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弁護士なしで離婚裁判はできる?依頼する際のメリット・デメリット

近年、約3人に1人が離婚を経験すると言われています。離婚に関連する調停や訴訟などの法的手続きも、決して珍しいことではありません。

今回は、

  • 離婚裁判の仕組み
  • 弁護士に依頼することの利点と欠点

について解説していきます。

離婚裁判全般について詳しくは以下の関連記事をご覧ください。

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1、弁護士に依頼するか・弁護士なしで手続を進めるか判断するポイント

(1)コストを上回るメリットが期待できるかどうか

弁護士に依頼する最大のデメリットは、何といっても弁護士費用です。

弁護士費用は事務所ごとに様々ですが、仮にトータルで100万円かかると見積もった場合、これを上回るメリットを感じられるかどうかが、弁護士に依頼するか、弁護士なしで手続を進めるか判断するポイントといえます。

たとえば、単純に経済的な観点から考えると、調停や離婚訴訟に何度も出席し、その度に仕事を休むことで、トータル100万円以上の損が出るような場合、弁護士に依頼して、できる限り弁護士の方でやってもらう、という選択は合理的です。

また、離婚は一生に一度の大切なことなので、思いがけず不利益を被るとったことで後悔は絶対したくないと考えて、弁護士に依頼するという選択もあり得ます。

逆に、離婚は一生に一度の大切なことなので、自分の思うように手続を進めたいと考えて、弁護士に依頼しないことも1つの選択です。この場合でも、弁護士から、たとえば法律相談として1時間1万円などでアドバイスを受けながら、手続を進めていくということも考えられます。

要するに、まずは、少なくない弁護士費用に見合った価値を、自分自身の中で見出せるかどうかがポイントとなります。

(2)離婚の争点が複雑かどうか

また、離婚の争点が複雑かどうかもポイントになります。

離婚の争点が複雑かどうかを判断することは難しいですが、一般に、離婚自体に争いがある場合、親権に争いがある場合、財産分与の額が多額・財産に不動産が含まれる場合は、離婚の話し合いが長期化しやすく、弁護士に依頼するメリットが高まります。

他方、離婚自体にはお互い合意しており、あとは離婚が決まるまでの婚姻費用と離婚後の養育費の額に争いがあるといった場合は、「養育費・婚姻費用算定表」を基準に、多少の調整ということになることが通常ですから、弁護士に依頼するメリットはそれほど大きくないといえます。

(3)離婚訴訟は弁護士に依頼することがオススメ

前にご説明したように、離婚調停は、調停委員という第三者が入り、調停委員が当事者から話を聞きつつ、手続をリードしてくれます。

調停委員の多くは、親切な方で、当事者の方から話をよく聞き、話し合いがうまくまとまるように尽力してくれます。

したがって、離婚調停に関していえば、弁護士に依頼しなくても、それほど問題なく手続を進めていくことができるかもしれません。

他方、離婚訴訟は、もっとドライです。

裁判所の仕事は、当事者に主張を尽くさせて、どちらの当事者の主張が認められるかを判断することです。離婚訴訟では、当事者が積極的に裁判所に主張していかなければならず、裁判所が親切に話を聞いてくれるだろうと期待することは危険です。

離婚訴訟はそういう場ですから、やはり慣れている弁護士に依頼することが勧められます。

2、離婚調停と離婚訴訟の違い

離婚には、大きく、協議離婚、調停離婚、離婚訴訟の3つがあります。

このうち、

  • 協議離婚は裁判所を利用しない離婚方法
  • 調停離婚、離婚訴訟は裁判所を利用する離婚方法

です。

では、離婚調停と離婚訴訟は、何が違うのでしょうか。

簡単にいうと、離婚調停は「話し合い」、訴訟は「法的主張のぶつけ合い」ということができます。

では、「話し合いの余地はないので、いきなり訴訟がしたい」といって、初めから訴訟を選択することができるでしょうか。

残念ながら、基本的にはこれはできない決まりとなっています。なぜなら、裁判手続を利用して離婚を求める場合には、まず離婚調停をして、そこで話し合いが成立しなかったときに初めて、離婚訴訟を提起できるというルールがあるからです。これを「調停前置主義」といいます。
調停前置主義は、夫婦の揉め事については、一般的に、いきなり「法的主張のぶつけ合い」をするよりも、まずは「話し合い」をすることが望ましいという配慮に基づくものです。

3、離婚調停・離婚訴訟の特徴

(1)離婚調停の特徴

①あくまで話し合いの場

離婚調停は、あくまで「話し合いの場」です。そのため、夫婦のそれぞれが、たとえば「親権は、こうしたい」、「財産分与は、こうしたい」といった意向や希望を出し合いながら、お互いが納得し、妥協できる点を見つけていくことが、基本的な作業となります。

調停では、お互いの意向や希望が、法的に成り立つかどうかといった点は基本的には問題になりません。
たとえば、妻側が、離婚の条件として、不倫の慰謝料として1000万円を要求したのに対し、夫側でこれを了承すれば、不倫が本当にあったかどうか、金額として1000万円が適正かどうかに踏み込むまでもなく、離婚が成立します。

このように、離婚調停は、あくまで「話し合いの場」なのです。

②調停委員という第三者が話し合いを促してくれる

いくら離婚調停は「話し合いの場」といえ、お互いが好き勝手主張していては、話し合いがまとまりません。

そもそも、夫婦間の話し合いではまとまらなかった夫婦が裁判手続を利用するわけですから、夫婦にまかせていては、まとまりません。

そこで、調停委員という第三者が間に入って、話し合いを促します。
調停委員は、40代~60代の男女1名ずつの合計2名です。経歴としては、弁護士、医師、市町村区の職員等、様々ですが、いずれにせよ、夫婦や家庭の問題について経験のある方が選任されます。
そして、調停委員は、具体的な事案ごとに、「養育費・婚姻費用算定表」や、過去の裁判例などを参考にしながら、ある程度の「相場」「落としどころ」を見定め、話し合いを促します。
たとえば、「養育費・婚姻費用算定表」とかけ離れた低額な婚姻費用の支払しか応じないと主張する夫側に対しては、「主張は分かるけれども、合意ができなかったら算定表に従って機械的に金額が計算される可能性が高い。算定表をベースにしつつ、幾らかでも低い金額で合意できれば得ではないですか」などと言って、合意成立に向けたアドバイスを行います。

このように、調停委員という第三者が間に入り、夫婦の話し合いを促しつつ、最終的な合意成立に向けて進んでいくという点に、調停の大きな特徴があります。

③話し合いがまとまらなければ結論は出ない

以上のように、調停は「話し合いの場」であり、調停委員により合意成立に向けて手続が進められますが、話し合いがまとまらなければ、「調停不成立」といって、「話し合いがまとまりませんでした」ということが書面となって終結します。

調停で話し合われる中には、婚姻費用や面会交流のように、合意が成立しなければ「審判」といって強制的に結論を出さなければならないとされているものもあります。

しかし、離婚に関していえば、どちらかが「離婚には応じられません」と言って、その意思が変わらず、変わる見込みがなければ、「調停不成立」によって手続が終了します。

このように、離婚調停では、話し合いがまとまらなければ結論がでないままに終わります。

(2)離婚訴訟の特徴

①基本は書面のやり取り

離婚調停が「話し合いの場」であるのに対し、離婚訴訟は「法的主張のぶつけ合い」です。

とはいえ、日本の裁判の場合、ドラマのように、法廷で議論を戦わせることはありません。
どのように議論を戦わせるかというと、書面に法的な主張を書いて、書面でやり取りをするのです。
具体的には、大抵、1か月ごとに裁判所の期日(裁判所で手続を行う日)が決められ、それまでに夫が書面を提出し、その次の期日までに夫の主張書面に対する妻の反論を提出し…という形で手続が進んでいきます。

このように書面のやり取りによって、法的主張をやり取りする点に、離婚訴訟の特徴があります。

②強制的に結論が出る

そして、「訴訟で白黒つける」と言われるように、離婚訴訟では、判決という形で、最終的に何かしらの結論が出ます。

たとえば、不倫をしたとする夫が妻から離婚を求められ、「離婚したくない」と幾ら主張しても、不倫した事実が認められ、それが法律上の離婚原因にあたると判断されれば、「原告と被告とは離婚する」という判決が書かれます。

逆に、不倫した事実が認められず、その他に法律上の離婚原因にあたるような事情が認められなければ、「原告の請求を棄却する」という判決、つまり「離婚できない」という判決が書かれます。

このように、必ず結論が出るという点が、離婚訴訟の特徴です。

4、離婚調停を弁護士に依頼するメリット・デメリット

(1)メリット

①話し合いがスムーズに進む

調停はあくまで「話し合いの場」です。

しかし、「養育費・婚姻費用算定表」や過去の裁判例など、一定の基準に従って、話し合いが促されていくことが実際です。

弁護士は、当然、こういった基準を熟知しています。

したがって、弁護士に依頼することで、調停委員と同じレベルに立って、話し合いを進めていくことが期待でき、結果として、話し合いがスムーズに進んでいくことが期待できます。

②不利になることがない

調停委員は、「養育費・婚姻費用算定表」や過去の裁判例を基準に話し合いを進めていきますが、当事者が合意しているのに、あえてこれらの基準を持ち出す必要はありません。

たとえば、離婚慰謝料1000万円で合意している当事者に対して、あえて「過去の裁判例からすると高額ですよ」などと言わないこともあります。

そうすると当然、基準を知っていれば合意しなかった金額で合意してしまう、というリスクも否定はできません。

これに対し、弁護士に依頼した場合には、当然、上記のような基準は熟知した上で話し合いが進められますし、基準よりも更に有利に進めようとすることが弁護士の仕事です。

したがって、弁護士に依頼した場合には、少なくとも不利な形で合意してしまうというリスクを避けることができます。

③手続を全部任せることができる

弁護士に依頼した場合、調停申立書や主張書面等の書面作成、相手方とのやり取りなど、基本的に、全て弁護士に任せることができます。

弁護士に依頼する側は、弁護士に希望を伝え、弁護士のアドバイスを受けつつ、より良い選択を行っていくことに集中できます。

このように、手続を全て任せることができるという点は、弁護士に依頼する大きなメリットです。

(2)デメリット

①コストがかかる

弁護士に依頼するデメリットは、コストです。
弁護士に依頼しない場合、調停に要する費用は5000円程度です。

他方、弁護士に依頼した場合、弁護士費用がかかります。

弁護士費用は、現在、自由化されているため、事務所ごとに様々で、「相場」を出すことは難しいです。ただ、自由化される前の基準である「日弁連弁護士報酬基準」によると、調停事件の着手金・報酬金は各20万円~50万円の範囲内、離婚訴訟の着手金・報酬金は各30万円~60万円の範囲内とされています。また、これと別途、慰謝料・財産分与などの金銭請求がある場合には、報酬金が加算されます。そうすると、仮に「日弁連弁護士報酬基準」によって弁護士費用を算出すると、着手金・報酬金だけで100万円近くの弁護士費用がかかります。

これは弁護士に依頼しない場合のコストと比べると、相当大きなコストといえます。

②思い通りに進めてくれないことがある

また、弁護士に依頼した場合、必ずしも自分の思うように動いてくれないことがあります。というのも、前にご説明したように、弁護士の仕事は、「養育費・婚姻費用算定表」や過去の裁判例を基準にしつつ、基準よりも有利な形で手続を進めることです。手続を有利に進めるため、弁護士は弁護士なりに、事件の見通しを立てた上で、手続の進め方を計画し、計画にしたがって手続を進めていきます。

弁護士の事件の見通しや、手続の進め方は、時に、依頼する側が思い描いている進め方と異なることがあります。そのため、時には、弁護士が思い通りに進めてくれないという思いを抱くことがあります。

どちらが良いかは、結局のところ、やってみなければ分かりません。ただ、弁護士という、あくまで他人に依頼する以上、自分の思い通りにならない可能性があることは、ある程度、覚悟しておく必要があるかもしれません。

5、離婚訴訟を弁護士に依頼するメリット・デメリット

(1)メリット

①有利に法的主張を組み立ててくれる

離婚訴訟は、「法的主張のぶつけ合い」です。

法的主張とは、ストーリーを法的観点から切り取る作業です。

たとえば、「夫は、借金を繰り返していて、おかしいなと思って携帯を見てみたら会社の同僚と浮気していることが分かったのです。それを問い詰めると、逆ギレされて、頬を叩かれました。怖くなって、離婚を決意し、翌日、子供を連れて家を出ました。」というストーリーがあるとします。

上記のストーリーから、どのような法的主張が可能でしょうか。

まず、法律上の離婚原因として、会社の同僚との浮気については「配偶者に不貞があったとき」(民法770条1号)、借金や暴力は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があったとき(民法770条5号)にあたるといえるでしょう。

また、不倫や暴力については、それ自体、不法行為(民法709条)として金銭賠償請求の対象となりそうです。

上記のストーリーは単純ですが、実際の事件のストーリーはもっと複雑です。

依頼者が語る複雑なストーリーを、法的観点から切り取り、理路整然と、依頼者の有利に働くよう主張すること、これは正に弁護士の仕事といえます。

このように有利に法的主張を組み立ててくれる点は、弁護士に依頼する大きなメリットです。

②手続を全部任せることができる

離婚訴訟は、書面のやり取りによって進んでいきます。

弁護士に依頼する場合、裁判所に提出する書面の作成提出などは全て弁護士が行います。

また、離婚訴訟の場合、裁判期日で行われるのは、事前に提出された書面の確認と今後の進行の確認がメインです。

そのため、離婚訴訟の場合で、弁護士に依頼しているときには、弁護士だけが裁判期日に出席すれば良いことになっています。

したがって、裁判期日への出席も弁護士に任せることができます。

結果として、離婚裁判を弁護士に依頼した場合、依頼する側でする必要があるのは、弁護士との打ち合わせと、最終的に尋問が行われる場合に、裁判所に出席することに限られます。

(2)デメリット

①コストがかかる

離婚訴訟を弁護士に依頼するデメリットとして、弁護士費用というコストが挙げられます。

これは、離婚調停の場合と同様です。

②知識不足のために不利益を被ることがある

離婚訴訟では、ストーリーを「法的主張」にして、書面で提出しなければいけません。

たとえば、財産分与では、当事者が婚姻生活とは関係がない事情で得られた財産は、「特有財産」として財産分与の対象とならないことがあります。具体例としては、相続によって得た財産などがあります。

しかし、このような考え方を知らず、法的主張として書面にも記載しなければ、別居の数年前に両親の相続で得た財産があったとしても、当然に財産分与の対象財産としてカウントされます。

弁護士に依頼していた場合、夫婦の収入からすると多額の貯金が残っている場合には不自然に思い、そこで相続によって得た財産が含まれていたことが発覚していたかもしれません。そして、その場合には、当然「特有財産」の主張をしていたはずです。

これは極端な例ですが、弁護士に依頼しないで離婚訴訟を行う場合、このように知識不足のために不利益を被る可能性があります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

離婚は一生に一度、人生を左右する大事な出来事だと思います。

弁護士なしで離婚手続を進めるか、弁護士に依頼するかは、最終的には、依頼する側の自由ですが、メリット・デメリット十分理解した上で、選択することが望ましいことは間違いないと思います。

この記事が、その助けとなれば幸いです。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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