今回の記事では、離婚後の手続きに関する情報を詳しく説明し、手続きをスムーズに進めるためのポイントをご紹介いたします。
経験豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が監修し、以下の内容に焦点を当てて解説します:
・離婚後の手続きに必要な書類と離婚後の姓に関する変更手続き
・市区町村役所の戸籍課(住民課)での手続き方法
・市区町村役場の健康保健課での手続き手順
・(子供がいる場合の)市区町村役場の児童課での手続きガイド
・その他の生活に関連する必要な手続き
これらの離婚後の手続きについて、場所ごとに順を追って詳細に説明していきます。ご参考にして、手続きをスムーズに進めるお手伝いをさせていただきます。
離婚後の手続きや必要書類の一覧表は、以下から無料ダウンロードしてください。
目次
1、離婚後の手続きの前に…事前に用意しておく書類
離婚後の手続きに必要な書類をまとめました。
書類名 | 取得・手続き場所 | 備考 |
離婚後の自分の新しい戸籍全部事項証明書(謄本) | 離婚後新しい戸籍を作成する市区町村(郵送で取り寄せ可) | 離婚後発行に2日〜2週間ほどかかる可能性有り |
自分が除籍された後の子どもの戸籍全部事項証明書(謄本) | 子どもの戸籍のある市区町村(郵送で取り寄せ可) | 離婚後発行に2日〜2週間ほどかかる可能性有り |
年金分割のための情報提供請求書 | 年金事務所(インターネットでダウンロード可能) | 発行に3〜4週間かかる可能性有り |
(義務教育の子どもが転校する場合) ・在学証明書 ・教科書受給証明書 | 現在在籍する学校 | |
収入証明書(課税証明書) | 証明してほしい年度の1月1日に住民票があった住所地の役場(郵送で取り寄せ可) | ・申請が1月〜6月⇒前々年の所得証明書 ・申請が7月〜12月⇒前年の所得証明書 |
健康保険・厚生年金保険の資格喪失証明書 | 元配偶者の勤務先 | ・元配偶者に手配を依頼する必要有り (元配偶者の扶養に入っていた場合のみ) |
(普通自動車の名義変更をする場合) ・譲渡証明書 ・委任状 ・元配偶者の印鑑証明書 | 譲渡証明書⇒ネットからダウンロード可能 | ・元配偶者に記載してもらう箇所有り |
(軽自動車の名義変更をする場合) 自動車検査証記入申請書 | ネットからダウンロード可能 | ・元配偶者に記載してもらう箇所有り |
新しい姓の印鑑 | 印鑑ショップ、ネットでの購入も可能 | ・認印は手続の際は常に持参 ・印鑑登録の際には実印を持参 |
2、離婚後の手続きポイント①~家庭裁判所で離婚後の姓に関する手続き
離婚届を提出しただけで氏が旧姓に戻るのは妻のみです。子どもがいる場合は子どもの氏を変更する手続きをしなくてはいけません。
また、婚姻時の元配偶者の姓を名乗り続ける場合も手続きが必要です。
(1)離婚後も元配偶者の姓のままでいる場合
婚姻時の元配偶者の姓を名乗り続ける場合に必要な手続きです。
①手続きする場所
市区町村の戸籍課
②必要書類
- 離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2の届)
- (本籍地以外に届け出る場合)届出人の戸籍謄本
- 届出人の印鑑(シャチハタ以外、認印可)
こちらの手続きを行うにあたっては、自分を筆頭者とした新しい戸籍を作ることになります。つまり、仮に再婚→離婚になったとしても元の戸籍には戻れなくなり、旧姓に戻ることができなくなりますので注意が必要です。
また、届出できる期間は基本的に離婚から3ヶ月以内です(3ヶ月を過ぎてからこの届出を行う場合には裁判所の許可が必要となります)。
(2)旧姓に戻して子どもも自分と同じ姓にしたい場合
①子の氏変更許可の申立てとは?
子どもの氏も自分の氏と同じにしたい場合は子の氏変更許可の申立ての手続きが必要となります。
この手続きは子どもが15歳以上の場合は子ども本人が、15歳未満の場合は親権者が行います。
②手続きをする場所
申立人の住所地を管轄する家庭裁判所
③必要書類
- 子どもの戸籍全部事項証明書
- 父・母の戸籍全部事項証明書(離婚の記載のあるもの)
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(裁判所によって異なるので金額は要確認)
- 届出人の印鑑(シャチハタ以外、認印可)
(3)旧姓に戻り子どもを自分の籍に入れたい場合
旧姓に戻る場合は、妻は結婚前の籍(親の戸籍)に戻るか、自分を筆頭者とした新しい籍を作るか選択する事ができます。
なお、この手続きについても子どもが15歳以上の場合は子ども本人が、15歳未満の場合は親権者が行います。また、子の氏名変更手続きが完了したあとに行う必要があります。
①手続きする場所
市区町村の戸籍課
②必要書類
- 入籍届
- (本籍地以外に届出をする場合)子の戸籍全部事項証明書および入籍する親の戸籍全部事項証明書
- 届出人の印鑑(シャチハタ以外、認印可)
- 子の氏変更許可審判書謄本
3、離婚後の手続きポイント②~市区町村役所の戸籍課(住民課)で行う手続き
(1)住民票の移動手続き
- 住居が変更になる場合は以下の書類で住民票を移しましょう。同じ市区町村内の引越しの場合→転居届
- 別の市区町村へ引越しする場合→以前住んでいた市区町村に転出届を提出。新しい市区町村に転入届を提出
(2)(異なる市区町村に引越しする場合)転出届
今の住所と異なる市町村へ引っ越しをする際には以下の書類が必要です。
- 身分証明書(※)
- 離婚届受理証明書
※離婚後旧姓に戻る方で、まだ身分証明書の名義の変更ができていない場合でも事情を話せば柔軟に対応を取ってくださることも多いようです。
(3)世帯主の変更
世帯主が変更になる場合には、世帯主変更届を提出しましょう。
(4)新しい印鑑の用意と印鑑登録
- 名字が変わった場合
- 住所が変わった場合
このような場合には、新たに実印・認印・銀行印が必要となります。
実印ができたら印鑑登録を行います。印鑑登録に必要な書類は以下の通りです。
- 印鑑カード(お持ちだった場合)
- 新しい印鑑(実印)
基本的な手続きは認印で足りることが多いですが、実印は自動車の名義変更の際にも使います。認印は使用する機会が多いので、手続きに出かける際には常に持ち歩いておくようにしましょう。
(5)その他の公的身分証の書き換え
そのほか公的な身分証(住基カードやマイナンバーカード)をお持ちの方は書き換えを早めに済ませましょう。
4、離婚後の手続きポイント③~市区町村役場の健康保健課で行う手続き
次は市区町村役場の健康保険課で行う手続きを紹介していきます。
(1)国民健康保険の加入手続き
①手続きが必要な場合
離婚により、「扶養家族ではなくなったとき」に手続きが必要となります。
すでに自分が働いていたり、新しく仕事を始めたりする場合、会社の社会保険に加入することもできますので会社の人事課に問い合わせましょう。なお、その際に子どもも自分の扶養家族として加入出来るようにすれば、市区町村役所での手続きは不要です。
②必要書類
- 離婚届受理証明書
- 健康保険証
- 健康保険資格喪失証明書
(2)国民年金の変更手続き
①手続きが必要となる場合
離婚前に元配偶者の厚生年金に扶養家族として加入していた場合には、国民年金に加入する必要があります。
すでに自分が働いていたり、新しく仕事を始めたりする場合厚生年金に加入できれば、市区町村役所での手続きは特に必要はありません。
②必要書類
- 年金手帳
- 離婚届受理証明書
5、離婚後の手続きポイント④~子どもがいる場合に市区町村役場の児童課で行う手続き
次は子どもがいる場合に市区町村役場の児童課で行う手続きについて説明していきます。なお、「離婚後の生活の不安を解消して幸せになるために知るべき5つのこと」も併せてご参照ください。
(1)児童扶養手当の手続き
①受給資格が認められる場合
受給資格が認められる条件は以下の通りです。
- 夫婦が離婚したこと
- 子どもが18歳になって最初の3月31日を迎えるまでであること
※所得制限があります。また、生活保護を受けていないことが必要です
②必要書類
- 子の入籍後の戸籍全部事項証明書
- 住民票の写し(マイナンバーの記載があるもの)
- 申請者名義の預金通帳、キャッシュカード(振込口座の分かるもの)
- 年金手帳
- 申請者の所得証明書(課税証明書)(※)申請が1月〜6月⇒前々年の所得証明書
- 申請が7月〜12月⇒前年の所得
※申請の時期によって、審査の対象となる所得の年度が違うので所得証明書もそれに合わせて発行が必要です。
(2)ひとり親家庭の医療費助成
ひとり親家庭の医療費助成とは、ひとり親家庭の親子が健康保険証で受診した場合に、支払う医療費・薬代が安くなる制度です。
①受給資格が認められる場合
受給資格が認められる条件は以下の通りです。
- 夫婦が離婚したこと
- 子どもが18歳になって最初の3月31日を迎えるまでであること
※所得制限があります。また、生活保護を受けていないことが必要です
②必要書類
- 自分が除籍された後の子どもの戸籍全部事項証明書
- 健康保険証(母と子それぞれ必要)
- 住民票の写し
- 申請者の所得証明書(課税証明書)(※)申請が1月〜6月⇒前々年の所得証明書
- 申請が7月〜12月⇒前年の所得
※申請の時期によって、審査の対象となる所得の年度が違うので所得証明書もそれに合わせて発行が必要です。
(3)母子家庭のための住宅手当手続き
母子家庭になった場合に住宅手当は手続きできる可能性があります。
制度を利用するための条件や手当ての金額は市区町村ごとに異なりますので、事前に電話で問い合わせることをおすすめいたします。
(4)JR通勤定期券の割引
母子家庭、または父子家庭では手続きすることでJR通勤定期券の割引を受けることができます。
①手続きをする場所
まずは市区町村の役所の児童課で手続きします。その後、JRの窓口に行って定期券を購入します。
②必要書類
- 児童扶養手当証書
- 印鑑
- 写真(最近6ヶ月に撮影したもの、正面上半身、縦4cm×横3cm)
6、離婚後にその他必要な手続き
(1)運転免許証の書き換え
離婚により、本籍や姓、住所が変更したときには書き換えが必要です。
運転免許証は身分を証明するものになり、他の手続きで使う可能性もあります。
お持ちの方は新しい戸籍が出来たら早めに手続きを行っておくことをおすすめ致します。
①手続きをする場所
住所地を管轄する警察署
②必要書類
- 住民票(本籍が記載されているもの)
- 現在の運転免許証
- (他の都道府県から転入する場合)写真(タテ3.0cm×ヨコ2.4cm)
(2)パスポートの変更手続き
本籍地・住所・名字が変更したときはパスポートの変更手続きが必要となります。なお、子どものパスポートも書き換えをする場合は一度に手続きをすると戸籍全部事項証明書は1通ですみます。
①手続きをする場所
住所地を管轄する旅券申請窓口
※インターネットで「市区町村名+旅券申請窓口」と検索して調べてみましょう。
②必要書類
- 新しい戸籍全部事項証明書
- 現在のパスポート
(3)預金通帳の氏名や住所変更
離婚すると預金通帳の氏名や住所変更等も必要となります。金融機関によって異なる可能性があるので、事前にお持ちの預金通帳の金融機関の支店にお問い合わせをすることをおすすめします。
①手続きをする場所
預金通帳を持っている金融期間
②必要書類
- 通帳
- 取引印鑑
- 新しく登録する印鑑
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 住民票の写し
- 個人番号カード
など。
※詳しくは事前に金融機関に確認するようにしましょう。
(4)年金分割の手続き
元配偶者の給料の方が多い場合は、婚姻期間中に給料に応じて天引きされている年金保険料を将来的に分割し受け取ることができるという「年金分割」の手続きを確実に行っておきましょう。
分割の対象になるのは、厚生年金と共済年金部分のみなので、元配偶者が婚姻期間中にずっと自営業だったというような場合、手続きはできません。
①手続きをする場所
年金事務所
②必要書類
- 調停等で決定された謄本(協議離婚の場合は年金分割の合意書)
- 双方の戸籍謄本
- 年金手帳
※年金分割の手続きについて詳しくは「離婚時の年金分割をできるだけ多く獲得するための全手順」をご参照下さい。
(5)郵便物の転送手続き
離婚のタイミングで引っ越ししたら、郵便物の転送手続きが必要となります。
①手続きをする場所
郵便局
※最寄りの郵便局や時間が無い場合はネットでも行うことができます。
https://welcometown.post.japanpost.jp/etn/index_sp.html
②必要書類
- 離婚届受理証明書(写し)
- 身分証明書
(6)自動車の名義変更手続き(元配偶者名義の普通自動車を名義変更する場合)
元配偶者から自動車を譲り受けることになった場合に手続きが必要となります。
念のためご確認いただきたいのが「車の名義が誰になっているか」ということです。①手続きをする場所
離婚後の住所地の管轄の陸運支局
※インターネットで「市区町村名+陸運支局」と検索して探してみましょう。
②必要書類
- 自動車検査証
- 印鑑証明書(新・旧所有者のもので、発行後3ヶ月以内のもの)(※)
- 印鑑(実印)
- 旧所有者からの委任状(※)
- 譲渡証明書(※)
- 自動車保管場所証明書(新使用者のもので、証明の日から40日以内のもの)
- 使用者の住所を証する書面(住民票)
- 自動車税・自動車取得税申告書
- 自動車納税証明書
- 自賠責保険証明書
- 移転登録申請書
※委任状と譲渡証明書は元配偶者に記載してもらう必要があります。事前に書類をダウンロードして記載を済ませておきましょう。
「国土交通省のホームページ」からダウンロードができます。
元配偶者の印鑑証明書も必要になりますので、手配をしておいてもらいましょう。
(7)自動車の名義変更手続き(元配偶者名義の軽自動車を名義変更する場合)
軽自動車の場合、必要書類は基本的に普通自動車の場合と同じですが、手続きする場所が「離婚後の住所地の管轄の軽自動車検査協会」となります。
(8)電気、ガス、電話などライフラインの契約情報変更手続き
引っ越しや名義が変更となった場合に手続きが必要です。
①手続きをする場所
各契約会社(電話での手続も可能)
②必要書類
- お客様番号がわかる書類(電気料金払込用紙など)
- 本人確認書類(12)クレジットカードの登録情報変更手続き
離婚に伴い、住所・名字・引き落とし口座の情報が変更になった場合に手続きが必要となります。
クレジットカード会社によって必要書類は変わってきますので、手持ちのカードの会社に電話で確認をしましょう。
離婚後の手続きに関するQ&A
Q1.離婚後も元配偶者の姓のままでいる場合の必要書類とは?
- 離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2の届)
- (本籍地以外に届け出る場合)届出人の戸籍謄本
- 届出人の印鑑(シャチハタ以外、認印可)
Q2.市区町村役所の戸籍課(住民課)で行う手続きとは?
- 住民票の移動手続き
- (異なる市区町村に引越しする場合)転出届
- 世帯主の変更
- 新しい印鑑の用意と印鑑登録
- その他の公的身分証の書き換え
Q3.旧姓に戻す場合で子どもも自分と同じ姓にしたい場合の必要書類とは?
- 子どもの戸籍全部事項証明書
- 父・母の戸籍全部事項証明書(離婚の記載のあるもの)
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(裁判所によって異なるので金額は要確認)
- 届出人の印鑑(シャチハタ以外、認印可)
まとめ
大変な手続きがたくさんあるように思われるかもしれませんが、「1、まずは離婚後の手続き一覧表をダウンロード」でダウンロードできる表を利用してチェックしながら手続きを進めてみてください。
今回の記事が、離婚後の手続きをスムーズに効率よく済ませ、新たな人生のスタートを切るための参考になれば幸いです。