日照権侵害はどんな場合に認められる?過去の裁判例から解説

日照権 侵害

日当たりの良さに惹かれ、せっかくマンションを購入したのに現在住んでいる家のすぐそばにマンションが建つことになった。これでは、日当たりが悪くなってしまい、洗濯物の乾きが悪くなるだけで無く、精神的にも暗い気持ちになってしまうのではないか不安だ。

この記事を読まれている方の中にはそういった不安をもたれ、日照権侵害を理由に何か抗議や法的な主張ができないかと考えられている方はいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、ここでは日照権について解説しつつ、過去の裁判例なども踏まえて日照権侵害がどのような場合に認められているのかについて解説していきます。

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1、日照権とは?

日照権とは?

日照権侵害がどんな場合に認められるかというお話の前にまずは、日照権がそもそもどのような権利なのかという点から解説していきます。

(1)日照権とはどんな権利か

日照権と聞くと何となく日当たりが悪くなったりした場合に主張される権利というイメージをもたれている方や、抽象的なイメージはわくけど、具体的な内容はよく分からないという方が多いのではないでしょうか。

日照権というのは、実は明示に法律で名前が与えられた権利ではありません。
そのため、具体的なイメージやどのような権利なのかという点についてよく分からないという方が多いのも無理は無いでしょう。

元々は憲法13条に定める幸福追求権の一つとして認められたものであります。

そんな日照権は、個別の法律において種々の保護がなされております。

(2)日照権と関係する法律について

日照権の内容について定めている法律は建築基準法になります。
こうした建築基準法で定められる以前は、冒頭でも少し触れましたが憲法13条の幸福追求権を根拠として保障されていました。
新しい人権として憲法を根拠に裁判例などで認められた後に建築基準法の中で具体的な権利として認められていったという流れになっています。

(3)建築基準法と日照権について

建築基準法の中では日照権は建物を建てるに当たって以下のような規制をすることによって、隣地の住人の日照権を保護しています。

  • 斜線制限(北側斜線):斜線制限というのは、建物と建物の間の距離や空間を確保する制限です。簡単に説明すると、隣地の境界線から5mまたは10mの高さから一定の角度(横1:縦25)で斜めに見上げた内側の範囲内にだけ建物を建てることができるという制限になります。こうすることで、隣地の建物の高さや距離を制限し、日当たりを確保することで日照権を保護しているのです。
  • 日影規制:日影規制というのは、中高層の建物によって隣地に生じる日影を敷地の外に一定時間以上生じないように建物の形態を規制するものになります。基準となる時間は冬至の日が基準となります。法律だけで無く地方公共団体毎の条例によって細かい規制内容が定められているケースが多いです。規制の対象になるか否かが用途地域毎に異なっております。ですので、日照権侵害を主張するに当たってはまずは隣地にある建物がこうした建築基準法の制限を満たした適法な建物かという点がまず問題になります。

第1種・第2種低層住居専用地域

①地上階数3階以上、軒高7m以上の建物

商業地域、工業地域、工業地域以外の用途地域

②高さ10m以上の建物

用途地域の制限の無い地域

①または②もしくは地方公共団体の定めによる

2、日照権侵害はどんな時に認められる?

日照権侵害はどんな時に認められる?

では、適法な建物であれば常に日照権侵害は認められないのかというと、そんなことはありません。
前述のような建築基準法の規制を満たしていても、隣地への日当たりを遮蔽している程度によっては日照権侵害を理由とした請求が可能な場合があります。

(1)不法行為と受忍限度について

日照権侵害を理由として隣地の建物所有者などに損害賠償請求などを行う場合、法的な根拠となるのは不法行為(民法709条)となります。

民法709条は、第三者から権利侵害などを受けた場合に損害賠償請求を行うための根拠として用いられるものになります。

さて、この不法行為ですが名前のとおり、一般的には「不法」つまり違法な権利侵害を理由に損害賠償請求をするものになります。
そうすると、建築基準法を守って建てられた建物は違法な侵害では無いとも考えられます。

しかし、適法な行為であっても継続的に続けば、違法な侵害と同様に深刻な被害をもたらすケースがあります。

こうした発想に基づき、生まれたのが受忍限度という考え方です。
つまり、適法な行為であれば人は社会生活を送っていくためにある程度我慢して生活をする(受忍する)必要があるが、一定の限度を超えたもの、つまり受忍限度を超えたものについては違法な侵害として取り扱うという考え方です。

この受忍限度論は公害による被害などの場面で用いられる考え方でしたが、現在では様々な場面で用いられています。

(2)受忍限度と日照権侵害について

そんな受忍限度の考え方ですが、日照権侵害の場面でも裁判例などで用いられています。
つまり、隣地の建物が日影規制や斜線規制を満たしていたとしても、日当たりの悪さが受忍限度を超えていると評価される場合には、不法行為を理由に損害賠償請求などが認められる場合があるというものです。

受忍限度を超えているかという判断にあたっては、以下のような事情が考慮要素とされています。

  1. 被害の程度(遮光の程度や時間など)
  2. 住んでいたのは原告と被告のいずれが先か
  3. 隣地の建物は遮光に対して何か配慮がされているか
  4. 隣地の建物は建築基準法の制限を満たしているか
  5. 問題になっている用途地域は何か

などの様々な要素が考慮されます。

なお、ご注意頂きたいのは受忍限度という考え方は法律上、これを超えたら受忍限度を超えるという数値などが具体的に決められているわけではないので、実際に受忍限度を超えているかどうかという判断はケース毎の判断となります。

3、日照権侵害を理由にどんなことが請求できる?

日照権侵害を理由にどんなことが請求できる?

では、日照権侵害を理由にどのような請求が認められるでしょうか。
不法行為を理由に請求を行う場合に一般的には損害賠償請求や差し止め請求などが考えられます。
では、このような請求は日照権侵害でも認められるのでしょうか。

(1)損害賠償請求について

日照権侵害を理由に生活環境が悪化したことなどを理由に精神的苦痛を理由とした損害賠償請求をすることが考えられます。

これについては日照権侵害が争われた事件では一般的に請求が行われており、後述するような差し止め請求より認められやすい傾向にあります。

(2)差し止め請求について

では、日照権侵害がされることを理由に工事の差し止め請求などが認められるでしょうか。
これについては認める裁判例もありますが、損害賠償のみを認め、差し止め請求は認めないという判断をした裁判例もあるなど判断がケース毎に分かれています。

ですが、損害賠償と比較して、一般論として差し止めの方がハードルが高いと考えられています。
というのも、やはり工事を開始しているものについて差し止めを認めると、建設を行っている会社などに大きな影響を与えることになります。

そのため、差し止めは損害賠償請求よりハードルが高くなると考えられています。
しかし、実際に差し止めを認めた裁判例もあるため、必ずしも認められないとは言えない点には留意して頂きたいと思います。

4、実際の事例から学ぶ~日照権侵害が問題になった事例について〜

実際の事例から学ぶ~日照権侵害が問題になった事例について〜

さてここからは日照権侵害が実際に問題になった事例をご紹介していきます。
日照権侵害に悩まれている方はこうした事例を参考にしていただければと思います。

(1)裁判例1:差止めを認めた事例(名古屋地裁平成6年12月7日)

建築の差し止めを認めた事例としては、名古屋地裁平成6年12月7日があります。 

<事例の概要>

  • 住居地域に居住している原告らの隣地に高さ10m以下の鉄骨3階建ての住宅建築が計画された
  • 計画された住居は建築基準法に違反するものではなかった
  • 仮に建築が完了した場合、日照権侵害がされる時間が長時間となることが想定された

<裁判所の判断>

建設が予定されている地域は、低層住宅が建っている地域であることや、仮に建築を認めると日照侵害の程度が高いことを理由に差し止めを認めた。

この事例は被害の程度や、土地の状況などを考慮して差し止めを認めた事例になります。

(2)裁判例2:差し止め請求を認めた事例(仙台地裁平成7年8月24日決定)

マンションの住人からの建築工事の差し止め請求が認められた事例として、仙台地裁平成7年8月24日決定があります。

<事例の概要>

  • 業者が市内を一望できる高台にマンションを建て、羨望と採光の良さを売り物にして販売を行い、こうした点を業者の販売担当者も売り文句として販売をしていた
  • 販売に当たっては、隣地にマンションができる可能性を否定しており、購入者もこうした販売文句を信用して購入していた
  • その約2年後、同じ業者が隣地の土地を購入し、マンションを建築する計画を立て、販売を行い完了した
  • マンションを購入した住人たちが、隣地のマンション建築の差し止めを求めた

<裁判所の判断>

隣地に建てようとしているマンションは建築基準法などの規制を守っているが、販売の経緯を考慮した場合には、業者は買主らに対して日照を遮るような建物を建てないという信義則上の義務があったことを理由に差し止めを認めた。

この事例は日照権侵害が直接の理由にはなっていませんが、販売業者の販売方法に着目し、業者には日照を遮るような建物を建てることが許されないことを理由に差し止めを認めた事例です。

販売業者に日照等について保証するような内容の説明を受けたような事例で参考になる場合のある事例と言えます。

(3)損害賠償を認めた事例(最高裁昭和47年6月27日)

隣接する土地の住人が2階の増築を行ったことについて日照権侵害を理由に損害賠償請求を認めた事例として最高裁昭和4727日があります。 

<事例の概要>

  • 被告が2階部分を増築したことにより、隣接する住人の住宅は日中ほとんど日光が指さない状態になった
  • 被告の増築工事は建築基準法違反であり、地方自治体から工事停止命令などを受けていた

<裁判所の判断>

居宅の日照、通風は快適で健康な生活に必要な生活利益であり、加害者による権利の乱用により日照、通風を妨害したような場合には不法行為に基づく損害賠償請求を認めるのが相当であると判断し、原告の住宅に日中ほとんど日光がささなくなってしまう点や、被告の増築は違法な行為であったことを理由に不法行為に該当すると判断した。

この事例は被害の程度が重いことや被告の増築行為が違法な行為であったことがポイントになります。
被害の程度が大きいことは現在の裁判例でも重視される要素となっています。

(4)損害賠償が認められなかった事例(大阪地裁平成17年9月29日)

受忍限度を超えないことを理由に損害賠償請求を認めなかった事例として大阪地裁平成17年9月29日があります。

<事例の概要>

  • 隣接する南側にある土地にアパート建設がされた
  • 隣地の1階部分に住んでいる住民が日照権侵害を理由に損害賠償請求を求めた

<裁判所の判断>

日照が侵害されていることは認められるが、日照が制限される可能性があることを理由に1階を購入したことや日照侵害の程度が軽微であることを理由に、受忍限度を超えるものではない事を理由に損害賠償請求は認められない。

この事例でポイントとなるのは、日照制限があり得ることを認識しながら1階部分を購入したことや日照権侵害の程度が軽微であることです。

5、日照権侵害と考えたらどのように行動したら良いか

日照権侵害と考えたらどのように行動したら良いか

では、実際に日照権侵害がされそうな場面ではどのように行動したら良いのでしょうか?

(1)土地の所有者や建設業者と交渉する

何事もそうなのですが、法的な問題において裁判というのは最終手段です。
裁判を起こすと強制的な解決を図ることができますが、その分時間もかかってしまいます。
そのため、まずは当事者間での話し合いや交渉で解決が図れるのであれば、最も早い解決方法となります。

そこで、まずは土地所有者や工事を行っている工事業者と話をするのが良いでしょう。
その際、やはり個人で話をしに行っても相手にされない可能性はありますから、マンションに住んでいる場合にはマンション内の管理組合などを通じて住民全体で声を上げる、または近所の人たちと声を上げるといった方法が考えられます。

(2)行政へ相談する

所有者や工事業者との交渉が難しい場合には、行政へ相談するといった方法が考えられます。
特に建物を建てるにあたっては建築確認という行政の確認を経ることが必要となるため、こうした建築確認を出すに当たって、行政が近隣の住民への説明会や理解を得ることを求めるという事例は多く見られます。

そのため、行政に相談するというのは実際の建築を一定期間ストップさせるような効果を持たせるケースもあるため、非常に効果的です。

(3)弁護士へ相談する

土地の所有者や工事業者と交渉する場合でも、行政へ相談に行く場合でも、やはり個人で交渉に当たるというのは中々難しいものです。
そこで弁護士へ相談を行い、こうした交渉などについて任せるというのは非常に有効です。

工事業者もやはり弁護士が出てくればそれなりの対応をせざるお得ませんし、専門家として法的な知識を有した弁護士に想起に相談を行うことでどのように行動をすべきかという点について有効なアドバイスを得ることができるというのもこうした方法の大きなメリットといえます。

まとめ

このように日照権侵害については、ケース毎に判断が分かれており損害賠償請求が認められるかどうかについては非常に微妙な判断となります。
特に差し止めを求める場合には、建築工事がどの程度進んでいるかなども考慮要素となるため、早急な対応が求められます。

本記事が、日照権侵害を理由に損害賠償請求や差し止め請求などを考えている方々のご参考になれば幸いです。

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