目を覆うような動物虐待が報道されることが多くなりました。
動物虐待は違法です。動物虐待の実際に出くわしたら、毅然とした対応をとるようにしましょう。
しかし、それには何点か注意点があります。
そこで今回は、
- 動物虐待の定義や実態
- 動物虐待に関する法律
- 動物虐待を通報する際の注意点
等について、ご説明したいと思います。ご参考になれば幸いです。
動物愛護法に関して詳しく知りたい方は以下のページもご覧ください。
1、動物虐待とは?
近年急増し続けている動物に対する虐待行為。
ここでは動物虐待とはどのような行為を指しているのかを考えていきたいと思います。
(1)動物虐待とは?
動物虐待とは動物に不必要な苦痛を与える行為を指します。
言い換えると、動物の心身に肉体的な苦痛・精神的な苦痛・多大なストレス等を与える行為のことです。
(2)動物虐待の2つのタイプ
動物虐待には作為と不作為の2つのタイプがあります。
①意図的(積極的)虐待=やってはいけない行為を行う・行わせる
意図的(積極的)虐待とは、動物を殴ったり蹴ったりするなどのやってはいけない行為を行ったり、動物同士を悪意をもって戦わせたりするタイプの虐待です。
②ネグレクト=やらなければならない行為をやらない
ネグレクトとは、動物にエサを与えなかったり、必要な世話を行わない「不作為」で動物を虐待する行為です。
このように、積極的に動物に加害行為を行うだけではなく、必要な世話をしなという「不作為」も虐待行為に該当するので注意が必要です。
2、動物虐待の実態
ここでは、動物虐待の現状をみて行きましょう。
(1)動物虐待の実態
動物虐待の件数は年々増加しています。
2018年の検挙件数は全国で84件と、6年連続で前年を上回って推移しています。
(2)近年の動物虐待の特徴
近年の動物虐待は、冒頭でも触れたように、動物虐待の様子を動画に撮り、それをインターネットで発信するなど、より悪質化している傾向にあります。
たとえばこの事件。
2017年12月に元税理士の男性が猫13匹を虐待し死傷させたとして、動物愛護法違反の罪に問われ、懲役1年10カ月執行猶予4年(求刑懲役1年10カ月)の有罪判決を言い渡されました。
犯行の動機は、猫の駆除方法をインターネットで調べて虐待を繰り返すうちに、虐待行為に楽しみを覚えるようになり、動画を公開することが目的化したことと認定されています。
この男性はインターネット上に猫に対して熱湯をかけたり、ガスバーナーであぶったりする動画を公開していました。
こうした虐待動画に対しては、当然のことながら批判のコメントが多数寄せられてはいますが、他方で、「芸術作品だ」「このような(虐待)動画を撮りたい」など称賛するコメントが寄せられていたりもしており、負が負を生む連鎖が発生してしまっています。
参照元:https://www.asahi.com/articles/ASKDD3HL5KDDUTIL010.html
3、動物虐待に関する法律は?
増加し悪質化していく動物虐待に関して、なんらかの法律は存在しないのでしょうか?
ここでは、2019年6月12日に成立したばかりの「改正動物愛護管理法」についてもご紹介していきたいと思います。
(1)動物愛護管理法 第44条
参照:動物愛護管理法 第44条
愛護動物を虐待したり捨てたりする(遺棄する)ことは違法です。
違反すると、動物愛護管理法第44条により、懲役や罰金に処せられる刑事犯罪に該当します。
動物愛護管理法違反で処分されるケースは3つで、以下のとおりです。
①愛護動物をみだりに殺したり傷つけた者
動物を殺したり、傷つけたりした場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処されます。
②愛護動物に対し、みだりにえさや水を与えずに衰弱させるなど虐待を行った者
動物に必要な世話を行わないネグレクトによる虐待を行った場合、100万円以下の罰金に処されます。
③愛護動物を遺棄した者
動物を遺棄した場合、100万円以下の罰金に処されます。
(2)処罰事例
前掲の猫を13匹虐待した事例だけではなく、実際に動物愛護管理法違反で処分されている事例もあります。
有名掲示板サイト上で犯行当日拾ってきた猫に対する虐待を実行して,その模様をインターネットで実況中継したという事件がありました。
この事例もインターネット上で虐待動画を公開しています。猫は、首をつられた後に川に投げ捨てられ、死亡しました。
このため動物愛護法違反の罪に問われ、懲役6カ月執行猶予3年の有罪判決を言い渡されています。
参照元:http://www1.odn.ne.jp/jikonochie/h141021.htm
(3)改正動物愛護管理法の具体的内容
2019年6月12日の参院本会議で改正動物愛護管理法が全会一致で可決、成立しました。
施行は公布から3年以内です。
この改正動物愛護管理法の内容を見ていきたいと思います。
①動物虐待罪の厳罰化
殺傷の場合、現行の2年以下の懲役または罰金200万円以下から5年以下の懲役または罰金500万円以下に引き上げられました。
また虐待・遺棄に対する罰則についても、現行の罰金100万円以下から、懲役1年以下または罰金100万円以下へと懲役刑が追加され、厳罰化しています。
②犬猫へのマイクロチップ装着の義務化
ブリーダーなど繁殖業者に対し、ペットに飼い主情報を記録したマイクロチップの装着を義務付けています。
③56日規制
生後56日を経過しない犬猫の販売を禁止しました。
現行生後49日とされていますが、あまりにも幼い状態での親からの引き離しは、犬猫の身体に様々なリスクが考えられるためです。
④指導・立ち入り検査
周辺環境に悪影響を与えている飼い主に対し、都道府県知事が指導や立ち入り検査を行うことができることも明記されています。
このように改正動物愛護管理法により、動物の虐待に関し刑が厳罰化されました。
また、虐待を防止するための規則も新設されています。
4、虐待されている動物を見つけたら?
近所やインターネット上で虐待されている動物を見つけたら、警察や関係機関に通報しましょう。
(1)動物を傷つける明確な虐待は警察へ
動物に対し、殴るけるの暴行を働いていたり、刃物で傷つけたり、火あぶりにしたりといった明確に悪質な動物虐待行為を見つけたら、迷わず警察に通報しましょう。
(2)餌や水を与えない、世話をしない、糞尿などを適切に処理しないなどの場合は以下の機関へ
①自治体の保健所
自分の住んでいるところの管轄の保健所がわからない場合は下記の「保健所管轄区域案内」で検索すると便利です。
*参考:厚生労働省「保健所管轄区域案内」
②自治体の衛生課
動物愛護管理を行う行政担当は各自治体の衛生課です。
管轄の衛生課は下記のサイトで調べると便利です。
*参考:環境庁「動物の管理と適切な管理、地方自治体連絡先一覧」
③動物愛護センター
各自治体には動物愛護センターが設置されています。
東京の場合は下記の東京都福祉保健局の動物愛護相談センターに通報しましょう。
5、動物虐待を通報する際の注意点
(1)匿名の場合は「匿名である」ことをはっきりと告げましょう
近所での動物虐待を通報する場合、ご近所との付き合いもあるため、自分が通報したことを秘密にしてほしいという方も多いと思います。
こういったケースでは、通報先に「自分が通報したことを知られたくない」旨をはっきりと通報先の機関に告げましょう。
のちのご近所トラブルを回避することができます。
(2)緊急に保護する必要がある場合は迷わず警察へ
虐待の度合いが甚だしく、動物の命にかかわるような緊急性の高い動物虐待は迷わず警察に通報しましょう。
時間が経過してしまい、動物が死亡してしまった場合、後悔することになりかねません。
(3)インターネット上で虐待動画を発見したら?
インターネット上で虐待行為を発見した場合は下記の「インターネット・ホットラインセンター」に通報するのもよいでしょう。
ここで注意点があります。
インターネット上で虐待動画を見つけても、コメントしたり、動画をシェアして拡散したりといった行為は慎むべきということです。
虐待動画に対し怒りのコメントをしたくなる気持ちはもっともですが、「目立ちたい」などの心理で行う虐待者が喜ぶような状況を作りかねません。
まとめ
今回は悪質化する動物虐待行為に関して、自分たちはどのようなことができるのかを考えてきました。
虐待の度合いが甚だしい場合は迷わず警察に通報しましょう。
また、近年動物を虐待した動画を公開するような悪質なケースが増加しています。
こうした動画を見つけた場合はコメントなどをせずに、通報で対処するように心がけましょう。