配偶者が異性とホテルを利用した形跡がある場合、それは不倫の証拠となるのでしょうか。そして、慰謝料請求を進める上でどのような証拠が必要となるのでしょうか?
今回は
- ホテル利用の証拠があるが不倫が否定されるケース
- ホテル不倫を証明するために必要な具体的な証拠
- ホテル不倫の証拠がある場合の離婚手続きと慰謝料請求
について解説します。
1、ホテル利用の証拠があるのに不倫を認めない2つのケース
配偶者が異性とホテルを利用した証拠がある場合、多くの人が不倫を疑うでしょう。
ただ、不倫の事実を問い詰めようとホテル利用の証拠を突きつけても、相手が認めないケースは少なくありません。
ここではまず、ホテル利用の証拠があるのに不倫を認めないのはどのような場合なのか、詳しく見ていきましょう。
(1)泊まったホテルがラブホテルではない
ホテル利用の証拠があっても、それがラブホテルでない場合、相手が不倫の事実を認めない可能性があります。
宿泊したのがビジネスホテルやシティホテルだと、「仕事で泊まっただけ」などと反論されることがあるのです。
実際、同僚の男女が出張などで同じビジネスホテルに宿泊することはあり得ますので、このような反論をされた場合、不倫の事実を証明するには別の証拠が必要になります。
(2)ホテルは泊まったが不倫(不貞行為)はしていない
ホテル利用の証拠があるのに不倫を否定する人は、「ホテルには泊まったが不貞行為はしていない」と反論することもあります。「異性とホテルに泊まりはしたが、不貞行為には及んでいないのだから不倫ではない」と主張してくるのです。
① 証拠がホテルに入るときの写真のみ
不倫の証拠が「ホテルに入るときの写真」しかない場合、相手が不倫を認めない可能性があります。ホテルに入る写真しかなければ、「ホテルに入るときは一緒だったが、別々の部屋に泊まった」などと反論できてしまうからです。
ビジネスホテルやシティホテルでは、一緒にホテルに入り別の部屋に宿泊する、ということもあるでしょうから、一応、筋は通っています。そのため、こういったケースで不倫の事実を証明するには、別の証拠を用意する必要があります。
② とにかく「何もなかった」と言い張る
ホテルに泊まった証拠を突きつけても不倫を否定する人の中には、「何もなかった」と言い張る人もいます。不倫は、不貞行為に及ばなければ成立しませんので、「何もなかった」と言い張ることで、不倫の事実を否定しようとするのです。
このような人は、ラブホテルに入る写真を証拠に不倫の事実を問い詰めたとしても、「具合が悪かったから休憩するために入ったのであって、不貞行為はしていない」などと言い訳し、とにかく「何もなかった」と主張します。
このように、ホテル利用の証拠があったとしても、相手が素直に不倫の事実を認めるとは限りません。
そして、相手が不倫を認めない場合、別の証拠を探したり、不倫の事実を認めるよう相手と交渉したり、といった対策が必要になります。相手が不倫を認めない場合の対処法については、以下の関連記事にて詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
2、ホテル不倫で必要な証拠とは
男女でホテルを利用した写真は、不倫の証拠として話し合いや調停、裁判などでよく使われます。
ただ、ホテル利用の証拠があるにもかかわらず、相手が不倫を認めない場合、追加の証拠が必要になることがあります。
では、このようなケースで不倫の事実を証明するには、どのような証拠を揃えればいいのでしょうか。
(1)ラブホテルではない場合
2人で入っていった、あるいは宿泊していたのがラブホテルではない場合、追加で以下のような証拠があれば、不倫の事実を証明しやすくなります。
- メールやSNSのやりとり
- 電話での通話や会話の録音
- 写真、動画
ただし、これらの証拠は、どんなものでもいいわけではありません。不倫相手との間に「肉体関係があった」と推測できるものでなければ、不倫の事実を証明するうえで有力な証拠とはならないのです。
例えば、メールやSNSのやり取りを証拠にする場合、「朝まで一緒にいられて幸せだった」といった内容であれば、肉体関係があったと推測できるかもしれません。
これに対し、「大好き」「ディナーごちそうさまでした」といった内容にとどまる場合は、肉体関係があったと推測しにくく、不倫の証拠としてはやや弱くなります。
電話での通話や会話の録音についても、同様です。
また、写真や動画についても、性行為やそれに近いものが写っているものであれば証拠になりますが、単に仲の良さそうな写真や動画では、不倫の証拠として認められない可能性が高いでしょう。
(2)何もしてないと主張する場合
相手がとにかく「何もしていない」と主張して不倫を否定する場合、利用したホテルの種類に応じて下記のような証拠を集めることをおすすめします。
ここでも、不倫を証明するうえで有力な証拠になるかどうかのキーポイントは、「肉体関係があったと推測できるかどうか」という点にあります。
① ラブホテルを利用していた場合
ラブホテルの利用を証明する写真がある場合、相手が否定したとしても、不倫の有力な証拠になります。社会通念上、ラブホテルは「性行為をするところ」と認識されている場所であり、このような場所を異性と利用すれば、当然、肉体関係があったと推測できるからです。
ただし、ラブホテルを利用していてもそれが極めて短時間であるような場合、「肉体関係がなかった」という相手の主張が認められる可能性があります。
こういったケースでは、ラブホテルの「利用時間」に関する証拠を集めましょう。
具体的には、下記のような証拠が有効です。
- ラブホテルへの「入室時の写真」と「退室時の写真」
- 利用時間(入退室時間)が記載されたラブホテルの領収書
これらの証拠があれば、ラブホテルを利用した事実に加え、その利用時間についても証明できます。そして、ラブホテルを長時間利用している事実からは「肉体関係があった」ことが推測されますので、裁判になった場合にも不倫の事実が認められる可能性が高いでしょう。
② 一般のホテルを利用していた場合
利用していたのがラブホテルではなく一般のホテルであった場合、ホテル利用の証拠だけでは不倫の事実を証明できない可能性があります。
確かに、シティホテルやビジネスホテルでも不貞行為をすることは可能です。ただ、一般のホテルはラブホテルとは異なり、「性行為をするため」に利用する場所ではありません。そのため、相手が「何もしていない」と主張した場合、不倫の証拠としては少し弱いのです。
こういったケースでは、ホテルの「利用頻度」に関する証拠が有効です。
相手が、「出張でホテルを利用した」と主張していても、それが毎回同じ人と、しかも、毎回一緒にホテルに入っていく、というような状況であれば、不倫の証拠になり得ます。
また、通勤圏内のホテルを頻繁に利用している事実も、不倫の証拠としては有力です。通勤圏内のホテルに出張で何度も宿泊するというのは、常識的に考えてかなり不自然な状況だからです。
不倫を証明するために有力な証拠については、以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
3、ホテル不倫の証拠があれば離婚と慰謝料請求が可能
不倫は法定離婚事由のひとつである「不貞行為」にあたります。
そして、不貞行為は「不法行為」であるため、配偶者とその不倫相手に対し、慰謝料請求が可能です。
では、不貞行為とは具体的にどのような行為のことをいうのでしょうか。
また、配偶者が不貞行為をした場合、どのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか。
(1)不倫は「不貞行為」
民法は、法定離婚事由について下記のように規定しています。
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1 配偶者に不貞な行為があったとき。
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
参考:民法
つまり、夫婦の一方は、配偶者のホテル不倫が明らかになった場合、法定離婚事由である「配偶者の不貞行為」を理由に離婚を求めることができるのです。
ただし、ここにいう「不貞行為」とは「配偶者以外の異性と性的な関係を結ぶ」ことをいいます。肉体関係がなく、単に食事やデートに行っただけでは「不貞行為」と言えませんので、注意が必要です。
離婚を検討するに際して知っておくべきことについては以下の関連記事にて詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
(2)不倫は「不法行為」
不倫は、法定離婚事由であると同時に「不法行為」でもあります。したがって、不倫をされた場合、夫婦の一方は配偶者とその不倫相手に対して、損害賠償請求をすることが可能です。
民法709条は、不法行為による損害賠償について下記のように規定しています。
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
① 慰謝料の相場は数十万円~300万円程度
相手が不倫をした場合に請求できる慰謝料の相場は、
- 相手の年齢
- 職業
- 収入
- 婚姻期間
- 子供の有無や人数
によって異なりますが、概ね、数十万円~300万円程度であることが多いようです。
慰謝料の金額は離婚するかどうかによっても異なり、離婚しない場合は数十万円~150万円程度、離婚する場合は100万円~300万円程度が相場となっています。
② 相場より多くの慰謝料を請求できるケース
下記のような事情がある場合、相場より多くの慰謝料を請求できる可能性があります。
- 不倫期間が長い(一般的には3年以上)
- 不倫が原因で夫婦関係が悪化した
- 配偶者が不倫相手を妊娠させた
- 配偶者が婚外子をつくった
- 夫婦の一方が、配偶者の不倫が原因でうつ病などを患った
慰謝料の相場などについては以下の関連記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
4、ホテル不倫の決着は弁護士が決め手!
夫の様子がおかしいと思い探ってみると、身に覚えのないホテルの領収書を発見した……。
- 不倫の事実は本当なの?
- 本当であるとして、不倫の事実を認めさせるにはどうすればいいの?
- 不倫が事実であった場合、自分は離婚すべきなの?
- 離婚するならば、どんな手続きが必要になるの?
- 慰謝料はもらえる?
配偶者の不倫を疑うと、色々な疑問が次から次へと出てきますよね。
そんなときは、弁護士に相談です。
今の状況を離婚の専門家に相談することで、考えを整理できますし、今後の見通しをつけることもできるでしょう。
「弁護士に相談」というとハードルが高いように感じるかもしれませんが、弁護士への相談が、離婚や慰謝料問題に直結するわけではありません。弁護士にあなたの気持ちを聞いてもらうだけでも、心が少し楽になるはずです。
離婚や慰謝料請求といった具体的な考えがない状況でも、問題ありません。配偶者の不倫問題に悩んでいるなら、弁護士に話を聞いてもらって、自分の気持ちを整理してみませんか?弁護士が、辛い思いをしているあなたの強い味方になってくれるはずです。
まとめ
配偶者が異性とホテルを利用した証拠は、不倫の事実を証明するうえで非常に有効です。
ただし、ホテル利用の証拠をもとに問いつめても、「不貞行為はなかった」、「別々の部屋に泊まった」などと主張し、不倫を否定するケースは少なくありません。
こういった場合に不倫の事実を証明するには、ホテル利用の証拠に加え、
- ホテルの利用時間
- 利用頻度に関する証拠
- 肉体関係があったと推測できるやり取り
- 写真
- 動画
などが必要です。
配偶者の不倫問題で悩んでいるなら、まずは弁護士に相談しましょう。
離婚問題について経験豊富な弁護士に今の気持ちを話すだけでも心が楽になりますし、離婚や慰謝料請求をする場合も、今後の見通しについて的確なアドバイスを得られるはずです。