスに感染している場合、乳幼児のほぼ100%に感染し、そのうち90%近くがB型肝炎ウイルスキャリアになるとされています。
(2)水平感染とは?
水平感染の原因としては、まず、予防接種による注射器の使いまわし、医療従事者による事故、輸血に伴う感染が考えられます。
現在では、医療環境の整備などによって、これらを原因とした感染が起きることはほぼ考えられません。
その他には、違法薬物の使用に伴う注射器の使いまわし、性交渉、ピアスの穴あけや入れ墨などで器具を適切に使用しなかった場合などにB型肝炎ウイルスに感染することが考えられます。
上記1.及び2.で述べましたB型肝炎ウイルスの感染経路や感染の種類については、「B型肝炎ウイルスの感染を防ぐために知っておくべき感染経路」「B型肝炎ウイルスに感染してしまった場合の初期症状と治療法」の記事にて詳しく書かせていただいていますので、よろしければご覧ください。
3、B型慢性肝炎の症状とは?
B型肝炎によって引き起こされる症状としては、倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐、尿の色が黒褐色になるなどがあります。引き続いて、皮膚や眼球の白い部分が黄色くなる黄疸が見られることもあります。
しかしながら、慢性化した慢性肝炎の場合には、急性肝炎の場合とは異なり自覚症状が現れることはほとんどないものとされています。
4、B型慢性肝炎かどうかを検査する方法
B型慢性肝炎かどうかを調べるためには血液検査、超音波(エコー)検査などが行われます。これらの項目を調べたうえで、さらにCT、MRI、血管造影、肝生検などが行われることもあります。
血液検査では、ウイルス学的検査としてHBS抗原、HBC抗体、HBE抗原、HBE抗体、HBV-DNAなどを測定します。血液生化学的検査としては、AST(GOT)値、ALT(GPT)値、ALP、γ-GTP、ビリルビン値、血小板数などを測定します。
これらの検査結果をもとに、B型慢性肝炎かどうか診断されることになります。
5、B型慢性肝炎の方が日常生活で気をつけるべきことは?
まず、ご自身の健康維持という観点では、B型肝炎慢性肝炎の方は、お酒をできるだけ控える必要があります。アルコールは肝臓に負担となりますので、飲酒の習慣がある方は病気がより早く進行するとされています。
また、過労を避け、適度な運動と規則正しい生活を心がけてください。
そして標準体重も維持し、健康的に生活する必要があるでしょう。
他人への感染を予防するという観点からは、カミソリや歯ブラシなどの血液が付着するようなものを他人と共用しないことが必要になります。ただし、通常のスキンシップや入浴、食事を共にすることによって感染することはありませんのでご安心ください。
結婚されている方につきましては、配偶者の方の血液検査をして、場合によってはワクチンを接種することが必要となるでしょう。
6、B型慢性肝炎は完治するか?
B型慢性肝炎の場合には、B型肝炎ウイルスを生涯体内から排除することができませんので、治療においては、HBV-DNA量を減らして、AST(GOT)、ALT(GPT)の値を正常範囲内に維持する「臨床的治癒」の状態とすることが目的となります。
したがって、B型慢性肝炎は完治することはないといえるでしょう。
この点、一過性感染による急性肝炎の場合であれば、数か月後にはB型肝炎ウイルスが体内からほぼ全て排除され、完治します。
7、B型慢性肝炎の治療方法は?
B型慢性肝炎の治療法には、大きく分けて肝庇護療法、抗ウイルス療法、免疫療法の3つがあります。肝庇護療法は肝臓の働きを強化することにより、抗ウイルス療法はB型肝炎ウイルスの活動を阻害することにより、免疫療法は免疫力を高める事により肝炎を鎮静化させる治療法です。これらは、全身状態、肝炎の病期、ウイルスの活動度などにより選択されることになります。
そして、B型慢性肝炎の主な治療法である抗ウイルス療法は、さらにインターフェロン療法、核酸アナログ製剤の2つに大きく分けられます。この2つの治療法は、年齢や進行度によって選択されることになります。
これら治療法の選択については、肝臓専門医とよく相談していただく必要があるでしょう。
8、B型慢性肝炎が悪化するとどのような経過を辿るか?
B型慢性肝炎が悪化した場合には、肝硬変や肝がんに進展する可能性があります。
そして、B型慢性肝炎ははっきりとした症状が出にくいので、気付かないうちに肝がんになってしまっている可能性もあります。
したがって、B型肝炎ウイルスに持続感染していることが分かった場合には、定期検査を受け、経過観察をしていただく必要があるでしょう。そして必要であれば、B型慢性肝炎の進展を止め、または遅らせるために適切な治療を開始する必要があります。
9、B型肝炎治療医療費助成制度とは?
厚生労働省では、平成20年より医療費助成を柱とした肝炎総合対策を実施しており、各都道府県においてインターフェロン療法や核酸アナログ製剤による治療に対する医療費の助成制度が整備されています。
この助成制度に必要な手続きは各都道府県に確認して頂く必要がありますが、治療費を月額1万円、2万円程度にまで抑えることが可能になります。
また、この助成制度は肝炎の早期治療を推進するためのものであり、感染経路については問われません。
したがって、集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染した方のみを対象にしたB型肝炎訴訟とは別の手続きになります。つまり、医療費の助成が認められた場合でも、B型肝炎訴訟に基づく給付金の支給が必ず認められるわけではなく、別途必要な資料を収集して頂く必要があります。
10、集団予防接種でB型慢性肝炎に感染した場合には国から給付金を受け取れる可能性が!B型肝炎訴訟とは?
幼少期の集団予防接種などの際に、注射器を連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染された方は、国に対して損害賠償を求める訴訟を提起し、そのうえで国と和解をして給付金を受け取ることができます。
上記訴訟では、B型慢性肝炎の方にも給付金が支給されます。
そして、その場合には、肝炎を発症してから20年が経過していない方は給付金1250万円、20年を経過している方については現在も完治していないまたは特定の治療歴がある方は給付金300万円、現在完治しており、特定の治療歴が医療記録上確認できない方は給付金150万円を受け取ることができます。
また、仮に給付金を受けとった後に肝硬変や肝がんを発症した場合には、当該症状に基づく給付金の金額と既に受け取った金額の差額を受け取ることもできます。
B型肝炎訴訟につきましては、詳しくは「B型肝炎訴訟で給付金を獲得するために知っておくべき7つのこと」の記事で書いていますので、よろしければご覧ください。
まとめ
B型慢性肝炎の症状や治療法についてご理解頂けましたでしょうか。現在、B型慢性肝炎で苦しんでいる方におかれましては、是非ともこれを機に医療費助成制度やB型肝炎訴訟制度を活用して頂ければ幸いです。