夫の不倫に悩んでいるというケースのうち、不倫相手の女性も既婚者だというケースも数多くあります。つまり、ダブル不倫です。
不倫をされたら配偶者や不倫相手に慰謝料請求できますが、ダブル不倫で厄介なのは、不倫相手の配偶者もこちらの家庭へ慰謝料請求してくる可能性があるという点です。
ダブル不倫でこちらの慰謝料請求だけを成功させることができるパターンとは、ズバリ、こちら側の損害が相手方の損害よりはるかに大きい場合です。具体的にどういうことかは記事の中でみていきましょう。
今回は、
- ダブル不倫で慰謝料を請求できるケースとできないケース
- ダブル不倫で獲得できる慰謝料の相場
- ダブル不倫で慰謝料を請求する方法
などについて、不倫慰謝料の問題に精通したベリーベスト法律事務所の弁護士が説明していきます。
この記事が、夫のダブル不倫で慰謝料請求をお考えの方の手助けとなれば幸いです。
不倫についてはこちらの記事をご参照ください。
なお、不倫慰謝料の相場についてはYouTubeでも解説しているので併せてご参照ください。
目次
1、ダブル不倫におけるで慰謝料請求権者とは
配偶者が不倫した場合、された側は不倫をした配偶者とその不倫相手に対し、慰謝料請求をすることができます。
ここで、ダブル不倫においては、不倫相手にも家庭があるわけですから、相手の家庭でも同じ状況であるわけです。つまり、相手の家庭から、あなたの家庭に対し、慰謝料請求される可能性があるということです。
ダブル不倫における慰謝料請求権者(慰謝料請求をする権利がある人)とは、配偶者に不倫をされたあなたと、そしてあなたの配偶者の不倫相手の配偶者の2名だということになります。
2、ダブル不倫での慰謝料請求は「損害」の大きさで決まる
上記のとおり、ダブル不倫では、家庭単位で考えると「請求してもされる」という関係にあり、結局1円の得にもならない、という結論ともいえます。それも間違いではありません。
しかし、冒頭でお話したように、「慰謝料」とは、損害に対する代償です。つまり、損害が相手より大きければ、こちらの請求額の方が上回るのです。
では、相手より損害が大きいケースとはどのようなケースをいうのでしょうか。みていきましょう。
(1)損害は何で決まるのか
不倫相手の配偶者も、自分と同様に傷ついているはずです。
そんな中、自分の方が相手より損害が大きいかどうか、どのように図るのでしょうか。
実際、傷ついた胸の内は、実は誰にもその大きさを図ることはできません。たとえ裁判官でもです。そのため、法律で決められた損害賠償での考えでは、「事実」で決められるものとお考え下さい。
(2)損害が大きいとされる「事実」とは
損害の大きさは、次のような「事実」で決められます。
①離婚をするかどうか
不倫をされて離婚になったのか、それとも離婚はしないのか。
この事実から、離婚をした方が損害が大きいとされます。
こちらは離婚をするが相手の夫婦は離婚しないとなれば、こちらの損害の方が大きいと判断されやすくなります。
②子どもが不倫に関係したかどうか
親が不倫をしても、子どもは一切関係しないケースもあります。ましてや、子どもがいない夫婦もいるわけです。
一方で、
- 不倫が原因で離婚になり子どもは片親になった
- 不倫が子どもにも明らかになってしまい子どもが不登校になった
など、子どもにも大きな影響があった場合は損害が大きいとされます。
相手の家族に子どもがいなければ、この点でアドバンテージ(といっては変ですが)をとれると言えるでしょう。
③夫婦仲が良かったかどうか
不倫さえ発覚しなければ夫婦仲が良かった場合、不倫がもたらす影響はかなり大きなものになります。
一方で、不倫前から夫婦とは名ばかりだという場合は、損害があったということすら危ぶまれるケースです。
不倫発覚前、こちらの夫婦仲は問題なかったという場合で、相手の夫婦はすでに夫婦関係が破綻していたというケースであれば、こちら側のみの損害賠償請求が認められる事案となる可能性すらあります。
④婚姻期間が長いかどうか
離婚がなぜ苦痛なのかというと、これまでの人生を平穏に継続することができなくなるからです。
この点、結婚してから半年や1年である場合(婚姻期間が長い夫婦との比較にすぎませんが)離婚をしても少し前の自分に戻るだけとも考えられます。
そのため、相手の夫婦の婚姻期間より、こちらの夫婦の婚姻期間が圧倒的に長いというようなケースでは、「アドバンテージ」をとることができると考えられます。
⑤精神的な病気を発病したかどうか
精神的苦痛をもっとも端的に表す損害事実の代表といえます。いわゆる「うつ病」を発症し、仕事や家事に影響が出ている事実があれば、その損害は大きいと認定されやすくなります。
3、ダブル不倫で慰謝料を請求できる場合の相場は?
ダブル不倫で慰謝料請求が可能な場合、いざ慰謝料請求をしようと思うと、実際にどれくらいの慰謝料をとることができるのかが気になるところでしょう。
法外な金額を請求しても受け入れられることはまずありませんので、慰謝料の相場を参考にして妥当な金額を請求すべきです。
ただ、そもそも慰謝料とは精神的な苦痛を慰謝するために支払われる金員なので、個々のケースごとに、被害者がどれくらいつらい思いをしたかによって金額が決まるものです。
そのため、実際に認められる慰謝料額はケースバイケースですが、過去の裁判例等に基づいて、一応の相場といわれるものが存在します。おおよその相場としては、以下のようになっています。
- 被害者が離婚に至った場合:数十万円万円~300万円程度
- 被害者が離婚しない場合:数十万円万円~200万円程度
不倫慰謝料の相場についてさらに詳しくは、以下の記事をご参照下さい。
4、ダブル不倫の慰謝料請求ができないケース
損害を認定できる「事実」があり、相手の損害より大きいと考えられる場合は慰謝料請求は可能です。
しかし、次のようなケースでは、請求金額が低かったり、もしくは事実上請求が空振りになります。注意してください。
(1)不貞行為をしていた期間・頻度
まずは、不貞行為をしていた期間や頻度によって、請求できる慰謝料額が大きく左右されます。
つまり、不貞行為の期間が短く、回数も少ないほど慰謝料は低額となります。
たった1度の過ちだったり、不倫開始直後の場合は、慰謝料を請求できるとしても数十万円以下にとどまることが多いのです。
(2)どちらが不倫を主導していたか
ひと口に不倫といっても、どちらが不倫を主導していたかによって被害者が請求できる慰謝料額が異なってくる場合があります。
不倫とはいえ「恋愛」です。そのためどちらかが強い主導権を握っているケースは少ないともいえますが、例えば、不倫当事者が職場の上司・部下の関係で、上司側が仕事上の力関係を利用して部下に関係を迫っていたような場合には、上司側の責任の方が重くなります。
あなたの配偶者が不倫について主導権をもっている側であった場合、不倫相手の積極的な加害行為よりもあなたの配偶者の加害行為の方が責任が重いとして、あなたに損害事実があったとしても、損害額で負けてしまう(相手の損害額の方が大きく認定される)可能性もあります。
ひと口に不倫といっても、どちらが不倫を主導していたかによって被害者が請求できる慰謝料額が異なってくる場合があります。
例えば、甲郎と丁子が職場の上司・部下の関係であったとして、甲郎が仕事上の力関係を利用して丁子に関係を迫ったような場合には、甲郎の責任の方が重くなります。
(3)決定的な証拠があるか
慰謝料を請求する際には証拠が必要です。証拠がなければ、相手が自主的に支払ってくれない限り、法的に請求していくことは難しいと言わざるを得ません。相手がしらばっくれてしまえば、請求は空振りに終わってしまうのです。
不倫は基本的に隠れて行われるものです。そのため、この証拠を掴むことは簡単なことではないでしょう。家族だからこそわかる「違和感」も、客観的に明確なもので証拠化しなければならないのです。
不倫の決定的な証拠とは、不倫の当事者が肉体関係を持ったことが明らかに分かるような証拠のことです。一例として、以下のようなものが挙げられます。
- 2人でラブホテルに出入りする写真
- 2人が裸で抱き合っている画像や動画
- メールやSNS上のやりとりのうち肉体関係を持ったことを前提とした会話
(4)夫婦関係が破たんしていなかったか
配偶者が不倫する前に夫婦関係がすでに破たんしていた場合は、法律で守られるべき「貞操権」がすでに失われていますので、不倫慰謝料は発生しません。
相手の夫婦関係が破綻していた場合、相手から慰謝料請求されるおそれがない一方で、こちら側も同じであることを忘れないでください。
5、ダブル不倫での慰謝料請求を自分で行う際の全手順
では、ダブル不倫で慰謝料請求を行うにはどうすればよいのでしょうか。
以下、自分で請求する方法を解説しますが、上記の通り複雑さが隠せませんので実際には弁護士に依頼するのが一般的です。
(1)証拠を確保する
不倫慰謝料の請求を考え始めたら、まずは証拠を確保しましょう。
過去の不貞行為の証拠を集めるのは難しいので、しばらくの間は不倫の当事者を泳がせて、その間に証拠を確保することになるでしょう。
もっとも、不倫は内密に行われるのが通常ですので、決定的な証拠を掴むのは容易ではありません。
自分で証拠を掴むのが難しいと思ったら、探偵に依頼するのもひとつの方法です。
探偵事務所は数多くありますが、調査能力の面でも費用の面でも玉石混淆ですので、こちらの記事を参考にして信頼できる探偵に依頼するようにしましょう。
なお、決定的な証拠を掴めなくても、間接的な証拠を数多く集めれば慰謝料請求が可能となる場合もあります。
一例として、以下のような証拠を丹念に集めれば、肉体関係の存在を推認できる証拠を確保できる可能性があります。
- メールやSNSでのやりとり
- 携帯電話・スマホの通話記録
- 携帯電話・スマホに保存された画像や動画
- ホテルの領収証
- クレジットカードの利用明細
- ドライブレコーダーの記録
- GPSの記録
他にも、こちらの記事で浮気・不倫の証拠の集め方を詳しく解説していますので、ぜひ併せてご参照ください。
(2)請求額を決める
証拠がそろったら、次に相手に請求する慰謝料額を決めましょう。
請求するだけならいくら請求しようが自由ですので、請求額は自分で決めることができます。
ポイントは、相場よりも少し高めの金額を請求することです。
なぜなら、請求した後は話し合いで交渉することになりますので、最初に高めの金額を請求しておき、そこから適正な金額に減額すれば話し合いがまとまりやすくなるからです。
例えば、ご自身のケースで慰謝料200万円が適正だとすれば、最初は300万円を請求するということです。
このとき、3,000万円や5,000万円などと法外な金額を請求すると、相手方の心情を害して話し合いができなくなり、慰謝料獲得までに遠回りを要する可能性が高いことにご注意ください。
(3)内容証明郵便を送付する
次は、いよいよ実際に慰謝料を請求します。請求方法としては、不倫慰謝料請求書を内容証明郵便にして相手に送付するのが一般的です。
相手方がすぐに慰謝料を支払わないとしても、内容証明郵便の形を取ることで心理的な圧力をかけることができるので、その後の話し合いを有利に進める効果が期待できます。
また、内容証明郵便は誰が・いつ・誰に対して・どのような内容の文書を送ったのかを郵便局が証明してくれますので、後に裁判を起こす場合に証拠の1つとして使うこともできます。
(4)相手方と話し合う
相手方が請求どおりに慰謝料を払わないものの、内容証明郵便に応じて連絡をしてきた場合は、話し合いで交渉をすることになります。
交渉する際は、冷静に話し合うことがポイントです。感情的になっても慰謝料を増額できるものではありませんし、相手方も感情的になると話し合いが進まなくなってきます。
冷静に話しつつ、主張すべきことは主張するという姿勢で臨みましょう。
相手方が事実を否定する場合は証拠を示し、減額を求めてきた場合は当初の請求額から減額して適正な金額で合意するのが理想的です。
ただ、相手が責任は認めるものの支払能力が十分でないというケースも少なくありません。
その場合には、分割払いを認めることによって合意することも検討するとよいでしょう。
(5)話し合いができなければ裁判を起こす
話し合いで合意できない場合や、相手方が話し合いに応じない場合には、慰謝料請求の裁判を起こすことになります。
裁判では、訴えた側(原告)と訴えられた側(被告)がそれぞれ主張と証拠を提出し合います。
裁判所が不倫の事実を証拠で認定した場合は、判決で相手方に対して慰謝料の支払いが命じられます。
なお、裁判の途中でも裁判所からの和解勧試(わかいかんし)によって話し合いが行われることもよくあります。
納得できる和解案で合意できる場合には、和解に応じることで早期解決が可能となります。
ただ、有利な和解案を引き出すためにも、有力な証拠を提出しておくことが大切になります。
6、ダブル不倫での慰謝料請求は弁護士への相談がおすすめ!
ダブル不倫で慰謝料請求をお考えなら、弁護士に相談することをおすすめします。
前項でご説明したように自分で戦うことも可能ではありますが、プロの弁護士に相談・依頼することで以下のメリットが得られます。
(1)慰謝料請求の可否についてアドバイスが受けられる
ダブル不倫の場合は、慰謝料請求ができない場合や、できるとしても得策ではない場合もあります。
専門的な知識なく闇雲に慰謝料請求をすると、かえって損をしてしまうことにもなりかねません。
そこで、まずはプロの弁護士のアドバイスを聞いて、慰謝料請求すべきかどうかを的確に判断した方がよいでしょう。
(2)慰謝料額を適切に算定してもらえる
慰謝料請求が可能と判断したら、次は慰謝料額を算定するステップです。
慰謝料の相場や金額を左右する要素はこの記事でご説明しましたが、実際のケースではさまざまな要素が絡むため、適切に算定するためには、やはり専門的な知識が必要です。
弁護士に詳しい事情を伝えれば、慰謝料額を適切に算定してもらうことが可能です。
(3)証拠集めをサポートしてもらえる
証拠集めの重要性は何度も指摘してきましたが、不倫の有力な証拠を掴むのは難しいことが多いのが実情です。
弁護士に相談すれば、どのような証拠を集めればよいのかや、証拠の集め方についてもアドバイスが受けられます。
依頼すれば、弁護士が法的手段を使って証拠を確保することも可能になります。
また、不倫慰謝料請求に強い弁護士は探偵事務所と提携していることもありますので、紹介してもらうことによって、信頼できる探偵に割引料金で依頼できる可能性もあります。
(4)相手方との交渉を代行してもらえる
弁護士に慰謝料請求を依頼すると、弁護士があなたの代理人となって相手方と交渉します。
あなたは相手方と直接やりとりする必要がなくなりますので、時間的・労力的にはもちろん、精神的にもグッと楽になります。
弁護士が高度な法的知識と豊富な経験に基づく交渉力で対応しますので、自分で交渉する場合よりも有利な結果が期待できます。
(5)裁判でもサポートが受けられる
裁判を起こす場合は、さらに高度な専門知識が必要となりますし、手続きも複雑になります。
しかし、弁護士に依頼すれば裁判手続きもすべて代行してくれます。
あなたが慰謝料を獲得するまで、弁護士が心強い味方として全面的にサポートしてくれるのです。
ダブル不倫の慰謝料まとめ
夫がダブル不倫をした場合、慰謝料請求ができるかどうかのほかに、してもいいかという問題もあります。
感情にまかせて慰謝料請求をすると損をしてしまうおそれもあるので、ダブル不倫の慰謝料請求を考えるのであればまずは弁護士のところに相談にいくようにしましょう。
不倫した夫との離婚問題も含めて、弁護士があなたにとって最善の解決策を一緒に考えてくれるはずです。