SNSや出会い系サイトを利用して出会った女性と性行為を行った結果、逮捕されるというケースが増加しています。また、ある女性のLINE IDがきっかけで連鎖的に複数の男性が逮捕・検挙されるケースも報告されています。
もしも、出会い系サイトで知り合った女性と性的な関係を持った場合、どのような法的な問題が生じるのでしょうか。援助交際で逮捕される可能性はあるのでしょうか。
この記事では、援助交際で逮捕された際に知っておくべき事や、弁護士に依頼する際のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
性犯罪の基本については、以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、援助交際するとどのような犯罪で逮捕されるのか
(1)問題となりうる法律は何か
援助交際に関する法律には、出会い系サイト規制法、児童売春・児童ポルノ処罰法さらに売春防止法があります。
それでは、どのようなケースではアウトで、どのようなケースではセーフなのでしょうか。基本的にポイントになるのは、行為時の相手の年齢、具体的には18歳未満か18歳以上かという点です。
以下、問題となりうる法律について、それぞれ見ていきましょう。
(2)出会い系サイト規制法
まず、出会い系サイト規制法では、出会い系サイトの掲示板に、児童(18才未満の少年少女)を相手方とする異性交際を求める書き込みをすること(禁止誘引行為)は禁止されています(第6条)。出会い系サイトの掲示板に児童を性交の相手方とする交際を求める書き込みをした人や児童を相手方とする金品を目的とした異性交際を求める書き込みをした人は、処罰の対象となります(100万円以下の罰金)。
この法律のポイントは、書き込みをしたことが違法であるという点です。実際に性行為やわいせつ行為に及んだかは問題にはなりません。
(3)児童売春・児童ポルノ処罰法
①児童売春・児童ポルノ処罰法で問題となる行為
次に、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律いわゆる児童売春・児童ポルノ処罰法について見てみましょう。
この法律で規制されるのは、児童(18歳未満の男女)との間で、対償を供与し、又はその供与の約束をして、性行為や性交に類似する行為をした場合です。簡単に言うと、出会い系サイトなどで18歳未満の者(女性に限りません。)と知り合い、同意の上でお金を支払って、性行為やそれに類似する行為をした場合、処罰の対象となります。
児童売春罪は、5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金という、かなり重い罪です(第4条)。それだけでなく、逮捕や実刑ということになれば、仕事を失ったり家庭が崩壊したりといった社会的な制裁も同時に受けることにもなりかねません。
ここでも、18歳未満の者であるかどうかという点がポイントになります。
②相手の女性が18歳未満だと知らなかった場合どうなるか
では、相手の女性が、18歳未満だと知らなかった場合、罪にならないのでしょう。具体的には、「自分は18歳以上だから大丈夫」と言われた場合などを考えてみましょう。
まず、刑事法の原則について説明します。刑事法では、故意責任の原則というものがあります。簡単に言うと、法律で禁止されているのを知っていながら、わざとやった、あえてやったという点に、刑事責任が生じるということになります。
上の例で言うと、18歳以上と言われて信じていたから、故意がないということになりそうです。しかし、必ずしもそうとは言えません。その女性が、外見的にどう見ても18歳未満ということが分かるようならば(例えば、高校の制服を着ているなど)、故意があると判断されるおそれもあります。逆に、女性の免許証等で18歳以上であることを確認したが、その免許証が偽造だったという場合などは、故意がないということになるでしょう。
(4)売春防止法
対価を支払って女性と性行為等に及ぶことを規制する法律として、売春防止法があります。この法律は、売春を行う女性を加害者としてとらえるのではなく、強制的に売春をさせられている被害者として救済するための法律なのです。
つまり、この法律が取り締まるのは、強制的に売春をさせている管理売春の管理者なのです。働かされている女性を取り締まるものではないのです。よって、売春そのものに罰則はありません。
したがって、18歳以上の者に、対価を払い、同意の上で、性行為やそれに類似する行為をした場合は、処罰の対象にはならないということになります。
もちろん、同意がなければ、強姦や強制わいせつ等の刑法違反になります。
2、援助交際でどのような行為をすると逮捕されるのか
(1)援助する側
さきほども述べましたが、18歳未満の者に対し、出会い系サイトの掲示板に児童を性交の相手方とする交際を求める書き込みをした人や児童を相手方とする金品を目的とした異性交際を求める書き込みをした人は、処罰の対象となります。
さらに、性行為等に及ぶと、5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金というかなり重い罪となります。
一般的に罪が重くなればなるほど逃亡のおそれがあるということになり、逮捕の可能性も高くなります。
(2)援助される側
援助される側については現時点では、処罰する法律は規定されていません。
3、援助交際で逮捕されるとどうなるのか(援助交際で逮捕された場合の流れ)
では、援助交際で逮捕された場合、どうなるのでしょうか。
(1)逮捕~勾留まで
最初で述べましたが、逮捕される時は、通常、逮捕状を持って朝方自宅に来ます。
その際、パソコンや携帯電話は証拠物件として押収されます(もちろん、事件終了後、返してもらえます)。
警察が家に来ることになればご家族に、会社を無断欠勤することになれば会社の同僚に、逮捕されたことが知られると思っていた方がいいでしょう。
逮捕されると、警察で指紋・写真を取られた後、取調べを受け、逮捕より48時間以内に、地検(あるいは区検)に身柄を送検されます。
そこでは、検察官による調べが行われ、再度調書を取られます。と言っても、警察のそれよりは簡単で、主に事実確認です(この程度の罪なら30分程度が一般的です。)。
それを踏まえ、検察官が勾留請求(裁判所に対して勾留決定を出すよう求めること。)するかどうかを判断します。
なお、東京地検の場合だと、朝から夕方まで両手錠、昼飯もその状態で食べるようです。
また、待っている間は10人程度の小部屋ですが、もちろん、私語は厳禁。硬い木製の椅子の上でじっとしていなければなりません。体験した人の話では、ここでのおしりの痛みが一番の苦痛とのことです。
ちなみに、勾留決定がされるまでは、弁護士・弁護人以外の人と面会することはできません。勾留決定が出るまでは、家族であっても、本人と会うことはできません。
(2)勾留決定
送検の翌日、同じく護送車に乗って裁判所まで行きます。ここでは、判事から勾留質問がされます。質問と言っても形式的で、ほぼ100%近い確率で勾留決定がされます。
勾留延長の場合、更に10日間の拘留が決定します。最大で20日間延長され、長い人は23日間も身体拘束されてしまいます。
なお、送検の翌日に勾留質問がされる運用は、東京都内のものです。管轄の裁判所によって、勾留請求と同じ日に勾留質問が行われる運用の場合も多いです。
(3)取り調べから起訴まで
勾留決定後、本格的な取調べが始まります。よく刑事ドラマ等で目にする取調べとほとんど変わりません。色々と事実関係等を聞かれ、その回答から刑事が調書を書いていきます。容疑を認めていれば、特に厳しいということはないようです。
ただし、容疑を否認したりすると、取調べが厳しくなったり、警察の態度も変わるとのことです。否認事件で弁護人がいないと、精神的にこの警察からの取調べに耐えられず、やっていないものをやったと言ってしまうこともあります。否認事件においては、特に、弁護人の存在が重要となってきます。
(4)起訴から判決まで
その後、逮捕から23日以内に起訴され、後日、更に公判(裁判)の日時が決まります。公判は、逮捕から大体2〜3ヶ月で行なわれますが、それまでの間は、逮捕された警察署の留置施設か拘置所(東京なら小菅にある東京拘置所)で過ごして待つ事になります。
起訴後であれば、保釈金を預けて保釈申請する事も可能です。
公判は地裁で行なわれ、誰でも見学できます。裏を返せば、自分が被告人になった場合、誰に傍聴されてもおかしくないと言うこともできます。
起訴内容を認めているケースであれば、1回の公判で求刑まで進むと思われます。一度の公判で判決まで進む場合も有ります。時間にしたら1時間程度です。その裁判の最後に、裁判官から判決の日時が言い渡されます。2回目の公判で判決が下り、刑が決定されます。判決に不服が有る場合、二週間以内に控訴も可能です。控訴しないまま二週間を経過した時点で判決が確定します。
なお、被害者が単独で、かつ初犯、容疑を認めて反省しているなどの場合、公判請求されず(裁判に進まず)に略式命令での罰金刑(50万円程度)ということもあります。
罰金と言っても、起訴されたという扱いですので、もちろん前科になります。
4、援助交際で逮捕されたら弁護士に依頼した方がいい?(弁護士に依頼するメリットとデメリット)
(1)メリット
①時間を気にせず面会することができる
弁護士に依頼する最大のメリットは、時間や回数を気にせず、面会ができると言う点です。さきほども触れましたが、逮捕直後は、弁護士以外の者が逮捕されている本人と面会することはできません。勾留決定後であっても、面会日時や回数が制限されています。
②示談・不起訴の可能性もある
相手の女性の名前や連絡先が分かれば、弁護士が相手の女性との間で示談交渉をすることもできます。もちろん、示談が成立したからといって、必ず不起訴になるということはありません。しかし、示談が成立したことを考慮して不起訴になったという案件もあります。弁護士・弁護人がいれば、示談交渉を任せられるという意味でもメリットがあるかと思います。
相手の女性の名前等を知らない場合には、検察官などを通じて教えてもらわなければなりません。この場合にも、加害者本人には教えたくないが弁護士であれば教えてもよい、という被害者の方もいらっしゃいます。このように弁護士を通じて被害者と連絡できる可能性が高まることも弁護人に依頼するメリットと言えるでしょう。
③私選弁護人のメリット
弁護士であれば、国選弁護人という選択もあります。しかし、国選弁護人の場合、自分の性格と合うのかどうか、自分で弁護人を選ぶということができません。さらに、国選弁護人の場合、私選弁護人と比較して、事件を熱心にやらないという意見もあります(全ての国選弁護人が該当するというわけではありませんが、国選弁護人から私選弁護人に切り替える理由として、依頼者からよく言われます。)。
いずれにせよ、自分が信頼して事件を任せた弁護士・弁護人に対応してもらえるという安心感があります。
(2)デメリット
デメリットとしては、やはり費用の点ではないでしょうか。
最近では、ホームページ等で料金を表示している法律事務所がほとんどです。
私選の刑事弁護の費用相場については、以下の関連記事をご覧ください。
私選弁護の場合、費用は高額となってしまいます。
しかし、自分の人生がかかった刑事事件を、自分が信頼した弁護士・弁護人に任せられるという安心感は、お金では計り知れないものではないでしょうか。
私選での接見の相場は、接見1回につきおよそ3万円から5万円ほどです。この金額が金銭的なご負担にならないということであれば、接見1回だけでも試してみるのもよいかと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
逮捕されてからでは外部との連絡が遮断されてしまします。弁護士を比較するということもできません。もし、身に覚えがあるということであれば、一度、無料相談等で弁護士に相談してみるとよいでしょう。