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不貞行為なしでも精神的苦痛を理由に慰謝料請求できる!相場は?

不貞行為なしでも精神的苦痛を与えられたときには慰謝料を請求できますが、明確な不貞行為を証明できるケースと比べると賠償額の相場は低いのが実情です。

しかも、不貞行為なしだが精神的苦痛を負ったことを理由に慰謝料請求する場合には、「配偶者が他の異性と頻繁にデートしていたこと」「不貞行為なしだがキスはあったこと」などを客観的に証明できる材料が必要となります。

明確な証拠がない状況で慰謝料を請求しようにも、配偶者や不倫相手から「そんな事実はなかった」と言い返されてしまうと、相場よりはるかに低い慰謝料額しか認められないばかりか、慰謝料請求自体が認められずに泣き寝入りせざるを得ません。

そこで今回は、

  • 不貞行為なしでも精神的苦痛を与えられたことを理由に慰謝料請求できる具体例
  • 不貞行為なしの精神的苦痛による慰謝料額の相場
  • 不貞行為なしでも精神的苦痛の慰謝料請求の確実性を高めるコツ
  • 不貞行為なしでも精神的苦痛の慰謝料請求をする際に弁護士に相談するメリット

などについて、弁護士が分かりやすく解説します。
不貞行為なしでも配偶者による裏切りは腹立たしく悲しいものです。不貞行為の確証がなくても精神的に傷付いて慰謝料請求を検討している方の手助けになれば幸いです。

浮気・不倫された際の対応全般について知りたい方は以下の記事をご参照ください。

また、一般的な不倫慰謝料の相場についてお知りになりたい方はこちらの記事もご参照ください。

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1、相場を知る前に~不貞行為なしでも精神的苦痛を理由に慰謝料請求できる?

相場を知る前に~不貞行為なしでも精神的苦痛を理由に慰謝料請求できる?

不貞行為なしでも精神的苦痛を理由に慰謝料請求できる理由について解説します。

(1)不貞行為とは

そもそも、不貞行為とは「配偶者・婚約者・内縁者以外との性交渉・肉体関係」のことです。
法定離婚事由にひとつに挙げられているため(民法第770条1項1号)、配偶者の不貞行為を証明できた時点で、配偶者自身が離婚に反対しても裁判離婚は成立しますし、不貞行為を理由に慰謝料請求することも可能です。

つまり、「配偶者以外との肉体関係のない交流」はあくまでも法律上の「不貞行為」ではないということです。

たとえば、不倫や浮気と言うと、「配偶者以外と頻繁にメールをするだけで浮気」「二人で食事くらいならセーフ」というように、人によって定義は異なるでしょう。
ただ、浮気や不倫の定義が人によって違うのは当たり前、なぜなら、浮気・不倫は法律上の概念ではないので、夫婦間の関係性や人それぞれの考え方によって左右されるものだからです。

したがって、不貞行為なし・不貞行為ありのラインは「肉体関係があったか否か」で判断されて、一般的な「不倫・浮気」という考え方とは別物と扱われます。

なお、不貞行為については「不貞行為とは?慰謝料請求や離婚に関する問題などを弁護士が徹底解説」でも詳しく解説しています。
配偶者の明確な裏切りに対して慰謝料請求を検討している方は、あわせてご一読ください。

(2)慰謝料とは

慰謝料とは、相手方の不法行為によって被った精神的苦痛に対する金銭賠償のことです(民法第710条)。
財産上の損害と違って被害額を算出しにくいので、精神的苦痛の度合いに応じて裁判所が賠償額を認定します。

たとえば、配偶者の不貞行為によって心に傷を負った場合には、「心に受けた傷」という精神的苦痛に対して一定額の慰謝料が発生します。

つまり、不貞行為を働いた配偶者に対する慰謝料請求はもちろん、不貞行為の相手方(不倫相手など)に対しても賠償請求することは可能だということです。

実際、配偶者が不貞行為を働いた場合でも、離婚を選択せずに婚姻関係は継続させたまま、不貞行為の相手方に対してのみ慰謝料を請求するというケースも少なくありません

(3)不貞行為なしの浮気・不倫で慰謝料請求が認められる条件

配偶者の不貞行為によって傷付くのはもちろんのこと、不貞行為なしでも嫌な思いをすることはあるでしょう。

慰謝料は「不法行為によって精神的苦痛を被ったとき」に請求できるということは、不貞行為で精神的苦痛を受けた場合に限らず、不貞行為なしでも精神的苦痛を感じたときには慰謝料請求は可能だということを意味します。

ただし、「配偶者以外との性行為」である不貞行為は客観的に証明しやすいのに対して、不貞行為なしのケースでは、どのような不法行為によって精神的苦痛がもたらされたかを主張立証するのが簡単ではありません。
また、直接的な不貞行為に比べると「不貞行為なし」のケースでは行為の加害性・違法性が相対的に低い傾向にあるということにも注意が必要です。

したがって、不貞行為なしの事案で精神的苦痛を理由とする慰謝料請求が認められるには、「不貞行為なしの状況でもパートナーが精神的苦痛を被った」ことを客観的証拠によって証明する必要があると考えられます。

2、不貞行為なしで精神的苦痛を理由に慰謝料請求できる具体的なケース

不貞行為なしで精神的苦痛を理由に慰謝料請求できる具体的なケース

不貞行為なしでも精神的苦痛を理由とする慰謝料請求が認められる余地がある具体例を紹介します。

(1)キスなどの身体的接触があった

自分の配偶者が自分以外の人とキスしていると精神的苦痛を感じるとは思いますが、キスだけでは不貞行為とは認められにくいので、慰謝料請求は簡単ではありません。

たとえば、キスだけではなく、不倫相手との密会の回数・頻度や、不倫相手に家庭を壊す積極的な加害性が認められるような事情があれば、不貞行為なしでも慰謝料請求が認められる可能性は生まれるでしょう。

(2)他の異性と頻繁に密会していた

他の異性と頻繁に密会・面会していただけでは不貞行為ではないので慰謝料請求は認められにくいでしょう。

ただし、元々恋愛関係にあった二人が密会を続けていたり、時間帯や密会場所、密会の頻度に不倫関係を伺わせる事情が存在したりするなど、婚姻関係を破綻させる可能性のある他の事情が合わされば慰謝料請求が認められる可能性が出てきます。

(3)メールやSNSで親密にやりとりをしていた

メールやLINE、SNSのメッセージサービスなどを活用して頻繁にやり取りをしているだけでは精神的苦痛を理由とする慰謝料請求は難しいでしょう。というのも、肉体関係を示す画像データがあるようなケースを除き、電子メールなどでの親密なやり取り自体だけで不法行為を構成するとは言い難いからです。

ただし、メールなどによる連絡の頻度やメッセージの内容(愛情表現など)次第では、一連の行為全体を総合的に考慮して、不貞行為なしでも慰謝料請求が認められる余地が残されています。

(4)高額なプレゼントのやりとりをしてた

確かに、誕生日や結婚祝い、お中元やお歳暮のように、プレゼントのやり取りは友人・会社の同僚間でも充分あり得ることです。

しかし、一般的な関係性を前提とすれば、男女間で何度も高額なプレゼントのやり取りをしていると、二人の間に何かしらの恋愛関係があるのではないかと推認されるのも当然です。

したがって、高額なプレゼントを贈り合っている形跡があれば、不貞行為なしでも精神的苦痛を理由とする慰謝料請求が認められる余地はあるでしょう。
ただし、「1回プレゼントを贈った」というだけで慰謝料請求が根拠付けられるわけではなく、プレゼントの交換回数や頻度・タイミング、その他男女関係を想定させる事情がある場合に限られます。

(5)肉体関係なしでも2人でホテルに入った

原則として、不貞行為の有無は当事者だけにしか分からないことです。

そのため、不貞行為を理由として慰謝料請求をするケースでも、「不貞行為中の現場」の写真・動画を証拠にするのは簡単ではなく、二人でホテルを出入りする映像証拠や滞在時間、その他不倫関係を推認できる間接証拠を積み重ねて不貞行為を主張立証するのが一般的です。

したがって、肉体関係なしでも二人だけでホテルに入った証拠があれば、「不貞行為なしの慰謝料請求」ではなく、「不貞行為による慰謝料請求」を目指せると考えられます。
仮に他の証拠が乏しく、「肉体関係=不貞行為」自体を認定してもらえなかったとしても、二人でホテルに入って一定時間過ごしたことをだけをもって精神的苦痛を理由とする慰謝料請求は認められる可能性が高いでしょう。

(6)他の異性と結婚を前提に交際した

肉体関係の有無とは関係なく、配偶者が他の異性と結婚を前提に交際していた場合には、それだけで不法行為を構成するほど悪質性が高いと認められやすいでしょう。

不倫相手との連絡の頻度や付き合いの内容、同棲していたかどうかなど、裏切り行為の証拠を積み重ねて慰謝料請求することになります。

3、不貞行為なしの精神的苦痛による慰謝料の相場は数十万円

不貞行為なしの精神的苦痛による慰謝料の相場は数十万円

配偶者の不貞行為なしでも精神的苦痛を負った場合には慰謝料請求が認められる可能性がありますが、「不貞行為による慰謝料請求相場」よりも賠償金額は低いのが実情です。

確かに、配偶者に裏切られた当事者からすると腹立たしさのレベルに差はないように思えます。

しかし、あくまでも不倫関係の裁判実務では「不貞行為による慰謝料請求」が基準として設定されて、「不貞行為なしの慰謝料請求」は精神的苦痛を与える程度が低いものと扱われているのが原因です。

たとえば、不貞行為による精神的苦痛を理由とする慰謝料相場は50万円~350万円が相場と言われています。不貞行為の回数や関係性の長さ、不貞行為が原因で別居や離婚に追い込まれたか否かなどのさまざまな事情が総合的に考慮されて事案ごとに慰謝料額が決定されます。

これに対して、不貞行為なしによる精神的苦痛を理由とする慰謝料相場は数十万円程度収まります
もちろん、「不貞行為なし」とは言っても中長期的な恋愛関係を推認させるほどの事情があれば慰謝料額は高額になるでしょうし、逆に、キスだけ、メールのやり取りの痕跡があるだけ、というケースでは、数万円どころか慰謝料請求自体が棄却される可能性も高いでしょう。

なお、不貞行為の慰謝料相場については「不貞行為の慰謝料相場は判例上いくら?相場を超える金額の獲得方法」で具体的に紹介しています。賠償見込み額のイメージ作りにお役立てください。

4、不貞行為なしの精神的苦痛で慰謝料請求をするときの注意点

不貞行為なしの精神的苦痛で慰謝料請求をするときの注意点

配偶者による不貞行為は存在しないものの、精神的苦痛を受けたとして慰謝料請求をする場合には、以下2点に注意する必要があります。

  • 裁判所を納得させるだけの証拠集めをする
  • 慰謝料請求権が消滅時効にかかる前に法的措置に踏み出す

(1)証拠は重要

不貞行為が存在しない以上、精神的苦痛を負ったとして慰謝料請求をするには、「配偶者による裏切り行為に民法第709条、第710条による損害賠償請求を根拠付けるだけの違法性があること」を丁寧に主張立証しなければいけません。

裏切られた側が労力を割かなければいけないことに疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、「慰謝料を求める側(原告)が裏切り配偶者(被告)の不法行為性を証明しなければいけない」という法律上のルールは守らなければいけないからです。

不貞行為なしの裏切り行為で精神的苦痛を負ったとして慰謝料請求するときに役立つ証拠の代表例は以下の通りです。

  • 不倫相手とのメールやLINEなどのデータ、スクショ
  • 密会現場の写真、動画、音声データ
  • プレゼントやホテル代などのクレカ利用明細、領収書
  • 親族・友人・会社の職員など、第三者の証言
  • 日記、スケジュール帳、メモ、手紙
  • 裏切り行為を自白した録音データ、念書

不貞行為が存在しない以上、不貞行為なしの状況で慰謝料請求をするには、証明力の高い証拠を集めることと、証拠の数を増やすことが不可欠です。
裏切り中の配偶者に証拠隠滅されると慰謝料請求自体が難しくなるので、バレないように探偵を雇うなどの方法も有効でしょう。

なお、浮気や不倫を証明するのに役立つ証拠集めについては「浮気・不倫の証拠は必須!証拠を集めるための6つのこと」でも詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

(2)慰謝料請求権には時効がある

配偶者に対する慰謝料請求には消滅時効がある点に注意が必要です。どれだけ相手方の不倫の証拠を掴んでいたとしても、時効で慰謝料請求権自体が消滅すると一切請求は認められなくなってしまいます

慰謝料請求権の期間制限は以下の通りです(民法第724条)。

  • 配偶者の不法行為と加害者を知ったときから3年
  • 配偶者の不法行為から20年

なお、不貞行為などの裏切り行為が原因で離婚をした場合、離婚に伴う慰謝料請求権は「離婚が成立したとき」が起算点となります。また、配偶者に対して有する慰謝料請求権は「婚姻解消のときから6カ月を経過するとき」までは消滅しません(民法第159条)。

不貞行為の内容やその後の婚姻関係の継続性にかかわらず、配偶者の裏切り行為に対して精神的苦痛を理由として慰謝料請求をする場合には、迅速な証拠集めにより法的措置に踏み出した方が解決時期を前倒しできます。

配偶者の裏切りによって傷付いた気持ちを癒して人生をやり直すタイミングは早い方が良いので、消滅時効ギリギリにならないように気持ちを奮い立たせて被害回復を目指しましょう。

5、不貞行為なしの精神的苦痛で高額の慰謝料を獲得するためのポイント

不貞行為なしの精神的苦痛で高額の慰謝料を獲得するためのポイント

不貞行為は存在しないが、精神的苦痛を強いられたことを理由にできるだけ高額の慰謝料の支払いを求めるなら、以下3つのポイントを押さえるのがおすすめです。

  • 話し合いで決着をつけて有利な条件での合意を取りつける
  • 慰謝料の分割払いや現金給付での賠償も提案する
  • 公正証書を作成して不払い時のリスクヘッジをする

(1)できる限り話し合いで決着をつける

まず、不貞行為が存在しないケース、不貞行為がありそうだが証明できないケースは、法廷闘争になると被害者側が不利になる可能性が高いということを覚えておきましょう。
なぜなら、不貞行為がない状況で「不法行為であること」を主張立証するのは大変だからです。

そこで、不貞行為なしでも背負わされた精神的苦痛について確実に高額の慰謝料請求をするなら、当事者同士の話し合い段階で示談を引き出すのがおすすめです。
相手方の合意さえ引き出せれば慰謝料額はいくらでも良いので、裁判所の認定額よりも高い金額での和解契約成立を実現しやすいでしょう。

(2)分割払いや現物給付を提案する

慰謝料相場以上の高い賠償額を狙うなら、分割払いを条件に提示するのも有効な戦略です。

たとえば、加害者の資力次第では「現金一括で100万円支払え」という条件は物理的に不可能なこともあるでしょう。
一括払いにこだわると、加害者側の預貯金残高次第で慰謝料が減額される可能性もあるので、かえって被害者が損をすることになりかねません。
このようなケースでも、「毎月10万円、10回の分割払い」「毎月5万円、20回の分割払い」という条件なら、相手方の合意を引き出しやすくなるでしょう。

また、金銭賠償が現実的に難しい場合には、現物給付による合意形成も選択肢のひとつです。

(3)公正証書を作成する

話し合いベースで慰謝料の支払いや賠償額の合意を形成する場合には、公正証書を作成するのがおすすめです。

公正証書とは、一般私人同士の契約内容などについて、法務大臣に任命された公証人が内容を証明する書類のことです。
当事者双方のサインがある契約書でも法的効力は備わりますが、特に、不貞行為関連の慰謝料について公正証書を作成すれば以下のようなメリットが得られます。

  • 約束通りに慰謝料が支払われない場合の法的措置の難易度が下がる
  • 慰謝料の支払い義務があるような裏切り行為をしたことについて自白があることを証明できる

公正証書作成費用も不貞行為の加害者側に負担させれば、被害者側は一切経済的な負担をせずにより高い証明力を有する書類を手にすることができるでしょう。

6、不貞行為の確証がない…それでも慰謝料請求をお考えなら弁護士に相談を

不貞行為の確証がない…それでも慰謝料請求をお考えなら弁護士に相談を

不貞行為の確証がなくても精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求したいと考えているなら、一般民事に力を入れている弁護士に相談するのがおすすめです。
なぜなら、離婚案件の実績豊富な弁護士への相談によって以下5点のメリットが得られるからです。

  • 不貞行為なしでも裏切り行為の状況を考慮して慰謝料請求が可能かを検討してくれる
  • 慰謝料額を高くするために必要な証拠の種類や収集方法のアドバイスを期待できる
  • 相手に手の内を晒さずに有利な内容で慰謝料支払いについて合意を引き出してくれる
  • 相手方との交渉の現場にも立ち会ってくれる
  • 将来的に離婚を視野に入れているなら、慰謝料請求と合わせて離婚手続きについても相談できる

不貞行為なしでも精神的苦痛を理由に慰謝料請求できるかに関するQ&A

Q1.不貞行為とは

そもそも、不貞行為とは「配偶者・婚約者・内縁者以外との性交渉・肉体関係」のことです。
法定離婚事由にひとつに挙げられているため(民法第770条1項1号)、配偶者の不貞行為を証明できた時点で、配偶者自身が離婚に反対しても裁判離婚は成立しますし、不貞行為を理由に慰謝料請求することも可能です。

つまり、「配偶者以外との肉体関係のない交流」はあくまでも法律上の「不貞行為」ではないということです。

たとえば、不倫や浮気と言うと、「配偶者以外と頻繁にメールをするだけで浮気」「二人で食事くらいならセーフ」というように、人によって定義は異なるでしょう。
ただ、浮気や不倫の定義が人によって違うのは当たり前、なぜなら、浮気・不倫は法律上の概念ではないので、夫婦間の関係性や人それぞれの考え方によって左右されるものだからです。

したがって、不貞行為なし・不貞行為ありのラインは「肉体関係があったか否か」で判断されて、一般的な「不倫・浮気」という考え方とは別物と扱われます。

Q2.不貞行為なしの浮気・不倫で慰謝料請求が認められる条件

配偶者の不貞行為によって傷付くのはもちろんのこと、不貞行為なしでも嫌な思いをすることはあるでしょう。

慰謝料は「不法行為によって精神的苦痛を被ったとき」に請求できるということは、不貞行為で精神的苦痛を受けた場合に限らず、不貞行為なしでも精神的苦痛を感じたときには慰謝料請求は可能だということを意味します。

ただし、「配偶者以外との性行為」である不貞行為は客観的に証明しやすいのに対して、不貞行為なしのケースでは、どのような不法行為によって精神的苦痛がもたらされたかを主張立証するのが簡単ではありません。
また、直接的な不貞行為に比べると「不貞行為なし」のケースでは行為の加害性・違法性が相対的に低い傾向にあるということにも注意が必要です。

したがって、不貞行為なしの事案で精神的苦痛を理由とする慰謝料請求が認められるには、「不貞行為なしの状況でもパートナーが精神的苦痛を被った」ことを客観的証拠によって証明する必要があると考えられます。

Q3.不貞行為なしの精神的苦痛による慰謝料の相場は

配偶者の不貞行為なしでも精神的苦痛を負った場合には慰謝料請求が認められる可能性がありますが、「不貞行為による慰謝料請求相場」よりも賠償金額は低いのが実情です。

確かに、配偶者に裏切られた当事者からすると腹立たしさのレベルに差はないように思えます。

しかし、あくまでも不倫関係の裁判実務では「不貞行為による慰謝料請求」が基準として設定されて、「不貞行為なしの慰謝料請求」は精神的苦痛を与える程度が低いものと扱われているのが原因です。

たとえば、不貞行為による精神的苦痛を理由とする慰謝料相場は50万円~350万円が相場と言われています。不貞行為の回数や関係性の長さ、不貞行為が原因で別居や離婚に追い込まれたか否かなどのさまざまな事情が総合的に考慮されて事案ごとに慰謝料額が決定されます。

これに対して、不貞行為なしによる精神的苦痛を理由とする慰謝料相場は数十万円程度収まります
もちろん、「不貞行為なし」とは言っても中長期的な恋愛関係を推認させるほどの事情があれば慰謝料額は高額になるでしょうし、逆に、キスだけ、メールのやり取りの痕跡があるだけ、というケースでは、数万円どころか慰謝料請求自体が棄却される可能性も高いでしょう。

まとめ

不貞行為なしでも精神的苦痛を被った場合には慰謝料を請求できます。
ただし、不貞行為があったケースよりも慰謝料相場は低くなりますし、慰謝料請求を根拠付ける証拠集めに労力を割かなければいけない点に注意が必要です。

このように、不貞行為が明確に存在するわけではないケースでは、あなたが負った心の傷について満足いく金銭賠償を求めるにはいくつものハードルをクリアしなければいけません。

ひとりで悩みを抱えたままでは辛さが募るばかりなので、まずは離婚案件の実績豊富な弁護士に寄り添ってもらいながら、慰謝料請求や離婚の是非など、1つずつ考えるべきことを整理していきましょう

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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