離婚の際の子どもの取り扱いの関する原則の中に、「兄弟(姉妹)不分離」という原則があるのをご存知でしょうか。
「兄弟(姉妹)分離」とは、離婚の際に子どもが複数人いる状況の場合、夫が兄を、妻は妹を、というように、子どもの親権を分けて帰属させることを希望することです。
その趣旨は、親であればなんとなく理解はできるかと思いますが、一体どうしてそのような原則があるのでしょうか。
このページでは、
- 兄弟(姉妹)不分離の原則について
- 離婚で兄弟(姉妹)分離ができる条件
についてご紹介していきます。
目次
1、離婚における兄弟(姉妹)不分離の原則とは
子どもがいる夫婦の離婚においては、子の利益を考えて行動することが大切なことだとされています。
子の利益には4つの原則があり、その中の一つが兄弟(姉妹)不分離の原則です。
それぞれどういうことか説明いたします。
- 兄弟(姉妹)不分離の原則
- 継続性の原則
- 子の意思の尊重
- 母親優先の基準
(1)兄弟(姉妹)不分離の原則
兄弟・姉妹は一緒に育てる方が子どもにとっては利益があるという考え方です。
情操教育上も兄弟・姉妹一緒に育つ方が良いといわれています。
兄弟・姉妹で同じ環境で感情を共有し、同一体験で喧嘩をしたり、仲直りをしたりすることで社会性も育まれることでしょう。
そのため子の利益のためには兄弟(姉妹)不分離の原則が適用されるのが一般的です。
言葉は難しいですが、兄弟は親の離婚によって引き離されずに同じ親権者の元で育っていくべきだという考え方だと理解してください。
(2)継続性の原則
これまで子どもを監護していた親が子どもを育てていくべきだという考え方です。
親の離婚で子どもの環境を変えずに継続していく方が子どもにとっての利益につながります。
ですかたら、親の都合で転校させたり、知らない土地に引っ越し友達と引き離したりせず、できるだけ子どもの環境を変えない方が望ましいのです。
(3)子の意思の尊重
子どもの意思を尊重した方が子どもの利益につながるという考え方です。
とはいえ、子どもの年齢によって、子どもの話がどこまで信憑性があるかもわかりません。
一般的には10歳以上であれば実際に親の離婚の際に子どもの意見を聴取することになっています。
ただし、子どもの状態などを加味し信憑性を測っていくことになるでしょう。
子どもが15歳以上であれば信憑性が増すと考えられ意思が尊重される傾向にあります。
(4)母親優先の基準
子どもが乳幼児の場合には母親が育てた方が子どもの利益につながるという考え方です。
乳児の場合には母乳での授乳なども母親がいなければ実現しません。
子どもには母親が必要だと考えられています。
2、離婚で兄弟(姉妹)分離ができる条件
離婚で兄弟(姉妹)分離ができないかというと必ずしもそうではありません。
条件によっては兄弟分離ができますのでご紹介します。
ですが、兄弟(姉妹)分離が可能だからといって、子どもの感情を無視した兄弟(姉妹)分離は好ましくありません。子ども優先で行動していきましょう。
(1)協議離婚なら兄弟(姉妹)分離が可能
協議離婚(夫婦の話し合いのみで成立させる離婚)で離婚ができるのなら、兄弟(姉妹)分離が可能です。
夫婦で話し合って、兄弟・姉妹の親権を分ける方法です。離婚の条件は夫婦で話し合い自由に決めることが可能。
ですから、兄弟(姉妹)分離を希望するなら、協議離婚で決着をつける必要があります。
協議離婚でもめてしまうと、離婚したい方は調停を申し立てざるを得ません。
調停へ進んでしまうと、基本的に兄弟(姉妹)不分離の原則を考慮される可能性が出てきてしまいます。
(2)子どもの年齢が15歳以上で意思が尊重される場合
子どもの年齢が15歳以上くらいで、意思をはっきり伝えられるなら、子どもの意思が尊重されます。
もしも、子どもがそれぞれ違う親と一緒にいたいと主張できれば、その意思が尊重され親権は父親・母親それぞれのものになる可能性があります。
(3)長年の別居で親権者が実質尊重される場合
長年の別居で兄弟・姉妹が長年離れて暮らしていた場合には、継続性の原則が適用され兄弟(姉妹)分離が認められる可能性が高いでしょう。
実質の親権者に委ねた方が子どもの利益になると考えられます。
3、親の離婚で兄弟(姉妹)が離された子どもの体験談
では、実際に親の離婚で兄弟(姉妹)が分離された子どもの体験談をご紹介します。
やはり兄弟(姉妹)は分離することで精神面に悪影響を及ぼすことがわかるでしょう。
(1)兄弟(姉妹)が離されて自分の意思で父親の元へ
両親が離婚し自分は母親に、他の兄弟は父親の元に引き取られていきました。
元から母が家を出ていたので、両親の離婚自体はさほどショックではありませんでした。
ですが、勝手に兄弟をバラバラに引き取り育てることを決めた両親を恨みました。
3ヶ月が経過したくらいのところで、兄弟と離れていることが寂しくて気が狂いそうになり自分の意思で父親の元に。
兄弟には親が考える以上の絆があり心の中で支え合っています。親の身勝手で兄弟を分けて育てることはやめて欲しいです。
引用:Yahoo! 知恵袋
(2)親の離婚で大学進学でも悩んでいる
両親の離婚で別々の戸籍になった兄弟はもう兄弟ではないのか?と心を痛めています。
親権は父親が持っていますが、監護権は母親なので母親と暮らしています。
ですが、父親が再婚した場合には、会ったことなくても母親は父の再婚相手なのでしょうか。
両親の離婚で、兄弟とは赤の他人になってしまったのか?一緒に暮らしている母親はもう母親ではないのか?と悩んでいます。
もうすぐ大学進学ですが、大学側から戸籍を求められたらと心配です。
引用:Yahoo! 知恵袋
(3)兄と離れたことで距離ができてしまった妹
両親の離婚で一時的に兄妹が離れてしまい、その後再会しても元の兄妹には戻れなかった体験談です。
5年間の期間を経て兄妹は再会しましたが、子どもの5年間は長いもので、食習慣や金銭感覚、全ての感性がずれてしまいました。もう、元の兄妹関係には戻れません。
しみじみ兄弟は離れるべきではないんだなと感じました。
引用:Yahoo! 知恵袋
4、離婚で兄弟(姉妹)を分離したい理由
親が離婚で兄弟(姉妹)を分離したい理由はどういうケースでしょうか。
ほとんどの場合が親の身勝手な都合のはずです。
当然ですが、親の都合で子どもに悪影響を及ぼしてはいけません。
離婚をしても子どもを安全に育てていくことが最優先です。
もしも兄弟(姉妹)分離を希望するなら、子どもを安全に育てるために必要なケースだけだと理解しましょう。
(1)父親側が跡継ぎが欲しい
兄弟(姉妹)分離を希望する父親の多くは、自分が長男で跡継ぎが欲しいという場合でしょう。
男の子だけでも引き取りたいと願うケースです。
しかし、子ども全員は引き取って育てられないと感じてしまうと、複数いる兄弟(姉妹)の中から跡継ぎだけを引き取りたいと考えます。まさに、親の身勝手なケースといえるでしょう。
(2)離婚はしたいが子どもとは離れがたい
配偶者とはこれ以上婚姻関係は続けられないが、子どものことは愛しているため、離れたくないと願うケースです。
父親の場合には複数人の子どもを育てることは難しく、独り立ちが早くできそうな長子だけでも引き取って一緒に暮らしていきたいと願います。この理由も親の身勝手です。
(3)母親の偏愛がひどく、兄弟(姉妹)一人だけを溺愛している場合
母親の子どもに対する偏愛がひどい場合に、父親が心配になり、愛されていない方の子どもを引き取りたいケースもあるでしょう。
場合によっては、虐待を受けている子どももいるかもしれません。
このケースの場合には子どもの安全のために兄弟(姉妹)分離を考えても仕方がない状態です。
もしくは、父親が子ども全員を引き取れないのかを検討していくべきでしょう。
5、親側の理由を考慮しても兄弟(姉妹)同居を叶える方法
親側の理由を考慮した兄弟(姉妹)同居を叶える方法もあります。
法的に正しい対処法で希望を叶えていってはいかがでしょうか。
(1)親権者と監護権者を別にする
親権の中には監護権も含まれています。
親権は、子どもの財産を管理する権利と、子どもと一緒に暮らし世話をしていく監護権に分かれています。
実はこの権利は分離して、父親と母親が別に持つことも可能です。
どうしても一人の子どもの親権を父親が持ちたければ、親権は父親が持ち監護権を母親が持つことで、子どもが成長するまでは母親と暮らしていけます。兄弟(姉妹)も一緒に暮らしていけることになるでしょう。一人の子どもの戸籍は父親の籍に入ることができます。
ただし、一般的には親権と監護権はセットで扱われるケースが多く、親権争いが長引いて子どもの精神面に良くないと判断された場合など、子どもの利益を阻害すると判断された場合に使われる方法です。
(2)離婚の際に取り決めをしておく
離婚の際に話し合いで取り決めをすることも可能です。
例えば、父親が跡継ぎが欲しいと感じているなら、将来的に跡を継がせることを誓約した上で母親が親権を持ち育てることもできるでしょう。
そうすることで兄弟(姉妹)を分離せずに兄弟仲良く生活を継続することができます。
子どもの戸籍は両親が離婚したとしても家庭裁判所で手続きしない限りは元の戸籍のままです。
ですから、夫婦のやり方で戸籍をどうするかは考えていく必要があります。
(3)面会交流権を設定する
子どもと疎遠になるのが耐えられず兄弟(姉妹)分離をしたいと考えているなら、子どもとの面会交流権を行使していきましょう。
離婚をしても子どもとの縁が切れるわけではありません。
子どもとの面会交流は法律でも認められた立派な権利です。
例え、元配偶者が子どもには会わせないと主張したとしても、子どもが会いたければ自由に親には会えるのです。
離婚の際に面会交流をしたい意思をしっかり伝えて定期的に子どもと接していきましょう。
夫婦の縁が切れても子どもは一生あなたの子どもです。
子どもへの扶養義務もなくなるわけではありません。
6、本当に離婚が最適なのか?検討したい円満調停
まずは子どもの利益を考えて、夫婦間の修復が不可能なのかを今一度検討してみましょう。
冷静な話し合いができない場合には、家庭裁判所に申し立てることで円満調停も可能です。
第三者が間に入って双方の意見を聞き調整していくため話し合いがスムーズに進みます。
できることなら夫婦が和解をし、子どもにとって最善の道を選択するといいでしょう。
7、離婚で兄弟(姉妹)分離にお悩みなら弁護士に相談
離婚や、円満調停、兄弟(姉妹)分離でお悩みなら弁護士に相談してみてください。
あなたの意思を尊重しながら法的な解決策を提案してくれるでしょう。
もしも離婚に至ったとしても、慰謝料や養育費についても弁護士に頼る方が解決しやすくなります。
まとめ
離婚による兄弟(姉妹)分離はできるだけ避けるべき行動です。
親が思うよりも兄弟・姉妹の絆は深く、兄弟(姉妹)を引き離すことで子どもの心に深い傷を負わせる原因につながります。
離婚だけでも子どもは傷ついているでしょう。
できるだけ子どものためにも兄弟(姉妹)は一緒に暮らせるように導いてあげてください。
可能ならば夫婦が和解をし、子どもが傷つかない道を選んであげるといいでしょう。
あなたが子どもにとってよりよい判断をされ、子どもと共に幸せになれることを願います。