「円満調停はしない方がいいって聞いたけど、本当?」
「夫婦で話し合っても関係修復できなかった状況で、円満調停をしても意味ないかな?」
円満調停とは、離婚調停とは反対に夫婦関係を円満な方向に調整するために、家庭裁判所で調停委員を介して配偶者と話し合いをする手続きのことです。
話し合いに過ぎないので、必ずしも夫婦関係の修復に成功するとは限りませんが、それでも円満調停が有効なケースはあります。
また、離婚を回避して夫婦関係を修復するためには円満調停の他にもやるべきことがあるのは事実です。
そこで今回は、
- 円満調停はしないほうがいい?
- 円満調停をしたほうがいいケース
- 夫婦関係を修復するためにできること
などについて、夫婦関係の問題を数多く解決に導いてきたベリーベスト法律事務所の弁護士がやさしく解説していきます。
この記事が、円満調停を考えているものの「しないほうがいいかな?」と不安をお持ちの方の手助けとなれば幸いです。
円満調停については以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、円満調停はしないほうがいいと言われる理由
円満調停は、夫婦関係が危機に陥ったときの最後の砦として位置づけられることが多いですが、
- しても意味ない
- むしろ、しないほうがいい
などと言われることがあるのも事実です。
円満調停はしない方がいいと言われる主な理由は、以下のとおりです。
(1)話し合いを強制することはできない
調停の手続きでは、相手に話し合いを強制することはできません。相手が裁判所に来なければ話し合いはできませんし、相手が来たとしても話し合いに応じるとは限りません。
そのため、円満調停は「しても意味ない」と言われるのでしょう。
(2)裁判所に申し立てることで相手の抵抗を生むことがある
円満調停を申し立てると、裁判所から相手のところへ呼出状が送付されます。ある日突然、裁判所からの書類を受け取った相手は、驚いてしまうはずです。
- 勝手に調停を申し立てられた
- 裁判所になど行きたくない
という抵抗を生んでしまうのも無理はありません。
事前に相手に対して調停を申し立てることを伝えていたとしても、ほとんどの方は裁判所から書類が届くと驚くものです。
この精神的な衝撃が、夫婦間の溝をさらに深めてしまうおそれがあります。そのため、円満調停は「むしろ、しないほうがいい」と言われる場合もあります。
(3)離婚の話し合いに発展することがある
円満調停でこちらが「夫婦関係を修復したい」と申し出ても、相手は「離婚したい」と答えることもあるでしょう。
円満調停では離婚の話し合いをすることも可能とされているので、展開次第では調停離婚が成立してしまう可能性もあります。
(4)調停委員が夫婦関係の修復に詳しいとは限らない
調停では、裁判所から選任された調停委員が当事者の間に入って話し合いを進めます。裁判所は、可能な限り事案ごとに問題解決に必要な知識を持った専門家や学識経験者などを調停委員に選任します。
もっとも、地元の調停委員候補者の中に夫婦関係の修復に詳しい専門家は少ないのが実情です。その結果、円満調停で選任される調停委員も、離婚に関する知識は豊富でも夫婦関係の修復に関する知識はあまりないというケースが多くなっています。
そのため、円満調停を申し立てても、調停委員が夫婦関係修復の方向に導いてくれるということは、あまり期待できない可能性があります。
(5)合意ができても法的拘束力はない
円満調停で話し合った結果、
- お互いに円満な夫婦関係の形成・維持に努める
- 同居する
等の合意ができたとしても、その合意には実質的な法的拘束力がありません。つまり、約束を破られても、法的に対抗する手段はないということです。
この点、離婚調停で
- 慰謝料
- 養育費
など金銭の支払いについて合意した場合は、約束どおりに支払われなければ強制執行を申し立てて回収することができます。
それに対して、夫婦関係を円満にするといった合意は、法律で強制的に実現することはできないのです。
場合によっては、相手が調停を早く終わらせるために形だけの合意に応じて、実際には約束を守らないということもあり得ます。
2、本当にしないほうがいい?離婚調停と円満調停の違いとは
本当に円満調停はしない方がいいのでしょうか。
ここでは、円満調停がどのような手続きなのかについて、離婚調停との違いも交えてご説明します。
(1)そもそも円満調停とは
円満調停とは、夫婦関係を修復するために家庭裁判所で話し合いを行う手続きのことです。
正式名称は「夫婦関係調整(円満)調停」といいます。これに対して、離婚調停の正式名称は「夫婦関係調整(離婚)調停」です。
整理すると
- 離婚するために申し立てるのが離婚調停
- 夫婦関係を修復するために申し立てるのが円満調停
ということになります。
(2)円満調停で行われること
円満調停を申し立てると、申立人と相手方が指定された調停期日に裁判所に出頭し、調停委員を通じて話し合いをすることになります。
まずは調停委員から、夫婦関係をこれからどうしたいのかを、それぞれ別々に尋ねられます。
その意向はそれぞれ相手に伝えられ、当事者が合意に至るために調整できることがあれば、どのようにして調整が可能かについて話し合いが重ねられていきます。
当事者が合意に至ると「調停成立」となり、問題解決となります。合意できなかった場合は「調停不成立」という形で手続きが終了します。
離婚調停の場合は調停期日が2~4回と重ねられて、じっくりと話し合われるケースが多いのですが、円満調停では相手方があまり話し合いに応じず、1回の期日で調停不成立となるケースも少なくないという印象があります。
(3)円満調停の成功率
データで見ると、円満調停は意味ない、しないほうがいいとは言い切れません。
裁判所が公表している統計によれば、2020年に家庭裁判所で終結した円満調停の件数と成功例は以下のようになっています。
- 終結した件数…2,202件
- 婚姻継続で調停成立した件数…325件
- 円満同居を理由に調停が取り下げられた件数…95件
成功例は合計で420件あり、終結した件数のうち19.1%を占めています。
この成功率が高いとはいえないかもしれませんが、円満調停でも一定の割合で夫婦関係の修復に成功していることが分かります。
3、円満調停で期待できる効果
円満調停をすることで期待できる主な効果は、以下のとおりです。
(1)冷静に話し合える
夫婦関係が危機に瀕したときは、お互いに感情的に対立していて、冷静な話し合いが難しくなっていることが大多数です。
修復できる可能性が残っていても、感情が邪魔をして話し合いができなければ、離婚に至ってしまう可能性が高くなります。
円満調停で第三者を間に挟むことで、冷静な話し合いが可能となります。夫婦関係の修復に向けて、お互いが建設的な意見を出し合うことも期待できます。
(2)公平に話し合いを進めてもらえる
親族や友人・知人などを交えて話し合いをする人もいますが、これらの第三者を交えても公平な話し合いは難しいことが少なくありません。
これらの人は第三者とはいっても、どちらか一方に肩入れしたり、相手を非難してしまうようなケースが多いからです。
円満調停では、調停委員が公正・中立の立場で双方から言い分を聞き出してくれます。それによって、公平に話し合いを進めることが可能となります。
(3)話し合いのきっかけとなることがある
夫婦関係が危機に瀕した後では、話し合いのきっかけさえ掴めないこともあります。
別居している相手に
- 電話
- メール
- 手紙
などで連絡をしても返信がなかったり、同居している場合でも無視されて話し合えないことがあるでしょう。
このような場合でも、円満調停を申し立てて裁判所から呼出状を送付してもらえば、仕方なくではあっても相手が話し合いの場に出頭してくれる可能性があります。
(4)相手の本音を聞けることがある
夫婦関係を修復するためには、相手がどのような不満や要望を持っているのかを知ることが不可欠です。しかし、夫婦だけで話し合う場合には、感情が邪魔をして相手の本音を聞けないことが多いものです。
円満調停では、夫婦が顔を合わせることはなく、調停委員が双方から別々に言い分を聞き出してくれます。相手も、公正・中立な調停委員になら本音を話す可能性があります。
(5)解決策を提示してもらえる
調停委員は、単に当事者の話し合いを仲介するだけの伝言係ではありません。双方から言い分を聞き取った上で、妥当な解決策を提示してくれます。
一定の解決策が示されると、その内容に応じられるかどうかだけでなく、
「どうすれば応じられるか」
「内容をどのように修正すれば応じられるか」
といった建設的な話し合いも可能になってきます。
すぐに合意できなくても、夫婦がただ感情をぶつけ合うだけの争いから脱却することが期待できるでしょう。
4、円満調停をしたほうがいいケース
円満調停をしないほうがいいケースがあることは否定できませんが、一方では円満調停をしたほうがいいケースもあります。
以下のようなケースでは、円満調停を申し立てることで事態を打開できる可能性があるといえます。
(1)相手が直接の話し合いを拒否している
相手が話し合いを拒否している場合には、まずもって話し合いの機会を確保しなければ事態を打開することはできません。直接の連絡を無視する相手でも、裁判所からの呼び出しには応じて調停期日に出頭する可能性があります。
そこから、調停委員のサポートを得て話し合いが進んでいくことが期待できます。
(2)相手の本音が分からない
相手の本音が分からない場合も、円満調停が有効なことがあります。親族や友人・知人などでなく公正・中立な調停委員を間に入れることで、相手の本音を聞き出してくれる可能性が高まります。
実際のところ、離婚調停でもそうですが、調停をしてみて初めて、「相手はこんなことを考えていたのか」と分かるケースが数多くあります。
(3)本気であることを相手に伝えたい
円満調停には、こちらが本気で夫婦関係の修復を考えていることが相手に伝わるというメリットもあります。
話し合いを強制することはできないまでも、こちらが裁判所に申し立ててまで話し合いを求めた以上、相手も裁判所に出頭すれば調停委員には真剣に話すことが多いものです。いわば、本気の話し合いをすることが期待できるでしょう。
5、円満調停をきっかけとして夫婦関係修復のためにできること
円満調停でお互いが本音を伝え合うだけで、夫婦関係を修復できるケースも中にはありますが、それほど多いケースではありません。
本当に夫婦関係を修復するためには、円満調停をするにしても「きっかけ」として捉えて、その他にも努力すべきことがいくつかあります。
(1)自分が変わる努力をする
夫婦関係が危機に瀕した以上、相手にも悪いところはあるかもしれませんが、たいていの場合は自分にも悪いところがあるものです。悪いところは改善する努力をしなければなりません。
ただ、自分ではどこが悪かったのかが分からないことも多いでしょう。そんなときに、円満調停を利用して相手の本音を聞き出してもらうことが有効となります。
円満調停では、「相手のここを直してほしい」と主張するだけではなく、「自分の悪いところを直したいので、相手の本音を知りたい」という姿勢で臨むことが大切です。
努力すべき具体的な事柄については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考になさってください。
(2)カウンセリングを利用する
夫婦関係の修復を目指すなら、その道の専門家に相談することが有効です。「夫婦カウンセリング」の利用を検討してみるとよいでしょう。
夫婦カウンセリングは夫婦2人で利用するのが理想的ですが、1人で利用した場合でも、有益なアドバイスが得られるはずです。
円満調停の席上で、ご自身が夫婦カウンセリングを受けて努力していることを伝えれば、調停委員の印象もよくなるでしょう。相手にも誠意が伝わり、夫婦関係の修復につながる可能性もあります。
(3)弁護士に相談する
夫婦関係の亀裂が離婚問題に発展した場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
夫婦問題の解決実績が豊富な弁護士はさまざまな夫婦を見てきていますので、修復する方向でのアドバイスを受けることもできます。信頼できる夫婦カウンセラーを紹介してくれる弁護士もいます。
離婚が避けられない場合には、弁護士に離婚協議を依頼するとよいでしょう。有利な条件での離婚が期待できます。
中には、簡単には離婚できないと悟った相手が考え直し、夫婦関係が修復するケースも少数ながらあります。諦めずに、弁護士に相談するようにしましょう。
ただし、納得できる結果を得るためには、離婚問題を含めた夫婦の問題の経験が豊富な弁護士を選ぶことが大切です。そんな弁護士の見分け方・選び方についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
円満調停に関するQ&A
Q1.円満調停はしないほうがいいと言われる理由とは?
話し合いを強制することはできない
裁判所に申し立てることで相手の抵抗を生むことがある
離婚の話し合いに発展することがある
調停委員が夫婦関係の修復に詳しいとは限らない
合意ができても法的拘束力はない
Q2.そもそも円満調停とは?
円満調停とは、夫婦関係を修復するために家庭裁判所で話し合いを行う手続きのことです。
正式名称は「夫婦関係調整(円満)調停」といいます。これに対して、離婚調停の正式名称は「夫婦関係調整(離婚)調停」です。
Q3.円満調停をきっかけとして夫婦関係修復のためにできることとは?
自分が変わる努力をする
カウンセリングを利用する
弁護士に相談する
まとめ
円満調停はしないほうがいいと言われることもありますが、利用の仕方によっては夫婦関係の修復に役立つことも多くあります。
夫婦カウンセラーや弁護士にご相談の上、夫婦関係修復のきっかけとして円満調停を利用することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、信頼できる夫婦カウンセラーのご紹介もできます。夫婦関係でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。