管理職は残業代をもらえない?管理職が知っておきたい4つのこと

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「毎日毎日深夜残業だったけど、一応管理職だったし、残業代請求なんてまったく考えなかった。」

このような経験がある方は多いのではないでしょうか。

「部長」、「課長」等の名称がついていたとしても、残業代請求ができるかもしれません。

今回は、残業代請求と管理監督者についてご説明します。

目次

1、管理職はいくら残業しても残業代をもらえない!?

2、残業代をもらえない「管理職」とは?

3、「名ばかり管理職」による残業代請求が認められた「マクドナルド訴訟」とは?

4、「名ばかり管理職」にあたるのはどのような場合?

5、実際の残業代請求の流れは?

1、管理職はいくら残業しても残業代をもらえない!?

管理職とされている従業員が会社に対し残業代請求をすると、「管理職にあたるため残業代は発生しない。」と反論されることがあります。

このような反論は、法的に正しい場合もあれば、誤りである場合もあります。

労働基準法第41条は、「この章(第四章 労働時間、休憩、休日及び年次休暇)、第六章(年少者)及び第六章の二(妊産婦等)で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない」と定め、第2号において「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」と定めています。

すなわち、同号の定める者(管理監督者)に該当する場合には、時間外割増・休日割増の支払いが不要であるとしているのです。

したがって、法的には、管理職とされている当該従業員が「管理監督者」にあたる場合には、時間外割増・休日割増は発生しないこととなるのです(深夜割増は発生します。)。

2、残業代をもらえない「管理職」とは?

では、時間外割増・休日割増が発生しない管理職、すなわち、法的に「管理監督者」に該当するか否かは、どのような基準で判断されるのでしょうか。

通達(昭22.9.13発基17号、昭63.3.14基発150号)は、「管理監督者」について、「経営者と一体的な立場にある者」であり、これにあたるかどうかは、名称にとらわれずその職務と職責、勤務態度、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か等実態に即して判断すべきとしています。

裁判例では、管理監督者性の判断基準が確立されているとは言えませんが、「概ね、当該従業員の職務内容、権限、責任の重要性や事業経営方針への関与の程度、労働時間に関する裁量の有無、管理監督者に見合う待遇がされているか否かなどを判断要素とし、管理監督者として認定するためには、職務の内容、権限、責任の程度について、企業全体からみて相当重要なものであることを要するとの考え方に立って判断している」と解されています(判例タイムズ1262号221頁)。

具体的な判断過程は以下のようになります。

例えば、「当該従業員の職務内容、権限、責任の重要性や事業経営方針への関与の程度」に関しては、経営方針等について決定する会議に出席し自らの意見を述べる権限及びその責任があったか否か等により判断されます。その権限、責任がある場合には、管理監督者と認定される可能性が生じます。

次に、「労働時間に関する裁量」については、出退勤の自由が確保されていたかで判断されます。出退勤の時間を自由に決定することができ、労働時間について特段管理されていないという事情があれば、管理監督者として認定される可能性が生じます。

さらに、「管理監督者に見合う待遇」については、他の従業員と比較して、高額な給与が支払われていたか等で判断されます。他の従業員と比べ、相当高額な給与を支払われている場合には、管理監督者として認定される可能性が生じます。

3、「名ばかり管理職」による残業代請求が認められた「マクドナルド訴訟」とは?

2008年1月28日、東京地裁において、日本マクドナルドの直営店の店長が会社に対して残業代の支払いを求めた訴訟の判決がありました。

マクドナルドの営業ラインのランク付けは、①マネージャートレーニー(入社時からセカンドアシスタントマネージャーに昇格するまでの身分)、②セカンドアシスタントマネージャー、③ファーストアシスタントマネージャー、④店長、⑤オペレーションコンサルタント、⑥オペレーションマネージャー、⑦営業部長、⑧営業推進本部長(代表取締役の兼務)から構成されていましたが、店長以下の従業員が店舗において販売作業等に従事している一方、店長以上の従業員を管理監督者として扱っていたため、店長に対し割増賃金を支払っていませんでした。

判決の内容は、会社は店長に対し、残業代を支払えというものでした。

マクドナルド訴訟における重要な争点は、店長の「管理監督者」該当性ですが、この点について裁判所は、以下のように判断しました。

まず労働基準法41条2号解釈に関し、「管理監督者については、労働基準法の労働時間等に関する規定は適用されないが(同法41条2号)、これは、管理監督者は、企業経営上の必要から、経営者と一体的な立場において、同法所定の労働時間の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般の労働者に比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、上記の基本原則に反するような事態が避けられ、当該労働者の保護に欠けるところがないという趣旨によるもの」としました。その上で、原告である店長が管理監督者に該当するか否かは、「①職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか、②その勤務態様が労働時間に対する規制になじまないものであるか否か、③給与(基本給、役職手当等)及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされているか否かなどの諸点から判断すべきである」としました。

具体的な当てはめについては、①店長の権限等について、「店長は、店舗の責任者として、アルバイト従業員の採用やその育成、従業員の勤務シフトの決定、販売促進活動の企画、実施等に関する権限を行使し、被告の営業方針や営業戦略に即した店舗運営を遂行すべき立場にあるから、店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかであるものの、店長の職務、権限は店舗内の事項に限られるものであって、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないというような重要な職務と権限を付与されているとは認められない」と認定しました。

また、②店長の勤務態様については、「店長は、被告の事業全体を経営者と一体的な立場で遂行するような立場になく、各種会議で被告から情報提供された営業方針、営業戦略や、被告から配布されたマニュアルに基づき、店舗の責任者として、店舗従業員の労務管理や店舗運営を行う立場であるにとどまるから、かかる立場にある店長が行う上記職務は、特段、労働基準法が規定する労働時間等の規制になじまないような内容、性質であるとはいえない」としました。

さらに、③店長に対する処遇について、「店長のかかる勤務実態を併せ考慮すると、上記検討した店長の賃金は、労働基準法の労働時間等の規定の適用を排除される管理監督者に対する待遇としては、十分であるとは言い難い」とし、店長の「管理監督者」該当性について「店長は、その職務の内容、権限及び責任の観点からしても、その待遇の観点からしても、管理監督者に当たるとは認められない」と結論付けました。

4、「名ばかり管理職」にあたるのはどのような場合?

では、実際の企業において「名ばかり管理職」にあたるのはどのような場合でしょうか。

当該従業員に「主任」、「部長」、「課長」等の役職が与えられている場合、会社からは、当該従業員は、「管理者」や「管理監督者」であると説明されることが多いかもしれません。

しかし、実際の裁判においては、これまで述べてきたように、役職の名称にはとらわれず、原告が、会社において具体的にどのような作業に従事し、どのような労働条件で勤務していたか等が問題となります。

すなわち、「部長」等の「名称」のみが理由となって「管理監督者」該当性が肯定されるといったことはまずありません。

過去には取締役の残業代請求が認められたこともありました。その事案においては、原告は、役職こそ「取締役」とされていましたが、会社の経営方針は代表取締役の一存で決められており、具体的に従事していた作業は現場における肉体労働でした。また、出退勤時刻に関する裁量もなく、十分な待遇を得ているとは言い難いものでした。会社は最後まで「原告は取締役であり、管理監督者である」と主張しましたが、裁判所はその主張を認めませんでした。

会社において自分は管理職として扱われている、会社の重要事項について一部関与している等、現在の地位が管理監督者に該当するものか否かについて、ご自身では判断が難しいこともあるかと思います。その際には是非一度、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

5、実際の残業代請求の流れは?

では、実際に残業代請求をする場合、どのような流れになるのでしょうか。

まず、法律事務所にご相談ください。この時に、残業の証拠となる資料(タイムカード、職場のアドレスから送信されたメール履歴等)、労働契約の内容を確認できる資料(雇用契約書、就業規則、給与明細等)をご持参いただけると、ある程度の確度を持った判断ができます。

次に、会社に対し、内容証明郵便にて残業代等の請求を行います。労働者側に証拠が不足しているときは、会社に対し証拠の開示を求めます。多くの会社は証拠の開示に協力的ですが、中には開示に協力しない会社もあります。そのような場合には、推定計算等を用いて残業代の金額を計算します。

その後、会社が裁判外で残業代を支払えば、これを受け取って事件終了となります。会社が裁判外での支払いに応じず、争う姿勢である場合には、労働審判や訴訟を提起して、裁判所による手続の中で解決を図ることとなります。

詳しくは「残業代が未払いになったら! 残業代請求の全手順」をご参照ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

会社において役職を与えられ、管理職として扱われている従業員の方でも、具体的に従事している業務内容によっては会社に対して残業代請求ができる場合があります。

当該従業員の管理監督者該当性の判断については微妙なケースが多く、場合によっては専門家による具体的な事情を聴取したうえでの判断が必要です。詳しく知りたい場合はお近くの弁護士等の専門家に相談されるのもよいでしょう。

今回の内容がご参考になれば幸いです。

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