交通事故で家族が死亡してしまった。
一瞬にして家族を奪われてしまうことはどれだけ辛いことかと思いますが、実はこのような悲痛な事件は少なくありません。少しの軽い過ちや違反がこのような残酷な事件を引き起こしてしまいます。
一般財団法人全日本交通安全協会は、平成26年の死者数が1年間で4113名であったというデータを発表しています。このような悲痛な状況を防止していく必要があります。
今回は、このように突然家族を失った遺族の方が知っておくべきことと伝えたい知識についてまとめました。
また、以下の関連記事では交通事故での被害者が損をしないための知識について解説しています。突然の交通事故に遭遇されお困りの方は、以下の関連記事もあわせてご参考いただければと思います。
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目次
1、交通事故で家族が死亡してしまった場合にすべきことは?
家族がなくなってしまった悲しみは測り知れませんが、交通事故に限らず遺族がしなければならないことは少なくありません。以下にいくつか列挙してみました。
- 葬儀社への連絡
- 死亡診断書又は死体検案書の受取
- 葬儀の段取り
- 死亡届の提出
- 火葬許可証の受領
- 通夜、葬儀・告別式
- 年金受給の停止・未支給年金の請求(年金受給していた人の遺族)
- 遺族年金受給申請(遺族年金受給対象者)
- 介護保険資格喪失届(介護保険対象者の遺族)
- クレジットカードの解約(クレジットカード利用者の遺族)
- 電気・ガス・水道・NHK・インターネットなどの利用停止(一人暮らしの方の遺族)
- 生命保険金の請求(生命保険加入者の遺族)
- 埋葬料の請求等
- 遺言の調査
- 相続財産調査
- 相続放棄(相続を放棄する場合)
- 所得税準確定申告
- 遺産分割協議書の作成
- 預金等の名義変更
- 不動産の相続登記
- 相続税の申告
- 損害賠償請求
出典:http://alliancellp.net/yoshizawaacc.blog/page=2131
2、交通事故の死亡事故で被害者の遺族が加害者(保険会社)に請求できる8つのもの
交通事故被害者の遺族は、加害者に対して損害賠償請求をすることができます。この場合にはどのような請求ができるのか見てみましょう。
- 入院・治療費(病院に搬送された方の場合)
- 入院付添費(病院に搬送された方の場合)
医師の指示又は受傷の程度、被害者の年齢等により必要があれば職業付添人の部分には実費全額、近親者付添人は、1日6500円が被害者本人の損害として認められます。 - 入院雑費(病院に搬送された方の場合)
1日につき1500円が認められます。 - 葬儀関係費用
下記「3、交通事故の死亡事故に遭った場合の葬儀費用」にて詳しく述べます。 - 休業損害
受傷後亡くなられるまでの間、休業を要した場合に認められます。 - 家族の駆けつけ費用
近親者の駆けつけ交通費や宿泊費も認められることがあります。 - 被害者本人の慰謝料及び遺族固有の慰謝料
下記「4、交通事故の死亡事故の慰謝料の計算方法」にて詳しく述べます。 - 逸失利益
下記「5、交通事故の死亡事故の逸失利益の計算方法」にて詳しく述べます。
3、交通事故の死亡事故に遭った場合の葬儀費用
交通事故で被害者の方が亡くなられた場合、被害者の葬儀関係費用は交通事故と因果関係のある損害として加害者側に請求することができると考えられています。
実務上では、原則として、150万円の範囲で葬儀関係費用が認められています。なお、葬儀で香典を受け取った場合でも、その金額は賠償金から差し引かれず、反対に香典返しは損害として認められないとされています。
4、交通事故の死亡事故の慰謝料の計算方法
慰謝料とは、精神的な苦痛に対する損害ということですが、交通事故被害者の遺族は、加害者に対して「被害者本人の慰謝料」と「遺族固有の慰謝料」の双方を請求することができます。
慰謝料額(上記「被害者本人の慰謝料」及び「遺族固有の慰謝料」の合計額)の一応の目安は以下のとおりとされています(2016年度から金額が改められました)。
- 被害者が一家の支柱 2800万円
- 被害者が母親、又は配偶者 2500万円
- その他、被害者が独身の男女、子供、幼児等 2000万円~2500万円
5、交通事故の死亡事故の逸失利益の計算方法
逸失利益とは、被害者が生存していれば得られるはずであった利益のうち、交通事故によって亡くなってしまったことで失ってしまったものをいいます。
そして、逸失利益の計算方法は、以下のとおりです。
・基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
順を追って説明します。
まず、逸失利益とは、「被害者が生存していれば得られるはずであった利益のうち、交通事故によって亡くなってしまったことで失ってしまったもの」なので、将来いくら収入を得ることができたのかが重要になってきます。そのため、被害者が1年間に得られるはずであった収入額を基礎収入額といいます。
これに対して、被害者の方が生存していた場合、生活費が必要となり、亡くなったことでこの生活費を支出する必要がなくなります。
そのため、基礎収入の中から、死亡することで支出の必要がなくなる「生活費」を控除することになります。この控除する生活費率を生活費控除率といいます。
生活費控除率は、概ね以下のとおりとされています(所謂「赤い本」の基準)。
- 一家の支柱(被扶養者が1人の場合)・・・・・40%
- 一家の支柱(被扶養者が2人以上の場合)・・・30%
- 女性(主婦、独身、幼児等を含む)・・・・・・30%
- 男性(独身、幼児等を含む)・・・・・・・・・50%
そして、基礎収入が1年間の収入額を基礎としていますので、被害者が事故の後収入を得られる見込みのあった年数を乗じることになります。一般的には、67歳まで働くことを前提とし、被害者の方が亡くなられた年齢から67歳に至るまでの年数を就労可能年数と言います。
もっとも、就労可能年数を単純に乗じるわけではなく、逸失利益の計算には就労可能年数に対応するライプニッツ係数を乗じることとされています。
通常は何年にもわたって少しずつ収入を得るはずであったものが、逸失利益という形で一度に得ることになりますので、中間利息を控除しようという発想です。
たとえば、被害者の方が42歳で亡くなられた場合、就労可能年数は67歳までの25年間ですが、この25年に対応するライプニッツ係数は「14.0939」となり、この数字を乗じて計算することになります。
6、交通事故で死亡した場合の損害賠償金請求方法
交通事故の被害者は、交通事故によって被害者自身の治療費がかかり、被害者が休業することによって休業損害が生じ、また被害者自身がけがによって精神的な損害を負うため加害者側に対し損害賠償を請求できるとされています。
しかし、死亡事故の場合は、被害者は既に亡くなられているため、被害者に生じた損害の賠償請求を実際に行うのは被害者遺族になります。これを法的に説明すると、被害者の遺族が、被害者本人の加害者側に対する損害賠償請求権を相続したということになります。
そのため、死亡事故の場合、遺族固有の慰謝料を除く損害に関する賠償請求については、相続人が複数いる場合には遺産分割協議を行うことで、誰が被害者本人の損害賠償請求権を相続したのかを確定させなければなりません。
7、交通事故で死亡事故を起こした加害者の責任
上記のように、死亡事故の加害者は民事上多額の賠償義務を負うことになります。その他、加害者には以下のような責任があります。
(1)刑事上の責任
死亡事故の加害者は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」第5条の過失運転致死の罪に問われる可能性があります。同条では、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」と定めています。
(2)行政上の責任
死亡事故の加害者は、運転免許を取り消される等の責任を負います。
8、交通事故の死亡事故案件を弁護士に依頼するメリットとデメリット
(1)遺産分割
上記のとおり、死亡事故の損害賠償請求と相続は常に同時に起こる問題です。損害賠償請求権者を決めるためには遺産分割協議等をしなければなりませんが、何をどのようにしたらよいのか分からないという方がほとんどではないでしょうか。
交通事故に関し弁護士に相談いただければ、遺産分割に関しても適切なアドバイスを得られるはずです。
(2)慰謝料
死亡事故の被害者も他の交通事故受傷者と同じように、交通事故にあって亡くなってしまったことに対する精神的損害(=慰謝料)を請求することができます。
しかし、慰謝料は目に見えない損害であって、保険会社が提示してくる慰謝料は、低い基準に基づいて算定されていることがほとんどです。
低い基準といわれても何のことだか分からない方も多いでしょうから、まずは、保険金の3つの基準について確認をしてみましょう。
①自賠責保険の基準
自賠責保険の基準とは、自賠責法(自動車損害賠償保障法)等に基づく省令によって定められた算定基準です。
自賠責保険は、交通事故被害者が最低限の補償を受けられるようにするための保険ですので、重大な過失以外過失相殺されない、被害者から直接請求できる等、被害者に有利な点もあります。しかしながら、最低限の補償ですから、限度額が低く設定されています。
②任意保険の基準
任意保険の基準とは、加害者が加入している任意保険会社独自の算定基準です。
任意保険は自賠責保険の上乗せ補償ですから、任意保険の基準では自賠責保険の基準よりも高い賠償額となる傾向にはあります。しかしながら、任意保険会社も営利企業であるためか、裁判所基準より高くなることはまずありません。
③裁判所の基準(弁護士基準)
裁判所の基準(弁護士基準)とは、裁判所が用いている算定基準です。
東京では、赤い本と呼ばれる本の基準によって慰謝料額等は計算されています。3つの基準の中では一番高い賠償額となります。
以上のとおり、交通事故の慰謝料額等の算定には3つの基準がありますが、個人が保険会社と交渉しても、保険会社が裁判所の基準で支払うことはまずありません。裁判所の基準は、裁判をした場合の基準であり、個人で裁判をすることは難しいためです。
弁護士であれば裁判をすることも可能ですし、保険会社にも裁判で争うメリットがあまりないことから、裁判所の基準で解決することが多くなるのです。
(3)逸失利益
逸失利益の計算方法は上述のとおりですが、逸失利益の額は決して自動的に決まるものではなく、逸失利益を算定するにあたって、基礎収入額をどのように算定するのか、生活費控除率を何%で計算するのか等解釈の余地があります。
(4)被害者参加
死亡事故の被害者遺族は、「被害者参加人」として加害者の刑事事件に参加することができる可能性があります。
通常、刑事手続きでは、検察官と被告人が当事者となり、被害者が刑事手続きに直接関与することはできません。
しかし、「被害者参加人」になれば、公判期日に出席すること、一定の範囲で証人尋問や被告人質問をすること及び事実法律適用に関する意見陳述等をすることができます。
そして、被害者遺族はこれら手続きについて弁護士に委任することができます。
(5)弁護士費用
被害者遺族が弁護士に依頼するデメリットとしては、弁護士費用の負担だと思います。死亡事故では、賠償額が多額になることが多く、獲得した経済的利益を基礎にその一定割合を頂戴する弁護士費用も多額になります。
この点、いわゆる弁護士費用特約という保険に加入しており、これを利用できる場合には弁護士費用の全部または一部を保険会社が負担してくれますので、被害者や被害者と同居していたご家族等が弁護士費用特約に加入していないかについては必ず確認するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事が少しでも多くの方のためになれば幸いです。
そして、すべての被害者遺族及び関係者の方に一日でも早く平穏な日々が戻ってくることを願っています。