検察庁からの呼び出しが未だ来ない理由は何でしょうか?
警察での尋問後、検察庁の連絡を待ちながら不安な時間を過ごしている方もいらっしゃると思います。
今回は、ベリーベスト法律事務所の弁護士が、検察庁の呼び出しに関する待ち時間と、その背後にある理由について詳しく説明いたします。
検察庁からの呼び出しについては以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、検察庁の呼び出しが来ない理由
(1)捜査に時間がかかっている
「検察庁から呼び出しがある」旨、警察から言われていたにもかかわらず呼び出しが来ないと、かえって不安になってしまいますよね。
検察庁からの呼び出しが来ない理由の1つとして、捜査に時間がかかっていることが挙げられます。
検察庁が被疑者を呼び出すのは、起訴・不起訴の判断をするために取り調べをするためです。捜査が進まず、取り調べ段階まで至っていないと、検察庁からの呼び出しは来ません。
捜査に時間がかかる理由としては、事件の複雑性により捜査に時間がかかっている場合や、検察庁の繁忙期であることが考えられます。
(2)不起訴になった場合
① 不起訴になった旨の連絡は来ない
検察庁からの呼び出しが来ない理由の2つ目は、事件が不起訴になった場合です。検察庁に事件が送致されたら呼び出しがあるのが一般的ですが、中には検察庁が呼び出しをせずに不起訴の判断をしている場合もありえます。
検察で不起訴の判断がなされたとしても、被疑者の元に不起訴になった旨の連絡は来ません。なぜなら、検察庁には不起訴になった旨を被疑者に伝える義務がないからです。
逮捕されずに、被疑者が在宅のまま捜査がされている事件(在宅事件)の場合、事件発生から3〜4ヶ月程度で不起訴か否か判断されることもあります。
しかし、捜査が遅れていると、不起訴の判断が出るまでに1年以上かかることもあります。このように、不起訴の判断が出るまでの期間は事案ごとに異なっており、一律ではありません。
② 不起訴処分告知書を検察官に請求する権利あり
不起訴になった旨、検察庁から自発的に連絡が来ることはありません。
しかし、不起訴かどうかはっきりしないままだと、安心できませんよね。
また、会社に不起訴になった証拠を提出する必要がある場合があります。そういった場合、被疑者側から、検察官へ「不起訴処分となった旨を証明する書類(不起訴処分告知書)」を請求することができます。
2、検察庁からの呼び出しがあるまでの流れ
(1)捜査の流れ
警察による捜査が行われ被疑者として警察に逮捕されると、逮捕から48時間以内に、検察官へ身柄送致がなされます(逮捕後に釈放されて書類送検となる場合もあります。)。
なお、在宅事件の場合は、身柄拘束はされません。被疑者は、通常の生活を送りながら、検察庁の起訴・不起訴の決定を待つこととなります。
(2)警察の捜査と検察庁の捜査の違い
検察庁での捜査が行われる前段階として、警察での捜査が行われています。
警察は、事件の第一次的な捜査を行います。検察庁は、警察の捜査をもとに、起訴・不起訴の終局処分を決定するための捜査を行うのです。
警察では、起訴・不起訴の判断をすることはできません。起訴は検察官のみに与えられた権限になります。
(3)検察庁の捜査で行うこと
上記のように、検察庁に送致された事件につき、検察庁は起訴・不起訴の決定をする必要があります。
起訴・不起訴の判断をするために、以下のような捜査を行います。
- 被疑者・参考人の取り調べ
- 証拠品の搜索・差押え
- 取り調べや証拠に基づく検討
(4)検察官による起訴・不起訴の決め方
捜査によって、罪を犯したことが明白であり、訴追が必要であると判断する場合、検察官は裁判所に起訴状を提出して被疑者を起訴します。
(5)不起訴になる場合
検察庁での捜査の結果、不起訴となるのは次のようなケースです。
①訴訟条件を欠く場合
起訴をするためには、大前提として、訴訟条件が必要になります。
以下のように、訴訟条件を欠く場合には、起訴ができないため不起訴となります。
- 被疑者が死亡したとき
- 親告罪について告訴が取り消されたとき など
②被疑事件が罪とならない場合
事件が発生しても、被疑者が起訴されるかは、被疑者の状態により異なります。
以下の場合には、不起訴となります。
- 被疑者が犯罪時14歳に満たないとき
- 被疑者が犯行当時に心神喪失状態にあったと判断された場合
③犯罪の嫌疑がない場合
人違いなど、罪を犯していない人を起訴することはできません。
犯罪の嫌疑がなければ、当然ながら不起訴となります。
④犯罪の嫌疑が不十分の場合
証拠を十分に分析・検討したり、取り調べをしたりして捜査を尽くしても、犯罪の成立を認定できる証拠が不十分ということもあります。
そのような場合は、被疑者を起訴することができず不起訴となります。
⑤起訴猶予の場合
被疑者が罪を犯したことが証拠上明白であっても、被疑者の年齢や情状(例:反省している、示談している)などの事情を考慮し、検察官の判断で、起訴猶予として不起訴となる場合があります。
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3、検察庁から呼び出される具体的ケース
ここからは、検察庁から呼び出される具体的ケースをご紹介します。
(1)被疑者として刑事事件の起訴・不起訴の判断のために呼び出される場合
①取り調べとして呼び出されるケース
逮捕されて警察での取り調べを受けた後、一度は釈放されても事件の捜査は続いています。
事件の起訴・不起訴を決定するためには、証拠の分析だけでなく、被疑者の取り調べが必要となるケースも多いです。
刑事事件の起訴・不起訴の判断のために、被疑者への取り調べとして、検察庁から呼びだされるケースがあります。
②略式手続の承諾書にサインするために呼び出されるケース
刑事手続の中に、「略式手続」というものがあります。
略式手続とは、被疑者の同意のもと罰金または科料を支払って事件が終了するという簡易の手続です。
罰金または科料の額は100万円以下となっています。
略式手続の承諾書にサインをするために、検察庁に呼び出されることがあります。
③検察庁の呼び出しがあったら不起訴は無理?
検察庁に呼び出されたからといって、確実に起訴されるというわけではありません。
検察庁からの呼び出しで取り調べを受けたとしても、以下のような事情を考慮し、不起訴の判断がなされることもあります。
- 検察官が終局処分を決めるまでの間に被害者と示談が成立していた
- 被疑者本人が反省している など
検察官からの取り調べでは、示談や反省の情など自身に有利となる事情をしっかりと主張しましょう。
(2)参考人として任意で取り調べを受ける場合
被疑者としての取り調べだけでなく、参考人として取り調べを受ける場合にも、検察庁から呼び出される場合があります。
①出頭・取り調べの義務まではない
事件に関与していない参考人も、被疑者の終局処分を決定するために必要となれば、検察官が参考人として取り調べを要請する場合があります。
具体的には、事件を目撃した、被疑者と関係性がある場合などが考えられます。
この場合、参考人は検察庁から呼び出しを受けたとしても、出頭や取り調べに応じる義務はありません。
出頭や取り調べは任意ではあるものの、被疑者以外の人を検察庁が呼び出すということは、事件の終局処分の決定に参考人の取り調べが必須というケースもあるでしょう。
よほどの理由がない限り、検察庁からの呼び出しに応じたほうが、事件解決はスムーズに進みます。
②拒否した場合、裁判で証人尋問を受ける可能性あり
犯罪捜査に欠かせない知識を有する参考人が、取り調べを拒否した場合、刑事裁判に呼び出されて証人尋問を受ける可能性があります(刑事訴訟法226条)。
裁判に呼び出されるのは、検察官の取り調べよりも負担に感じる人が多いので、検察庁からの呼び出しに応じた方が、負担は少ないといえるでしょう。
(3)警察の呼び出しと検察庁の呼び出しの違い
警察の呼び出しでも検察庁の呼び出しでも、被疑者は取り調べを受けることに変わりはありません。
段階としては、警察の呼び出しが先です。警察が証拠を集め、検察庁の取り調べの準備段階を担います。
その後、検察庁は、警察の取り調べをもとに足りない部分の補充捜査を行い、最終的に起訴・不起訴の判断をします。
4、検察庁の呼び出し前に確認しておくべきこと
ここからは、検察庁の呼び出し前に確認しておくべきことを紹介します。
(1)検察庁の呼び出しがあるまでの期間
警察での取り調べが終わった後、検察庁からの呼び出しがあるまでの期間は、具体的に決まっているわけではありません。
検察庁の繁忙期にあたってしまうと、事件の複雑性がなくても、呼び出しまでに時間がかかるケースがあります。通常は、在宅事件の場合、警察の捜査で1〜2ヶ月かかり、その後書類送検されます。
警察から検察庁への書類送検については、被疑者側に連絡があるわけではないので、具体的な日程はわからないケースがほとんどです。書類送検されてから検察庁の呼び出しがあるまでは1〜2ヶ月程度かかるのが通常です。
ただし、これはあくまで目安なので、2ヶ月程度経って検察庁の呼び出しがないからといって、安心し過ぎないようにしましょう。
(2)呼び出し日時の変更は可能?
検察庁から呼び出しがあった場合、できる限り変更せずにそのまま呼び出しに応じたほうが安心でしょう。
呼び出しを執拗に遅くしたり無視したりすると、被疑者にとって何のメリットもありません。もし、どうしても仕事で呼び出しに応じられない場合は、早めに検察庁に連絡をし、呼び出しの日時を変更してもらいましょう。
(3)検察庁の呼び出しを無視した場合
検察庁からの呼び出しは任意であり、呼び出しに応じる義務があるかというと義務まではありません。
ですが、検察庁から被疑者として呼び出しを受けた場合、終局判断の決定をするために取り調べをする必要があるケースがほとんどです。
検察庁の呼び出しがあった場合は、無視せずしっかり取り調べに応じましょう。検察庁の呼び出しを無視すると被疑者にとって不利になる可能性があります。
最悪の場合は、逃亡・証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕されたりする可能性があるため、注意が必要です(刑事訴訟法199条2項、刑事訴訟規則143条の3)。
(4)弁護士への相談
検察庁の呼び出しを待っている間、数か月にわたって検察庁の呼び出しが来ないと、不起訴だと安心してしまう人がいます。
ですが、呼び出しが来ない理由はさまざまな事情が考えられ、検察庁の呼び出しがあるまでに時間がかかるケースも多々あります。
呼び出しが来ない間も検察庁の捜査が進み、起訴される可能性もあるのですから、検察庁の呼び出しがくる前に弁護士への依頼を検討しましょう。
5、検察庁からの呼び出し前に弁護士に相談するメリット
(1)事情聴取へのアドバイスをもらえる
検察庁からの呼び出し前に弁護士に相談しておくと、事情聴取や取り調べに関するアドバイスを、弁護士からもらうことができます。
検察庁からの呼び出しがあるのは、警察の捜査が終わり、検察庁の捜査もある程度進んだ段階です。
検察庁の呼び出しがあってから、慌てて弁護活動をするのは、時期的に遅すぎるケースが多いです。起訴される可能性が少しでもある場合は、できる限り早めに弁護士に相談するようにしましょう。弁護士への依頼が早ければ早いほど、弁護できる期間が長くなり、取れる選択肢も増えます。
(2)検察庁へ同行してもらえる場合がある
弁護士に依頼をしておけば、検察庁から呼び出された際、弁護士が検察庁に同行してくれる可能性があります。
もちろん、検察官の取り調べ自体に必ず弁護士が同席できるわけではありません。ですが、弁護士に依頼し弁護士が検察庁まで同行していることは検察官にも伝わりますので、不当な取り調べがされる可能性は低くなるでしょう。
弁護士のスケジュールを確保するためにも、前もって弁護士に依頼しておくことをおすすめします。
(3)不起訴の可能性が高まる
弁護士に依頼すると、事件の進捗に合わせてアドバイスをもらえたり、不起訴の可能性が高まったりします。
被疑者と被害者の当事者同士では、示談の話がまとまらなくても、弁護士が間に入ることで示談が成立することもあります。少しでも不起訴の可能性が高まるように、反省の情を書面にまとめたり、再犯防止の取り組みや家族による被疑者更生への協力などを主張したりするなどの対策も可能です。
起訴されてしまうのと、不起訴にとどまるのとでは、大きく異なります。一度検察庁で起訴されてしまうと、後から不起訴に変更することはできません。
不起訴の可能性が少しでも高まるように、検察庁からの呼び出しがなくても、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
まとめ
検察庁からの呼び出しを待っている間、呼び出しが来ない理由を色々と考えて不安を感じている人が多いでしょう。
呼び出しがしばらくなくても、単に捜査が遅れているだけで、起訴される可能性がゼロになったという保証はありません。起訴される可能性があるのであれば、早めに弁護士に相談をして対策を立てておくことをおすすめします。