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経済的DVは共働きでも発生する!該当する5つのケースと対処法

経済的DVといえば専業主婦が被害に遭うものというイメージが強いかもしれませんが、共働き夫婦の場合でも同じような問題が発生することが少なくありません。

夫婦間で身体的な暴力が行われるDVが離婚原因になり得るのと同様に、経済的DVも程度によっては離婚原因となることがあります。配偶者と話し合っても生活費を渡してもらえず、生活に苦しんでいるようなら、離婚を検討するのもよいでしょう。

ただし、裁判で離婚が認められるほどの経済的DVに該当するかどうかの判断は、難しいケースも少なくありません。

そこで今回は、

  • 共働きで経済的DVに該当する具体的な5つのケース
  • 共働きで経済的DVの被害を受けているときの対処法
  • 経済的DVで離婚するときの注意点

などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

この記事が、共働きで家計を支えているにもかかわらず、配偶者から経済的に虐げられて苦しんでいる方の手助けとなれば幸いです。

経済的DVに関して詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。

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1、共働きの人も知っておくべき「経済的DV」とは?

共働きの人も知っておくべき「経済的DV」とは?

経済的DVとは、配偶者を経済的に困窮させて自由を奪い、支配する行為のことです。

そもそも「DV」(ドメスティック・バイオレンス)とは、直接的には主に夫婦間で行われる家庭内暴力のことを意味します。
しかし、殴る・蹴る・物を投げるといった身体的な暴力だけでなく、精神的な暴力が夫婦間で行われることも少なくありません。

そのため、DV防止法では、身体的暴力に準ずるような「心身に有害な影響を及ぼす言動」も規制の対象としています(同法第1条1項)。

心身に有害な影響を及ぼす言動のうち、暴言や侮辱、あるいは無視するなどの言動によって配偶者を精神的に痛めつける行為のことは、俗に「モラハラ」と呼ばれます。

それに対して、配偶者に必要なお金を渡さず困窮させることで精神的に追い詰める行為が、俗に「経済的DV」と呼ばれているのです。

例えば、収入がない専業主婦である妻に対して、自由に使えるお金を一切与えず、自由行動ができないようにして支配するようなケースが、典型的な経済的DVに当たります。

2、共働き夫婦でも経済的DVは成立する?

共働き夫婦でも経済的DVは成立する?

妻が働いて収入を得ている共働き夫婦の間でも、経済的DVは成立し得ます。

経済的DVの成立要件は法律で定められているわけではありませんが、「配偶者に十分なお金を与えずに困窮させる」という点がポイントとなります。

したがって、妻が自分の収入を家計に入れると自由に使えるお金が残らず、その一方で夫には余裕があるのにお金を渡してくれない、といったケースでは経済的DVが成立するのです。

妻が家計を賄い、その上で自由に使えるお金が残るほどの収入を得ているのであれば、経済的DVは成立しません。

しかし、ほとんどの共働き家庭はそうではないでしょう。
2人の収入を合算してはじめて生計を立てている家庭では、経済的DVが成立する可能性が十分にあります。
実際、共働き家庭で経済的DVが発生しているケースは少なくありません。

ただ、経済的DVの定義や成立要件が明確でないこともあり、当事者が「これはDVだ」と認識しているケースが多くないという問題もあります。
そこで次に、共働き夫婦で経済的DVに該当する具体的なケースをみていきましょう。

3、共働き夫婦で経済的DVに該当するケース5つ

共働き夫婦で経済的DVに該当するケース5つ

ここでは、共働き夫婦で経済的DVに該当する具体的なケースを5つ、ご紹介します。

実際には他にもさまざまなパターンがあり得ますが、ご自身の状況を以下の典型的なケースと照らし合わせることで、経済的DVに該当するかどうかを判断しやすくなるはずです。

(1)妻の収入だけでは生活費が足りないのにお金を渡さない

夫に収入があるにもかかわらず、妻の収入をすべて家計に入れさせて、それでも生活費が足りないのにお金を渡さない場合は、経済的DVに当たります。

このような場合、妻は独身時代の貯金や実家からの援助、あるいは借金をするなどして生活費を捻出していることもあるでしょう。

夫がそのような事情を知っていながら妻にお金を渡さないようなケースは、悪質性が高いといえます。

(2)妻の収入でギリギリ生活できているが自由に使えるお金を一切渡さない

妻の収入で何とか家族が生活できるものの余裕がなく、夫が妻に自由に使えるお金を渡さない場合も、経済的DVに当たる可能性があります。

ただし、夫婦の収入を合わせても家族の生活がギリギリで、夫にも余裕がないという場合は、経済的DVには当たりません。

経済的DVに当たる可能性が高いのは、夫は自由にお金を使っておきながら、妻には自由に使えるお金を一切渡さないような場合です。

(3)生活が苦しいのに十分に働かない

夫に余裕がない場合でも、妻に働かせておきながら、自分は働けるのに十分に働かない場合には、経済的DVに当たる可能性があります。
仕事に就いてもすぐに辞めて職を転々としたり、自営業を営んではいるものの、あまり働かない場合などが、このケースに該当します。

夫が働かなくても十分な生活ができていて、妻の自由になるお金もあるのであれば、問題はありません。
しかし、生活が苦しく妻が困窮にしているにもかかわらず、夫が妻の収入に頼ってあまり働かないようでは、経済的DVに当たる可能性が高いといえます。

(4)妻名義の預貯金を使って浪費する

夫が一生懸命に働いているとしても、妻には倹約をさせておきながら、自分は浪費をしているような場合は、経済的DVに当たる可能性があります。

特に、妻がもしもの場合のために貯めている預貯金を使ってまで夫が浪費しているケースは、経済的DVに当たる可能性が高いといえます。

(5)安易に妻に借金をさせる

生活費の不足を補うために借金をしている家庭は、数多くあります。妻に借金をさせること自体が経済的DVに当たるわけではありません。

しかし、夫の浪費やギャンブル、働かないなどの原因で生活費が不足しているにもかかわらず、生活態度を改めることなく妻に借金をさせて生活を維持しようとする場合は、経済的DVに当たる可能性が高いといえます。

4、共働きで経済的DVの被害を受けているときの対処法

共働きで経済的DVの被害を受けているときの対処法

経済的DVの被害に遭っている場合は、一人で我慢して生活を支える必要はありません。以下の対処法を検討して、解決を図っていきましょう。

(1)話し合って改善を求める

まずは、配偶者と話し合ってみましょう。

経済的DVをしている配偶者には、相手を苦しめているという自覚がないことが多いものです。
「毎月○○万円渡しているから大丈夫だろう」「妻も働いているんだから生活に支障はないだろう」などと思っていて、相手が苦しんでいることに気付いていないことも多いはずです。
そんなときは、窮状を伝えて改善を求めるだけで解決できる可能性が大いにあります。

しかし、日頃から家庭を顧みない夫の場合は、妻の言葉に対して真剣に耳を傾けないこともあるでしょう。
その場合は、何にいくらのお金が毎月かかるのか、いくら不足しているのかを具体的に説明し、家計簿などの根拠も示して「このままではやっていけない」と訴えるべきです。

それでも、まともに取り合おうとしない場合は深刻な経済的DVに当たりますので、より根本的な対処法が必要となります。

(2)別居する

経済的DVの被害から免れるためには、いったん夫婦の会計を分けてみることが得策です。ただ、一緒に暮らしていると、なし崩し的に配偶者から頼られる可能性が高いので、別居することが有効です。

あなたが実家に戻れる場合は、ご自身の収入だけで別居後の生活を賄える可能性が高いでしょう。

別居しながら配偶者と話し合って修復を図るか、離婚する方向に進むかを検討していくことになります。

(3)婚姻費用分担請求をする

別居後に実家に戻れない場合などで、ご自身の収入だけでは生活が苦しい場合には、配偶者に対して婚姻費用分担請求をしましょう。

夫婦が別居しても、離婚が成立するまでは「婚姻費用」として生活費の分担を請求できます。
請求するにも配偶者との話し合いが必要ですが、話し合いがまとまらない場合には、婚姻費用分担請求調停を申し立てて、最終的には家庭裁判所に決めてもらうこともできます。

配偶者からもらえる婚姻費用の金額は、裁判所が公表している婚姻費用算定表に記載の金額が目安となります。

参考:裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

別居して、配偶者から適切な金額の婚姻費用を受け取れば、一応は経済的DVが解消されたということもできます。

ただし、あなたの方が配偶者よりも高い収入を得ている場合には、逆に婚姻費用を請求される可能性があることにご注意ください。

(4)離婚を検討する

配偶者に改善する姿勢が見受けられず、もう一緒には暮らせないと判断した場合は、離婚を検討することになるでしょう。

経済的DVは夫婦の協力扶助義務(民法第752条)に反する行為ですので、「悪意の遺棄」(同法第770条1項2号)。という法定離婚事由に当たる可能性があります。

仮に、最低限の生活費は渡されていて悪意の遺棄とは認められない場合でも、配偶者による経済的DVが原因で夫婦関係が破綻していて、修復不可能といえるような場合には、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」(同項5号)という法定離婚事由に当たる可能性もあります。

法定離婚事由に該当する場合は、配偶者が離婚に反対したとしても、最終的には離婚訴訟で離婚が認められます。

ただし、離婚訴訟で勝訴するためには証拠が必要です。あなたと配偶者の収入を証明できる書類(給与明細や課税証明書など)や、生活に困窮していたことがわかる家計簿、預貯金通帳などを用意しましょう。
その他にも、配偶者が浪費やギャンブル、借金などをしていたことがわかる預貯金通帳やクレジットカードの利用明細書、契約書などもあれば確保しておくべきです。
さらに、配偶者とのやりとりや配偶者の生活状況を日記に綴るなどして記録化しておくと、有力な証拠となることがあります。

5、経済的DVで離婚するときの注意点

経済的DVで離婚するときの注意点

経済的DVで離婚する場合には、いくつか注意すべきポイントがあります。以下でご説明します。

(1)生活のために背負った借金は払ってもらえる?

配偶者から経済的DVを受けている場合、あなたが家計のために借金していることもあるでしょう。

離婚する際には財産分与を請求できますが、借金まで折半となるわけではありません。夫婦共有財産から負債を差し引き、残ったプラス財産を折半にするのが基本的なやり方です。

ただ、配偶者よりもあなたの方が家計に貢献していたのであれば、2分の1を上回る割合で財産分与を請求できる可能性があります。その場合には、夫婦共有財産を多めに分与してもらう形で、借金の清算を図ることになるでしょう。

負債を差し引くとプラス財産が残らない場合には、残念ながらあなた名義の借金はあなたが返済していく必要があります。この場合には、慰謝料を多めに獲得すること目指すべきです。

(2)慰謝料は請求できる?

法定離婚事由に該当するほどの経済的DVは民法上の不法行為に当たりますので、離婚する際に慰謝料を請求できます。慰謝料額の相場は数十万円~300万円程度です。
基本的にこの幅の範囲内で、事案ごとの具体的事情に応じて決められます。

問題は、配偶者が慰謝料を支払えるのか、支払えるとしても支払ってくれるのか、という点です。

お金の余裕がありながら悪意をもってお金を渡さなかった配偶者の場合は、支払い能力はあるでしょう。
話し合いで支払いに応じてもらえない場合は、離婚調停や離婚訴訟などで慰謝料を取り決めた上で、必要に応じて強制執行による差し押さえを検討していきます。

お金に余裕がない配偶者の場合も、諦める必要はありません。
分割払いや、お金以外の財産で支払ってもらうように(現物給付といいます。)取り決めることも可能です。
離婚調停や離婚訴訟で慰謝料を取り決めておけば、その後10年は時効にかかりませんので、配偶者の経済状況が好転すれば取り立てることが可能となります。

(3)子どもの養育費は請求できる?

離婚後にあなたが子どもの親権者となった場合は、元配偶者に対して養育費を請求できます。
金額は、基本的には裁判所が公表している養育費算定表を参照して決めます。

参考:裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

家庭裁判所の手続きでは、養育費算定表を機械的に適用して金額が決められることがほとんどです。
そのため、より高額の養育費を獲得するためには、配偶者との話し合いで決着をつけることが得策です。

教育プランや生活設計を具体的に考え、どのような費目にいくらかかるのかを算出した上で、配偶者とじっくり話し合って説得し、合意を目指すことになります。

6、共働きで経済的DVに苦しんでいるなら弁護士に相談を

共働きで経済的DVに苦しんでいるなら弁護士に相談を

共働きでも経済的DVは成立しますし、経済的DVは違法行為です。苦しい場合は一人で我慢せず、弁護士に相談することをおすすめします。

離婚問題の解決実績が豊富な弁護士に相談すれば、まず、離婚が可能な経済的DVに該当するかどうかを判断してもらえます。その上で、修復を目指すにせよ、離婚を検討するにせよ、豊富な経験に基づいた最善のアドバイスが得られます。

離婚を決意した場合には、弁護士に依頼すれば配偶者とのやりとりはすべて代行してもらえます。あなたがご自身で配偶者に対応する必要はありません。

離婚協議だけでなく、離婚調停や離婚訴訟もサポートしてもらえますし、納得のいく離婚条件での解決が期待できます。

まとめ

経済的DVが発生している家庭は少なくありませんが、その程度はさまざまです。話し合いで容易に解決できるケースもあれば、調停や訴訟を起こしてでも離婚を求めるべきケースもあります。

いずれにせよ、経済的DVで苦しんでいる場合は、一人で抱え込んでも解決しません。
まずは離婚問題の解決実績が豊富な弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。専門的なアドバイスを受けて、最善の解決策を弁護士と一緒に考えていきましょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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