新築住宅で手抜き工事が発覚した場合に知っておくべき7つのこと

新築住宅で手抜き工事が発覚した場合に知っておくべき7つのこと

手抜き工事とは、住宅等の建築工事において、工事業者が意図的に必要な工程を省略したり、建材の材質を落とすなどの手抜きを行うことをいいます。

せっかく新築住宅を取得したのに、手抜き工事による欠陥を発見したら、憤然としてしまうのも当然のことでしょう。

手抜き工事が行われていても、建物が完成した後では分からない場合がほとんどです。手抜き工事を防止するためには、建築中に工事の状況を適宜チェックすることも重要です。

また、手抜き工事が行われる原因を知ることで、契約時に手抜き工事のリスクを回避することが可能なこともあります。

住宅が完成し、引き渡しを受けた後に手抜き工事による欠陥が判明した場合には、ハウスメーカーなどの法的責任を追及することになります。

そこで今回は、

  • 手抜き工事とは
  • 手抜き工事が行われる原因
  • 手抜き工事が発覚したときに請求できること

などについて、建築紛争の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。

この記事が、新築住宅の建築中や引き渡し後に手抜き工事が判明してお困りの方や、これから住宅を取得する際に手抜き工事によるリスクを回避したい方の手助けとなれば幸いです。

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1、手抜き工事とは

手抜き工事とは、冒頭でもお伝えしたように、工事業者が意図的に手を抜くことを意味します。

建築工事においては、さまざまなミスも生じ得ますし、明らかなミスはなくとも完成後に欠陥が生じることもあります。しかし、手抜き工事は意図的な行為であるという点で悪質なものといえます。

工事業者が手を抜く部分はさまざまですが、問題となるのは、施工内容が設計図書のとおりになっていない場合です。

手抜き工事が原因で生じやすい住宅の欠陥としては、

  • 雨漏り
  • 水漏れ
  • ドアや窓の開閉不良
  • 床の傾き
  • 外壁や内壁のひび割れ
  • 鉄筋の数量やサイズが不足している
  • 防火基準を満たす建材が使われていない

などが挙げられます。

手抜き工事が行われても程度によっては特に問題が生じないこともありますが、居住に支障をきたすような欠陥が生じている場合には、ハウスメーカーなどの法的責任を問わなければなりません。

2、手抜き工事が行われる原因

新築住宅を取得するなら、手抜き工事は避けたいところです。そのためにはまず、手抜き工事が行われる原因を知ることが有効です。主な原因として、以下の5つが挙げられます。

新築住宅の注文や購入の契約をする際には、事業者との打ち合わせにおいて、可能な限りこれらのリスクを回避できるよう十分に話し合いましょう。そうすることによって、手抜き工事のリスクをある程度は軽減させることが可能となります。

(1)工期がタイト

建築工事には、規模や内容に応じて標準的な「工期」というものがあります。工期が標準よりも短ければ短いほど、工事業者に余裕がなくなりますので、手抜き工事が発生しやすくなります。

工期がタイトになる原因としては、施主が早期の竣工を希望することもあれば、工事業者が利益を上げるために工期を短めに設定することもあります

注文住宅での手抜き工事を避けるためには、工期に余裕を持たせて契約する方がよいといえます。

(2)慢性的な人手不足

最近の傾向として、建築業界が慢性的な人手不足に陥っているということが挙げられます。

高齢化社会の進展によって多くの業界が人手不足となっていますが、建築業界では特に、新築住宅の需要が高まっていることも相まって人手不足が深刻化していると言われています。

標準的な工期を設定したとしても、労働力が足りなければ、やはり工事業者には余裕がなくなります。それでも何とか工期に間に合わせようとすると、手抜き工事が行われがちになります。

(3)施工管理者のチェックが不十分

さらに、人出不足の影響で施工管理の体制も十分とはいえないケースが少なくないようです。

手抜き工事を防止するには、有能な施工管理者が現場で目を光らせておくことが重要です。しかし、人手不足の状況では1人の施工管理者が複数の現場を担当しているケースも増えており、それぞれの現場における作業に目が行き届かないこともあります。

そのため、まだ知識や経験が浅い施工管理者が現場を任されるケースもありますが、その結果、管理が十分に行き届かないという現状も生じています。

管理が行き届いていないと、現場作業員の気が緩みがちになり、手抜き工事が起こりやすくなります。

(4)建材や設備の供給不足

最近では、新型コロナウィルスの感染拡大の影響が手抜き工事につながっている事例もあります。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で製造や物流がストップしたため、工事に必要な建材や設備を入手しにくく、そのために工事の遅延が多発しています。

工事業者は材料が手に入れば遅延を解消しようと努力しますが、時間的な余裕がないため、手抜き工事が行われやすい状況が生み出されているといえます。

このような場合には、施主としても工事業者と打ち合わせを行い、状況に応じて柔軟に工期の延長に応じるといった対応も必要となるでしょう。

(5)下請けの工務店等に支払われる報酬が少ない

建築業界に特有の構造上の問題もあります。元請業者から実際に工事を行う下請けの工務店等に支払われる報酬が少なければ、手抜き工事が発生しやすくなります。

通常、ハウスメーカーは自社で施工するのではなく、実際の工事は地元の工務店等に発注します。業者によっては、下請けの工務店等に十分な報酬を支払わないというケースもあるようです。

また、最近では

  • 元請け
  • 下請け
  • 孫請け

の構造が複雑化しており、元請業者と実際に施工を担当する工務店等の間に、何重もの請負関係が介在することもあります。

間に介在する業者が増えれば増えるほど、多くのリベートが抜き取られますので、施工を担当する工務店等が受け取れる報酬は少なくなってしまいます。

その結果、工務店等は工事に十分な費用をかけることが難しくなり、手抜き工事が行われやすいという構造が生じているのです。

3、手抜き工事を見分ける方法

手抜き工事による被害を回避するためには、住宅の引き渡しを受けるまでに手抜き工事を見分ける必要があります。

では、どうすれば手抜き工事を見分けることができるのでしょうか。

(1)建築中にしか見抜けないことが多い

手抜き工事が行われていても、通常、見た目は設計図書のとおりに施工したように仕上げられるものです。多くの場合、住宅が完成した後では見えない部分に欠陥が隠されています。そのため、手抜き工事は建築中でないと見抜けないことが多いのです。

特に、基礎部分のコンクリート内にある

  • 鉄筋の種類やサイズや本数
  • 錆びつき具合
  • 木材の接合部に使用されている金物の種類や固定方法
  • 外壁や天井の下地に使用する断熱材や防水材

など、建物の安全性や防水性にかかわる部分の多くは、建築中にしか確認できません。

したがって、手抜き工事を見分けるためには、建築中にたびたび工事現場の見学に訪れて、施工状況を確認することが重要となります。

(2)建築士等によるチェックが有効

ただ、専門的な知識がなければ、工事現場を見学したところで手抜きを見分けるのは難しいものです。

一般的な傾向として、以下のような特徴がある現場では手抜き工事が行われやすいということはできます。

  • 建築現場が整理整頓されておらず乱雑である
  • 作業員が挨拶をしないなど、態度が悪い
  • 工事車両が乱雑に駐車されており、近隣に迷惑をかけている
  • 施工管理者が現場作業員から軽視されている

しかし、このような特徴がある現場で必ずしも手抜き工事が行われるわけではありません。逆に、工事現場の状況を見て信頼できそうだと感じても、手抜き工事が行われる可能性は否定できません。

建築現場を訪れる際には、建築士に同行してもらい、専門的な観点からチェックしてもらうことをおすすめします。

ホームインスペクション(住宅診断)というサービスは建築中にも利用できますので、検討してみるとよいでしょう。

4、注文住宅の手抜き工事で施工業者に請求できること

次に、住宅の引き渡しを受けた後に手抜き工事による欠陥が見つかった場合に、事業者に対してどのような請求ができるのかを解説します。

注文住宅の場合と建売住宅の場合で少し異なりますので、まずは注文住宅の場合からみていきましょう。

(1)修補請求

引き渡しを受けた注文住宅に契約の内容と異なる欠陥があった場合には、施工業者の契約不適合責任を問うことができます。

欠陥の補修が可能な場合は、修補請求をしましょう。施工業者には契約不適合責任があるので、無償で補修工事を求めることが可能です。

住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分の、構造耐力または雨水の侵入に関する欠陥については、引き渡し後10年まで修補請求できます(住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条1項)。

その他の部分の欠陥については、欠陥を見つけてから1年以内に、契約不適合の事実を相手方に通知する必要があります(民法第637条1項)。

(2)報酬の減額請求

契約不適合責任の追及方法として、補修工事を求めるのではなく、請負報酬の減額を請求することもできます。

欠陥の内容や程度に応じて、いくら減額するのかを施工業者と交渉することになります。

(3)損害賠償請求

住宅の欠陥によって損害が生じた場合は、損害賠償請求もできます。

修補請求と併せて損害賠償請求をすることも可能です。その場合に請求できるのは、補修工事が行われる間の

  • 仮住まいの費用
  • 引っ越し代
  • 調査費用

などです。

修補を請求しても修補してくれないなどで、別の業者に補修工事を依頼する場合には、修補に代わる損害賠償請求として修補費用を請求することもできます。

修補などにより財産的損害が回復されても、それでは填補されない精神的な苦痛があるようなときには、大事なマイホームに生じた重大な瑕疵だったなど、場合により、慰謝料を請求が認められることもあります。慰謝料額は事案によって異なりますが、100万円程度までのケースが多いでしょう。

(4)建て替え費用の請求

住宅に居住できないほどの欠陥があり、建て替えざるを得ない場合には、建て替え費用の請求が可能です。

5、建売住宅の手抜き工事で売主に請求できること

建売住宅で手抜き工事による欠陥が見つかった場合は、売主に対して以下の請求ができます。

(1)修補請求

欠陥の補修が可能な場合は、注文住宅の場合と同様に修補請求ができます。

住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分の、構造耐力または雨水の侵入に関する欠陥については、引き渡し後10年間(住宅の品質確保の促進等に関する法律第95条1項)、売主は瑕疵担保責任を負います。

その他の部分の欠陥については、欠陥を見つけてから1年以内(民法第566条)に不適合な事実を相手方に通知しなければならないことも、注文住宅の場合と同様です。

(2)代金減額請求

注文住宅の場合に修補請求に代えて請負報酬の減額を請求できるのと同様、建売住宅の場合は売買代金の減額を請求できます。

欠陥の内容や程度に応じて、いくら減額するのかを売主と交渉することになります。

(3)契約の解除

住宅に居住できないほどの欠陥があれば、注文住宅であっても建売住宅であっても、契約の解除が可能です。

契約を解除すれば、売買代金の返還請求も可能です。そのお金で、改めて別の住宅を購入することができるでしょう。

(4)損害賠償請求

住宅の欠陥によって損害が生じた場合に損害賠償請求ができることも、注文住宅の場合と同様です。

修補請求と併せて損害賠償請求をする場合には、補修工事が行われる間の

  • 仮住まいの費用
  • 引っ越し代
  • 調査費用

などを請求できます。契約を解除する場合には、登記にかかった費用なども請求できます。

(5)施工業者に損害賠償請求できることもある

建売住宅の場合は、購入者と施工業者は契約関係にありませんので、施工業者に対して契約不適合責任を問うことはできません。

しかし、施工業者の手抜き工事によって居住者等の生命、身体、財産が脅かされるような、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵が生じている場合には、施工業者の不法行為責任として損害賠償請求ができます。

6、施工業者や売主が倒産している場合の対処法

住宅の引き渡し後に施工業者や売主が倒産しているような場合は、上記「4」や「5」の請求を行うことはできません。しかし、その場合でも補償を受けることが可能な場合があります。

住宅事業者は、住宅を供給する際には以下の2つのうちいずれかの措置をとるべきことが、住宅の品質確保の促進等に関する法律で義務づけられているからです。

  • 住宅瑕疵担保責任保険に加入すること
  • 瑕疵担保責任を果たすために必要な保証金を供託すること

引き渡し後10年以内に、住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分の欠陥を見つけたときは、これらの措置によって補修費用の補償を受けることができます。

事業者が住宅瑕疵担保責任保険に加入していた場合は、住宅取得者が保険金を直接請求できます。そのお金で、別の業者に補修工事を依頼することになります。

事業者が住宅瑕疵担保責任保険に加入していなかった場合は、供託金の還付を請求することで補修費用が補償されます。

7、新築住宅の手抜き工事に気付いたら弁護士へ相談を

新築住宅の手抜き工事に気付いたときは前記「4」や「5」の請求ができますが、事業者は責任を回避するために、手抜き行為を容易には認めない傾向にあります。

そんなときは、弁護士へ相談することをおすすめします。状況に応じて、最善の法的対処法についてアドバイスが得られるはずです。

弁護士に対応を依頼すれば、手抜き工事による欠陥について専門的な調査を行った上で事業者と法的観点から交渉してくれますので、適切な解決が期待できます。

必要に応じて裁判手続きも依頼できますので、泣き寝入りする必要はありません

まとめ

手抜き工事が行われても、住宅が完成した後に見抜くことは困難です。ほとんどの場合は、引き渡しを受けて居住していくうちに不具合に気付き、その後の調査によって手抜き工事が判明することになります。

そのときに事業者に対して適切な請求をするためには、高度な専門知識や交渉力が要求されます。一般の住宅取得者が自分で建設業者や宅建業者と交渉しても、知識や交渉力に圧倒的な差があるので、泣き寝入りせざるを得ないケースも数多くあります。

取得した住宅の欠陥に気付いたときは、ひとりで抱え込まずに弁護士にご相談の上、適切な解決を目指しましょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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