彼氏からのDV被害を受けている状況でも、誰かに相談したりできず別れられなかったりという女性も少なくありません。
DVは暴力のことを指しますが、身体的な暴力だけではなく、精神的な暴力などさまざまな種類があります。そのため、彼氏から受けているDVが、本当にDVなのか判断できないという方もいるでしょう。
DVは、放っておけばエスカレートする恐れがあります。身体だけではなく、精神面の被害も大きくなってしまいます。
今回は、DV彼氏の暴力から逃れるための相談先や対処法をご紹介します。
DVについては以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、DV彼氏から逃げる前に知っておきたいDVの種類
DVは、「ドメスティックバイオレンス」の略で、近親者から受ける暴力行為のことを指します。
恋人関係で行われる暴力行為もDVに該当し、「デートDV」と呼ばれることもあります。
DVの内容は、大きく分けると次の5つの種類に分けることができます。
- 身体的暴力
- 精神的暴力
- 経済的暴力
- 性的暴力
- 社会的隔離・デジタル暴力
(1)身体的暴力
身体的暴力は、身体に危害を加える暴力行為です。
殴る・蹴る・叩くなどの他にも、首を絞める・髪を引っ張るといった行為も身体的暴力に該当します。
また、物を投げつける・刃物を突き付ける・無理矢理アルコールを飲ませるなどといった行為も身体的暴力になります。身体的暴力は命に係わるようなことに発展する恐れもあり、危険です。
(2)精神的暴力
精神的暴力は、精神的に危害を加える行為です。
罵る・怒鳴る・脅す・蔑むなど、言葉で相手を精神的に追い込むことを指します。
また、長時間無視する・壁や家具を殴って脅すなどの行為も精神的暴力に該当します。精神的暴力が続けば、うつやPTSDなどの精神疾患に繋がる可能性がある、非常に危険な行為です。
(3)経済的暴力
経済的暴力は、経済的なダメージを与える行為です。
- デート代を毎回支払わせる
- 高価なプレゼントを買わせる
- 借金を返さない
- 勝手に預貯金を使う
などの行為が経済的暴力に該当します。
同棲している場合であれば、
- 生活費を渡さない
- 仕事を辞めさせて自由にお金を使わせないようにする
などといった行為も、経済的暴力として行われることがあります。
(4)性的暴力
性的暴力は、同意を得ることなく一方的に性的な行為を強要することです。
無理矢理性行為を行うだけではなく、
- 避妊に協力しない
- 中絶を強要する
- わいせつな写真や動画を無断で撮影する
などといった行為も、性的暴力に該当します。
(5)社会的隔離・デジタル暴力
社会的隔離は、相手の行動や人間関係を監視して制限する行為です。
具体的には、
- 自分以外の異性と会うことや話すことを禁じる
- 友人関係を制限する
- 自由に外出させない
など、相手が孤立するようにコントロールすることが社会的隔離です。
最近では、デジタル暴力として、
- 頻繁にスマホをチェックさせられる
- GPSアプリをインストールさせられる
- 数分おきに着信やメールが来る
- 他人の連絡先の削除を強要する
などを行うことで、社会的に隔離するケースも増えています。
2、DV彼氏に多い特徴とは?
DVの被害に遭わないようにするためには、DV彼氏の特徴を知っておく必要があります。
特徴の項目に該当することが多いほど、DV彼氏の可能性が高まります。早めに距離を置くことも視野に入れましょう。
DV彼氏の特徴として、次のことが挙げられます。
(1)嫉妬や束縛が激しい
DV彼氏に多い特徴としては、「嫉妬や束縛が激しいこと」です。
彼女が自分以外の異性と関わることを嫌がり、すぐに浮気を疑います。連絡が少しでも取れなくなると、何件も電話やメールを送ってきます。彼女の行動や居場所を把握したがり、電話やメールの履歴なども確認したがるケースもあるでしょう。
(2)普段は優しいが二面性がある
DV気質のある男性は、優しい面と怖い面の2つの顔を持っていることが多いです。普段は優しく、付き合うまではDVをするような人とは思えなかった、というケースも珍しくありません。
しかし、付き合い始めると何気ないきっかけで怖い一面が見えるようになってきます。普段が優しいため、怖い一面を見た時には驚くことでしょう。
エスカレートしてDVに発展すれば、DVをした後に優しい言葉をかけるなど二面性がはっきり見えるようになります。
(3)自分からは謝らない
DVをする男性の多くは、「自分が正しい」と常に思っています。何か問題が生じた場合には、自分に落ち度がある場合でも、相手のせいにします。
もし彼女から責められるようなことがあれば、逆ギレするようなケースも考えられます。自分の過ちは認めないため、自分から謝るということは期待できないでしょう。
(4)固定概念が強い
DV彼氏は固定概念が強く、一方的な思い込みで物事を判断する傾向が高いです。差別的な考えを持っており、「女はこうあるべきだ」という男尊女卑のような考え方を持っているケースも多いです。女性ではなく男性の自分に決定権があると考えており、些細なことでも全て自分の思う通りにしようとする可能性があるでしょう。
「女性は男性の言うことを聞くべきだ」という考えを持っていることから、モラハラなど精神的DVを振るう危険性があります。
3、なぜDV彼氏の暴力を受けても別れられないのか?被害者の心理
DV彼氏とはすぐに別れることが最善とは分かっていても、そう簡単には別れられないという人は珍しくありません。放っておけば、DVはエスカレートしていく一方ですし、身の危険に関わるようなケースもあります。
なぜDV彼氏と別れることができないのでしょうか?本章では、DVを受けている被害者心理についてみていきましょう。
(1)いつか改善すると考えている
DV彼氏と別れられない被害者は、「いつか彼氏が改善してくれるのではないか」と期待してしまっているケースも多いでしょう。
DV彼氏は、普段は優しく、愛情をたくさん注いでくれます。
DV行為の後は後悔の言葉を述べながら優しくしてくれるケースが多いため、「今度こそは」と改善を期待してしまうのです。
しかし、反省しながらも暴力を繰り返すことが多く、エスカレートしていくことの方が多いと言えます。
(2)共依存している
DV被害者は、DV彼氏と共依存関係になってしまっているケースも多いです。
「彼のことを理解してあげられるのは私だけだ」「苦しんでいる彼を助けてあげたい」などと考え、依存状態になってしまいます。
共依存になってしまうと、頭では別れるべきだと分かっていても、共依存の関係から抜け出すことができなくなる傾向にあるでしょう。
共依存になりやすい女性は、彼氏に尽くしてしまうタイプが多く、相手のことを優先的に考えてしまうため依存状態になりやすいと考えられます。
(3)別れる方法が分からない
DV彼氏と別れたいのに別れられない状態になっている場合、別れる方法が思いつかないくらいになってしまっている可能性があります。
- 相手に別れを告げれば報復が怖い
- 親や友人など周囲に迷惑をかけたくない
などと考えて1人で抱え込んでしまい、別れられない状態になってしまっていることでしょう。
しかし、DVは犯罪であり、あなた自身の身を守ることを優先すべきです。
別れた後に、DV彼氏から何かされるのではないかという恐れがある場合、勇気を出して警察や親に相談してサポートしてもらいましょう。
4、DV彼氏に対して行える対処法
DV彼氏に対して別れを告げるだけではなく、さまざまな対処をすることができます。DV彼氏と別れる際や別れた後には、次のような対処を行いましょう。
(1)警察に被害届を出す
DV彼氏から身体的暴力を受けた場合、暴行罪や傷害罪が成立する可能性があります。
診断書や暴行された後の写真、暴行時の動画など証拠を持って警察に被害届を出せば、DV彼氏は刑罰を受けることになるでしょう。
別れた後に、ストーカー行為や脅迫をされた場合にも、警察に相談しましょう。警察に相談することで脅迫罪として成立する可能性や、ストーカー行為には文書警句や禁止命令など対応してもらうことが期待できます。
(2)接近禁止命令の申立て
DV防止法の改正により、同棲状態など一緒に生活をしている場合には接近禁止命令を申立てることができるようになりました。
一緒に住んでいて別れることが難しい場合には、法的に接近禁止命令や自宅退去などの措置を取ることも検討してみてください。
(3)慰謝料を請求する
DVは、不法行為に該当します。不法行為とは、違法に他人の権利や利益を侵害する行為です。
加害者は、被害者に対して損害を賠償する責任が生じることが法律で規定されています(民法第709条)。
DVで受けた精神的苦痛や身体的被害についても、慰謝料として請求することができます。医療機関へ通院した場合には、医療費や通院費用も併せて請求することが可能です。
5、DV彼氏と安全に別れるためにすべきこと
DV彼氏と別れるためには、まず身の安全を守ることが大切です。安全に別れながら、今後の対処について検討すべきと言えるでしょう。
DV彼氏と安全に別れるためにも、次のことを行ってください。
(1)DVの被害の証拠を集める
DV彼氏は、2人きりの時にしかDVを行わないため、周囲の人達からは気付かれにくいものです。
後から警察へ被害届を出すことや、慰謝料請求することも考え、DV被害の証拠は事前に集めておくようにしましょう。
DVの写真や動画、会話の録音だけではなく、被害者の日記なども証拠になります。いつどんなことをされたのか、日記のように記録を残しておいたものがあれば、証拠として提出することができます。
(2)身の危険がある場合には避難する
DV彼氏と別れを考えているものの、DVがエスカレートしてしまっていて、逃げられないと考えている方もいるでしょう。
身の危険があると感じている場合には、まずは別れることよりも、避難することを優先にしてください。
実家や友人に匿ってもらうことや、彼氏に見つからないようなホテルなどに宿泊するなど人目のある場所へ避難しましょう。
(3)警察に相談して訪問履歴を残す
警察や女性センターなどへDVの相談をすることができますが、電話ではなく訪問して相談することをおすすめします。
直接訪問して相談すれば、訪問履歴が残ります。
訪問履歴があれば有利な証拠になる可能性があり、相談内容も記録に残すことができます。
(4)別れ話は直接会って話さない
DV彼氏と別れ話をする際には、直接会って話さずに、メールや電話で別れを告げることをおすすめします。
直接会って話すと暴力をふるわれる可能性や、相手に委縮してしまうことで別れを切り出せない可能性があります。
どうしても直接会って話さなければならない場合には、友人など第三者も一緒に同席してもらうことや、人目の多い場所で会うことをおすすめします。
6、DV彼氏からの被害の相談窓口
DV彼氏による被害を受けている場合、1人で悩まずに誰かに相談することを検討しましょう。
DV被害の相談ができる相談窓口は、次のとおりです。
(1)女性センター
女性センターは、各都道府県が設置している相談窓口で、「婦人相談所」や「男女共同参画センター」など名称はさまざまです。
DVの相談や相談機関の紹介、自立するための援助、保護命令制度の利用に関する情報提供などを行っています。
(2)DV相談ナビ
DV相談ナビは、内閣府男女共同産画局が提供するDV相談用のサービスです。
全国共通の電話番号「#8008(はれれば)」から、最寄りの相談機関に自動転送されるようになっています。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、DV相談プラスという相談事業も、2020年4月からスタートしています。
全国どこからでも、フリーダイヤルの電話やSNSのチャット、メールなどで相談することができるようになっています。
こちらではWEB面談なども行われています。
(3)よりそいホットライン
よりそいホットラインは、さまざまな悩みに対応している相談機関です。
日常の困りごとだけではなく、DVに関する相談も受け付けています。
DVの場合は、専門の相談員が無料で対応してくれ、フリーダイヤルなので通話料も発生しません。
(4)警察
身の危険が迫っているという場合には、すぐに110番に電話しましょう。
DVによる暴力は犯罪であり、身の安全を確保するためにも警察へ通報することをおすすめします。
DV彼氏と別れた後に被害届を出すことや、ストーカー行為などに対する相談も行うことができます。
(5)弁護士
DV彼氏と別れたいと考えている場合には、弁護士に相談することもおすすめです。
DVかどうか分からないというような場合にも、DVについて説明を受けることができ、証拠集めなどのアドバイスも受けられます。
DV問題に注力している弁護士であれば、弁護士と安全に別れる方法や慰謝料請求についても依頼することができます。
まとめ
DV彼氏と付き合っていると、感覚が麻痺して依存してしまうことが原因で、なかなか別れられないという方も少なくありません。
しかし、DVは放っておけばエスカレートして被害が大きくなる可能性もあるため、早めに別れる方が安全です。
DV彼氏と安全に別れるためにも専門機関や警察、弁護士へ速やかに相談するようにしましょう。