DV(ドメスティック・ヴァイオレンス)についての疑問や悩みを抱える方々に向けて、DV判断する難しさ、そして多くの被害者に共通する特徴や相談できる場所についてご紹介します。
自分がパートナーからの傷つけられ方に悩んでいるけれど、それが本当にDVなのか疑問に感じている方も多いことでしょう。夫婦喧嘩や意見の相違がDVとは異なることを理解するために、具体的な事例や相談先の情報をお伝えします。
どこからがDVと判断されるのかを知ることで、自身の状況を客観的に見つめ直す手助けになるかもしれません。
目次
1、DVとはどこから?一人でできるチェックリスト
相手の言動がDVであるかどうかを判断できない方は、次のチェックリストで確認しましょう。
当てはまることがあれば、相手の言動はDVである可能性がとても高いでしょう。
(1)配偶者の様子
相手に次の点が当てはまるかチェックしてみてください。
①身体的DV
- 身体的暴力をふるいやすい加害者は「ちょっと手が出てしまっただけ」、「男が暴力をふるうのはある程度仕方がない」などと言って暴力を軽視しがち
- 不機嫌になると物に当たったり、壊したりする
②精神的DV
- 傷つく暴言をはく
- すぐ嫌味をいう
- すぐ無視をする
- 交際の制限をしてくる
- 侮辱してくる
- 「○○しないと××させない」などの脅しをしてくる
- まくし立ててあなたに発言権を与えない
- 制裁的な理由をつけて配偶者が大切にしているものを壊したり捨てたりする
③経済的DV
- 生活費を渡さない
- 配偶者が働きに出ることを禁止する(その理由にあなたが納得できない)
- あなたの本心からの合意なく借金を負わる
④性的DV
- あなたが嫌がる性行為を強要したり、ポルノビデオを見せたりする
- 避妊の拒否や中絶の強要をする
⑤子どもを利用したDV
- 子どもに暴力をふるったり、おどしたりする
(2)あなたの様子
あなたに次の点が当てはまるかチェックしてみてください。
- 暴力を振るわれるのは自分が悪いからと思っている
- 配偶者の機嫌を損ねるのが怖くて、相手に何も言えなくなっている
2、なぜDVと判断できなくなるのか?
これだけDVが世間に浸透しているにも関わらず、DV被害の判断ができていない人が少なくありません。それにはさまざまな理由が存在します。
(1)蓄積期・爆発期・安定期のループに陥る
DVには蓄積期・爆発期・安定期のサイクルがあります。
蓄積期はパートナーが自分の身の回りのことや、あなたへの支配欲によるストレスを心の中にため込んでいる時期です。
パートナーがささいなことで怒るようになると蓄積期に入ったと推測できます。
爆発期はストレスを我慢できず、暴力行為に走る期間です。
この時期はあなたのパートナーに対する恐怖心と無力感が育つ期間でもあります。
爆発期は多くの場合突発的に訪れるものであり、予測は困難です。
爆発期が終わるとハネムーン期とも呼ばれる安定期が訪れます。
配偶者のストレスが暴力によって発散され、心に余裕が出てくると被害者へ謝罪したり、プレゼントを贈ってきたりすることがあります。
この時期に見られる配偶者の優しさや心遣いに感動して、爆発期に受けた暴力を忘れてしまう被害者が非常に多いのです。
しかし、安定期はあくまで一時的なものであり、またすぐ蓄積期に入る加害者がほとんどです。
蓄積期→爆発期→安定期→蓄積期のループから抜け出せずに暴力をふるい続ける加害者はめったなことでは更生しません。
安定期に入ったからといって、すべてを許してしまうのは大変危険です。
(2)夫婦喧嘩と区別しにくい
夫婦喧嘩や痴話げんかを全くしたことがない夫婦はほとんどいないでしょう。
夫婦喧嘩では感情的になって暴言を吐いたり吐かれたり、ときには手が出てしまう人もいます。
そんな夫婦喧嘩とDVを混同してしまう加害者は少なくありません。
確かに、このふたつは似ているようにも思えますが、本質的に全く違うものです。
夫婦喧嘩は基本的に対等な関係の夫婦が一時的に起こすいさかいですが、DVは力の強い方が一方的に力の弱いパートナーを支配する行為です。
二人の関係性が全く異なるDVと夫婦喧嘩を一緒にしてはいけません。
(3)目に見えない暴力は判断しづらい
肉体的暴力は目に見える被害を受けますが、精神的暴力は心にダメージを受けるため、判断しにくいところです。
自分が言葉の暴力と感じていても、相手に悪気がない場合もありますし、その逆もしかりです。
また、たとえ傷ついても「自分のためにわざと厳しい言葉を投げてくれる」と思いこむ被害者も存在します。
しかし、自分の心が痛むのであれば、それは立派なDV被害です。
自分ひとりで抱え込むことなく周りに相談することをおすすめします。
3、DVを受けている人に多い特徴
DV被害者になりやすい人にはいくつかの特徴があります。
ここでは代表的な特徴を紹介します。自分に当てはまる項目がないかチェックしてみてください。
(1)責任感が強い人
責任感が強い人は「一度結婚したのだから、頑張って婚姻関係を続けなければならない」と考えがちです。
また、「この人は私がいないとダメ」と考えて共依存の関係に陥りやすい特徴もあります。
責任感が強ければ強いほど、暴力が激しくなっても我慢しがちです。
(2)依存心が強い人
恋愛体質で「パートナーがいないと生きていけない」と考えがちな人は、パートナーへの依存心が強く、暴力を受けてもその依存心は消えません。
依存心が強い人は、人との距離感をつかむのが苦手な傾向にあります。
被害者のパーソナルスペースに図々しく入りこんでくる加害者に気づくことができないのです。
(3)優柔不断な人
DV被害者の多くは、他人を強く突き放すことを苦手としています。
暴力をふるう配偶者にも「本当は優しい人なのでは」、「何か事情があるのでは」と考えて優しくしてしまうことが多いのです。
蓄積期や爆発期に別れを決意しても、ハネムーン期に入ると決心が揺らいでしまう人は珍しくありません。
(4)愛情と同情を一緒にしてしまう人
暴力をふるうパートナーを憎んでも、心の底では「本当は好きでいたい」と考える加害者がいます。
これは同情心を生み出すもとです。
暴力をふるってくる配偶者を「ストレスの溜まっているかわいそうな人」と認識し、その責任は自分にあると考える加害者は、同情と愛情を一緒にする傾向があります。
(5)自己評価が極端に低い人
自分に自信がない人は、パートナーを失ったら自分を必要としてくれる人はいないという強迫観念に囚われがちです。
そのため、暴力をふるってくる配偶者をなかなか断ち切ることができず、共依存の関係に陥ってしまうことがあります。
(6)子どもがいる人
子どもを利用して家庭内暴力をふるう加害者は少なくありません。
離婚を考えていたとしても、子どもの教育や将来を考慮して、離婚に踏み切れない被害者もいます。
DV加害者も相手の弱みを握っていることで、気を大きくして過激な暴力をふるいがちです。
(7)経済的自立が難しい人
配偶者の収入のみで生計を立てていると、どうしても稼いでくる側の立場が強くなってきます。
その立場をいいことに「誰が養ってると思っているんだ」、「誰のおかげで生きていけると思うんだ」などと暴言をふるう加害者も存在します。
また、パートナーの就業を禁止し、経済的に不利な立場に追いやることで優位に立とうとする加害者も少なくありません。
4、自分がDVを受けているのかわからないなら迷わず相談を
自分がDV被害者かどうかを判断できない人や、家庭内暴力の悩みを聞いてほしいと考えている人は、まず公的機関や民間の相談窓口に相談してみてはいかがでしょうか。解決の糸口を見つけられるでしょう。
(1)配偶者暴力相談支援センター
各都道府県には配偶者暴力相談支援センターが設置されています。
また、女性相談センターや駐在室が置かれている都道府県も目立ちます。
施設によって異なりますが、だいたいどの施設でも面接や電話で相談可能です。
センター内には弁護士によるDV専門電話相談もあるので、真剣に離婚を考えている人は利用してみるといいでしょう。
(2)その他の公的相談窓口
配偶者暴力相談支援センター以外では、警察署や法務局、法テラスなどの公的機関に直接DV被害を訴えることができます。
警察にはストーカーや性犯罪被害などの専門窓口があるので、直接行ったり、電話相談することもできます。
また、DV被害者ホットラインや男女平等参画推進センターなどもDV被害相談を受け付けています。
(3)民間の相談窓口
DV被害を相談できる窓口は、公的機関だけではありません。
被害者サポートセンターやフェミニストサポートセンター、都道府県別弁護士会の女性に対する暴力被害相談など、相談窓口はたくさんあります。
民間の相談窓口のいいところは公的相談窓口とは違って、24時間対応可能な施設があるところです。
性暴力救援センターでは緊急医療処置が必要となった場合、サポートしてくれるので大変心強い存在といえるでしょう。
お住まいの都道府県の公式サイトから、認定を受けている相談窓口を探し、いつでも相談できるように連絡先を控えておくことをおすすめします。
(4)離婚を考えているなら弁護士へ
DVを理由に離婚を考えているのであれば、ここまでに紹介した公的機関や民間の相談窓口ではなく、弁護士に直接相談することをおすすめします。
法律の専門家である弁護士がDVの被害状況や被害者の心情を伺った上で、離婚に必要な手続きを説明してくれます。
離婚をするには経済的独立が必要不可欠です。
弁護士は、離婚の手続きだけを単体で進めるのではなく、経済的な問題の解決などを含めた離婚にあたってのトータルアドバイスをしてくれるはずです。
DV防止法やDVから避難できるシェルターなど、DV被害者の味方になる法律や施設の存在も紹介してもらえるでしょう。
また、弁護士に離婚調停を依頼すると、手付金や報酬などの費用が発生しますが、DV被害者であれば慰謝料を受け取れる可能性が高く、そこから報酬を支払うことができます。
手続きはすべて弁護士が代行してくれるので、配偶者と顔を合わせる心配や、暴力を振るわれる恐れもありません。
相談窓口で話を聞いてもらってから、弁護士に依頼するのもひとつの手です。
何らかの迷いがある場合は、窓口で自分がDV被害者かどうかを客観的に判断してもらい、それから弁護士に相談するといいでしょう。
DVとはどこからかに関するQ&A
Q1.なぜDVと判断できなくなるのか?
- 蓄積期・爆発期・安定期のループに陥る
- 夫婦喧嘩と区別しにくい
- 目に見えない暴力は判断しづらい
Q2.DVを受けている人に多い特徴とは?
- 責任感が強い人
- 依存心が強い人
- 優柔不断な人
- 愛情と同情を一緒にしてしまう人
- 自己評価が極端に低い人
- 子どもがいる人
- 経済的自立が難しい人
Q3.DVとはどこから?
身体的DV
- 身体的暴力をふるいやすい加害者は「ちょっと手が出てしまっただけ」、「男が暴力をふるうのはある程度仕方がない」などと言って暴力を軽視しがち
- 不機嫌になると物に当たったり、壊したりする
まとめ
DVは目に見えない暴力が多いため、どこからDVと呼んでいいのか判断しにくいところです。
しかし、相手が暴力と思っていない行為でも、あなた自身の体や心が激しく傷ついているのであればそれは立派な家庭内暴力です。
自分ひとりではDVを解決できそうにない、誰かに助けてもらいたいという人は思い切って弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
法律のプロである弁護士からDVを解決できる最善かつ最良の手段を教えてもらえるでしょう。