
幸せな結婚をしていたのに、離婚したいという気持ちになることは少なくありません。
しかし、離婚を実行に移す前には多くの考慮事項や準備が求められます。特に、子供や経済的問題など、様々な要因で離婚を躊躇する人も多いです。しかし、突然の決断で不利な条件の離婚を迎えるリスクもあります。
そこで今回は、ベリーベスト法律事務所の弁護士が、離婚の理由や準備、方法についてのアドバイスを提供します。
上手な離婚の仕方については、こちらの記事もご覧ください。
また、離婚したいのにできないという場合は、こちらの記事もご覧ください。
目次
1、離婚したい!男と女の離婚したい理由ランキング
離婚したいと思う理由は人それぞれですが、他の人たちがどのような理由で離婚を望んでいるのかも気になるところでしょう。
裁判所が公表している「司法統計」というデータで、家庭裁判所に離婚調停や審判を申し立てる際に選択された「申立ての動機」(離婚したい理由)別に件数が集計されています。
ここでは、2022年6月時点で最新のデータである令和2年度の司法統計に基づき、離婚したい理由ランキングを男女別にまとめてご紹介します。
(1)女性の離婚理由
女性が離婚調停や審判を申し立てた際の「離婚したい理由」ランキングの上位5つは、以下のようになっています。
1位 性格が合わない
2位 生活費を渡さない
3位 精神的に虐待する
4位 暴力を振るう
5位 異性関係
出典:裁判所|令和2年度司法統計「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」
いわゆる「性格の不一致」は、男女ともランキングの1位を占めています。
性格の不一致は、基本的には強制的に離婚が認められる「法定離婚事由」には該当しませんが、性格や価値観の違いからくるストレス等により夫婦関係の継続が困難となっている場合は、相手方の同意がなくても審判や訴訟で離婚が認められる可能性があります。
2位の「生活費を渡さない」の中には、相手方に十分な収入があるにもかかわらず生活費を渡してもらえない「経済的DV」の事案だけでなく、無職や借金などにより生活費を賄うだけの経済力がないケースも含まれます。
3位の「精神的に虐待する」はモラハラ、4位の「暴力を振るう」はDV、5位の「異性関係」は浮気や不倫による不貞行為を指しています。
(2)男性の離婚理由
一方、男性側の「離婚したい理由」ランキングの上位5つは、以下のようになっています。
1位 性格が合わない
2位 その他
3位 精神的に虐待する
4位 異性関係
5位 家族親族と折り合いが悪い
出典:裁判所|令和2年度司法統計「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」
2位の「その他」には様々な事情がありますが、一例として、自分が不倫をして妻と別れたいというようなケースや、あるいは「特に理由はない」というケースも含まれていると考えられます。
妻から夫に対するモラハラ(3位)や、妻の不倫で離婚問題に発展するケースも少なくありません。
また、昔から嫁と姑の対立が離婚問題に発展するケースがありましたが、現在でも妻と「(夫の)家族親族と折り合いが悪い」が男性側離婚理由の5位にランクインしています。
2、離婚したい夫婦の割合ってどれくらい?
離婚したいと思っている人の割合は裁判所のデータには表れていませんが、民間企業の調査によると、有配偶者(現在、婚姻中の人)のうち、約6割の人が離婚したいと考えたことがあるとのことです。
2021年に行われた調査ですが、具体的なデータは以下のとおりです。
- 離婚を考えたことがある人の割合:61.9%(ときどき思う:34.0%|1回思ったことがある:21.7%|ずっと離婚したいと思っている:6.4%)
- 離婚を考えたことがない人の割合:38.1%
引用元:FRAU|1回でも離婚が頭をよぎった人は6割(Yahoo!JAPANアンケートより(2021年7月29日))
ちなみに、厚生労働省の人口動態統計によると、令和2年度の婚姻件数が52万5,507組であったのに対し、離婚件数は19万3,253組であり、離婚率は26.9%となっています。
引用元:厚生労働省|令和2年(2020)人口動態統計(確定数) 第1表 人口動態総覧
近年は夫婦の3~4組に1組が実際に離婚している計算になりますが、それを上回る「2人に1人」程度の人が離婚を考えたことがあるという調査結果は、ある程度、当を得ているといえるでしょう。あなたが離婚したいと思っているとしても、決して珍しいことではありません。
3、離婚したいと思ったら進めておくべき準備と費用
ここまでの解説を参考にされて「離婚したい」という決意が固まったのなら、離婚するための準備を始めましょう。
スムーズに離婚するために進めておくべき準備は、以下のとおりです。
(1)希望する離婚条件をしっかりと検討する
離婚する際には、様々なことを取り決めなければなりません。どのような条件で離婚したいのかについては、離婚を切り出す前にしっかりと考えておくべきです。
検討が必要な離婚条件として、以下のものがあります。
①財産分与
離婚にあたっては、夫婦が共同で築いた財産を分ける「財産分与」を請求できます。
結婚後に作った預貯金や購入した不動産の名義がどちらか一方になっていても、基本的に財産分与の対象となります。
もっとも、マイナスの財産の方が多い場合、たとえば、夫婦の財産は自宅だけだが、オーバーローンであるといったようなときは、分けるべきものがないため、財産分与で金銭を得られることはありません。
財産分与について詳しいことは、以下の関連記事をご覧下さい。
②慰謝料
離婚の原因が相手方にある場合は、慰謝料をもらうことができます。
しかし、慰謝料がもらえるような離婚の原因は限られます。
そもそも慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われる金銭のことをいいます。この慰謝料は、精神的苦痛を慰謝するための損害賠償の性質を持っていますので、法律的な損害を加えたと言えるような事由(離婚原因)がなければいけません。具体的には、不貞やDVなどです。単なる性格の不一致では慰謝料をもらうのは難しいでしょう。
離婚の慰謝料について詳しくは、以下の関連記事をご覧下さい。
③年金分割
離婚にあたっては、将来もらう年金を分割してもらえます。これは、年金をもらう段階で、婚姻期間に応じて相手方がもらうべき年金(いわゆる2階部分)の一部をこちらに振り分けてもらう仕組みです。
年金分割について詳しくは、以下の関連記事をご覧下さい。
④親権
未成年のお子さまがいる場合には、離婚の際に父母のどちらか一方を親権者として決めなければなりません。
お子さまが小さい場合には、母親が親権者となるケースが多いのが実情です。ただし、親権者を決める際には、あくまでも子どもを養育するためにどちらが望ましいかということが重視されますので、必ずしも母親が親権者になるとは限らないことに注意が必要です。また、お子さまが15歳以上の場合には、お子さま自身の意思も重視されます。
親権について詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。
⑤養育費
離婚してあなたが未成年のお子さまを引き取る場合には、相手方に対して養育費を請求できます。
養育費の金額は、子どもの年齢や人数宇、父母それぞれの年収を考慮して決められるのが一般的です。
養育費について詳しくは、以下の関連記事をご参照ください。
(2)有利な離婚条件で離婚するための証拠を確保する
有利な離婚条件で離婚するためには、証拠が重要となることが多いです。相手方の不貞やDVを理由に慰謝料を請求する場合なら、その事実を証明できる証拠を確保する必要があります。
不貞の事実を証明できる有力な証拠としては、2人でラブホテルに出入りする写真やメール・SNSでのやりとり、携帯電話の通話履歴、配偶者や不倫相手の発言を録音したものなどがあります。
DVの場合は、暴力を受けた場面を録画・録音したデータ、怪我をした場合の診断書や病院の領収証、日記などが主な証拠となります。
これらの証拠がなければ、相手方に事実を否定された場合に慰謝料をもらうことができなかったり、そもそも離婚が認められない可能性もあります。
財産分与や養育費を請求する場合にも、相手方に収入や資産を隠されると適切な金額を請求できなくなってしまいます。そのため、離婚を切り出す前に相手方の給与明細や通帳をコピーしたり、その他の財産についても証拠となる書類をコピーしたり、現物を写真に撮るなどしておきましょう。
(3)離婚後の生活設計を考えておく
離婚した後は経済的に自立して生活していかなければなりませんので、離婚後の生活設計も考えておきましょう。
具体的にはまず、前述した財産分与や慰謝料、年金分割、養育費など相手方に請求できるお金はしっかりと獲得できるように準備をしておくことです。
また、離婚をすれば当然別居となりますので、離婚後の住まいも早期に確保しましょう。専業主婦の方はできるだけ早めに仕事を探した方がよいでしょうし、現在仕事をしている人でも、より収入の高い職場への転職を検討した方がよいかもしれません。
さらに、いわゆる「母子手当」など、公的な扶助がもらえる可能性がありますので、国や自治体からどのくらいのお金がもらえるのかについてもしっかりと調べておきましょう。
この点については、後ほど「8、離婚後の生活のために知っておきたい補助金・助成金」でご説明します。
(4)離婚後の精神的な自立も重要!
これまで知らず知らずに配偶者を頼っていたことがあったことを否めない方も少なくないでしょう。しかし、離婚後は一人で全てに対応しなければなりませんから、精神的な自立も重要になります。
上手な離婚の仕方については、こちらの記事もご覧ください。
(5)離婚する際に準備すべき費用
離婚するためにも、ある程度の費用がかかります。弁護士に依頼しない場合は実費のみで済みますが、弁護士に依頼する場合はさらに弁護士費用を負担しなければなりません。
①弁護士に依頼しない場合にかかる実費
夫婦間の話し合いで協議離婚が成立した場合は、特段の費用負担はありません。
ただし、離婚協議書を公正証書で作成する場合には、公証役場に手数料を支払う必要があります。
手数料の額は、公正証書に記載する法律行為の目的価額に応じて定められています。例えば、慰謝料と財産分与を合わせて500万円を支払う旨の離婚協議書の場合、手数料は1万1,000円となります。
もっとも、この手数料をどちらが負担するかについては、夫婦間の話し合い次第となります。公正証書の作成にかかる費用については、以下の関連記事の中で解説していますので、参考になさってください。
離婚調停を申し立てる場合は、手数料(1,200円分の収入印紙)、郵便切手(1,000円程度)を家庭裁判所に納める必要があります。
婚姻費用分担請求調停も申し立てる場合は、別途、同じ金額が必要となります。
離婚裁判に進んだ場合は、さらに、最低1万3,000円の手数料(収入印紙代)と、郵便切手(5,000円~6,000円程度)を家庭裁判所に納めなければなりません。
裁判の手数料は、請求内容に応じて定められています。高額の慰謝料を請求する場合には、その分だけ手数料も増額されます。例えば、離婚と財産分与、慰謝料300万円、子ども2人の養育費を請求する裁判を起こす場合には、2万3,600円分の収入印紙が必要となります。
調停・裁判にかかる費用は家庭裁判所によって若干異なりますので、事前に申立先・提訴先の家庭裁判所で確認しましょう。
②弁護士に依頼する場合の費用
弁護士費用は事務所によって異なります。以下の表で一応の目安をお示ししますが、あくまでも参考としてお考えください。
費目 | 金額 |
相談料 | 1時間あたり1万円程度 初回30分~60分程度は無料の事務所もある |
着手金 | 20万~40万円程度 |
報酬金(基礎報酬) | 20万~40万円程度 |
日当(弁護士が調停・裁判等に出頭する場合) | 半日で0~5万円程度 |
実費 | 事案による 上記(1)の費用に加えて、弁護士の交通費、通信費など |
着手金については、離婚調停から離婚裁判へ進む際に追加着手金として、当初の着手金の半額程度がかかることがあります。
また報酬金について、上記の表では基礎報酬のみを記載しましたが、その他にも成果報酬といって、親権を獲得したらいくら、養育費を獲得したらいくら、慰謝料を獲得したらいくら、という形で加算されることが一般的です。「着手金+基礎報酬」で60万円程度が標準的ですが、例えば慰謝料300万円を獲得した場合は、これに30万円程度の成果報酬が加算されます。多くの場合、トータルで100万円程度は見込んでおいた方がよいでしょう。
弁護士費用は金額だけでなく、どのような場合に費用が発生するのかについても、事務所によって異なります。必ず相談時に見積もりを取るようにしましょう。
なお、着手金については分割払いや後払いに対応している事務所もありますし、法テラスの「民事法律扶助制度」に対応している事務所も数多くあります。費用の支払い方法についても弁護士に相談するとよいでしょう。
4、離婚したいことを切り出す方法
準備が整い、いざ離婚の話を切り出すにはどのようにすればいいでしょうか。
これは、別居前か別居後かによって変わってくるでしょう。
(1)別居前に切り出す場合
別居前であれば、直接相手に話をすることになると思いますが、一番重要なことは、感情的にならないことです。感情的になってしまうと、つられて相手も感情的になり、なかなか話が進みません。
切り出す前に、伝えたいことをリストにしておくなどの工夫で感情的にならないように心がけましょう。手紙を書いて渡すのも良い方法です。
(2)別居後に切り出す場合
別居後は、離婚を切り出すことに対する心理的なハードルも低くなりますので、比較的冷静に切り出しやすくなるでしょう。
基本的には、電話でもメールでも手紙でも、ご自身が伝えやすい方法で伝えれば大丈夫です。
ただし、慰謝料を請求するには「事実を知ってから3年以内」という期限があることに注意が必要です。そのため、別居してからある程度の期間が経過している場合は、3年以内に請求したという証拠を残すために、最初だけでも内容証明郵便を利用して離婚と慰謝料などを求めるようにしましょう。
5、離婚したい場合の手続きと流れ
離婚を切り出した後の相手方の反応については、様々なパターンが予想されます。いずれにしても、相手方の反応によって離婚手続きは以下のように変わります。
(1)協議離婚
相手方も離婚を望んでいた場合や、そうではなくても話し合いによって離婚に応じた場合は、離婚届を提出することで離婚できます。
このように、夫婦の話し合いで離婚が成立することを「協議離婚」といいます。
協議離婚をする場合には、離婚条件についても冷静かつ慎重に話し合って取り決めましょう。譲れる部分は譲った方がよいですが、早く離婚したいからといって譲歩しすぎると離婚後に後悔してしまう可能性が高いので注意しましょう。
離婚条件についても話し合いがまとまったら、離婚届を提出する前に離婚協議書を作成しましょう。離婚協議書は離婚の条件について合意したことについての覚書です。離婚協議書を作成することで、紛争の蒸し返しを防ぐことができますし、万が一条件が履行されないときの備えにもなります。
離婚協議書には特に決められた形式があるわけではありませんが、当事者双方の署名押印、作成年月日は入れるようにしましょう。せっかく離婚協議書を作っても署名押印がないと相手に取り決めた内容を実際に求めることができないケースがあります。
また、費用はかかりますが、離婚協議書を作る場合、公正証書にしてもらうことをお勧めします。
公正証書とは公証役場で公証人が作成するものです。公正証書は判決と同様の強い法的効力を持っていますので、万が一不履行になった場合も比較的容易に差し押さえができるなどメリットが大きいものです。
以上詳細については、以下の関連記事をご覧下さい。
(2)離婚調停
夫婦間での話し合いがまとまらず、相手方が離婚に応じない場合には離婚調停を申し立て、調停委員を介して離婚に向けた話し合いを行うことになります。
離婚調停は、基本的には話し合いの手続きではありますが、調停が整わなかった時は裁判や審判という手続きに移行することがありえますから、これらの手続きを見越した準備を行うことが必要です。
具体的には、あなたの言い分を家庭裁判所に信用してもらえるように、詳細な事実に基づいて主張を組み立てて、それらの事実を証明できる証拠を準備することが重要になります。
したがって、調停を申し立てる際には、あるいは申し立てられた場合には速やかに弁護士にご相談されることをおすすめします。
また、離婚調停を申し立てる際に既に別居されている場合には、婚姻費用の請求に関する調停も併せて申し立てるようにしましょう。申し立てた月から一定の生活費を相手方から受け取れるようになります。
(3)審判離婚
審判離婚は、家庭裁判所が夫婦の離婚を認める手続きです。調停が不成立となった場合、調停委員が審判を行い、離婚が認められる場合があります。この手続きは、調停とは異なり、裁判所が離婚を認めるか否かを判断するもので、夫婦双方の意向や事情を考慮して決定されます。
審判離婚が行われるケースは少ないですが、採用される具体的な例は下記の通りです。
- 離婚に双方合意はしているものの病気などの理由で裁判所に出頭できないケース
- 離婚に双方合意はできているものの親権や養育費、慰謝料などの条件面でわずかな意見の対立がある場合
- 離婚に双方合意していたはずが、急に片方の心変わりで離婚を認めず出頭を拒否している場合
- 早めに決着を望み双方が審判離婚を望んでいるケース
- 離婚に合意できない理由が感情的な理由だけで異議申し立ての可能性が限りなく低いと判断できた場合
- 親権争いで調停が不成立の場合
- 一方が外国人で帰国の事情がある場合
審判離婚については下記記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご確認ください。
(4)裁判離婚
裁判離婚は、夫婦の一方が離婚を求める場合に、家庭裁判所に離婚を求める訴訟を提起する手続きです。審判離婚が不成立となった場合や、審判を経ずに直接裁判を求める場合に行われます。裁判離婚の場合、離婚の原因や事情を明確に示す必要があり、証拠の提出や証人の尋問などが行われます。
裁判離婚は、いつでも自由にできるわけではありません。離婚裁判(訴訟)を起こすためには、次の2つの条件があります。
①先に離婚調停を行っていること
日本の法律では、離婚裁判(訴訟)を起こす前に、必ず離婚調停を行わなければならないこととされています。
この原則のことを「調停前置主義」といいます。
離婚のような家庭の問題については、強制的な裁判手続きを行う前に、まずは離婚調停で話し合うべきものと考えられているのです。
②法定離婚事由があること
離婚裁判をするには、法定離婚事由が必要となります。
法定離婚事由とは、裁判で離婚が認められる条件として法律で定められた事情のことです。
具体的には、民法第770条1項で以下の5つの事由が定められています。
- 相手に不貞行為(不倫行為)があったこと
- 相手による悪意の遺棄があったこと
- 相手の生死が3年以上不明であること
- 相手が強度の精神病にかかって回復の見込みがないこと
- その他、婚姻の継続が困難な重大な事由があること
また、裁判離婚の中にも、判決による離婚、和解離婚、認諾離婚の3種類があるなど様々な要点がありますので、より詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
6、離婚したいのにスムーズに離婚協議が進まない場合のテクニック
離婚協議がスムーズに進めばよいですが、現実にはもめてしまうケースも多いものです。
ここでは、そんなときに活用できるテクニックをご紹介します。
(1)離婚自体を拒まれる場合
相手方に離婚自体を拒まれる場合は、離婚条件について譲歩してみるのもいいですが、どれだけ譲歩しても絶対に離婚しないという相手方もいます。また、譲歩しすぎると離婚後に後悔することにもなりかねません。
離婚を拒む相手方に対して最も有効な方法は、別居をすることです。別居をすることでお互いに「相手のいない生活」を定着させ、徐々に離婚に向かうことが可能になる場合もあります。
また、別居すること自体、夫婦関係が破たんしている証となります。そのため、別居期間が長くなればなるほど、調停や裁判で離婚が認められる可能性も高くなります。
(2)親権を互いに譲らない場合
相手方が親権を譲らない場合も、まずは離婚条件で譲歩してみたり、面会交流に積極的に応じることを約束するなどして交渉することが考えられます。
それでも親権を譲らない相手方に対して最も有効な方法は、やはり、あなたが子どもを連れて別居をすることです。調停や裁判では、「現状維持の原則」といって、父母が離婚する際にはできる限り子どもの生活環境に大きな変化を与えないように、原則として現に子どもを養育している側が親権者に指定されます。
(3)財産分与や慰謝料、養育費など金銭面でまとまらない場合
金銭面で話し合いがまとまらない場合は、柔軟な支払い方法を交渉してみましょう。財産分与や慰謝料などはまとまった金額を請求する場合が多いため、相手方も「そんな金額は払えない」ということになりがちです。
そこで、分割払いを提案してみれば、ある程度大きな金額でも合意できる場合があります。ただし、その場合は長期間の支払いを確保するために、公正証書で離婚協議書を作成しておくことが重要です。
一方、養育費については、逆に一括払いを提案してみてもよいでしょう。例えば、毎月○万円を支払ってもらう代わりに、住宅を譲渡してもらうということが考えられます。住みなれた家に離婚後も家賃なしで住み続けることができれば、子どもの養育も楽になることでしょう。ただし、住宅ローンが残っている場合、相手方の支払いが滞れば住み続けられなくなるということも頭に置いておかなければなりません。
以上のように離婚協議を進めるテクニックもありますが、どうしても協議が進まない場合にはある程度のところで打ち切って、離婚調停を経て離婚裁判に進んだ方がよい場合もあります。離婚裁判では、あなたの言い分に筋が通っていて証拠も揃っていれば、あなたの主張を全面的に認めてもらうことも可能になります。
7、離婚届の書き方・出し方
協議離婚の場合も、調停離婚や裁判離婚の場合も離婚が決まったら離婚届を提出する必要があります。
協議離婚の場合は双方が記入しますが、調停離婚と裁判離婚の場合は一方だけが記入して提出できます。
離婚届の用紙は、市区町村の役所の窓口で受け取ることができます。
離婚届の書き方に不明点があれば、窓口の方に質問すればすぐに教えてもらえます。
離婚届について詳しくは、以下の関連記事をご覧下さい。
8、離婚するデメリット|修復できないか再度よく考えてみる
離婚したいと思っても、実際に離婚するには様々なリスクや心身の負担が伴います。
「こんなことなら離婚しなければよかった」と後悔しないためにも、離婚を切り出す前にいま一度、修復できないかをよく考えてみるのも大切なことです。
(1)離婚で発生する様々なリスク
離婚をしたら、まず金銭的に苦労するリスクがあります。特に専業主婦の方については、離婚後の収入が全くなくなることもあるでしょう。さらに、離婚をすれば住まいも別に探さなければなりませんが、これにもまとまった資金が必要になります。
他方、男性は、離婚にあたって財産分与を求められたり、離婚後養育費を支払わなければならないなど、思っている以上に経済的な負担が生じる可能性があります。
(2)離婚は心身の疲弊が伴う
離婚の手続きはスムーズに進むとは限りません。話し合いがまとまらないと調停、裁判と移行しなければならず、離婚までに数年かかるということもままあることです。
また、離婚は当事者だけの問題ではなく、お子さんやときには両家の親族をも巻き込んだ大きな紛争になる可能性も十分に考えられます。これらに対応する心理的、肉体的な負担は馬鹿になりません。
このように、離婚には様々なリスクや手続きを進める上での心身の疲弊が想定されます。このようなリスクや心身の疲弊といった負担を負ってまで離婚を進める覚悟はあるのか、一度しっかりと考えられた方がいいでしょう。これらについて受け入れるのが難しいということであれば、修復の方法はないか検討する方がいいでしょう。
9、離婚後の生活のために知っておきたい補助金・助成金
前記「2(3)」でも少しお話しましたが、離婚後には母子手当など公的扶助を得られることがあります。特にシングルマザーになる場合には活用することをお勧めします。
公的な補助金・助成金のうち代表的なものは次のとおりです。
(1)児童手当
児童手当とは、 0歳から中学校卒業までの児童を対象とする手当です。
申請先は各市区町村の役所です。支給される金額は以下の通りです。
3歳未満の場合:月額 10,000円
3歳以上の場合:第1子と第 2子は月額 5,000 円、第 3子以降は月額10,000 円
(2)児童扶養手当
離婚などによって父母いずれかからしか養育を受けられない子どもを対象とする手当です。 申請先は各市区町村の役所です。金額については以下の通りです(2021年4月以降の金額です)。
①子どもが一人の場合
●全部支給の場合
月額 43,160円
●一部支給の場合
所得に応じて月額 43,150円~10,180 円
※全部支給か一部支給かも所得によって決まります。
②子どもが二人の場合
対象児童が2人の場合、上記金額に全部支給の場合は10,190円、一部支給の場合は10,180円~5,100円が加算されます。
③子どもが三人以上の場合
対象児童が 3人以上の場合、上記金額に1人につき、全部支給の場合は6,110円、一部支給の場合は6,100円~3,060円が加算されます。
(3)児童育成手当
児童育成手当とは、18歳の3 月31日までの子どもを養育する一人親を対象とする手当です。
申請先は各市区町村の役所です。金額は、月額 13,500円です。
ただし、所得制限があります。
(4)母子家庭等の住宅手当
母子家庭等の住宅手当は各自治体(市区町村)が独自に設けている母子家庭等への支援制度です。すべての自治体で実施されているわけではありませんが、多くの自治体で何らかの支援が行われています。
多くの場合、20歳未満の子どもを養育しているひとり親家庭に対して家賃の一部が給付されます。
申請先は各市区町村の役所です。支給条件や金額は各役所にお問い合わせ下さい。
(5)ひとり親家族等医療費助成制度
ひとり親家族等医療費助成制度は、母子家庭等の医療費の一部を助成する制度です。受給条件や受給額等詳細は各市区町村の役所にお問い合わせ下さい。
(6)生活保護
離婚後にどうしても生活費が足りない場合は、生活保護を受給することも検討してみましょう。
仕事をしていたり、元配偶者から養育費を受け取っている場合でも生活保護は受給できます。ただし、給料や養育費として受け取っている金額は、保護費から差し引かれます。
相談・申請先はお住まいの地域を管轄する福祉事務所の生活保護担当です。
10、今すぐに離婚したい場合は弁護士へ相談を
離婚するためには、様々な準備をした上で、離婚後のお金のことも考えておくことが重要です。それはわかってはいても、「今すぐに離婚したい!」という方も少なくないことでしょう。いったん離婚したいと思うと、すぐにでも相手方と縁を切りたい、顔も見たくない、話したくないという気持ちになるのも無理はないと思います。
慌てて離婚することはおすすめできませんが、今すぐに相手方との接触を断って離婚の手続きを進めることができる方法はあります。
それは、弁護士に相談し、依頼することです。そうすれば、弁護士があなたの代理人として相手方とのやりとりをすべて代行します。
したがって、あなた自身はもう、相手方と接触する必要がなくなるのです。
法律のプロである弁護士が味方になれば、有利な離婚条件を獲得しやすくなりますし、協議離婚書の作成や調停・裁判といった面倒な手続きもすべて任せることができます。離婚問題の相談窓口はいくつかありますが、最もおすすめできる相談窓口は、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士がいる法律事務所です。
今すぐ別れたいなら、弁護士を味方につけることをお勧めします。離婚事件について詳しい弁護士の探し方については、以下の関連記事をご覧下さい。
離婚したい場合に知っておきたいことまとめ
以上、離婚に向けては意外にたくさんのことを知っておかなければならいので驚かれた方も多いでしょう。
しかし、離婚は人生の重大な決断ですので、このページを参考にしていただきしっかりと準備をして進めることをお勧めします。
最近では、離婚問題の相談について初回の相談料を無料としている法律事務所もあります。費用をかけずに法的なアドバイスが受けられるので、一度弁護士にご相談されてみるのもよいでしょう。
離婚したい人のQ&A
Q1.離婚したい夫婦の割合は?
2021年に行われた調査ですが、具体的なデータは以下のとおりです。
- 離婚を考えたことがある人の割合:61.9%(ときどき思う:34.0%|1回思ったことがある:21.7%|ずっと離婚したいと思っている:6.4%)
- 離婚を考えたことがない人の割合:38.1%
引用元:FRAU|1回でも離婚が頭をよぎった人は6割(Yahoo!JAPANアンケートより(2021年7月29日))
Q2.離婚したいときに進めておくべき準備とは?
検討が必要な離婚条件として、以下のものがあります。
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
- 親権
- 養育費
離婚したいときにすべき準備について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
Q3.離婚したいと思う結婚年数は?
令和2年度における結婚年数別の離婚件数ランキングは、以下のようになっています。
1位 5年未満 5万8,846組(32.5%)
2位 5~10年 3万6,572組(20.2%)
3位 10~15年 2万5,557組(14.1%)
4位 15~20年 2万1,008組(11.6%)
5位 20~25年 1万7,321組(9.6%)